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序章
第四話 *
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割れ目に宛がわれた中指が、そこを行ったり来たりしている。いやだ、そんなとこ触るな、なんて拒絶の言葉は全て飲み込んだセイランは抵抗を諦めた様子で、再び両手を口に当てせめてもの反抗で声を押さえていた。
「ねぇお兄さん」
「ん……? んッ!」
「あは、やっぱりだいぶすんなりだね」
とろとろとした滑らかな液体で濡れた指が不意に体内に侵入してくる。つぷ、と秘部を割り開くように、青年の指はゆっくりとセイランの奥へと押し込まれていった。その刺激を感じ取り、内側を触れられる感覚にセイランは体を震わせ指先に力を込める。青年は面白そうにそれを眺めながら、ゆっくりと指を奥へと進めていき、同時に身を寄せた。
「ん、……ぅっ、」
「抵抗しないってことは、ここ欲しいってこと?」
「っ……、う……」
笑みと共に囁かれた青年の言葉に、セイランは何か言いたげに目を向けるが結局何も言わずにセイランは視線を俯かせた。その仕草が気にくわないのか、青年は笑みを崩して目を細める。セイランの口に当てられていた腕をぐいと引き、強引に自分の方を向かせた。
「言えよ。そんなんだと本当に酷くしちゃうよ?」
言葉と同時に青年は指を引き抜き、間髪入れずに今度は一気に三本の指を後孔にあて、息をつく間もなく最奥へと向かわせた。確かに青年の言う通り、一本の指をすんなり飲み込んでいたそこは三本の指でも裂けることはなかったが、それでも突然の衝撃にセイランは怯んでしまう。急な圧迫感と、質量のあるものが内臓を押し上げ、快楽を知る部分に触れていく。体の熱はその感触を強い快感に変え、堪えきれなかった声が草木を揺らすようだった。
「ひっ、あ”ッ! いた……、っふ、う、ぅっ……」
「痛い? 本当は平気だよね? お兄さん、ここの経験あるでしょ?」
「そ、れは……、っ……、ん、う、ぁッ……!」
セイランの反応は明らかに初めてとは言えないものだった。それは心にも、体にも言えることで。男を知っている瞳は、受け入れることを知っている体を暴かれることを諦めるように見下ろしていた。その諦観した態度が気にくわないのか、青年はわざと煽る様に笑い、セイランがどうしても反応してしまうその場所で指先を動かすが、セイランはそれでもまた口をつぐんだ。そんなセイランに返ってきたのは少しだけ乱暴な愛撫だけ。指を濡らしていた潤滑油がぐちゅぐちゅと音を立てるのに対して、セイランは微かに首を左右に振った。
「なに? 嫌なの? 口で言えって言ってるじゃん。……大丈夫だよ。経験ないのを無理矢理引き裂くのも好きだけど、あるならあるで加減しなくていいからボクは好きだし。ちゃんと気持ちよくしてあげるから」
声音は静かながら、紡がれた言葉は物騒極まっており、セイランに恐怖を与えるのには十分だった。ただでさえ抵抗していなかったというのに、それ以上に委縮してしまったセイランの身体はすっかり強張り、何も言い返さずに静かに唇を噛んだ。
セイラン自身も、頭では分かっていた。どんな魔法なのかはよく分からないが、全身は酷い熱で覆われ肉欲が頭を満たしているが、思考を奪われたわけではない。わずかに残った理性で「いやだ」「やめろ」と叫ぶことは可能だ。分かっていても、セイランはそうしようとはしなかった。
まるで抵抗を求めていたような青年は、ただ与えられる快楽を身を委ねるセイランを見下ろして、小さく一言呟いた。その表情は、少しでも恐怖を飲み込もうと目を固く瞑っていたセイランには見えてはいなかった。
「へ、え……? なん、で……ぁっ、」
短く放たれた言葉に、セイランはキョトンとする。反射的に瞳を開き、青年に続きを求めようとするが直後後孔を埋めていた指がずるりと引き抜かれ、言葉が途切れてしまう。咄嗟に青年の瞳を探したセイランの開いた瞼に、手のひらが重ねられる。華奢な指先のそれはセイランの視界を奪う。
その手を退けようと即座に口元にあった両手で掴むが、それは指をかけるだけで退けることなど出来なかった。
ひりひりと、頭の奥が痺れるような感覚がセイランから残されていたものを奪っていく。もう熱いなんてどうでもよくて、のぼせたようにボーッとして考えることが出来ない。
ただ、青年に犯されたいという性欲だけがセイランには残された。
「欲しい?」
「ぁ、あっ、ほしい……、ほし……あ、あッ!」
「そう、言えるじゃん」
ただ青年とのセックスだけしか考えられなかった。ひくひくと口を開き求めるように収縮を繰り返す後孔に質量のあるものが添えられ、体温が重なっていく。セイランにとって、そこにあるのはもはやただの快楽それだけだった。
髪色と同じくらい赤くなったセイランの顔に、涙の線が出来ていく。まだ挿入されただけだというのに、セイランの記憶にない悪酔いしそうなほどの甘ったるい快楽がそこにはあった。
「あぁっ、ぁ、あッ! ぅあっ、ぁ……、ごめ、なさ……、あぅ……っ!」
「……いいよ、謝らないで? 声たくさん聞かせて」
ゆっくりと腰を動かされ、不意に高い声をあげたセイランがはっとしたように口に手をあてるが、強い媚薬にあてられたように感度が極まった体に快楽を与えられれば声は止まらなかった。誰も「声を出すな」と言っていないにも関わらず、無意識にセイランから放たれた謝罪の言葉に対して、青年は優しく言葉を返す。青年はセイランの両膝を支え、スローペースだったピストンを一度止め、静かにセイランを見下げた。
「つらかったら、ちゃんと言ってね」
「う? ぇ、あ……、あ"ッ!」
青年はぎりぎりまで引いた腰を一気に奥まで届かせる。杭を打つようなピストンがセイランの体を揺らす。当然その衝撃は一度きりではなく、青年は激しくそこを何度も貫いていく。その先端は確実に精嚢を狙うもので、押し出されるような感覚が強制的に射精欲を高めていく。
「ひァッ、あ、あッ! そこっ、ぁっ、でるから……っ! イっ、ちゃ……う、っ!」
しばらく触れられていなかった陰茎の方も芯を失ってはおらず、与えられる快楽に対して震えていた。止まらないピストンは、熱いものを押し出していく。
「――っ、ぅ、あ"ッ! あ、あぁっ! とま、らな……、ぅ、んッ!」
青年の動きに合わせて、セイランは何度も白濁を吐き出す。その度に尿道まで刺激され、淡い快楽がセイランを包み込んだ。ただ射精するよりも絶頂感が続き、ぼんやりとしていた頭がそれで満たされていく。セイランが深い快楽の底に落ちるのを見届けながら、青年はまた小刻みに体を揺すぶる。
「ぁ、ぅっ、う、あっ! ま、って、まってッ!」
自分の欲を吐き出しきって、それでもまだ残る心地のいい絶頂感にセイランが身を委ねようとしたところをそれは襲う。その動きは先ほどまでのものとは違う、青年が自分の欲を満たすためのもので、種類の違う責めにセイランは身を捩る。強い快楽を得た直後、それは過ぎた律動だった。
「あっ、ぁ……ッ! く、ぅ……、――ッ!」
激しい律動の最中、不意にセイランはびくと体を跳ねさせる。同時に後孔にきゅっと力が込められ、熱いものが体内を濡らしていった。
二人分の荒い呼吸が森の中に溶けていく。数秒後、セイランの後孔は解放され白い液体を伝わせた。
体が重くて動かない。頭がぼんやりとしていて働かない。セイランの瞼がそのまま落ちていく。意識が完全に途絶える直前、何かあたたかいものが頭に触れた。それは優しく髪を撫でていく。
「ごめんね、セイラン」
意識を手放す直前。セイランの耳に届いたのは先ほどと同じ言葉を繰り返した青年の悲しげな声だった。
セイランの意識が深い水底に落ちた頃。青年はセイランを眺めていた視線をあげ、ゆっくりと周囲の木々を影を見る。そこにあったのは、先ほど取り逃がした魔物と、その仲間の姿だった。魔物はすでに明確な敵意を見せており、低い唸り声をあげながら二人との距離を少しずつ縮めていく。
そして、最初の一匹が青年に向けて飛びかかる。躱すか反撃するかしなければ、間違いなく首に食らいつかれる高さ。それでも青年はその場から動くことはなかった。
ただ静かに。冷ややかな桃色の瞳を魔物へ向ける。すると、魔物の鼻先が青年に触れる直前、魔物は軌道を反らし、青年の横に着地した。魔物はその場で腰を下ろし、主人を見上げる犬のように青年を見やった。そこに敵意はすでにない。
「いいコだ、起こしちゃだめだよ」
青年はその魔物を見て微笑むと、ちらと周囲にいた魔物へと視線を移す。青年の視界に映る魔物たちはみな、先ほどまでの敵意が嘘のように消え失せていた。今にも食らいつきそうに歯を剥いていたというのに、唸り声一つ上げず大人しく立ち尽くしていた魔物たちは、一匹、また一匹と踵を返しその場を離れていく。
そして、森の中は今度こそ静寂に包まれる。それ以降、格好の的であるはずの二人を襲う魔物が現れることはなく、静寂を切り裂かれることもなかった。それはまるで、セイランの安眠を守るかのようだった。
「ねぇお兄さん」
「ん……? んッ!」
「あは、やっぱりだいぶすんなりだね」
とろとろとした滑らかな液体で濡れた指が不意に体内に侵入してくる。つぷ、と秘部を割り開くように、青年の指はゆっくりとセイランの奥へと押し込まれていった。その刺激を感じ取り、内側を触れられる感覚にセイランは体を震わせ指先に力を込める。青年は面白そうにそれを眺めながら、ゆっくりと指を奥へと進めていき、同時に身を寄せた。
「ん、……ぅっ、」
「抵抗しないってことは、ここ欲しいってこと?」
「っ……、う……」
笑みと共に囁かれた青年の言葉に、セイランは何か言いたげに目を向けるが結局何も言わずにセイランは視線を俯かせた。その仕草が気にくわないのか、青年は笑みを崩して目を細める。セイランの口に当てられていた腕をぐいと引き、強引に自分の方を向かせた。
「言えよ。そんなんだと本当に酷くしちゃうよ?」
言葉と同時に青年は指を引き抜き、間髪入れずに今度は一気に三本の指を後孔にあて、息をつく間もなく最奥へと向かわせた。確かに青年の言う通り、一本の指をすんなり飲み込んでいたそこは三本の指でも裂けることはなかったが、それでも突然の衝撃にセイランは怯んでしまう。急な圧迫感と、質量のあるものが内臓を押し上げ、快楽を知る部分に触れていく。体の熱はその感触を強い快感に変え、堪えきれなかった声が草木を揺らすようだった。
「ひっ、あ”ッ! いた……、っふ、う、ぅっ……」
「痛い? 本当は平気だよね? お兄さん、ここの経験あるでしょ?」
「そ、れは……、っ……、ん、う、ぁッ……!」
セイランの反応は明らかに初めてとは言えないものだった。それは心にも、体にも言えることで。男を知っている瞳は、受け入れることを知っている体を暴かれることを諦めるように見下ろしていた。その諦観した態度が気にくわないのか、青年はわざと煽る様に笑い、セイランがどうしても反応してしまうその場所で指先を動かすが、セイランはそれでもまた口をつぐんだ。そんなセイランに返ってきたのは少しだけ乱暴な愛撫だけ。指を濡らしていた潤滑油がぐちゅぐちゅと音を立てるのに対して、セイランは微かに首を左右に振った。
「なに? 嫌なの? 口で言えって言ってるじゃん。……大丈夫だよ。経験ないのを無理矢理引き裂くのも好きだけど、あるならあるで加減しなくていいからボクは好きだし。ちゃんと気持ちよくしてあげるから」
声音は静かながら、紡がれた言葉は物騒極まっており、セイランに恐怖を与えるのには十分だった。ただでさえ抵抗していなかったというのに、それ以上に委縮してしまったセイランの身体はすっかり強張り、何も言い返さずに静かに唇を噛んだ。
セイラン自身も、頭では分かっていた。どんな魔法なのかはよく分からないが、全身は酷い熱で覆われ肉欲が頭を満たしているが、思考を奪われたわけではない。わずかに残った理性で「いやだ」「やめろ」と叫ぶことは可能だ。分かっていても、セイランはそうしようとはしなかった。
まるで抵抗を求めていたような青年は、ただ与えられる快楽を身を委ねるセイランを見下ろして、小さく一言呟いた。その表情は、少しでも恐怖を飲み込もうと目を固く瞑っていたセイランには見えてはいなかった。
「へ、え……? なん、で……ぁっ、」
短く放たれた言葉に、セイランはキョトンとする。反射的に瞳を開き、青年に続きを求めようとするが直後後孔を埋めていた指がずるりと引き抜かれ、言葉が途切れてしまう。咄嗟に青年の瞳を探したセイランの開いた瞼に、手のひらが重ねられる。華奢な指先のそれはセイランの視界を奪う。
その手を退けようと即座に口元にあった両手で掴むが、それは指をかけるだけで退けることなど出来なかった。
ひりひりと、頭の奥が痺れるような感覚がセイランから残されていたものを奪っていく。もう熱いなんてどうでもよくて、のぼせたようにボーッとして考えることが出来ない。
ただ、青年に犯されたいという性欲だけがセイランには残された。
「欲しい?」
「ぁ、あっ、ほしい……、ほし……あ、あッ!」
「そう、言えるじゃん」
ただ青年とのセックスだけしか考えられなかった。ひくひくと口を開き求めるように収縮を繰り返す後孔に質量のあるものが添えられ、体温が重なっていく。セイランにとって、そこにあるのはもはやただの快楽それだけだった。
髪色と同じくらい赤くなったセイランの顔に、涙の線が出来ていく。まだ挿入されただけだというのに、セイランの記憶にない悪酔いしそうなほどの甘ったるい快楽がそこにはあった。
「あぁっ、ぁ、あッ! ぅあっ、ぁ……、ごめ、なさ……、あぅ……っ!」
「……いいよ、謝らないで? 声たくさん聞かせて」
ゆっくりと腰を動かされ、不意に高い声をあげたセイランがはっとしたように口に手をあてるが、強い媚薬にあてられたように感度が極まった体に快楽を与えられれば声は止まらなかった。誰も「声を出すな」と言っていないにも関わらず、無意識にセイランから放たれた謝罪の言葉に対して、青年は優しく言葉を返す。青年はセイランの両膝を支え、スローペースだったピストンを一度止め、静かにセイランを見下げた。
「つらかったら、ちゃんと言ってね」
「う? ぇ、あ……、あ"ッ!」
青年はぎりぎりまで引いた腰を一気に奥まで届かせる。杭を打つようなピストンがセイランの体を揺らす。当然その衝撃は一度きりではなく、青年は激しくそこを何度も貫いていく。その先端は確実に精嚢を狙うもので、押し出されるような感覚が強制的に射精欲を高めていく。
「ひァッ、あ、あッ! そこっ、ぁっ、でるから……っ! イっ、ちゃ……う、っ!」
しばらく触れられていなかった陰茎の方も芯を失ってはおらず、与えられる快楽に対して震えていた。止まらないピストンは、熱いものを押し出していく。
「――っ、ぅ、あ"ッ! あ、あぁっ! とま、らな……、ぅ、んッ!」
青年の動きに合わせて、セイランは何度も白濁を吐き出す。その度に尿道まで刺激され、淡い快楽がセイランを包み込んだ。ただ射精するよりも絶頂感が続き、ぼんやりとしていた頭がそれで満たされていく。セイランが深い快楽の底に落ちるのを見届けながら、青年はまた小刻みに体を揺すぶる。
「ぁ、ぅっ、う、あっ! ま、って、まってッ!」
自分の欲を吐き出しきって、それでもまだ残る心地のいい絶頂感にセイランが身を委ねようとしたところをそれは襲う。その動きは先ほどまでのものとは違う、青年が自分の欲を満たすためのもので、種類の違う責めにセイランは身を捩る。強い快楽を得た直後、それは過ぎた律動だった。
「あっ、ぁ……ッ! く、ぅ……、――ッ!」
激しい律動の最中、不意にセイランはびくと体を跳ねさせる。同時に後孔にきゅっと力が込められ、熱いものが体内を濡らしていった。
二人分の荒い呼吸が森の中に溶けていく。数秒後、セイランの後孔は解放され白い液体を伝わせた。
体が重くて動かない。頭がぼんやりとしていて働かない。セイランの瞼がそのまま落ちていく。意識が完全に途絶える直前、何かあたたかいものが頭に触れた。それは優しく髪を撫でていく。
「ごめんね、セイラン」
意識を手放す直前。セイランの耳に届いたのは先ほどと同じ言葉を繰り返した青年の悲しげな声だった。
セイランの意識が深い水底に落ちた頃。青年はセイランを眺めていた視線をあげ、ゆっくりと周囲の木々を影を見る。そこにあったのは、先ほど取り逃がした魔物と、その仲間の姿だった。魔物はすでに明確な敵意を見せており、低い唸り声をあげながら二人との距離を少しずつ縮めていく。
そして、最初の一匹が青年に向けて飛びかかる。躱すか反撃するかしなければ、間違いなく首に食らいつかれる高さ。それでも青年はその場から動くことはなかった。
ただ静かに。冷ややかな桃色の瞳を魔物へ向ける。すると、魔物の鼻先が青年に触れる直前、魔物は軌道を反らし、青年の横に着地した。魔物はその場で腰を下ろし、主人を見上げる犬のように青年を見やった。そこに敵意はすでにない。
「いいコだ、起こしちゃだめだよ」
青年はその魔物を見て微笑むと、ちらと周囲にいた魔物へと視線を移す。青年の視界に映る魔物たちはみな、先ほどまでの敵意が嘘のように消え失せていた。今にも食らいつきそうに歯を剥いていたというのに、唸り声一つ上げず大人しく立ち尽くしていた魔物たちは、一匹、また一匹と踵を返しその場を離れていく。
そして、森の中は今度こそ静寂に包まれる。それ以降、格好の的であるはずの二人を襲う魔物が現れることはなく、静寂を切り裂かれることもなかった。それはまるで、セイランの安眠を守るかのようだった。
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