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桜のように散った私たち【読み切り版】【僕Ver.】(未完)
親友に相談、大きな決断
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公園にたどり着き、いつも使っている屋根の付いたベンチに座る。
一呼吸おいて、気合を入れると、早速話題を切り出した。
「早速、相談なんだけど」
もう一度間をとる。これが最後の相談だ、と噛み締めながら再び口を開いた。
「明日、癒月に告白しようと思うんだ」
『やっぱりか』というような顔をする薫。この顔で、察しがいいんだから、ずるいよなぁ。
「おう。それはまた、だいぶ急だな」
「僕だけ、高校が君たちと違うじゃん。離れる前にちゃんと気持ちを伝えて、この気持ちにきちんとけりをつけようと思うんだ」
「でもよ、さっき幸太郎が言ってたように別に引っ越すわけでもないんだし今に拘る必要は、ないんじゃね」
幸太郎が、なにか見定めるような目をこちらに向けてくる。
何か薫の琴線に触れてしまったのかと焦りながらも、自分の気持ちを素直に伝えた。
「きっかけは離れることだよ。でも、告白しようと思って、改めて癒月のことを真剣に考えてみたんだ。そしたら、この気持ちを癒月に伝えたいって気持ちが段々と大きくなって、今なら優柔不断な僕でも告白できるんじゃないかと思ったんだ」
「幸太郎にしては、随分と思い切りの良いことを考えたな。よし、じゃあ全面的に手伝ってやるよ。相談だな、どんと来い。」
そう言うと、こちらに手を差し伸べてきた。その手を取ると、薫は今までで一番の力で俺の手を握り、俺と固い握手をした。
何回か癒月のことを相談しているけれど、こんな展開になったのは初めてだ。
驚いていると、しみじみとした顔で薫が話し始めた。
「まあそれにしても、お前がアイツのことを好きになってもう三年近くも経つのか」
薫の間を壊さないように気をつけながら返事をする。
「中学入学直後からだから、もうほとんど三年になるね」
「改めて聞くけど、あいつのどこが好きなんだ?俺には恋愛とかよくわかんねえからさ、もう一度教えてくれよ」
急にこっちにターンが回ってきた。
癒月の好きなところは、真剣に癒月について考えたときに言語化してたから、スラスラと出てきた。
「癒月はね、僕に優しく声をかけてくれるんだ。薫が休んだ日とかに、一人でいる僕に話しかけてくれたことがきっかけなんだ。それとね、僕の知る限り唯一薫のネガティブなことを言わないんだ。癒月ってすごく優しくて思いやりがあるんだよ」
少し重いかなぁ?と思いつつも、素直な気持ちを薫にぶつけた。
「めちゃくちゃ好きなんだな。聞いてるだけで伝わってきたわ。癒月の話をしているときの幸太郎って幸せそうだよな」
しみじみとした表情が、笑顔に変わり、小っ恥ずかしいことを言ってきた。
真剣な目でそんな事を言ってきたものだから、あてられて小っ恥ずかしいセリフを吐いてしまった。
「うん、大好き。癒月にはずっと幸せでいてほしいんだ。笑顔がすごく似合うからね」
顔から熱が吹き出す。多分今の僕の顔は、真っ赤になっているだろう。
それを聞いて、甘味を感じすぎて苦しくなったかのような表情を浮かべて、薫が、止めるように手を前に出して言った。
「おう、わかった、わかった。で、相談ってのは何なんだ?今のところ決意と惚気しか聞いてないんだが」
話が、本題から少しズレてしまったことに気がついた。
もう一度気合を入れ直して、まっすぐ薫の目を見て言う。
「えっ…えっとね。僕、どうやって告白すればいいのか分からないから、一緒に考えてくれない?」
「おっしゃあ、まかせとけ。幸太郎のために、最高の告白を考えてやるよ」
