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入学式
入学式 2
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どんなに待っても、身体に痛い衝撃が…来ない。
感じたのは誰かに身体を支えられたようで、しっかりと胸に抱きしめられていた。
ぎゅっと強くつぶっていた目をおそるおそるゆっくりと開くと、自分とは違うネクタイの色が目に入った。
「あ…」
(今年の1年生は赤色のネクタイで、確か2年生は青色のネクタイ、3年生は緑色だったはず…)
その年によって紫色だったり黄色だったりと色が違うらしい。
目の前のネクタイの色は青色、なので2年生の先輩だ。
「大丈夫?足とか捻ってない?」
優しく聞かれた。
とても心地よい声色にぼーっとしていたら、心配したように声をかけられた。
「どこか痛い?」
その言葉にハッと我に返った。
「い、いえ、なんともありませんっ」
抱きしめられていたままだったので、慌てて身を起こした。
咲の顔は下を向いたまま、恥ずかしくて相手の顔も見れない。
すると、窓から桜の花びらが風でヒラヒラと舞いながら廊下に入ってくる。
それに導かれるように視線が動く。
「わぁ…きれい」
助けてくれた人が、くすっと笑う。
咲は、また下を向いてしまった。
桜をみとれている場合じゃない。
「すみませんでした!!」
(助けてもらっといて、違うことに目移りをするなんて!)
慌てて謝罪すると…
「怪我、してなくてよかった。この学校の周りは四季折々の植物があるから、季節でまた違う風景が見られるよ」
優しい声の持ち主はそう言うと、咲の身体を半回転させ、咲の教室を指差した。
「教室はあそこだよ。入学おめでとう!!」
「あ、ありがとうござい…」
後ろ向いてお礼を最後まで言う前に、助けてくれた恩人はもういなかった。
「…」
一体誰だったのか、顔を見なかった。
そして、さっきよりも廊下に新入生が少なくなっていたので、慌てて教室に入るしかなかった…。
すぐに担任が教室に入ってきて、今後の説明をする。
「入学式のため、すぐに体育館に移動してもらう」
体育館に全校生徒が集められた。
先生について行き、説明を受けた天はその後、同じクラスの列に整列をした。
入学式が始まり、理事長、校長、来賓、電報などの祝辞を次々に進行していく。
次は新入生代表の天の番だ。
「それでは新入生代表、高城 天君、お願いします」
進行係が、天の名を呼ぶ。
「はい」
天が返事をし、椅子から立ち上がり壇へと進んで行く。
凛としたその姿に、咲は誇らしかった。
しかし咲は天よりも緊張していて手のひらが汗ばんでいて、ドキドキと心臓が高鳴る。
(天ちゃん、頑張って!!)
「私たちの為に、入学式をこのような盛大にして頂き、ありがとうございます…」
天はカンペの紙を持っているわけでもなく、まっすぐ前を見据えて丁寧に答辞を述べている。
(天ちゃん、すごい!暗記したんだ!!)
顔色を一つも変えずに堂々としていた。
今、天が話しているのは数日前に咲と一緒に考えた答辞だ。
一緒といっても言葉は天が考えて、咲は言葉のニュアンスや文章の前後がおかしくないかを見ただけで。
(良かった…、文系が得意で)
少しだけでも天の役に立てた事が嬉しかった。
天の素晴らしい答辞は終わった。
皆から拍手が沸き起こる。
咲も惜しみなく拍手をした。
感じたのは誰かに身体を支えられたようで、しっかりと胸に抱きしめられていた。
ぎゅっと強くつぶっていた目をおそるおそるゆっくりと開くと、自分とは違うネクタイの色が目に入った。
「あ…」
(今年の1年生は赤色のネクタイで、確か2年生は青色のネクタイ、3年生は緑色だったはず…)
その年によって紫色だったり黄色だったりと色が違うらしい。
目の前のネクタイの色は青色、なので2年生の先輩だ。
「大丈夫?足とか捻ってない?」
優しく聞かれた。
とても心地よい声色にぼーっとしていたら、心配したように声をかけられた。
「どこか痛い?」
その言葉にハッと我に返った。
「い、いえ、なんともありませんっ」
抱きしめられていたままだったので、慌てて身を起こした。
咲の顔は下を向いたまま、恥ずかしくて相手の顔も見れない。
すると、窓から桜の花びらが風でヒラヒラと舞いながら廊下に入ってくる。
それに導かれるように視線が動く。
「わぁ…きれい」
助けてくれた人が、くすっと笑う。
咲は、また下を向いてしまった。
桜をみとれている場合じゃない。
「すみませんでした!!」
(助けてもらっといて、違うことに目移りをするなんて!)
慌てて謝罪すると…
「怪我、してなくてよかった。この学校の周りは四季折々の植物があるから、季節でまた違う風景が見られるよ」
優しい声の持ち主はそう言うと、咲の身体を半回転させ、咲の教室を指差した。
「教室はあそこだよ。入学おめでとう!!」
「あ、ありがとうござい…」
後ろ向いてお礼を最後まで言う前に、助けてくれた恩人はもういなかった。
「…」
一体誰だったのか、顔を見なかった。
そして、さっきよりも廊下に新入生が少なくなっていたので、慌てて教室に入るしかなかった…。
すぐに担任が教室に入ってきて、今後の説明をする。
「入学式のため、すぐに体育館に移動してもらう」
体育館に全校生徒が集められた。
先生について行き、説明を受けた天はその後、同じクラスの列に整列をした。
入学式が始まり、理事長、校長、来賓、電報などの祝辞を次々に進行していく。
次は新入生代表の天の番だ。
「それでは新入生代表、高城 天君、お願いします」
進行係が、天の名を呼ぶ。
「はい」
天が返事をし、椅子から立ち上がり壇へと進んで行く。
凛としたその姿に、咲は誇らしかった。
しかし咲は天よりも緊張していて手のひらが汗ばんでいて、ドキドキと心臓が高鳴る。
(天ちゃん、頑張って!!)
「私たちの為に、入学式をこのような盛大にして頂き、ありがとうございます…」
天はカンペの紙を持っているわけでもなく、まっすぐ前を見据えて丁寧に答辞を述べている。
(天ちゃん、すごい!暗記したんだ!!)
顔色を一つも変えずに堂々としていた。
今、天が話しているのは数日前に咲と一緒に考えた答辞だ。
一緒といっても言葉は天が考えて、咲は言葉のニュアンスや文章の前後がおかしくないかを見ただけで。
(良かった…、文系が得意で)
少しだけでも天の役に立てた事が嬉しかった。
天の素晴らしい答辞は終わった。
皆から拍手が沸き起こる。
咲も惜しみなく拍手をした。
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