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第三章 呪いか否か
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「あのようにして踊り続ける人が、何人も出たというのがこの村に起きている異常ですか?」
ルカの問いに、ミカエルは今までの経緯を説明する。ある日突然踊り続ける村人が出始め、その踊りが感染している。その説明に、ルカは難しそうな顔をする。
「踊りというのは感染するものなのですか?
いえ、いかんせん私は、そういったことに詳しくないので……」
「まぁ、修道士様ともなれば、踊りとは無縁の生活ですよね」
ルカとミカエルが話している横で、ウィスタリアはじっと踊る村人達をひとりずつ目で追っている。
それから、固い声でこう言った。
「あれは踊ってるんじゃない」
その言葉に、ミカエルはウィスタリアの方を向く。
「どうして踊っているわけではないとわかるんだい?」
その問いに、ウィスタリアは村人達をじっと見つめて目で追いながら返す。
「あれは踊りのステップじゃない。
本当に踊っているのであれば、もっとリズムに乗った規則的なステップを踏むはずだ。
でも、あの村人達のステップはリズムがめちゃくちゃで規則なんてものはない。
だから、あれは踊りではないなにかだよ」
ミカエル達の後に付いてきていた村人達がウィスタリアの言葉を聞いてざわめく。
踊っているのではないなら、やはりあれは呪いなのではないか。魔女がこの村に呪いをかけたんだ。口々にそう言って、村人達はウィスタリアに懇願する。
「修道士様、どうかこの村にかけられた呪いを解いてください。
それとも、呪いにかかった人は、死ぬまで呪いが解けないのでしょうか。
そんな恐ろしいことは耐えられません」
村人達の言葉にルカは戸惑っているけれども、ウィスタリアは堂々とした態度で村人達にこう告げる。
「大丈夫です。時間はかかりますがこの呪いのようなものは解決することができます。
そのためにみなさんにご協力を仰ぐこともあるかもしれません。
ですので、どうかいったん、落ち着いてください」
ウィスタリアの言葉に、ミカエルはどうやって踊っている村人達を治すのだろうと思う。それは他の村人達も同様なようだった。
「我々にできることなら協力します。
どのようにして呪いを解くのでしょうか」
村人の問いに、ウィスタリアはミカエルの方をちらりと見てから返す。
「とりあえず、おれ達を呼んだこの人と話がしたいです。
ゆっくりと話をして、より良い解決法を取りたいのです」
村人達は、ミカエルに縋るような視線を送る。それを感じ取ったミカエルはウィスタリアとルカに声を掛けて、とりあえず自宅で話を聞くことにした。
自宅の居間にウィスタリアとルカを案内したミカエルは、全員分のコーヒーを淹れて振る舞ってから話をはじめた。
「さて、踊っていると思っていた村人のことだけれど、ウィスタリアは随分と踊りについて詳しいみたいだね。
どうしてなんだい?」
その問いに、ウィスタリアは瞬きをしてから返す。
「そういえば、ミカエルにはおれが音楽院にいたって話をしてなかったっけ」
「音楽院? それは初耳だね」
「おれは元々オペラ歌手だったから、踊りは見慣れてるんだよ」
「そうなのかい? ああ、でも、なるほど……」
オペラ歌手なら、練習の時や舞台に立ったときに、踊り子の踊りも見慣れているのは不思議ではない。以前ウィスタリアの世話をしたときにその話を出していなかったことが気になったけれども、それなりの事情があるのだろうと、ミカエルはあえてそのことには触れない。
ミカエルが納得していると、ウィスタリアがすこし声を低めてこう続ける。
「それに、音楽院にいた頃、時々ああいう風に動いて止まらなくなるやつがいたんだ」
それを聞いて、ミカエルもルカも驚いた顔をしてウィスタリアを見る。
ルカが恐る恐るウィスタリアに問いかける。
「その、あの村人のようになった人は、どのように治していたのですか?」
そう、その方法さえわかれば今回の件は解決するのだ。ルカだけでなく、ミカエルも期待の視線をウィスタリアに向ける。
けれども、ウィスタリアは頭を振ってこう返す。
「それが、よくわからないんだ」
「わからない?」
「うん」
ふたりのやりとりを聞いてミカエルは考える。なにか一過性の病なのか、本当に魔女の気まぐれな呪いなのか。しかし考えているだけではなにも解決しない。
「ウィスタリア、動いて止まらなくなった人を治すときに、音楽院ではどうしていたんだい?」
ミカエルの質問に、ウィスタリアは斜め上を見ながら答える。
「ベッドに縛り付けて、食事をさせていたら自然と治ってた」
「自然にかい?」