心強い彼の言葉に心の底から安心する。
薫がいれば、失敗なんてないだろうと。
「さすが薫。やっぱり頼りになるなぁ」
「まあ、俺、告白とかしたことねえけどな。幸太郎から貸してもらった漫画とかでの情報しかねぇわ」
一抹の不安を覚えたが、薫ならどうにかしてくれるだろう、という漠然とした信頼が、不安をかき消していった。
「僕もそれくらいしかないし、一緒に考えよう」
1つ目の相談内容を事前に書いてきたメモを見てから切り出す。
「まず、告白ってどこですればいいのかな?人目に付くところとか絶対に嫌だよ」
「んー…無難なのは、校舎裏とかじゃね?ラブコメとかだいたいそこで告白してた気がすっぞ」
「うちの学校の校舎裏って人来るかな?」
「前に授業サボるのに使ってたけど、人を見かけたことなかったぞ」
「じゃあ、校舎裏にしようかな」
恋愛経験がないとは思えないほど的を射たような発言に少し驚く。決してもの知りなわけでも、思慮深いわけでもないのに、ほしかった答えをとんと軽く突いてくる。
「じゃあ次に、どうやって校舎裏に呼び出せばいいと思う?直接言うのは、無理だよ。緊張に緊張が重なって心臓潰れちゃう」
「じゃあ、俺が呼んできてこようか?」
たまに試すような発言をするので肝が冷える。こんなことで頼ってしまったら、薫の機嫌がダダ下がる未来しか見えない。
「でもそれじゃ、僕の告白っぽくなくならない?やっぱり一連の流れって、自分でやったほうがいいと思うんだよね」
「幸太郎の割に男らしいこと言うじゃねえか」
バシバシと薫が背中を叩いてくる。
薫、上機嫌だなぁ。
「『幸太郎の割に』は余計だよ」
「じゃあ、手紙なんてどうだ?」
手紙という案も考えたけど、どうやって渡すのかが全く思いつかなくてボツにしたなぁ。直接渡すとか、ほぼ告ってるみたいなもんじゃん。
素直な疑問をぶつけてみる。
「どうやって渡すの?」
「靴箱にでも入れとけばいいって。ちゃんと時間を指定すれば、来なくても待ちぼうけなくてもいいしな」
「確かに。今日の薫なんか冴えてない?」
いつもは、7割位は的はずれなことを言ってるけれど、今日は全部が全部ど真ん中を突いてくるように感じる。
「お前のために、それくらい真剣に考えてやってるんだよ」
「ありがとう。告白の言葉って、なんて言えばいいと思う?長い言葉とかだったら、絶対に噛む自信があるよ」
メモに書いてあった3つのことのうち、最後の一つも相談できた。正直こんなスムーズに相談が進むと思わなかった。
「男なら短く簡潔に『好きです。付き合ってください』だろ。長ったらしく言うよりも何倍もいいと俺は思うぞ」
「確かにそうだね。いつも、うじうじしてる僕が更に長ったらしく告白なんてしたら、逆効果だよね。」
「あ、そうだ。俺の助言をそのまんま全部やるなよ。それだったらお前の告白じゃなくなっちまうからな」
意外な一言が飛んできた。正直、俺が言ったようにやれ、アドリブとか入れるなって言われるのかと思ってた。
「薫の意見を参考にして、自分なりにもう一回考えてみるよ」
告白への解像度が上がってきて、想像ができるようになってしまったから、段々と緊張してきた。
「僕の告白って成功するのかな?今から不安になってきたよ。だんだんドキドキしてきたかも…」
メモになかったことまで相談することになった。
「ドンッと構えとけ。成功しても失敗しても俺がいる。成功したら誰よりも祝ってやるし、失敗したら一緒に泣いてやる。告白はゴールじゃねえんだ。ドンと胸張っていけ」
正直涙が出るかと思った。こんなに男らしくて、頼りになる人、他にいないだろ。正直、癒月に惚れてなかったら、惚れてたかもしれないくらいかっこよかった。
「ありがとう薫。緊張とか不安とかがスッと消えていったよ。」
スマホの通知がなる。
親からの『そろそろ塾じゃない?あんた今どこにいるの?』というメッセージが目に入った。
