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決心 3
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少し車を動かした所で、ホテルに来たときみたいに颯人が茉莉の左太股を触ってきた。
茉莉は自然に、颯人の右手の上に自分の左手を置いて指を絡める。
「…茉莉、恥ずかしかったんだけど!」
「ん~?」
「聞いてるの?!」
「聞いてる」
「ったく…」
少し頬を膨らましている颯人が、可愛い。
茉莉は颯人の手を強く握った。
「…颯人」
今なら、引っ越しを言えずにいた事の謝罪を、言えるかも知れない。
「…」
颯人は、茉莉の方を向いた。
「…引っ越しの時、言えなくてごめん」
茉莉は静かに話した。
「…颯人と別れて日本から離れる事が辛くて、どうしても…言えなかった」
颯人は何も言わずに、聞いていた。
「その後、両親を説得して日本の高校…今、颯人が通ってる高校に編入したけど、その時も会いに行けなかった」
「…俺、すごく悲しかったよ」
颯人が言う。
「1年ぐらいしか一緒にいなかったけど、茉莉は渋々面倒を見ていて、仲良かったと思っていたのは俺だけなんだって思った」
「違う!」
「その時は、そう思った」
颯人は淡々と話し続けた。
「茉莉が突然いなくなって、悲しみをまぎらわせる為に、一生懸命に手芸に打ち込んだ」
「…」
「でも、怒ってないよ。今、出会えているから」
「…颯人」
「『セックスをして』なんて馬鹿馬鹿しい事を言っていると思っているだろうけど、本当に頼るのは茉莉しかいなかった」
颯人もギュッと、手に力が入った。
「好きになるって辛いよね、片思いは余計にさ。でもピアスで願掛けしたし、御守りももらったから俺は前に進もうと思うから」
(…願掛けはピアスだが、御守りは…何?)
颯人の『前に進む』と言った言葉に、胸が痛くなる。
(颯人は『前に進もう』としている…。好きな人と幸せになる『前へ』)
「茉莉も、前に進んでよ。7年前のお別れや、その後日本に帰って来た時の事なんて引きずってないで。俺は気にしてないから」
颯人は、スッキリした顔をしていた。
(…前に?俺は、颯人に想いを伝える事が前に進む事だ、けど…)
そう思っていると、学校近くにまで来てしまった。
「…話していたら、学校に着いちゃうよ。茉莉、ここで下ろして」
「…いや、学校の裏に停めようと思っているから」
「え?だって、人目に付くでしょ?」
「今日は知代田さんから、裏門の鍵と寮の裏口の鍵を借りてる。颯人が動けなくなるのがわかっていたし」
「…どれだけ、セックスすると思っていたの?」
「たっぷりと」
(颯人が好きな奴に抱かれていても、俺の事を思い出すぐらい…)
「っ!」
颯人の顔が、すぐに真っ赤になる。
「…茉莉のスケベ」
「すっごい、スケベですから」
「でも裕汰は?すぐに飛んで来るよ」
あんなに、しつこい裕汰。
ちゃんと、対策はしていた。
出掛ける前に颯人が裕汰を足止めしてくれたから、茉莉は朝一で知代田さんに連絡をしていた。
「それも大丈夫。知代田さんに聞いたら、部活の研修でいないらしい」
「あ、そんな事…言っていたかも」
車が裏門に着く。
茉莉は車から降りて、裏門の鍵を開けた。
茉莉は自然に、颯人の右手の上に自分の左手を置いて指を絡める。
「…茉莉、恥ずかしかったんだけど!」
「ん~?」
「聞いてるの?!」
「聞いてる」
「ったく…」
少し頬を膨らましている颯人が、可愛い。
茉莉は颯人の手を強く握った。
「…颯人」
今なら、引っ越しを言えずにいた事の謝罪を、言えるかも知れない。
「…」
颯人は、茉莉の方を向いた。
「…引っ越しの時、言えなくてごめん」
茉莉は静かに話した。
「…颯人と別れて日本から離れる事が辛くて、どうしても…言えなかった」
颯人は何も言わずに、聞いていた。
「その後、両親を説得して日本の高校…今、颯人が通ってる高校に編入したけど、その時も会いに行けなかった」
「…俺、すごく悲しかったよ」
颯人が言う。
「1年ぐらいしか一緒にいなかったけど、茉莉は渋々面倒を見ていて、仲良かったと思っていたのは俺だけなんだって思った」
「違う!」
「その時は、そう思った」
颯人は淡々と話し続けた。
「茉莉が突然いなくなって、悲しみをまぎらわせる為に、一生懸命に手芸に打ち込んだ」
「…」
「でも、怒ってないよ。今、出会えているから」
「…颯人」
「『セックスをして』なんて馬鹿馬鹿しい事を言っていると思っているだろうけど、本当に頼るのは茉莉しかいなかった」
颯人もギュッと、手に力が入った。
「好きになるって辛いよね、片思いは余計にさ。でもピアスで願掛けしたし、御守りももらったから俺は前に進もうと思うから」
(…願掛けはピアスだが、御守りは…何?)
颯人の『前に進む』と言った言葉に、胸が痛くなる。
(颯人は『前に進もう』としている…。好きな人と幸せになる『前へ』)
「茉莉も、前に進んでよ。7年前のお別れや、その後日本に帰って来た時の事なんて引きずってないで。俺は気にしてないから」
颯人は、スッキリした顔をしていた。
(…前に?俺は、颯人に想いを伝える事が前に進む事だ、けど…)
そう思っていると、学校近くにまで来てしまった。
「…話していたら、学校に着いちゃうよ。茉莉、ここで下ろして」
「…いや、学校の裏に停めようと思っているから」
「え?だって、人目に付くでしょ?」
「今日は知代田さんから、裏門の鍵と寮の裏口の鍵を借りてる。颯人が動けなくなるのがわかっていたし」
「…どれだけ、セックスすると思っていたの?」
「たっぷりと」
(颯人が好きな奴に抱かれていても、俺の事を思い出すぐらい…)
「っ!」
颯人の顔が、すぐに真っ赤になる。
「…茉莉のスケベ」
「すっごい、スケベですから」
「でも裕汰は?すぐに飛んで来るよ」
あんなに、しつこい裕汰。
ちゃんと、対策はしていた。
出掛ける前に颯人が裕汰を足止めしてくれたから、茉莉は朝一で知代田さんに連絡をしていた。
「それも大丈夫。知代田さんに聞いたら、部活の研修でいないらしい」
「あ、そんな事…言っていたかも」
車が裏門に着く。
茉莉は車から降りて、裏門の鍵を開けた。
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