やはりこれは、時間が経てば解ける呪いなのだろうか。そうは思ったけれども、ミカエルは直感的に、たしかな解決法があるのではないかと推測する。
「音楽院でああいうことが起こるときは、どんな環境下でだい?」
「えっと、興行で街から街へと移動する途中。旅が長くなると時々ああなる」
「なるほど」
ウィスタリアの証言だけでは、あの現象の原因はわかりそうにない。
とりあえず、今起こっていることに対処していくしかないという話をして、ミカエルはふたりに言う。
「とりあえず、件の村人を診ていただけませんか? 踊り続けている村人も止めなくてはいけませんし」
ミカエルの言葉に、ルカが返す。
「それでしたら、麦の籾殻を詰めた袋をいくつか用意していただきたいです」
「わかりました」
籾殻をなにに使うかはわからなかったけれども、ミカエルは指示に従い籾殻を詰めた袋を作る。それから、三人揃って広場へと向かった。
広場に行くと、相変わらす踊り続ける村人が何人もいた。ミカエルが体当たりで村人を押さえつけようと身構えると、その横からルカが籾殻の入った袋を村人に向かって投げつけ、命中させる。余程力がこもっていたのだろう、袋を胴に当てられた村人は短い声を上げながら倒れ込む。
随分と見事な腕前だ。ミカエルはそう感心しながら、ウィスタリアに手伝ってもらい、倒れた村人達をそれぞれの家へと運び込む。それから、今までのように村人をベッドに縛り付けてひとりずつようすを見ていった。
真っ先に目に入るのは、踊り続けたことによってすりむけた足裏。そして、どうして踊っていたのかを訊ねても、村人はわけのわからないことを口走るばかりだ。
動き続ける村人の家族が、不安そうにウィスタリアに縋る。
「ああ、修道士様、どうかこの人の呪いを解いてください。
神様の救いを祈って下さい」
村人の家族の言葉に、ウィスタリアとルカは胸の前で十字を切って祈りの言葉を唱える。その間、ミカエルは動き続ける村人の体だけでなく、瞳の中も覗き込んでいた。
踊り続けていた村人全員のようすを見て、ウィスタリアとルカが祈りを上げて、またいったんミカエルの家へと戻ってきた。
居間のテーブルに着いたルカが不安そうに口を開く。
「本当に、あれは自然に治るものなのですか?
私にはどうにも、尋常でないもののように見えるのですが……」
ウィスタリアも、どう治すべきなのかまではわからないのだろう。腕を組んで目を閉じている。
そのふたりに、しばらく考え事をしていたミカエルがこう告げる。
「なんとなく、これではないかという原因が思い当たったよ」
ルカの問いに、ミカエルは今までの経緯を説明する。ある日突然踊り続ける村人が出始め、その踊りが感染している。その説明に、ルカは難しそうな顔をする。
「踊りというのは感染するものなのですか?
いえ、いかんせん私は、そういったことに詳しくないので……」
「まぁ、修道士様ともなれば、踊りとは無縁の生活ですよね」
ルカとミカエルが話している横で、ウィスタリアはじっと踊る村人達をひとりずつ目で追っている。
それから、固い声でこう言った。
「あれは踊ってるんじゃない」
その言葉に、ミカエルはウィスタリアの方を向く。
「どうして踊っているわけではないとわかるんだい?」
その問いに、ウィスタリアは村人達をじっと見つめて目で追いながら返す。
「あれは踊りのステップじゃない。
本当に踊っているのであれば、もっとリズムに乗った規則的なステップを踏むはずだ。
でも、あの村人達のステップはリズムがめちゃくちゃで規則なんてものはない。
だから、あれは踊りではないなにかだよ」
ミカエル達の後に付いてきていた村人達がウィスタリアの言葉を聞いてざわめく。
踊っているのではないなら、やはりあれは呪いなのではないか。魔女がこの村に呪いをかけたんだ。口々にそう言って、村人達はウィスタリアに懇願する。
「修道士様、どうかこの村にかけられた呪いを解いてください。
それとも、呪いにかかった人は、死ぬまで呪いが解けないのでしょうか。
そんな恐ろしいことは耐えられません」
村人達の言葉にルカは戸惑っているけれども、ウィスタリアは堂々とした態度で村人達にこう告げる。
「大丈夫です。時間はかかりますがこの呪いのようなものは解決することができます。
そのためにみなさんにご協力を仰ぐこともあるかもしれません。
ですので、どうかいったん、落ち着いてください」
ウィスタリアの言葉に、ミカエルはどうやって踊っている村人達を治すのだろうと思う。それは他の村人達も同様なようだった。
「我々にできることなら協力します。
どのようにして呪いを解くのでしょうか」
村人の問いに、ウィスタリアはミカエルの方をちらりと見てから返す。
「とりあえず、おれ達を呼んだこの人と話がしたいです。
ゆっくりと話をして、より良い解決法を取りたいのです」