興奮で火照っていた顔が、スッと熱が抜け、少し青ざめていることがわかる。
そういえば今日、塾の日だった。最終日なんだよなぁ。
「ごめん、そろそろ塾なんだ。明日頑張ってくるね」
少し駆け足で家へと向かっていく。
「おう、頑張ってこいよ」
その声は、何よりも頼もしかった。
浮足立って家に帰り、軽く母から怒られたあと、夕食を食べた。
食休みをはさみ、満腹感からくる眠気と興奮でよくわからないテンションの中、塾へと向かった。
塾長がなにか涙ぐみながら話しているが、全く頭に入ってこなかった。
頭の中は明日の告白でいっぱいだった。
それから塾の送別会を終えると、再び帰宅した。
いつもはルールに厳しい母も、明日の卒業式をまを待ち遠しく思っているのか、あまりグチグチと言ってくることがなかった。
強いて言うなら、「早く寝なさいよ。明日寝坊したら承知しないから。」とソワソワしながら上機嫌に言っていたことぐらいだろうか。
風呂から上がり、自分の部屋へと入る。
足早に机の前に座り、いつ買ったかわからない嫌いだけれど少し古い便箋を開けた。
筆を執り一息つくと、筆を置いた。
これを何度か繰り返し、ウンウンとうねる。
どうしよう!癒月を呼び出す手紙の書き方がわからない!!
こんなことなら、ちゃんと薫にどうやって書けばいいのか聞いてくればよかった。
なんて書き出しで始まろう?
拝啓、癒月様?親愛なる癒月様?
なんか硬すぎる気がする。
じゃあどうしよう。
よう、癒月?なあ、癒月?
なんかフランクすぎかも。
『癒月へ』これでいっか。
2時間にも及ぶ格闘の末なんとか手紙を書き上げることができた。
癒月へ
伝えたいことがあるので、11時半に校舎裏に来てください。
待っています。
神崎幸太郎より
この四行を考えるのに2時間も掛かってしまったことが情けなく感じる。
僕はどんだけ優柔不断なんだろう。
興奮と自己嫌悪でなかなか寝ることができなかったけれど、疲れからか日付が変わり少しした頃には寝ることができた。
一呼吸おいて、気合を入れると、早速話題を切り出した。
「早速、相談なんだけど」
もう一度間をとる。これが最後の相談だ、と噛み締めながら再び口を開いた。
「明日、癒月に告白しようと思うんだ」
『やっぱりか』というような顔をする薫。この顔で、察しがいいんだから、ずるいよなぁ。
「おう。それはまた、だいぶ急だな」
「僕だけ、高校が君たちと違うじゃん。離れる前にちゃんと気持ちを伝えて、この気持ちにきちんとけりをつけようと思うんだ」
「でもよ、さっき幸太郎が言ってたように別に引っ越すわけでもないんだし今に拘る必要は、ないんじゃね」
幸太郎が、なにか見定めるような目をこちらに向けてくる。
何か薫の琴線に触れてしまったのかと焦りながらも、自分の気持ちを素直に伝えた。
「きっかけは離れることだよ。でも、告白しようと思って、改めて癒月のことを真剣に考えてみたんだ。そしたら、この気持ちを癒月に伝えたいって気持ちが段々と大きくなって、今なら優柔不断な僕でも告白できるんじゃないかと思ったんだ」
「幸太郎にしては、随分と思い切りの良いことを考えたな。よし、じゃあ全面的に手伝ってやるよ。相談だな、どんと来い。」
そう言うと、こちらに手を差し伸べてきた。その手を取ると、薫は今までで一番の力で俺の手を握り、俺と固い握手をした。
何回か癒月のことを相談しているけれど、こんな展開になったのは初めてだ。
驚いていると、しみじみとした顔で薫が話し始めた。
「まあそれにしても、お前がアイツのことを好きになってもう三年近くも経つのか」
薫の間を壊さないように気をつけながら返事をする。
「中学入学直後からだから、もうほとんど三年になるね」
「改めて聞くけど、あいつのどこが好きなんだ?俺には恋愛とかよくわかんねえからさ、もう一度教えてくれよ」
