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毎日記念日小説(完)

太くて硬けりゃ角材と一緒 5月25日は広辞苑記念日

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広辞苑で殴られた。
それに気づいたのは殴られてから数秒後のことだった。
殴られた瞬間には何が何だかわからなかった。
刈り取られていく意識の中、殴られたその瞬間に思いをはせるのだった。

後頭部に激痛が走った。
角材の角で殴られたかのような激痛だ。
その痛みと同時に、衝撃が体に伝わる。
身体を地面に打ち付けるような衝撃が伝わる。
何者かが、俺のことを釘のように扱っているのではないかと、馬鹿げた発想が急に浮かぶくらい動揺している。
俺の体は、押し寄せる衝撃に耐えられるほど頑丈ではなかった。
衝撃に負け体勢が悪くなり、転びそうになる。
ふらっとよろけてしまい、前傾姿勢になってしまった。
その不安定な状態に、また激痛と衝撃が走った。
今度は背骨だ。
今度は、角材でフルスイングしたかのような痛みと衝撃だ。
俺はボールじゃないんだけどなぁ。
前傾姿勢になっている俺に、追い打ちのように放たれた衝撃に対して、かよわい俺では耐えることはできなかった。
体勢を崩していたこともあり、俺は転んでしまった。
転ぶときに、受け身をとると同時に、俺のことを二回も殴った角材を見てやろうと、振り向いた。
そこにあったのは角材ではなく、辞書だった。
角材と辞書なんて、凶器としては大して変わらない。だから、俺はこの二つを間違えてしまったのだろう。
辞書に注目してしまい、広辞苑を使って俺のことを殴った奴の顔まで見ていなかった。
改めてそいつの顔を見る。
背は、140cmくらい。だいぶ小柄だ。
スレンダーな体つきをしている。
うちの学校の制服を着ていた。
ズボンをはいていることから、多分男子なのであろう。
そいつは、見たことがないやつだった。
服装から後輩であることは分かる。
随分と生意気な後輩もいたもんだ。
それに、その後輩の顔はひどくゆがんでいた。
口が裂かれているのかと思うくらいに口角が上がっていた。
目を合わせると、ぞっとする感覚があって、うかつに目も合わせられない。
この後輩は、なんで俺のことを殴ったのであろう。
緑色のネクタイをしているので多分1年生だ。
こいつが入学してから半年、俺はこいつと話したことも目を合わせたこともないのに。
痛い頭をフルに回転させながら、考える。
考えれば考えるほど、頭がズキズキいう。
普段使ってないから、ムリに頭を動かしたことによる痛みと、さっき辞書で殴られたことによる物理的な故障による痛みが、ダブルで襲ってくる。
こいつが殴ってきた理由を考えているうちに、不意にこいつから目を離してしまった。
その隙に、こいつはもう一度辞書を振りかぶって、
殴りつけてきた。
俺の視界が赤く染まる。
どうやら目をやられたらしい。
正確には瞼から出血した。
今度の激痛には俺の意識が耐えられなかったようで、俺は意識を失っていく。
その一瞬で俺は考えた。
なんで俺はこんな目にあっているのだろうか。
考えても答えは出なかった。
この世には理不尽なことがたくさんある。
それを今学んだ気がした。
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