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毎日記念日小説(完)

し『バンッ』り 5月28日は花火の日

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俺たちは、祭りを抜け出し、小さな丘を登って神社まできた。
神社の境内は静かであった。
祭りの喧騒が小さく聞こえるだけで、後は虫の音も響かない静かな場所であった。
出店やら、出し物やら、祭りのメインからは離れた場所に俺たちは来ていた。
「人がいっぱいで大変だね」
「なんか、人酔いした気がする。どっと疲れた」
2人でベンチに腰掛けた。
「見てみて!ここからなら、さっきの出店とか大量の人が見えるよ」
「ほんとだ。人がうじゃうじゃいる。あんなかに俺たちもいたのかと思うとぞっとするな」
丘の下には、まだ多くの人があふれかえっていた。
「ちょっと休憩していこう。もうすぐ花火だし、ここなら良く見えるんじゃない?」
「あぁ、人ごみで疲れたから俺も休憩したい。ていうか、回復したとしてももうあの人ごみの中に戻るのは嫌だな」
俺は、スマホをつけて時間を確認した。
「もうすぐ花火だな。ここなら正面から見れるから花火がきれいかもな」
今日の祭りは、地元では有名な祭りで、特に花火に気合が入っている。
だから毎年、花火がきれいに見れるスポットはめちゃくちゃ混んでいるのだ。
しかし、今年は偶々穴場スポットのここを見つけたので、不快な思いをせずに花火を楽しめそうだ。
ここには、人は俺たち以外いない。
こんな真正面ならもっと人気スポットになってもいいはずなんだが。
なんでだろう?
「花火が始まるまで暇だからしりとりでもしない?」
「あぁ、分かった。じゃあ、俺から『しりとり』」
俺がそう言ったタイミングで、花火が昇って行った。
ヒュー~~~花火が風を切って打ちあがる音が聞こえる。
「リー『バンッ』ト」
ちょうどいいところで花火が開いてしまった。
まぁ、最初と最後が聞き取れてるから、なんとかなるけど。
それから俺たちは、花火を眺めながらしりとりを続けた。
「トイ『バンッ』ル」
「ルー『バンッ』ック」
タイミングがいいのか悪いのか、俺たちのしりとりの絶妙なタイミングで、花火が開いてしまう。
何て言っているのかは分からないけれど、なんとなくでしりとりが進められている。
「九『バンッ』ギ」
「漁『バンッ』合」
「インター『バンッ』スクール」
「ルー『バンッ』フ」
「フィ『バンッ』ド」
「ドン『バンッ』ーテ」
「テーブ『バンッ』プ」
『プ『バンッ』セス』
「『バンッ』スター」
「ター『バンッ』ック」
「草『バンッ』衣」
「森『バンッ』バンバンビガロ」
「何それ?」
「お笑い芸人」
「あぁ」
花火は終わらない。俺たちの夜も、しりとりも。
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