百々五十六の小問集合

百々 五十六

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毎日記念日小説(完)

長く椅子に座っているだけの日 5月21日は小学校開校の日

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 小学校の卒業式は、長めの春休みの始まりという認識だった。
 長時間椅子に座らされて、校長先生の話やら来賓の話やら、保護者の話なんてものを長々と聞かされる。
 泣いてる人なんて、保護者を含めても一人もいない。
 そんなものだと思っていた。
 むしろ、小学校の入学式の方が、不安で泣いている子がいたんじゃないかとすら思う。
 小学校と変わらないメンバーで中学校に上がり、変わらない日々を過ごした。
 中学校の入学式は、卒業式同様、つまらないものだった。
 クラスのメンバーに目新しさはなかった。
 変わったことがあるとすれば、教師と校舎くらい。
 その教師と校舎も、地域交流という名目で何度も訪れていた場所だから見慣れたものだった。
 そもそもここはド田舎だ。地元の人間なんてだいたい顔見知りである。
 1年ぶりに同じ校舎で学ぶ先輩達、それくらいしか新しい刺激はなかった。
 そして、変わらぬ日常は過ぎていき、俺たちは中学校を卒業することとなった。
 小学校の卒業式と同じメンバーで行われる中学校の卒業式。
 当時、来賓として来ていた中学校の先生たちが、司会側にいて、当時司会側にいた小学校の先生たちが、来賓側にいる。それだけの違い。
 卒業式に来る地方議員も、市長の代わりに出席する代理の人すら変わらない。
 心情的に違いがあるとするならば、小学校の時よりは我慢強くなっていることぐらい。
 それによって、長時間の着席が少しだけ苦にならなくなっていた。
 ただ、今回の卒業式と小学校の卒業式には明確な違いが一つだけあった。
 それは、卒業後の進路だ。
 小学校から中学校の進路は、全員が同じ中学校に進学した。
 しかし、中学校から高校は違う。
 半数ずつ違う高校に進学する。
 いわゆる進学校と、そうではない学校だ。
 だいたい成績順に、上半分のやつは、2駅先のうちよりはだいぶ栄えてる町に行く。
 だから今回の卒業式では、泣く人がちらほらいた。
 ただ、俺は泣かなかった。
 いつも一緒にいるような奴は、だいたい同じ進路だし、これからの日常もそう変わらないだろう。そんな思いからか、涙は、一筋も流れなかった。
 卒業式中に思っていたことは、また少し長めの春休みが来るなぁ、と座ったり立ったりが多くて面倒くさいなぁ、だった。
 2駅先の進学校に行くやつとは、生活のリズムが変わるからあまり会えなくなるだろうと思った。
 朝は、電車に乗るために俺たちよりは早く家を出るだろうし、帰りは俺たちよりも遅く帰ってくるのだろう。
 それは少し寂しいなと思った。
 そしてまた春が来た。
 何年たっても変わらない春が。
 高校の入学式には目新しさはなかった。
 これから、10年目の学校生活が始まる。
 後3年、変わることのない面白みのない日常が。
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