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私の他作品のあらすじ
毎日記念日小説 作品例 【7月2日 一年の折り返しの日】【8月9日 野球の日 いっぱいしゃべった。】
しおりを挟む【7月2日 一年の折り返しの日】
”これより雑談を始めます。雑談の所要時間は30分、役職等はございません。
それでは始めさせていただきます。
今日の雑談の話題は『真っ二つに分かれるもの』です。
楽しい雑談の時間をお過ごしください。”
アナウンスが終わった。
さぁ、今日も雑談を始めますか。
お!今日のロケーションは珍しい。教室だ。
教室って俺は初めてかも。
夕日がさしてる感じの教室だし、なんとなくエモいね。
放課後教室に残って、時間を忘れて夢中で雑談するみたいなシチュエーションでいいね。
そんなことを考えていたら、九条が話し始めた。
「え、この話題どうゆうこと?!!!『真っ二つに分かれるもの』って物理的なこと?!!!」
九条はちょっとだけあほなところがある。
まぁ、そこが九条のいいところでもあるんだけど。
九条の問いに答えるように、さっきまでスマホをいじっていた野口がスマホをしまいながら話した。
「今日は、一年の折り返しの日らしいですよ。逆にだから、『真っ二つに分かれるもの』って話題なんじゃないですか?逆に、物理的に真っ二つに分かれるものでも別にいだろうし、犬猫とか、よく2つを比較されるようなものの話しでもいいんじゃないかと思いますよ?」
「そうなんだ。さすが、のぐっち分かりやすいじゃん」
岡が感心したように言った。
今日は、珍しく全員男子の回だ。
普通男女混合になるらしいんだけど、よほど今の時間に女子が雑談部屋に入ってこなかったんだろう。
まぁ、体育の終わりの時間だし、女子は着替えとか時間かかるから男子だけになることもあるのかなぁ。
今日は男子だけだし、特に気を使う必要はないか。
「てか、九条。物理的に真っ二つに分かれるものってなんだよ」
おれが、ツッコみとも質問ともとれるくらいの声量で九条に聞く。
「ふぇ?!!!えっと~、真っ二つに分かれるもの…割りばしとか?パ〇コとか?!!!」
九条は、素っ頓狂な声を上げた後、自信なさげに言った。
「それじゃ逆に話題がすぐにつきそうですね」
「割りばしって、何について話すの?」
野口と岡が続けざまに言った。
九条は、二つのことを同じタイミングで言われて、あたふたしてる。
「割りばしだから…えっと…うまく割れないこととか?!!!」
「それじゃあ、真っ二つに分かれるものになってねぇじゃん」
俺は、思わず九条に突っ込んでしまった。
皆テンポがいいな。
九条とか野口とか岡とか、普段はあまり話さないけれど、スムーズに話が進んでる。
なんとなく同姓だけの方がやりやすいって共通認識があるのかなぁ。
「じゃあ、犬猫の話でもする?」
岡がスッと話題を出してくれた。
さすが陽キャのテクニック。
「じゃあまず、九条はどっち派なんだ?」
「俺はね、猫派かな!!!猫って気まぐれで可愛いから!!!」
「なんとも九条らしい理由だな。えっと、野口はどっち派なんだ?」
「俺は、犬派です。忠犬とか、補助犬とか、何かの役に立っている動物ってカッコ良くないですか?逆になんか凛々しいというか、プロフェッショナルっていうか。だから俺は犬派です。」
「あぁ、確かに分からんでもないな。あー、岡はどっち派なんだ?」
「俺はね、犬派だよ。チワワとかトイプードルとか可愛いじゃん。猫も嫌いじゃないけど、うちは家で犬を飼ってるから、犬の方が愛着湧いているし可愛く感じるじゃん」
「へぇ、岡の家には犬がいるのか。ペット飼うのうらやましいな」
いつの間にか俺が回していた。
まぁ、会話がスムーズに進んだからいいんだけどね。
それにしても三人とも、なんかイメージ通りの答えだったな。
何やらかすかわからん九条が猫派なのも納得だし、きっちりしてる野口が犬派なのも納得だ。それに、おっとりしてる岡が犬派なのも何となくわかる。
岡に関しては、猫派って言われても納得する自信があるけど。
「たなかっちは、どっち派なの?」
岡が俺に聞いてくれた。
こういうところで気遣いができるから、岡は陽キャなんだろうなぁ。
「俺はな、猫派だ。犬もかわいいけど、猫にはなんとも言葉にしがたい魅力というか、魅了される感じがあるんだよ」
「たなかっちが熱く語ってるのって珍しいじゃんね」