村人達は、ミカエルに縋るような視線を送る。それを感じ取ったミカエルはウィスタリアとルカに声を掛けて、とりあえず自宅で話を聞くことにした。
自宅の居間にウィスタリアとルカを案内したミカエルは、全員分のコーヒーを淹れて振る舞ってから話をはじめた。
「さて、踊っていると思っていた村人のことだけれど、ウィスタリアは随分と踊りについて詳しいみたいだね。
どうしてなんだい?」
その問いに、ウィスタリアは瞬きをしてから返す。
「そういえば、ミカエルにはおれが音楽院にいたって話をしてなかったっけ」
「音楽院? それは初耳だね」
「おれは元々オペラ歌手だったから、踊りは見慣れてるんだよ」
「そうなのかい? ああ、でも、なるほど……」
オペラ歌手なら、練習の時や舞台に立ったときに、踊り子の踊りも見慣れているのは不思議ではない。以前ウィスタリアの世話をしたときにその話を出していなかったことが気になったけれども、それなりの事情があるのだろうと、ミカエルはあえてそのことには触れない。
ミカエルが納得していると、ウィスタリアがすこし声を低めてこう続ける。
「それに、音楽院にいた頃、時々ああいう風に動いて止まらなくなるやつがいたんだ」
それを聞いて、ミカエルもルカも驚いた顔をしてウィスタリアを見る。
ルカが恐る恐るウィスタリアに問いかける。
「その、あの村人のようになった人は、どのように治していたのですか?」
そう、その方法さえわかれば今回の件は解決するのだ。ルカだけでなく、ミカエルも期待の視線をウィスタリアに向ける。
けれども、ウィスタリアは頭を振ってこう返す。
「それが、よくわからないんだ」
「わからない?」
「うん」
ふたりのやりとりを聞いてミカエルは考える。なにか一過性の病なのか、本当に魔女の気まぐれな呪いなのか。しかし考えているだけではなにも解決しない。
「ウィスタリア、動いて止まらなくなった人を治すときに、音楽院ではどうしていたんだい?」
ミカエルの質問に、ウィスタリアは斜め上を見ながら答える。
「ベッドに縛り付けて、食事をさせていたら自然と治ってた」
「自然にかい?」
やはりこれは、時間が経てば解ける呪いなのだろうか。そうは思ったけれども、ミカエルは直感的に、たしかな解決法があるのではないかと推測する。
「音楽院でああいうことが起こるときは、どんな環境下でだい?」
「えっと、興行で街から街へと移動する途中。旅が長くなると時々ああなる」
「なるほど」
ウィスタリアの証言だけでは、あの現象の原因はわかりそうにない。
とりあえず、今起こっていることに対処していくしかないという話をして、ミカエルはふたりに言う。
「とりあえず、件の村人を診ていただけませんか? 踊り続けている村人も止めなくてはいけませんし」
ミカエルの言葉に、ルカが返す。
「それでしたら、麦の籾殻を詰めた袋をいくつか用意していただきたいです」
「わかりました」
籾殻をなにに使うかはわからなかったけれども、ミカエルは指示に従い籾殻を詰めた袋を作る。それから、三人揃って広場へと向かった。
広場に行くと、相変わらす踊り続ける村人が何人もいた。ミカエルが体当たりで村人を押さえつけようと身構えると、その横からルカが籾殻の入った袋を村人に向かって投げつけ、命中させる。余程力がこもっていたのだろう、袋を胴に当てられた村人は短い声を上げながら倒れ込む。
随分と見事な腕前だ。ミカエルはそう感心しながら、ウィスタリアに手伝ってもらい、倒れた村人達をそれぞれの家へと運び込む。それから、今までのように村人をベッドに縛り付けてひとりずつようすを見ていった。
真っ先に目に入るのは、踊り続けたことによってすりむけた足裏。そして、どうして踊っていたのかを訊ねても、村人はわけのわからないことを口走るばかりだ。
動き続ける村人の家族が、不安そうにウィスタリアに縋る。
「ああ、修道士様、どうかこの人の呪いを解いてください。
神様の救いを祈って下さい」
村人の家族の言葉に、ウィスタリアとルカは胸の前で十字を切って祈りの言葉を唱える。その間、ミカエルは動き続ける村人の体だけでなく、瞳の中も覗き込んでいた。
踊り続けていた村人全員のようすを見て、ウィスタリアとルカが祈りを上げて、またいったんミカエルの家へと戻ってきた。
居間のテーブルに着いたルカが不安そうに口を開く。
「本当に、あれは自然に治るものなのですか?
私にはどうにも、尋常でないもののように見えるのですが……」
ウィスタリアも、どう治すべきなのかまではわからないのだろう。腕を組んで目を閉じている。
そのふたりに、しばらく考え事をしていたミカエルがこう告げる。
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