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世界創世記~数多の物語の末、今がある~【読み切り版】(未完)

逆転の加護?絶望の加護? 国を統べる少年の物語編

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家の前まで帰ってきて、ふと思った。

そういえばあのおっちゃんの名前なんだっけ?

あれ?俺、あのおっちゃんと5年くらい関わってたけど名前聞いたことねえわ。

まいっか、過ぎたことは。

それより眼の前の加護の儀だな。

玄関のドアをあけ、あいつを大きな声で呼んだ。

「ソリュ~。ソリュ~」

すると部屋の奥から、男にしては少し高い声が返ってきた。

「何?レーヴ」

ひょっこりと顔を出す、ソリュ・プリエール。

こいつは俺の幼馴染だ。

そして、小さい頃から一緒にこのスラムを生き抜いてきた悪友だ。

こいつは、運動能力は低いんだが、やけに運がいい。

こいつが、大金の入ったバックを拾ってきたことが、今まで何度もあった。

こいつの誕生日も今日だから、一緒にギルドに行く約束をしていた。

「そろそろギルドに行く時間だろ?用意はできてるのか?」

俺がそう言うと、ソリュは頬を膨らまして、不満を表すようにして応えた。

「もちろん出来てるよ。それにしても僕たちの大事な日にこんな時間までどこに行ってたの?帰ってくるのが遅いからもうひとりで行こうとしてたんだよ」

ポカポカと俺の胸を叩くソリュ。

ソリュは待っていてくれたのか。

それは申し訳ない。

せめて理由を告げていけばよかったな。

「すまん。ちょっと、今日の儀式の後に、記念で豪華なものをソリュと一緒に食べようと思って、悪者を一狩りしてたんだ」

それを聞くとソリュは、ぱあっと表情を明るくさせ、えへへっと表情を緩ませ、幸せそうに言った。

「それなら仕方ないな。もう、そんな事するならひと声かけてくれればよかったのに。あ、今、靴を履くからちょっと待ってね」

ソリュやけに上機嫌だな。

もしかして、加護の儀で浮かれてるのかな?

そんな事を考えていると癖で手を顎にやっていた。

すると、ジャラッと服から音がした。

あ、そういえばさっき、おっちゃんから報酬もらってきたんだった。

「ちょっと待て、ソリュ。これをちょっと金庫に入れといてくれるか?」

今日、どこかに食べに行けるように銀貨一枚を抜くと、残りを渡した。

「わかった。ちょっと待っててね」

ソリュは受け取ると、少し駆け足で部屋の中に戻っていった。

しばらく待っていると、部屋からスキップで鼻歌を歌いながら来るソリュ。

玄関まで来て、靴を履きだす。

それを確認すると、

「じゃあ行くか。ギルドの奴らは時間にうるさいからな。位置秒でも遅刻するとぐちぐち言ってくるだろう」

俺は玄関のドアをあけ、冒険者ギルドに向かっていく。

「ちょっと待ってよ。まだ靴履けてないんだけど~」

後ろから聞こえるソリュの声を気にする暇など、俺にはなかった。

しばらくするとあわてて走ってきたソリュが追いついてきた。

それから二人で冒険者ギルドまで向かった。




冒険者ギルドはでかい。

冒険者ギルドを目の前にして、改めて思った。

領主の兵たちが居る兵舎の1.5倍ぐらいでかい。

そもそも組織の規模が違うから仕方ない。

冒険者ギルドというのはこのピオネール王国全土の冒険者を束ねる組織だ。

個々にあるのはその支部に過ぎない。

それが高々、一領を守るぐらいの領主軍などでは組織の格も規模も違うのだ。

緊張しながら、うちの家ぐらいあるんじゃないかというほどでかい冒険者ギルドのドアを開ける。

隣にいるソリュの手が少し震えているように見えた。

こいつも緊張しているんだな。

そう思うと少し緊張感が解けた。

ドアが完全に開ききると、奥のカウンターに居る女性が挨拶をしてきた。

「冒険者ギルドゲーネン支部へようこそ。要件がある場合、こちらのカウンターまでお越しください」

受付の女性は何千回と言ってきたであろう、言い慣れているセリフで俺たち二人を出迎えた。

俺たちは二人揃って、カウンターへ向かう。

カウンターには幸いに、一人もおらず、スムーズに受付をすることができた。

「ご要件は何でしょうか?」

機械的に女性が聞いてくる。

「加護の儀を行うと、呼び出されました」

ソリュは人見知りなので俺が代表して言った。

「今日の予約は…レーヴ・リベルテ様とソリュ・プリエール様ですね。加護執行人が奥の部屋でお待ちです。10番の会議室にお入りくださいこちらで案内いたしますので付いてきてください」

大きな本のような名簿を出し、女性は言った。

女性はカウンターから出ると、俺たちの前に来て、多く部屋のある方に進んでいった。

女性の指示に従って、女性の後ろを追う。

女性がノックをして、ドアを開ける。女性の後に続いて、10番の会議室に入る。

中には、全身を黒の服に身を包んだ人が一人で座っていた。

「執行官様。強化後の儀を執り行う予定の二人を連れてきました」

すると執行官だという人は、机の上においてあった杖を手に取り、何かをブツブツと唱え始めた。

俺とソリュの周りがかすかに光った。

光が収まると、執行官は紙に何かを書き出した。焦っているのか、すごいスピードで書いていく。

書き終えた紙を、こちらに無言で突き出してきた。

その紙の内容を見て顔を青くした。

ソリュの方を見てみると同じように顔を青くしていた。

真っ青な顔で見つめ合う。

あぁ、どうしよう。

こんな結果じゃあ、領主様のところに就職して安定した生活を送るという、一発逆転なんてできやしない。

こんな結果でなれるのなんて、せいぜい冒険者ぐらいだろう。

それも、底辺の。

あぁ、どうしよう。

段々とパニックになっていく。

落ち着けるために深呼吸をした。

よし。ちょっと落ち着いたかな?

まぁ、結果は変えることができないんだし仕方ないか。

よし、いっちょ冒険者になってみるか。

パニックになったときに、加護の鑑定書が落ちてしまったらしい。

落ちてしまった鑑定書を丁寧に拾い上げる。

その鑑定書にはこう書かれていた。



『民を率いる能力』


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