岡がちょっとだけ驚いて、目をいつもの二割り増しくらい開けている。リアクションもいいし。
それでも普通の人の半分も空いてないけれど。
「それにしてもきれいに二つに分かれたじゃん。これこそ、この『真っ二つに分かれるもの』ってお題にあってるじゃん」
「確かにね」
岡が言って、他の2人もうなずいてくれた。
「ちなみにパ〇コは何味派?俺はチョココーヒー」
「俺は、今だとキウイ!!!」
「俺は、バナナオレじゃん」
「逆に俺は、ホワイトサワー」
「まったく真っ二つに、分かれねぇな。パ〇コって蓋の小さいほうがやけにおいしいよな」
「分かる!!!」
九条が元気よくうなずいて、他二人は軽く首を縦に振っていた。
「意見が割れやすいので、楽しく雑談ができるやつって他にあるか?思想とかで対立を生む系はダメだぞ。宗教とか、左右とか」
俺はいちおう注意喚起をした。
中学校の時に、キノコ、タケノコとかの話の延長線上で、急にクラスで左右の対立が起きたときは地獄だったなぁ。
「さすがにクラスメイトと宗教なんて話さないでしょ!!!そんな繊細な話題」
九条が笑いながら言った。
あの恐ろしさを知らないから言えるんだよ。
「えーっと、犬猫は今やったから…逆にキノコタケノコ、海山、ポ〇モンのタイトル…んー、後は…逆にマ〇クとウィ〇ドーズ、とかですかね?」
野口は真剣に考えてくれたみたいだ。
「そういうのって、食べ物でやることが多いじゃん。今あげてった奴にはあんまりなかったけど。バーべキューと素麺とかどう?」
岡も気の抜けるような声で次の話題の案を上げてくれている。
次の話題を何にするか話し出そうとしたその時、アナウンスが鳴った。
”30分が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。
それでは良い学校生活を”
「じゃあ次は…」
そこまで行ったところで、実際の教室に戻ってきたことに気が付いた。
さっきまでより多いクラスメイト。
夕焼けではなくさんさんの太陽が外では輝いていた。
声を上げてしまったことが少しだけ恥ずかしくなった。
もうちょっと話したかったな。
【8月9日 野球の日 いっぱいしゃべった。】
今日もまた、白い空間に放り出された。
そしてどこからともなくアナウンスが鳴った。
”シチュエーションの設定、人物選択、話題選択が終了しました。
これより雑談を始めます。”
やっぱりアナウンスが止んだ。
やはり、雑談部屋で一番無駄な時間なう。
AIはここを修正しないのだろうか?
やっぱ、修正しないかぁ。
修正してくれないかなぁ。
毎回同じこと思ってるなぁ。
なんか最近個々の時間長くなってないか?
気のせいかなぁ?
まぁ、別に気にすることでもないか。
再びアナウンスが鳴った。
”雑談所要時間は30分、盛り上がり等により自動で延長や短縮を行います。
シチュエーションは、『野球場』です。
雑談に参加するメンバーは、『田中様』『九条様』『東様』『村山様』です。
決まった役職、役割等はございません。ご気軽に参加してください。
それでは雑談を始めさせていただきます。
今回の話題は『野球』です。
それでは楽しい雑談の時間をお過ごしください。”
アナウンスがやんで、光に包まれた。
野球かぁ。
野球なんだぁ。
野球ってよく分からないんだよなぁ。
大丈夫かな。
九条とか、野球詳しそうだし、大丈夫かな。
まぁ、どうにもならなかったら、投票して終わることもできるし、あんまり気負わないで行こう。
野球かぁ。
そういえば俺、スポーツ選手の名前ほとんど知らないなぁ。
経験的に、そろそろ光が収まりそうだし、これくらいにしとくかぁ。
予想通り、ちょうどいいタイミングで光が収まった。
俺たちが座っていたのは、扇の根本。いわゆるバックネット裏というところだろうか。
野球といえば熱の入った応援を想像するが、雑談をしやすいようにか『雑談部屋』の仕様なのか、今回も静寂に包まれている。
野球のイメージとはかけ離れた静けさにすごく違和感を覚える。
下を向いて気づいたのだが、どうやらどこかのチームのユニホームになっているらしい。
俺のスポーツに詳しくない頭でわかる範囲のチームのユニホームではない。
もしかして『雑談部屋』のために、新しく架空の球団のユニホームでも作ったのだろうか?
すごい熱の入れようだな。
どうしてそこまでしたんだろう?
既存の球団に対する気遣い?それとも、ここにファンが来たときに、憎く思っている球団のユニホームを着せてしまいそいつの機嫌を損ねさせないため?