急にこっちにターンが回ってきた。
癒月の好きなところは、真剣に癒月について考えたときに言語化してたから、スラスラと出てきた。
「癒月はね、僕に優しく声をかけてくれるんだ。薫が休んだ日とかに、一人でいる僕に話しかけてくれたことがきっかけなんだ。それとね、僕の知る限り唯一薫のネガティブなことを言わないんだ。癒月ってすごく優しくて思いやりがあるんだよ」
少し重いかなぁ?と思いつつも、素直な気持ちを薫にぶつけた。
「めちゃくちゃ好きなんだな。聞いてるだけで伝わってきたわ。癒月の話をしているときの幸太郎って幸せそうだよな」
しみじみとした表情が、笑顔に変わり、小っ恥ずかしいことを言ってきた。
真剣な目でそんな事を言ってきたものだから、あてられて小っ恥ずかしいセリフを吐いてしまった。
「うん、大好き。癒月にはずっと幸せでいてほしいんだ。笑顔がすごく似合うからね」
顔から熱が吹き出す。多分今の僕の顔は、真っ赤になっているだろう。
それを聞いて、甘味を感じすぎて苦しくなったかのような表情を浮かべて、薫が、止めるように手を前に出して言った。
「おう、わかった、わかった。で、相談ってのは何なんだ?今のところ決意と惚気しか聞いてないんだが」
話が、本題から少しズレてしまったことに気がついた。
もう一度気合を入れ直して、まっすぐ薫の目を見て言う。
「えっ…えっとね。僕、どうやって告白すればいいのか分からないから、一緒に考えてくれない?」
「おっしゃあ、まかせとけ。幸太郎のために、最高の告白を考えてやるよ」
心強い彼の言葉に心の底から安心する。
薫がいれば、失敗なんてないだろうと。
「さすが薫。やっぱり頼りになるなぁ」
「まあ、俺、告白とかしたことねえけどな。幸太郎から貸してもらった漫画とかでの情報しかねぇわ」
一抹の不安を覚えたが、薫ならどうにかしてくれるだろう、という漠然とした信頼が、不安をかき消していった。
「僕もそれくらいしかないし、一緒に考えよう」
1つ目の相談内容を事前に書いてきたメモを見てから切り出す。
「まず、告白ってどこですればいいのかな?人目に付くところとか絶対に嫌だよ」
「んー…無難なのは、校舎裏とかじゃね?ラブコメとかだいたいそこで告白してた気がすっぞ」
「うちの学校の校舎裏って人来るかな?」
「前に授業サボるのに使ってたけど、人を見かけたことなかったぞ」
「じゃあ、校舎裏にしようかな」
恋愛経験がないとは思えないほど的を射たような発言に少し驚く。決してもの知りなわけでも、思慮深いわけでもないのに、ほしかった答えをとんと軽く突いてくる。
「じゃあ次に、どうやって校舎裏に呼び出せばいいと思う?直接言うのは、無理だよ。緊張に緊張が重なって心臓潰れちゃう」
「じゃあ、俺が呼んできてこようか?」
たまに試すような発言をするので肝が冷える。こんなことで頼ってしまったら、薫の機嫌がダダ下がる未来しか見えない。
「でもそれじゃ、僕の告白っぽくなくならない?やっぱり一連の流れって、自分でやったほうがいいと思うんだよね」
「幸太郎の割に男らしいこと言うじゃねえか」
バシバシと薫が背中を叩いてくる。
薫、上機嫌だなぁ。
「『幸太郎の割に』は余計だよ」
「じゃあ、手紙なんてどうだ?」
手紙という案も考えたけど、どうやって渡すのかが全く思いつかなくてボツにしたなぁ。直接渡すとか、ほぼ告ってるみたいなもんじゃん。
素直な疑問をぶつけてみる。
「どうやって渡すの?」
「靴箱にでも入れとけばいいって。ちゃんと時間を指定すれば、来なくても待ちぼうけなくてもいいしな」
「確かに。今日の薫なんか冴えてない?」
いつもは、7割位は的はずれなことを言ってるけれど、今日は全部が全部ど真ん中を突いてくるように感じる。
