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桜のように散った私たち【読み切り版】【俺Ver.】(未完)

卒業に向けて、浮き足立って...

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「お前らは、明日卒業する。明日を笑顔で逢えるために先生から一つ伝えたいことがある。・・・」

先公の話は相変わらずつまんねえ。

それより、明日でもう卒業か。春休みが楽しみだぜ。そもそもろくに学校来てなかったけどよ。そもそも学校がない方が幸太郎とも遊べるし、よりのびのびできる気がするな。

春休み何やっか?

春だろ…花見とかするか。幸太郎と花見てるだけでも面白そうだしな。うまいもん食いながらなら、楽しいに決まってる。

まず、とりあえず打ち上げしねえとな。カラオケか、ボーリングか、ゲーセンか。幸太郎が受験で忙しかったから、半年ぐらい二人で行ってねえな。ゲーセンは無いか。やっぱり、席があるゆっくり遊べるとこじゃねえと、打ち上げ感出ねえか。ボーリングだと俺の圧勝になっちまうからカラオケか。カラオケか…声出っかな?一人じゃいかねえからマジで半年ぶりなんだが。

まあ、食べに行くでもいいんだけどよ、俺も幸太郎も、あんまり食べ物にこだわりも興味もねえから、あんまし楽しめそうじゃねえんだ。

やっぱりカラオケか。

パンッ

怒られっかと思って顔をあげると、先公が名簿を教卓に叩きつけたらしい。

隣を見ると、俺より一瞬遅く反応した幸太郎が、肩をビクッとさせてるところが見えた。

やっぱ、こいつのリアクションはおもしれえな。

先公の方に視線を戻すと、先公は別に怒ってるわけじゃなく、今にも泣きそうな顔をしていた。

えっ、泣くの早くね?何の話ししてたらそんな感じになんの?

くそっ、面白そうだったなら、ちゃんと聞いときゃよかった。

後悔をしていると、先公の話が締めに入った。

「・・・お前らの一生の思い出になる卒業式にするために今日はくれぐれも事故を起こさないように。全員で、笑顔で卒業式を逢えるぞ。終わりだ。日直、挨拶」

過去に卒業式の前日になんかあったんかってぐらい念を押してくる先公。

日直は少し間をとると挨拶をした。

「起立。気をつけ。さようなら」

日直の挨拶に合わせて適当に礼をする。

先公が教室から出ていくと、教室が一気に騒がしくなった。

黙々と自分の咳で帰り支度をしていると、幸太郎が話しかけてきた。

「ねえ、薫。この後空いてる?」

「どうした?久しぶりにゲーセンでも行くか?」

さっき考えていたことが幸太郎に伝わったのかと思い、興奮して思わず思いっきり幸太郎の方に振り返ってしまった。

このままじゃ面白くないなと思い手を適当にピストルの形にでもして、シューティングゲームのジェスチャーをしてみせた。

振り向くと、やけに真剣な顔をした幸太郎がいた。

あっ、これ違ったな。

「ゲーセンには行きたいけど違うよ。ちょっと、薫に相談があるんだ」

相談か。前回はクリスマスだったっけ?いや、バレンタインにチョコもらって、そのお返しを何にするかで相談されたんだ。今度は何の相談なんだろう。

「じゃあ、いつもの公園に行くか。ゲーセンは、また今度な」

ドサクサに紛れてゲーセンの約束ゲット。今日の俺の口は冴えているかもしれない。

幸太郎が席を立つのにあわせて席を立つ。

教室の扉の方へ体を向けると、すっと道が空いた。いつも通り、俺が通ろうとすると、みんなビビってんのか、すぐに場所を開ける。

通りやすいからいいんだけど、俺ってそんな怖い顔してたっけ?今めちゃくちゃ上機嫌なのに。入学したときからずっと、同じようなことを繰り返しているので、今更特に思うところはないけど。

そそくさと、できた道を通り教室から出た。

いつも通り、幸太郎は肩をすぼめ目立たないように努力していた。

やっぱり幸太郎の反応は面白いな。




いつも通りの通学路。校門から少し出たところで、幸太郎が話しかけてきた。

「明日でもう卒業だね」

「中学校あっという間だったな」

行事楽しかったな。体育祭とか、修学旅行とか、ハイキングとか。

まぁほとんど、幸太郎と話してたことしか覚えてねえけど。

授業は、何もよく覚えてねえわ。

「それは薫が授業に出ずにサボってたからだよ」

「まあ、半分くらいしか聞いた覚えがねえわ」

まぁ、半分は聞いたけど、全く覚えてねえ。

中学校の授業とか小難しいんだよ。先公も教えるの下手で眠くなるし。

「高校ではちゃんと授業受けるんだよ?」

流石に幸太郎言われても、できねえもんは、できるようにならねえと思うんだけどな。

「わかった、分かったって。でも、高校行ったら幸太郎と離れ離れになるのか」

「まあでも、高校に入ったからって急に縁を切るわけじゃないし、スマホですぐにやり取りもできるし、そもそも、学校は隣町だけど、住む場所は別に変えないけどね」

やけにスラスラと返事をしたことに驚く。

幸太郎はいつも、考えすぎってぐらい考えてから返事をするからな。

幸太郎がスラスラ出てくるのは、推しのバンドの曲の考察と、癒月のことぐらいだと思ってた。

「じゃあ、大して今と変わんねえんだな。で、卒業したらどうするよ?」

先公の話の間ずっと考えてたことを幸太郎に聞いた。

幸太郎なら俺が考えたやつより、もっと面白いことを思いつくだろ。

いつも、突拍子もない事思いつくからな、幸太郎は。

「小旅行でも行こうよ」

やっぱ幸太郎はおもしれえ。俺が考えてたこととスケールが違うぜ。

けど、まずは打ち上げの話をしてぇな。流石に打ち上げに小旅行はやりすぎだな。今日行って明日できるようなもんでもないだろ。

「いいけど、まずは打ち上げな」

「じゃあ、明日二人でカラオケでも行く?」

やっぱ打ち上げと言ったらカラオケだよな。やっぱり、俺と幸太郎は以心伝心だな。

嬉しくなって上機嫌に返事をする。

「そうすっか」

「クラスで打ち上げでもするのかな?」

「あったとしても行かねえだろ。俺が行ったところで、怖がられて迷惑かけるだけだろうしな」

やっぱクラスのやつらは、いけすかねえ。俺には顔と噂だけでビビって話しかけねえくせに、小旺太郎には雑用とか頼みやがる。幸太郎も幸太郎だ。優しすぎて何もかも引き受けっから、俺と遊ぶ時間が少なくなっちまっただろ。

そんな奴らと遊んでも楽しくなさそうだからパスだな。どうせ行ったって迷惑がられて、煙たがられるだけだし、行くだけ損だな。パスだパス。

「そんな、薫怖くないのになぁ。怖いのは、顔だけなのに。まぁ、薫がいなかったら話す相手いないから、あったところで、僕も行かないかな」

幸太郎は、悲しそうな顔をする。想像の話で、しかも人が怖がられるところを想像して悲しそうな顔をするとか、やっぱ幸太郎は優しすぎるぜ。


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