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毎日記念日小説(完)
晴れの日の相合傘 6月11日は傘の日
しおりを挟む晴れ渡る空の下、俺と田中は二人並んで学校からの帰路についていた。
「相合傘したい」
「え、今?」
田中から突然の要望。
雨なんて降るわけない天気なのに何で急に相合傘なんだろうか。
また何か漫画の影響で、やってみたくなったのだろうか。
「今度は何の影響?」
「小説かな。私、相合傘をだれかとしたことなくて、どういう感覚なのかが分からないから、あんまり没入できなくて…だからここで体験しておくことで、今後そういうシーンがあった時にきちんとストーリーに入り込めると思うんだよね」
「あぁ、田中はそういうことができる友達も恋人もいないもんね」
「ぶっ飛ばすよ」
どすの聞いた声で言う田中。
それと同タイミングで田中から寸止めの蹴りが飛んできた。
「駄目でしょ。そんな蹴りを一般人に向けちゃ」
「親みたいな怒り方しないでくれる?それと話変えないでよ。相合傘してくれるの?どうなの?」
「別にいいけど。傘持ってるの?それと、あいつら変なことしてるって視線に耐えられるの?」
「傘あったかな?ちなみに佐藤は傘持ってる?視線はもちろん大丈夫!私と佐藤が一緒に何かやったら、毎回そういう視線が突き刺さるもんね」
田中がかばんの中を探しながら言う。
「俺は、日傘しか持ってないぞ。それと、私はお前に巻き込まれてるだけだぞ」
「私、傘持ってきてないわ。今日めちゃくちゃ快晴の予報だったから、傘持ってくるの忘れちゃった」
「それは、天気予報が外れて雨になった時のセリフじゃない?」
「まぁ、確かにそうかもね。佐藤が傘持ってるなら、それで相合傘しよう!」
「聞いてなかったの?俺のは日傘なんだが」
「日傘でいいじゃん。ちょうど快晴なんだし、傘より日傘の方があってるって」
「日傘の相合傘とか聞いたことないんだが。俺の日傘はこんな感じだけどいいのか?」
俺は、カバンからフリル付きのごっしくな折り畳みの日傘を出した。
それを田中は何も言わずにぶんどった。
そして、勝手に日傘を広げてはしゃぎだした。
「わぁ、めっちゃいいデザインじゃん。めっちゃ可愛い。それにしてもなんで佐藤はこんなのもってるの?」
「親からもらったんだよ。なんか、親が雨傘と間違えて買っちゃったらしくて、押し付けられたんだ」
「あぁ、佐藤の親って、日傘とかしなさそうだもんね。めっちゃワイルドだし」
「ただただ面倒くさがりなだけで、別にワイルドってわけじゃないんじゃないかな?」
「そうなんだ。日焼け上等って感じだと思ってたけど、面倒なだけなんだ。それより早く傘の中に入って、相合傘しよ」
田中が、日傘をさしてこちらを手招きしている。
顔が良いから様になっていて腹立つ。
「あぁ、分かったよ。相合傘すればいいんだろ」
「うん!やった!初めての相合傘だ」
ルンルン気分の田中につられて、少しだけテンションを上げながら俺は帰路に着いた。
相合傘までの話が長すぎて、既にだいぶ学校からに歩いてしまっていたらしい。
あまり田中と相合傘をしている時間がなかった。
短い時間だったが、俺は何してるんだ?と言いたげな突き刺さる視線に鈍感になりながら、田中の相合傘を楽しんだ。
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