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世界創世記~数多の物語の末、今がある~【読み切り版】(未完)

世界の始まり

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 神は突然現れた。

 もとからそこに、ずっといたかのような違和感の無さで、そこに立っていた。

 神は、少し考えると、神は、集中する。

 神は、緊張の糸が張り詰め、もとから音など存在しないのに、初めて静寂が訪れたように感じた時、世界という概念を作った。そこには途方も無いほどのエネルギーの放出と、それを緻密にコントロールする技術があった。

「ふぅー」

と、一息ついた。緊張から開放されて、少し足が震えている。

 震えが収まったあと、片手間で宇宙を作った。

 次に、瞬きの合間に銀河を一つ作成した。

 宇宙ができて一秒もしない頃には、複数の銀河ができていた。

 そこで少し休憩をした。何年の間休んでいたかわからないが、星が寿命を迎える程度の期間休憩をした。




 そして再びその重すぎる腰を上げた。

 神は、生物の成長を見てみたいという好奇心にかられていた。

 神は、生まれてきたときから最強であった。だから神は、成長を知らない。上限で生まれてしまったために停滞しか知らないのだ。

 神は、適当に生命を宿す星を決めた。

 神は、生物の成長には土地と水が必要だという知識を持っていた。 

 その星にまず大小様々な山々を作った。台地をイメージして山々を作ったが、神の力が大きすぎたため、地形一つ一つ程度の細かすぎるコントロールができなかった。そのため、その星には、底の見えない穴や、天に届くと思えるほどの山など、様々な地形が見られるようになった。

 神は水を与えるために雲を作り雨を降らせた。ここでも力加減を間違えてしまったため、標高の高いところから濁流として流れた水が、地面を削り、川ができた。更にその水は山々の間にたまり海ができた。低い山々を次々と海が飲み込んでいく。そして、一番標高の高かった台地と、一部の山の山頂だけが、陸地となった。約一年、嵐のような雨が降り続いた。

 生物が生きていける環境ができたと思った神は、まず、魚、獣、植物、の三種類の生物を作った。

 魚には、海で生活できる能力と、子孫の繁栄能力を与えた。

 獣には、嗅覚と、環境適応能力を与えた。

 植物には、移動能力がないかわりに、どの種よりも多くの子孫を残せる能力と、環境への適応能力を与えた。

 更に生物を作ろうとした神は、神の力の残滓がこの星に溜まっていることに気がついた。

 そして、その神の力の残滓に『魔力』という名前を与えたあと、生物が活用しやすいように、出力を抑え、コントロールしやすいという性質を変えた。

 気を取り直して生物を作る神。続いて、先程の三種より、知能を上げ、魔力に適合できるようにした、人族、魔族、の二種を作った。

 人族には更に、成長能力と、子孫繁栄応力を少し与えた。

 魔族には更に、力と、環境適応能力を少し与えた。





 それから、神は少しの間地上で暮らした。

 魔族と人族が手を取り合い、共に成長していく素晴らしい理想郷の村ができた。

 神は、家を作る手伝いをした。そこで、釘を打てば、クレーターができた。そのクレーターは、村人たちによって少しずつ埋められていった。

 神は、畑を耕すと聞き手伝いに行った。そこで鍬を持てば、地面に穴が空き、水が溢れてきた。その穴は、村人たちによって井戸になった。

 握手をしたら相手の骨を折ってしまったこともあった。

 神が、現実離れしたことをしても、地上のみんなは、笑い話に変えて、笑って許してくれた。

 神は、初めて優しさに触れた。

 今まで一人でいたときには、感じられなかった感情に戸惑いを感じていたが、だんだんと慣れていった。次第に神は、みんなの役に立ちたい、恩返しをしたい、というような思いが出てきた。

