73 / 270
毎日記念日小説(完)
太くて硬けりゃ角材と一緒 5月25日は広辞苑記念日
しおりを挟む
広辞苑で殴られた。
それに気づいたのは殴られてから数秒後のことだった。
殴られた瞬間には何が何だかわからなかった。
刈り取られていく意識の中、殴られたその瞬間に思いをはせるのだった。
後頭部に激痛が走った。
角材の角で殴られたかのような激痛だ。
その痛みと同時に、衝撃が体に伝わる。
身体を地面に打ち付けるような衝撃が伝わる。
何者かが、俺のことを釘のように扱っているのではないかと、馬鹿げた発想が急に浮かぶくらい動揺している。
俺の体は、押し寄せる衝撃に耐えられるほど頑丈ではなかった。
衝撃に負け体勢が悪くなり、転びそうになる。
ふらっとよろけてしまい、前傾姿勢になってしまった。
その不安定な状態に、また激痛と衝撃が走った。
今度は背骨だ。
今度は、角材でフルスイングしたかのような痛みと衝撃だ。
俺はボールじゃないんだけどなぁ。
前傾姿勢になっている俺に、追い打ちのように放たれた衝撃に対して、かよわい俺では耐えることはできなかった。
体勢を崩していたこともあり、俺は転んでしまった。
転ぶときに、受け身をとると同時に、俺のことを二回も殴った角材を見てやろうと、振り向いた。
そこにあったのは角材ではなく、辞書だった。
角材と辞書なんて、凶器としては大して変わらない。だから、俺はこの二つを間違えてしまったのだろう。
辞書に注目してしまい、広辞苑を使って俺のことを殴った奴の顔まで見ていなかった。
改めてそいつの顔を見る。
背は、140cmくらい。だいぶ小柄だ。
スレンダーな体つきをしている。
うちの学校の制服を着ていた。
ズボンをはいていることから、多分男子なのであろう。
そいつは、見たことがないやつだった。
服装から後輩であることは分かる。
随分と生意気な後輩もいたもんだ。
それに、その後輩の顔はひどくゆがんでいた。
口が裂かれているのかと思うくらいに口角が上がっていた。
目を合わせると、ぞっとする感覚があって、うかつに目も合わせられない。
この後輩は、なんで俺のことを殴ったのであろう。
緑色のネクタイをしているので多分1年生だ。
こいつが入学してから半年、俺はこいつと話したことも目を合わせたこともないのに。
痛い頭をフルに回転させながら、考える。
考えれば考えるほど、頭がズキズキいう。
普段使ってないから、ムリに頭を動かしたことによる痛みと、さっき辞書で殴られたことによる物理的な故障による痛みが、ダブルで襲ってくる。
こいつが殴ってきた理由を考えているうちに、不意にこいつから目を離してしまった。
その隙に、こいつはもう一度辞書を振りかぶって、
殴りつけてきた。
俺の視界が赤く染まる。
どうやら目をやられたらしい。
正確には瞼から出血した。
今度の激痛には俺の意識が耐えられなかったようで、俺は意識を失っていく。
その一瞬で俺は考えた。
なんで俺はこんな目にあっているのだろうか。
考えても答えは出なかった。
この世には理不尽なことがたくさんある。
それを今学んだ気がした。
それに気づいたのは殴られてから数秒後のことだった。
殴られた瞬間には何が何だかわからなかった。
刈り取られていく意識の中、殴られたその瞬間に思いをはせるのだった。
後頭部に激痛が走った。
角材の角で殴られたかのような激痛だ。
その痛みと同時に、衝撃が体に伝わる。
身体を地面に打ち付けるような衝撃が伝わる。
何者かが、俺のことを釘のように扱っているのではないかと、馬鹿げた発想が急に浮かぶくらい動揺している。
俺の体は、押し寄せる衝撃に耐えられるほど頑丈ではなかった。
衝撃に負け体勢が悪くなり、転びそうになる。
ふらっとよろけてしまい、前傾姿勢になってしまった。
その不安定な状態に、また激痛と衝撃が走った。
今度は背骨だ。
今度は、角材でフルスイングしたかのような痛みと衝撃だ。
俺はボールじゃないんだけどなぁ。
前傾姿勢になっている俺に、追い打ちのように放たれた衝撃に対して、かよわい俺では耐えることはできなかった。
体勢を崩していたこともあり、俺は転んでしまった。
転ぶときに、受け身をとると同時に、俺のことを二回も殴った角材を見てやろうと、振り向いた。
そこにあったのは角材ではなく、辞書だった。
角材と辞書なんて、凶器としては大して変わらない。だから、俺はこの二つを間違えてしまったのだろう。
辞書に注目してしまい、広辞苑を使って俺のことを殴った奴の顔まで見ていなかった。
改めてそいつの顔を見る。
背は、140cmくらい。だいぶ小柄だ。
スレンダーな体つきをしている。
うちの学校の制服を着ていた。
ズボンをはいていることから、多分男子なのであろう。
そいつは、見たことがないやつだった。
服装から後輩であることは分かる。
随分と生意気な後輩もいたもんだ。
それに、その後輩の顔はひどくゆがんでいた。
口が裂かれているのかと思うくらいに口角が上がっていた。
目を合わせると、ぞっとする感覚があって、うかつに目も合わせられない。
この後輩は、なんで俺のことを殴ったのであろう。
緑色のネクタイをしているので多分1年生だ。
こいつが入学してから半年、俺はこいつと話したことも目を合わせたこともないのに。
痛い頭をフルに回転させながら、考える。
考えれば考えるほど、頭がズキズキいう。
普段使ってないから、ムリに頭を動かしたことによる痛みと、さっき辞書で殴られたことによる物理的な故障による痛みが、ダブルで襲ってくる。
こいつが殴ってきた理由を考えているうちに、不意にこいつから目を離してしまった。
その隙に、こいつはもう一度辞書を振りかぶって、
殴りつけてきた。
俺の視界が赤く染まる。
どうやら目をやられたらしい。
正確には瞼から出血した。
今度の激痛には俺の意識が耐えられなかったようで、俺は意識を失っていく。
その一瞬で俺は考えた。
なんで俺はこんな目にあっているのだろうか。
考えても答えは出なかった。
この世には理不尽なことがたくさんある。
それを今学んだ気がした。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
水縞しま
ライト文芸
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる