百々五十六の小問集合

百々 五十六

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君と、100回死ぬまでに (未完)

1,2回目 死の自覚と五感 俺は死んだんだなー

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俺は死んだ。

なんで死んだかと聞かれると、分からないとしか答えられない。

たしかに俺は死んだ。

どうやって死んだかもわからないし、俺がだれなのかもわからない。

今、俺はどこに居るのかも、今がいつなのかも分からない。

ただ、死んだという事実だけが認識できる。

死んでいるから当然かも知れないが、何も見えない。暗闇の中にいるように感じる。

それに、何かに触れている感覚もない。空気すら感じないし、温度も感じない。何なら死んでいるはずなのに、痛みすら感じない。何も感じない。

これも一種の走馬灯なんだろうと、段々と受け入れられるようになってきた。

でも不思議だ。この走馬灯には俺の思い出が一個も出てきていない。ただただ暗闇の中で俺が一人で考えているだけ。こんな時間を引き伸ばしても、起死回生の一手は浮かばないだろう。まさに無駄な時間である。神はこんなことをさせるために、走馬灯というものを人間に備え付けたのだろうか?

それでも神様にいただいた貴重な時間。

ただ、願わずにはいられない。

次の人生には、


五感を。




突然、視界がひっくり返った。

体の背面からじんわりとした痛みを感じた。どうやら体を打ちつけたらしい。

こちらを見て顔を青くし、叫ぶ人たち。

液体が服にこびりついたらしく、服が肌に張り付いているように感じる。服を見ると、真っ赤に染まっていた。液体の出処を意識で辿っていくと、脇腹だった。

突然体を激痛が襲う。

脇腹から激しい痛みを感じる。

体の中に冷たいものを感じる。目をやると脇腹に包丁が刺さっていた。刺さった包丁の刃が、段々と体温に馴染んでいき、体に異物が入っているという不快感だけが残った。

血が流れ出るとともに力が抜けていく。体温が一気に上がっていっている。

段々と頭がボーッとしてくる。思考は鈍っていく一方だが、刺された痛みと、体に異物が入っているという不快感だけは、鮮明に感じる。

段々と出力の下がっていく頭で考える。

なんで俺は刺されたんだろう?犯人の動きは早すぎて視認できなかった。これは一体何者の仕業なんだろう?

俺、誰かから恨み買ってたかな?何も見に覚えがない。

あれは本当に人だったのかな?悪魔とかなんじゃないの?とても人の動きには見えなかったけど。

あぁ、死ぬのか。短い人生だったな。

こんなことならもっと人生を満喫しておけばよかった。読みかけの本とか、借りてまだ見てない映画とか、まだまだやり残したことあるのになぁ。

思ったよりやり残したこと、しょぼいな。

遠くで、サイレンの音がなっているらしい。

もう、目をかけている余裕もなく、ゆっくりと瞼を下ろした。

目を閉じ、視界が暗くなった途端、体が激しく揺さぶられた。

やけに小さい怒鳴り声が聞こえてくる。もう、なんて言っているのか聞き取ることはできない。

なんかだんだん、痛みが鈍ってきた。

あぁ、なんか寒くなってきた。

体はもう、思ったように動かない。寒くても鳥肌一つ立たない。

あぁ、もう死ぬんだ。

体を掴まれた感覚の後、体が少し浮いたように感じた。

もう、音も感覚も分からなくなった。俺の体は今どうなっているのだろう。全く見当もつかない。刺されてからどれくらいの時間が経っただろう。

俺はもう体という枠組みから解き放たれた。

もう人生とお別れかぁ。

最後の一瞬に、来世にでも願って、俺の人生を終わりにしようかな?

次の人生では、


死を夢に見て戒めに。

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