それとも、創作意欲でも爆発したのかもな。
そんなことはいいとして、今日はスロースターターだなぁと思い他のメンバーを見る。
すると、みんなあんぐりと口を開けてぽかんとしていた。
あ、そういえばこの球場も知っている球場ではないな。
野球とか全然詳しくないから俺が知らないだけかもしれないけど、これも、もしかして新しくつくったのかな?
球場一つ『雑談部屋』に造ったということにみんな驚いているのかな?
驚きに乗り遅れたためいいリアクションが取れなかったなぁ、と反省をしていると、九条が叫んだ。
「野球の時間だぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!!!」
それから今日も昨日のように怒涛の勢いで雑談が進んだ。
「どうした?九条」
「僕は、興奮して叫んじゃったんじゃないかと思う」
「そうなのか?九条」
「あぁ、そうだ!!!!!!なんか球場に来たら叫びたくなるんだよな!!!!!!!でも普段は周りに客がいっぱいいて、迷惑になっちゃうから叫べないんだけど、今は誰も他の野球を見に来た客はいないから、叫びたい放題だなって思ったら、気づいたら叫んでた!!!!!!!!」
「でかいよ。でかい。今でも十分叫んでるみたいな声量出てるかな」
「あぁ、うるさいぞ九条」
「すまん、すまん!!!いつも球場来るときって、周りがうるさいから、球場で話すと自然と声が大きくなっちゃんだ!!!」
「実際球場に行ったことはないけど、九条君の声なら、普通に聞こえそうだなって思う」
「なんでか知らないけど、俺が座る席って大概、酔っぱらって大声で悪態ついてるおじさんが近くにいるんだよね!!!だから、俺のこのくらいの声だと、その声に負けちゃうんだよ!!!」
「そうなんだ意外だな」
「九条君って、ちょっと不運なのかな。塵も積もればなんとやらというし、私なら何度もそういう人がいたら、球場に行きたくなくなっちゃうかな」
「もう行かないかなとかって思うことはないかな!!!やっぱ球場のみんなと一緒に野球を見て盛り上がるのって楽しいから!!!」
「なんか、九条の話聞いて、球場っていうか、野球観戦。行ってみたくなったな」
「それなら今度一緒に行こうよ!!!」
「おう」
「九条君は、テレビで野球観戦、いわゆるテレビ中継とかって見ないの?って思う」
「見る時もあるけど、基本は現地で見る!!!野球がすごく好きってよりは、球場で野球を見るのが好きだから、テレビだとあんまり見ない!!!」
「そうなんだぁ。意外かな」
…
..
.
九条ばっか話してもらって申し訳ないな。
そう思っていたら、急に雑談が失速してしまった。
余計なことを頭の中で考えている暇もないくらい詰め詰めでいってたから、皆ガス欠なんだろうなぁ。
かくいう俺も、急に話すことが尽きちゃったなぁ。
九条をメインにしてたから、九条が話すことなくなっちゃうとこっち側話急速に減速しちゃうなぁ。
九条が悪いってわけじゃないけど、九条に頼りきりで話してたから仕方ないかなぁ。
二日連続で、詰め詰めスタイルだったな。
それにしても、このスタイルが最新のトレンドなのかな?
休んだりとか、変な雑談をやってたりとか、そういうことをしてる間に『雑談部屋』のトレンドが変わってしまったのかな?
寂しいようなワクワクするような、不思議な感じ。
まぁ、トレンドとか、流れとかで、雑談の仕方がどうなったとしても『雑談部屋』で誰かと雑談をしてるのが楽しいことには変わりはないんだけどなぁ。
皆がガス欠を起こしてから変な間を開けて、アナウンスが鳴った。
もうちょっと早く切り上げてくれよアナウンスさん。
もうちょっと前なら走り切ったぁって感じで終われたのに。
まだ、AIってそういうのを察するのって苦手なのかな?
”26分22秒61が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。
皆さん、熱狂して少しずつスピードが上がってしまうのは仕方がないことですが、少し落ち着いて雑談をしてみてはいかがですか?
熱意をもってガッとやってしまっては続かないかもしれません。
もっと余裕をもってゆったりとやるという選択肢があることも忘れないでくださいね。
将来の選択肢を広げるため、狭めないために今日の残りの時間も頑張ってください。
それでは教室にお送りいたします。
それでは良い学校生活を”
アナウンスが止んだ。
教室に戻ってきた。
アナウンスさんも、雑談のペースアップのし過ぎを危惧してるみたいだなぁ。
今度の雑談は、そっちを少し意識してやろうかなぁ。
それにしても、このスタイルの時って、なんか終わった後の疲れが尋常じゃないんだよなぁ。
これじゃ集中できる授業も集中できなくなっちゃうから、少しペースを意識して雑談してみようかなぁ。
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