百々五十六の小問集合

百々 五十六

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1文字記念 1円あるとしたら

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「なぁ妹よ、1円あったら何をする?」
ソファに寝ころび、スマホを片手に妹に一瞥もせずになんとなく聞いてみた。
「急にどうしたのお兄ちゃん?」
ザーザーガチャガチャ
妹は皿洗いをしながら答えてくれた。
「いや、なんとなく。お前ってどんなことに金を使うのか気になったから」
「じゃあちょっと待ってね。こっちから話すと、声を張らなくちゃいけないから、そっちに行くね」
しばらくすると、水の音がやんだ。妹は皿洗いを終えたようだ。
「で、なんだっけ?1円で何をするかだっけ?」
妹からの問いに、スマホから視線を外さずに答えようとしたら、急に視界が暗くなった。
妹が、俺の前に立って陰になってしまったらしい。
「そうそう。1円の使い道を聞いてみたくて」
「1円で何かできるの?募金とか?それよりお兄ちゃん、もうちょっと詰めて座ってくれない?私が座れないから」
妹に言われた通り、少し足をまげて、右にズレた。
すると、妹は行儀よく、俺の頭の先に座った。
「1円を馬鹿にしちゃいけないぞ。1円を笑うものは1円で泣くんだぞ!!」
ちょっと、脅かすように妹に言う。
「別に、馬鹿にしてるわけじゃないよ!それに、私のこと何歳だと思ってるの?もう中学生だよ!!」
妹様はご立腹のようだ。
プンスカという擬音が聞こえた気がした。空耳か。
「じゃあ、お兄ちゃん、1円で何ができるのか教えてよ!!」
俺は寝転ぶのをやめて、妹に向き直り、宣言した。
「いいぞ妹よ、1円で何ができるか教えてやろう」
さっき適当に、1円でできることを調べておいてよかった。
「まず、さっきお前が言ったように、募金ができるぞ。さらに、大人になったらパチンコができるぞ。1パチというやつだ。ただこれは単価が1円というだけで、1円玉持って行ってできるわけじゃないがな。それ以外にも、切手が買えるし、1円を資本金にして株式会社を作ることができるぞ。それに、1円は1グラムであることも有名だ。これを使って重さをはかるなんてことも……」
「わかった、わかった。もういいよお兄ちゃん。確かに1円っていっぱい使い道があるんだね。お金として使う以外にまで。」
妹に説明を遮られてしまった。
「これでお前も、一円の偉大さを理解したな?」
「うん、うん。したした」
妹は、適当に相槌を打つ。
ぞんざいに扱われて、お兄ちゃん悲しい。
「じゃあ妹よ。改めて聞くけど、1円あったら何をする?」
「うーん。でもやっぱり、募金かな?私は、1円の物にあまり魅力を感じないからさ、その1円で、困ってる人にその人の魅力的なものがあげられるならいいんじゃないかな?」
そうか、妹が人のためにお金を使える優しく器の大きい人になってくれて、お兄ちゃんうれしい。
妹も成長しているんだなぁ。
昔は、シュウマイ一つでも食い意地を張って、人にあげられなかった妹の口から、『募金』なんて言葉が聞けるなんて、ちょっと感動したなぁ。
「逆に聞くけど、お兄ちゃんは1円あったら何をするの?」
「え、貯金」

妹は驚いた顔をした後、興味を失ったのか、スマホに視線を落とした。
もしかして、うちの妹、あほの子かもしれない。
それからいつも通り各々がスマホをいじる、静かな時間が過ぎていった。
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