 そこから神は、自分にできることを考えた。

 自分が内面的に変化していくことを感じた。

 神は、彼らに知恵を授けることにした。

 神は、学校のようなものを始めた。

 知能を授けたとはいえ、神と人や魔族では、頭の出来に途方も無いくらいに差ができていた。神と村人では、物事を理解するスピードが異なっているのだ。

 その事に気づかなかった神は、なぜ伝わらないのか、とモヤモヤした。

 そこから、時間をかけて、色々なことを模索しながら、創意工夫を凝らして、伝えた。やっとまともな授業になってきた時、神は、初めての苦労と、それを終えた達成感にやみつきなっていった。

 神は、誰かに物を教える楽しさに目覚めていった。

 教え子が活躍したときの喜びや、段々と成長していく様子をあたたかく見守る楽しさ、そして何より、教えたことに対して感謝の言葉を言ってくれることが嬉しかった。

 ただ、そんな楽しい日々も、すぐに終わりを告げた。




 廊下の曲がり角から走ってきた子供を抱きとめたときに誤って力を入れてしまい、その子を潰してしまったのだ。その子はすぐに死者蘇生をして生き返ったのだが、その子が神に向けたのは、化け物を見るかのような怯えた視線だった。

 神は、その視線に耐えられなかった。

 神は、また同じようなことをやってしまうのではないかと思い、地上から離れることを決意した。

 神は、世界を作った時と同じくらい集中し、神域を作った。そこにこもりながらこの世界の発展を眺めることにした。

 別れの宴では、一度殺してしまった子供の親族など一部の奴からは、距離を取られてしまったが、大勢が別れを惜しんでくれた。





 神は、神域にこもってから孤独を感じていた。

 誰かと話したい、誰かに感謝されたい、誰かと笑い合いたいという気持ちが溢れていった。だけれど、また殺してしまうのが、壊してしまうのが、怯えられるのが、怖い。

 葛藤の末に、神は結論を出した。

 そこで、自分が軽く力を入れても壊れないくらいの生物を作ろうと決めた。

 神は、神たちを作っていった。神は自らの名称を『神』から『主神』へと変更した。

 主神は、神たちには一柱ごとに役割と名前を与えていった。

 神たちの力を全て合わせても主神には叶わない程度の力だったが、主神の普段の行動では、死ぬことはなかった。

 地上を眺めるために、主神は、精霊という新しい種を作った。

 精霊は、気に入った人間に力を貸すこと、世界中を眺め、その景色を神域と共有することを条件に、魔法適性と、身体を必要なときに魔力で作るスキルを与えられた。

 主神は、神たちとともに楽しく地上を眺めた。主神はまた、あの幸せな日常を手に入れたのだ。

 



 段々と地上の魔力が一部の地域に集まってきてしまっていた。その魔力の濃いところに魔族が、住み着いていった。そして段々と、魔族と人族で争いが生まれ、戦争へと変わっていった。魔力が有り余っている魔族側が人族を狩りつくそうと勢いづいていた。

 それを察知した主神は、世界樹を設置して、世界の魔力の濃さを一定に保った。

 それとともに、成長が滞ってきたため、主神はすべての種にステータスとレベル、スキルを与えた。

 そこからまた飛躍的に文明が成長していった。今まで村の規模だったものが、街になり、様々な街が協力して国を作るようになった。

 主審のちからの大盤振る舞いによって、地上に魔力が溜まりすぎていることに主神は、気づいた。魔力が一定量以上あると、力を使うと魔力に引火して魔力が暴走し、銀河一つ吹き飛ばすほどの爆発が起こる可能性が出てきてしまうのだ。

 それからは、主神が直接地上に関与することはなくなった。その代わりに神たちが加護などで、地上の勢力図と成長を調整していった。

 神達は、主神と比べてあまり大きい力は持っていないので魔力を発生させずに力を使うことができた。だが、あまり人間に興味を持っていなかったので、必要最低限を事務的に仕事としてこなしていった。


 このようにしてこの世界は、始まっていった。

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