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総文字数記念
1万文字記念 1万円あるとしたら
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「妹よ、次の質問だ。1万円あったら何をする?」
今度は最初から、ソファから立ち上がり妹の正面に立って聞いてみた。
「なんで、毎回ちょっと間をあけて、聞いてくるの?お兄ちゃん。いっぺんに聞きなよ。会話下手なの?」
妹から強烈な煽りディスが返ってきた。
「質問が終わった時には、もうこの系統の質問をやめようと思うんだけど、気が付くとまた質問しちゃうんだよな。何でだろう?」
少し怖がるような演技をしながら妹のディスに対して、アンサーをした。
「そんな薬物の依存症みたいな雰囲気を出さないで。怖いから」
妹は、怖がってなさそうに答えた。
怖がってるというよりは軽蔑してるように見える。
「わかったわかった。元に戻すから。そんな目で見ないでくれよ。ゾクゾクしちゃうだろ」
今度は変態風の演技というボケをしてみた。
すると妹は、さっきよりも軽蔑の視線を送ってくる。
もはや汚物を見るような目を向けてきている。
どうやら俺は、地雷を踏みぬいたらしい。
妹は昔、公園で遊んでいるときに変態おじさんに絡まれたことがあった。
そのことが今でもトラウマなのか、変態の演技でごまかそうとすると、今のようにやりみたいに鋭い視線が飛んでくるんだった。
このいじり、最近してなかったからすっかり忘れてた。
悪いことしちまったな。
それにしても、無言の圧力って本当に怖いな。ちびるかと思った。
ボケ一つでこんなに心に来るとは思わなかった。
「ごめんごめん。本当に申し訳ない。だから、どうかその汚物を見るような目をするのをやめてくれないだろうか。そんな目で見られたら、病んじゃうよ」
恥もへったくれもなく、土下座をして見せた。
すると、頭の上に何やら生暖かいものがのせられた。
感触からして、たぶん足であろう。
妹のかわいらしい靴下越しの足を頭で感じた。
「…」
無言でやるのやめて。
怖いから。
せめて何かしゃべって。
無言の圧力に耐えられなくなっちゃう。
だらだらと滝のように汗が流れ出てきた。
何か逆に視界が開けて見えてきた。
これが悟り?
「2度目はないからね」
妹は、一言つぶやくと、俺の頭の上から足をどけた。
頭を上げるといつもの笑顔の妹がそこにいた。
怖いよ。逆に怖いよその笑顔が。
さっきまで、あんな人殺しそうな眼をしてたのに、急に切り替えるから、頭バグりそう。
テンションどうなってんの?
「1万円ですることだっけ?」
妹は、さっきまでのどすの利いた声はどこへやら、いつもの女子らしいトーンの声に戻っていた。
だから、怖いよその切り替え。
「そうそう、1万円あったら何するのかって話」
でも切り替えてくれてよかった。
これで変な流れを断ち切れる。
ていうか、開幕の俺の1ボケのせいで、断ち切る必要が出ちゃうんだよなぁ。
この話題の時に毎回地獄のような空気で始まるの、何なんだろう。
まぁでも、駄目だとわかっていてもボケたい時ってあるじゃん?仕方ないよね!!
毎度おなじみ妹の足プラプラタイムも終わり、ここからが本番だ。
「私はね、音ゲーの配信用の三脚を買うかな」
「三脚?カメラじゃなくて?」
何で三脚なんだろう?
カメラがないと使えなくない?うちには三脚につけられるようなカメラとかなかった気がするけど。
「お兄ちゃん、カメラは1万じゃ厳しいよ。それに、カメラで撮影しても、それで配信するのって難しいんだよ。スマホを三脚で固定して配信するのが、定番なんだよお兄ちゃん」
妹が、諭すように話し始めたかと思ったら、最終的にはなぜか自慢げというか誇らしげに語り終えた。
ゲーセン界隈ってそんな感じなんだぁ。知らなかったなぁ。
「音悪そうだな。雑音とか多そう」
「それに関してはねぇ……」
妹が何か呪文のように高速で何かを唱え始めた。
多分説明してくれているんだろうけど。
右耳から入ったものがすべて、脳を経由せずに左耳から出ていってしまう。
言葉を判別できても理解する前に抜けていってしまう。
恐ろしいオタクトーク。
「……分かった?お兄ちゃん」
妹の説明はどうやら終わったようだ。
「あ、あぁ、なんとなくわかったぞ妹よ」
なんとか聞いてないのが、正確には理解できなかったことが、バレないように返した。
我ながらうまく言えたんじゃないだろうか。
「そう、それは良かったよ」
妹も違和感を覚えていないようだ。
「お兄ちゃんは、1万円あったら何をするの?」
「お兄ちゃんは今、なんとなく夢の国に行きたい気分だよ」
なんか、急に頭の中に「ハハッ」が流れてきた。
千葉ニーなんてもう何年も行ってないなぁ。
前行ったのは、妹がまだ無料で入れたころだから、10年以上行ってないのかぁ。
「お兄ちゃん、夢の国1万円じゃ、入場してアトラクションに乗ることしかできないよ」
「それが目的で行くんじゃないのか?」
妹が急に変なことを言い出した。
「いやいや、お土産とか飲食とかいろいろあるでしょ」
「確かにそうかぁ。あれっ?入場料って1万円もしたっけ?色々含めて1万くらいの認識だったわ。時代は変わっちまったのか。1万円じゃ楽しめないのかぁ。夢がないなぁ」
