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毎日記念日小説(完)
強くなって出直して来い 5月27日は百人一首の日
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「君がため 春の野に出でて 若菜摘む
我が衣手に 雪は降りつつ」
あぁ、いい歌。
百人一首っていいよねぇ。
正月のかるたでしか聞かないなんてもったいない。
百ものいい歌が収められてて、それをいろんないい声で聴けるなんて最高じゃない。
あぁ、この人の声もいいわね。
新しい動画を再生させながら、私は聞きふけっていた。
動画から聞こえてくるイケボもいいけど、友達が読みなれてない感を出しながらリアルで読んでくれるのもいいわねぇ。
あぁ、百人一首最高!!
「おい、若菜!イヤホンでなんか聞きふけってないで、かるたにちゃんと参加しろよ」
あぁ、せっかく百人一首に浸っていたのに、がさつな声で現実に引き戻されちゃったじゃない。
がさつな声で、私に注意をしてきたのは、親戚の小僧である、義馬だ。
放たれ小僧には、ゲーム性以外の良さがわかっていないようだ。
あぁ、もったいない。最高のリラックスタイムがぁ。
「あんたのがさつな声なんか聞きたくないわ。ちゃんと参加してるわよ。私はもう、全体の3分の1は取ってるでしょ。それに何の不満があるの?」
リラックスタイムを終わらされたイライラを載せて早口気味に言った。
それを聞いて、義馬は面食らっていた。
私は、少しかるたに飽きてしまった。
私のところには、すでに読まれたかるたの取札のうちのほとんどがある。
私は、百人一首好きだからなんとなくできるのだ。
それに、一緒にかるたをやっている義馬たち子ども組は、あまり百人一首のかるたが得意ではないらしい。
さっきの句が読まれてしばらくたったが、いまだに取札を探している。
義馬は、他の子の「あったー!!」という喜びの叫びを聞いて正気に戻ったらしい。
それからは、不満そうに競技に戻っていった。
新たに一句読まれる前に私はイヤホンを外した。
耳の感覚を戻し完璧な状態で次の句を聞こうとする。
そして、準備ができたタイミングで次の句が読まれた。
「しのぶれど 色に出でにけり わが恋は
ものや思ふと 人の問ふまで」
やっぱりいい。
プロがスラスラ読むのも耳なじみがいいが、少しつっかえながら読まれる句も新鮮でいいなぁ。
浸っていると、また義馬が突っ掛かってきた。
この子は、空気が読めないのかしら?
「何浸ってるんだよ。ちゃんと競技に参加しろよ」
何にでも文句を言いたいお年頃らしい。自分と違うものを許せない年頃らしい。
「感情の機微も分からないおこちゃまは黙ってな。それに、あんたらが弱すぎるからつまらないのよ。ちゃんとやってほしかったら、もっとうまくなることね」
私は、それだけ言って読み手の後ろまで引っ込んだ。
これで、近くで新鮮な句が聞ける。
あぁ、楽しみだなぁ。
子守よりこっちの方が絶対楽しい。
目を閉じて感覚を研ぎ澄まそうとした。
目を閉じる直前、偶然目に入った義馬はとても悔しそうにしていた。
図星だから言い返せなくて、めちゃくちゃ悔しいのだろう。
まぁ、頑張れよ少年。
私はこれからボーナスタイム突入だ。
「めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に
雲がくれにし 夜半(よは)の月かな――――――」
我が衣手に 雪は降りつつ」
あぁ、いい歌。
百人一首っていいよねぇ。
正月のかるたでしか聞かないなんてもったいない。
百ものいい歌が収められてて、それをいろんないい声で聴けるなんて最高じゃない。
あぁ、この人の声もいいわね。
新しい動画を再生させながら、私は聞きふけっていた。
動画から聞こえてくるイケボもいいけど、友達が読みなれてない感を出しながらリアルで読んでくれるのもいいわねぇ。
あぁ、百人一首最高!!
「おい、若菜!イヤホンでなんか聞きふけってないで、かるたにちゃんと参加しろよ」
あぁ、せっかく百人一首に浸っていたのに、がさつな声で現実に引き戻されちゃったじゃない。
がさつな声で、私に注意をしてきたのは、親戚の小僧である、義馬だ。
放たれ小僧には、ゲーム性以外の良さがわかっていないようだ。
あぁ、もったいない。最高のリラックスタイムがぁ。
「あんたのがさつな声なんか聞きたくないわ。ちゃんと参加してるわよ。私はもう、全体の3分の1は取ってるでしょ。それに何の不満があるの?」
リラックスタイムを終わらされたイライラを載せて早口気味に言った。
それを聞いて、義馬は面食らっていた。
私は、少しかるたに飽きてしまった。
私のところには、すでに読まれたかるたの取札のうちのほとんどがある。
私は、百人一首好きだからなんとなくできるのだ。
それに、一緒にかるたをやっている義馬たち子ども組は、あまり百人一首のかるたが得意ではないらしい。
さっきの句が読まれてしばらくたったが、いまだに取札を探している。
義馬は、他の子の「あったー!!」という喜びの叫びを聞いて正気に戻ったらしい。
それからは、不満そうに競技に戻っていった。
新たに一句読まれる前に私はイヤホンを外した。
耳の感覚を戻し完璧な状態で次の句を聞こうとする。
そして、準備ができたタイミングで次の句が読まれた。
「しのぶれど 色に出でにけり わが恋は
ものや思ふと 人の問ふまで」
やっぱりいい。
プロがスラスラ読むのも耳なじみがいいが、少しつっかえながら読まれる句も新鮮でいいなぁ。
浸っていると、また義馬が突っ掛かってきた。
この子は、空気が読めないのかしら?
「何浸ってるんだよ。ちゃんと競技に参加しろよ」
何にでも文句を言いたいお年頃らしい。自分と違うものを許せない年頃らしい。
「感情の機微も分からないおこちゃまは黙ってな。それに、あんたらが弱すぎるからつまらないのよ。ちゃんとやってほしかったら、もっとうまくなることね」
私は、それだけ言って読み手の後ろまで引っ込んだ。
これで、近くで新鮮な句が聞ける。
あぁ、楽しみだなぁ。
子守よりこっちの方が絶対楽しい。
目を閉じて感覚を研ぎ澄まそうとした。
目を閉じる直前、偶然目に入った義馬はとても悔しそうにしていた。
図星だから言い返せなくて、めちゃくちゃ悔しいのだろう。
まぁ、頑張れよ少年。
私はこれからボーナスタイム突入だ。
「めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に
雲がくれにし 夜半(よは)の月かな――――――」
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