「お前のために、それくらい真剣に考えてやってるんだよ」
「ありがとう。告白の言葉って、なんて言えばいいと思う?長い言葉とかだったら、絶対に噛む自信があるよ」
メモに書いてあった3つのことのうち、最後の一つも相談できた。正直こんなスムーズに相談が進むと思わなかった。
「男なら短く簡潔に『好きです。付き合ってください』だろ。長ったらしく言うよりも何倍もいいと俺は思うぞ」
「確かにそうだね。いつも、うじうじしてる僕が更に長ったらしく告白なんてしたら、逆効果だよね。」
「あ、そうだ。俺の助言をそのまんま全部やるなよ。それだったらお前の告白じゃなくなっちまうからな」
意外な一言が飛んできた。正直、俺が言ったようにやれ、アドリブとか入れるなって言われるのかと思ってた。
「薫の意見を参考にして、自分なりにもう一回考えてみるよ」
告白への解像度が上がってきて、想像ができるようになってしまったから、段々と緊張してきた。
「僕の告白って成功するのかな?今から不安になってきたよ。だんだんドキドキしてきたかも…」
メモになかったことまで相談することになった。
「ドンッと構えとけ。成功しても失敗しても俺がいる。成功したら誰よりも祝ってやるし、失敗したら一緒に泣いてやる。告白はゴールじゃねえんだ。ドンと胸張っていけ」
正直涙が出るかと思った。こんなに男らしくて、頼りになる人、他にいないだろ。正直、癒月に惚れてなかったら、惚れてたかもしれないくらいかっこよかった。
「ありがとう薫。緊張とか不安とかがスッと消えていったよ。」
スマホの通知がなる。
親からの『そろそろ塾じゃない?あんた今どこにいるの?』というメッセージが目に入った。
興奮で火照っていた顔が、スッと熱が抜け、少し青ざめていることがわかる。
そういえば今日、塾の日だった。最終日なんだよなぁ。
「ごめん、そろそろ塾なんだ。明日頑張ってくるね」
少し駆け足で家へと向かっていく。
「おう、頑張ってこいよ」
その声は、何よりも頼もしかった。
浮足立って家に帰り、軽く母から怒られたあと、夕食を食べた。
食休みをはさみ、満腹感からくる眠気と興奮でよくわからないテンションの中、塾へと向かった。
塾長がなにか涙ぐみながら話しているが、全く頭に入ってこなかった。
頭の中は明日の告白でいっぱいだった。
それから塾の送別会を終えると、再び帰宅した。
いつもはルールに厳しい母も、明日の卒業式をまを待ち遠しく思っているのか、あまりグチグチと言ってくることがなかった。
強いて言うなら、「早く寝なさいよ。明日寝坊したら承知しないから。」とソワソワしながら上機嫌に言っていたことぐらいだろうか。
風呂から上がり、自分の部屋へと入る。
足早に机の前に座り、いつ買ったかわからない嫌いだけれど少し古い便箋を開けた。
筆を執り一息つくと、筆を置いた。
これを何度か繰り返し、ウンウンとうねる。
どうしよう!癒月を呼び出す手紙の書き方がわからない!!
こんなことなら、ちゃんと薫にどうやって書けばいいのか聞いてくればよかった。
なんて書き出しで始まろう?
拝啓、癒月様?親愛なる癒月様?
なんか硬すぎる気がする。
じゃあどうしよう。
よう、癒月?なあ、癒月?
なんかフランクすぎかも。
『癒月へ』これでいっか。
2時間にも及ぶ格闘の末なんとか手紙を書き上げることができた。
癒月へ
伝えたいことがあるので、11時半に校舎裏に来てください。
待っています。
神崎幸太郎より
この四行を考えるのに2時間も掛かってしまったことが情けなく感じる。
僕はどんだけ優柔不断なんだろう。
興奮と自己嫌悪でなかなか寝ることができなかったけれど、疲れからか日付が変わり少しした頃には寝ることができた。
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