このラリーの後の話題のふくらまし方が、いまだに分からない。
「解散」
今度は最初から、ソファから立ち上がり妹の正面に立って聞いてみた。
「なんで、毎回ちょっと間をあけて、聞いてくるの?お兄ちゃん。いっぺんに聞きなよ。会話下手なの?」
妹から強烈な煽りディスが返ってきた。
「質問が終わった時には、もうこの系統の質問をやめようと思うんだけど、気が付くとまた質問しちゃうんだよな。何でだろう?」
少し怖がるような演技をしながら妹のディスに対して、アンサーをした。
「そんな薬物の依存症みたいな雰囲気を出さないで。怖いから」
妹は、怖がってなさそうに答えた。
怖がってるというよりは軽蔑してるように見える。
「わかったわかった。元に戻すから。そんな目で見ないでくれよ。ゾクゾクしちゃうだろ」
今度は変態風の演技というボケをしてみた。
すると妹は、さっきよりも軽蔑の視線を送ってくる。
もはや汚物を見るような目を向けてきている。
どうやら俺は、地雷を踏みぬいたらしい。
妹は昔、公園で遊んでいるときに変態おじさんに絡まれたことがあった。
そのことが今でもトラウマなのか、変態の演技でごまかそうとすると、今のようにやりみたいに鋭い視線が飛んでくるんだった。
このいじり、最近してなかったからすっかり忘れてた。
悪いことしちまったな。
それにしても、無言の圧力って本当に怖いな。ちびるかと思った。
ボケ一つでこんなに心に来るとは思わなかった。
「ごめんごめん。本当に申し訳ない。だから、どうかその汚物を見るような目をするのをやめてくれないだろうか。そんな目で見られたら、病んじゃうよ」
恥もへったくれもなく、土下座をして見せた。
すると、頭の上に何やら生暖かいものがのせられた。
感触からして、たぶん足であろう。
妹のかわいらしい靴下越しの足を頭で感じた。
「…」
無言でやるのやめて。
怖いから。
せめて何かしゃべって。
無言の圧力に耐えられなくなっちゃう。
だらだらと滝のように汗が流れ出てきた。
何か逆に視界が開けて見えてきた。
これが悟り?
「2度目はないからね」
妹は、一言つぶやくと、俺の頭の上から足をどけた。
頭を上げるといつもの笑顔の妹がそこにいた。
怖いよ。逆に怖いよその笑顔が。
さっきまで、あんな人殺しそうな眼をしてたのに、急に切り替えるから、頭バグりそう。
テンションどうなってんの?
「1万円ですることだっけ?」
妹は、さっきまでのどすの利いた声はどこへやら、いつもの女子らしいトーンの声に戻っていた。
だから、怖いよその切り替え。
「そうそう、1万円あったら何するのかって話」
でも切り替えてくれてよかった。
これで変な流れを断ち切れる。
ていうか、開幕の俺の1ボケのせいで、断ち切る必要が出ちゃうんだよなぁ。
この話題の時に毎回地獄のような空気で始まるの、何なんだろう。
まぁでも、駄目だとわかっていてもボケたい時ってあるじゃん?仕方ないよね!!
毎度おなじみ妹の足プラプラタイムも終わり、ここからが本番だ。
「私はね、音ゲーの配信用の三脚を買うかな」
「三脚?カメラじゃなくて?」
何で三脚なんだろう?
カメラがないと使えなくない?うちには三脚につけられるようなカメラとかなかった気がするけど。
「お兄ちゃん、カメラは1万じゃ厳しいよ。それに、カメラで撮影しても、それで配信するのって難しいんだよ。スマホを三脚で固定して配信するのが、定番なんだよお兄ちゃん」
妹が、諭すように話し始めたかと思ったら、最終的にはなぜか自慢げというか誇らしげに語り終えた。
ゲーセン界隈ってそんな感じなんだぁ。知らなかったなぁ。
「音悪そうだな。雑音とか多そう」
「それに関してはねぇ……」
妹が何か呪文のように高速で何かを唱え始めた。
多分説明してくれているんだろうけど。
右耳から入ったものがすべて、脳を経由せずに左耳から出ていってしまう。
言葉を判別できても理解する前に抜けていってしまう。
恐ろしいオタクトーク。
「……分かった?お兄ちゃん」
妹の説明はどうやら終わったようだ。
「あ、あぁ、なんとなくわかったぞ妹よ」
なんとか聞いてないのが、正確には理解できなかったことが、バレないように返した。
我ながらうまく言えたんじゃないだろうか。
「そう、それは良かったよ」
妹も違和感を覚えていないようだ。
「お兄ちゃんは、1万円あったら何をするの?」
「お兄ちゃんは今、なんとなく夢の国に行きたい気分だよ」
なんか、急に頭の中に「ハハッ」が流れてきた。
千葉ニーなんてもう何年も行ってないなぁ。
前行ったのは、妹がまだ無料で入れたころだから、10年以上行ってないのかぁ。
「お兄ちゃん、夢の国1万円じゃ、入場してアトラクションに乗ることしかできないよ」
「それが目的で行くんじゃないのか?」
妹が急に変なことを言い出した。
「いやいや、お土産とか飲食とかいろいろあるでしょ」
「確かにそうかぁ。あれっ?入場料って1万円もしたっけ?色々含めて1万くらいの認識だったわ。時代は変わっちまったのか。1万円じゃ楽しめないのかぁ。夢がないなぁ」
このラリーの後の話題のふくらまし方が、いまだに分からない。
「解散」
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