68 / 258
毎日記念日小説(完)
長く椅子に座っているだけの日 5月21日は小学校開校の日
しおりを挟む
小学校の卒業式は、長めの春休みの始まりという認識だった。
長時間椅子に座らされて、校長先生の話やら来賓の話やら、保護者の話なんてものを長々と聞かされる。
泣いてる人なんて、保護者を含めても一人もいない。
そんなものだと思っていた。
むしろ、小学校の入学式の方が、不安で泣いている子がいたんじゃないかとすら思う。
小学校と変わらないメンバーで中学校に上がり、変わらない日々を過ごした。
中学校の入学式は、卒業式同様、つまらないものだった。
クラスのメンバーに目新しさはなかった。
変わったことがあるとすれば、教師と校舎くらい。
その教師と校舎も、地域交流という名目で何度も訪れていた場所だから見慣れたものだった。
そもそもここはド田舎だ。地元の人間なんてだいたい顔見知りである。
1年ぶりに同じ校舎で学ぶ先輩達、それくらいしか新しい刺激はなかった。
そして、変わらぬ日常は過ぎていき、俺たちは中学校を卒業することとなった。
小学校の卒業式と同じメンバーで行われる中学校の卒業式。
当時、来賓として来ていた中学校の先生たちが、司会側にいて、当時司会側にいた小学校の先生たちが、来賓側にいる。それだけの違い。
卒業式に来る地方議員も、市長の代わりに出席する代理の人すら変わらない。
心情的に違いがあるとするならば、小学校の時よりは我慢強くなっていることぐらい。
それによって、長時間の着席が少しだけ苦にならなくなっていた。
ただ、今回の卒業式と小学校の卒業式には明確な違いが一つだけあった。
それは、卒業後の進路だ。
小学校から中学校の進路は、全員が同じ中学校に進学した。
しかし、中学校から高校は違う。
半数ずつ違う高校に進学する。
いわゆる進学校と、そうではない学校だ。
だいたい成績順に、上半分のやつは、2駅先のうちよりはだいぶ栄えてる町に行く。
だから今回の卒業式では、泣く人がちらほらいた。
ただ、俺は泣かなかった。
いつも一緒にいるような奴は、だいたい同じ進路だし、これからの日常もそう変わらないだろう。そんな思いからか、涙は、一筋も流れなかった。
卒業式中に思っていたことは、また少し長めの春休みが来るなぁ、と座ったり立ったりが多くて面倒くさいなぁ、だった。
2駅先の進学校に行くやつとは、生活のリズムが変わるからあまり会えなくなるだろうと思った。
朝は、電車に乗るために俺たちよりは早く家を出るだろうし、帰りは俺たちよりも遅く帰ってくるのだろう。
それは少し寂しいなと思った。
そしてまた春が来た。
何年たっても変わらない春が。
高校の入学式には目新しさはなかった。
これから、10年目の学校生活が始まる。
後3年、変わることのない面白みのない日常が。
長時間椅子に座らされて、校長先生の話やら来賓の話やら、保護者の話なんてものを長々と聞かされる。
泣いてる人なんて、保護者を含めても一人もいない。
そんなものだと思っていた。
むしろ、小学校の入学式の方が、不安で泣いている子がいたんじゃないかとすら思う。
小学校と変わらないメンバーで中学校に上がり、変わらない日々を過ごした。
中学校の入学式は、卒業式同様、つまらないものだった。
クラスのメンバーに目新しさはなかった。
変わったことがあるとすれば、教師と校舎くらい。
その教師と校舎も、地域交流という名目で何度も訪れていた場所だから見慣れたものだった。
そもそもここはド田舎だ。地元の人間なんてだいたい顔見知りである。
1年ぶりに同じ校舎で学ぶ先輩達、それくらいしか新しい刺激はなかった。
そして、変わらぬ日常は過ぎていき、俺たちは中学校を卒業することとなった。
小学校の卒業式と同じメンバーで行われる中学校の卒業式。
当時、来賓として来ていた中学校の先生たちが、司会側にいて、当時司会側にいた小学校の先生たちが、来賓側にいる。それだけの違い。
卒業式に来る地方議員も、市長の代わりに出席する代理の人すら変わらない。
心情的に違いがあるとするならば、小学校の時よりは我慢強くなっていることぐらい。
それによって、長時間の着席が少しだけ苦にならなくなっていた。
ただ、今回の卒業式と小学校の卒業式には明確な違いが一つだけあった。
それは、卒業後の進路だ。
小学校から中学校の進路は、全員が同じ中学校に進学した。
しかし、中学校から高校は違う。
半数ずつ違う高校に進学する。
いわゆる進学校と、そうではない学校だ。
だいたい成績順に、上半分のやつは、2駅先のうちよりはだいぶ栄えてる町に行く。
だから今回の卒業式では、泣く人がちらほらいた。
ただ、俺は泣かなかった。
いつも一緒にいるような奴は、だいたい同じ進路だし、これからの日常もそう変わらないだろう。そんな思いからか、涙は、一筋も流れなかった。
卒業式中に思っていたことは、また少し長めの春休みが来るなぁ、と座ったり立ったりが多くて面倒くさいなぁ、だった。
2駅先の進学校に行くやつとは、生活のリズムが変わるからあまり会えなくなるだろうと思った。
朝は、電車に乗るために俺たちよりは早く家を出るだろうし、帰りは俺たちよりも遅く帰ってくるのだろう。
それは少し寂しいなと思った。
そしてまた春が来た。
何年たっても変わらない春が。
高校の入学式には目新しさはなかった。
これから、10年目の学校生活が始まる。
後3年、変わることのない面白みのない日常が。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる