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第二章 おもちゃの下僕とおやつの下僕
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今日は下僕が朝からずっと家にいて、外に出て行ってない。
いつもこうやっておうちにいてくれたらいいのに。そう思いながらキャットタワーの上で下僕を監視していると。ピンポーンという音が聞こえてきた。
この音が聞こえたっていうことは、他の人間が来たわね。どんな人間が来るかわからないから、下僕が危ない目に遭わないように、下僕と一緒に玄関まで行く。
「いらっしゃい」
そう言った下僕が入り口を開けると、聴き慣れた声で立っている人間が返事をする。
「久しぶり」
「お久しぶりです」
この声は、おもちゃの下僕とおやつの下僕だ!
このふたりはいつも、わたしのおもちゃやおやつを持ってくる、下僕の次の次にお気に入りの下僕たちだ。このふたりなら下僕になにかしたりしないので安心だ。
おもちゃの下僕とおやつの下僕がおうちの中に入ってソファに座ると、下僕が台所から下僕用のごはんを持ってきた。
「恵も愛も昼飯食ってないだろ。
おみみと遊ぶ前に食べとけ」
そう言った下僕がおもちゃの下僕とおやつの下僕にごはんを渡すと、おやつの下僕がうれしそうに言う。
「いつもありがとうございます。
おみみちゃんと遊べる上に、緑君の手料理が食べられるなんて、なんてうれしいんでしょう」
すると、おもちゃの下僕がじとっとおやつの下僕を見てこう言った。
「愛、おまえそういうところだぞ」
「恵君は緑君の手料理になにか不満があるんですか?」
「別に不満はないが……んん……」
おもちゃの下僕とおやつの下僕がお話してると、下僕がおもちゃの下僕の隣に座ってごはんを食べるやつを見せる。
「まあまあ、恵も愛も不満が無いなら食べてくれよ。ちょっと冷めてるけど」
「そうだな。いただきます」
「いただきます」
下僕が声を掛けると、おもちゃの下僕もおやつの下僕もガツガツとごはんを食べる。
すごい勢いでごはんを食べて、ごはん皿が空になったおもちゃの下僕が台所に行ってから、持ってきてた袋からあのシャカシャカおもちゃを出して動かす。
「おみみちゃん、僕と遊ぼう」
遊ぶわ! おもちゃの下僕が持ってくるおもちゃはいつもおもしろい動きをして、追いかけるのが楽しいの。捕まえたらすぐに逃げるんじゃなくて、ちょっとだけ動かなくなってからぱっといなくなるのもおもしろいのよ。
走ったり跳ねたりして一生懸命おもちゃを追いかけてると、急におもちゃの動きがつまらなくなった。
「おみみちゃん、今度は僕と遊びましょう」
なんでかとおもったら、おもちゃの根元をおやつの下僕が持っていた。
おやつの下僕がおもちゃを持ってると、なんでかしらないけどおもちゃがおもしろくない動き方になるの。だからわたしはそっぽを向いてその場に座り込んだ。
「おみみちゃん……どうして……」
なんだかしょぼんとしてるけど、あなたはおやつを持ってきたんでしょう。よこしなさい。と言うと、下僕がおやつの下僕に話し掛ける。
「おやつが欲しいってさ」
「おやつですか! あげてもいいんですか?」
「いいよ。一本だけな」
すると、おやつの下僕は持ってきてた袋から見覚えのある細長い袋を出す。あれはぺろぺろおやつだ。
「おみみちゃん、今日はマグロ味ですよ」
おやつの下僕がぺろぺろおやつを出してくるので舐めると、とってもおいしい味がした。
わたしがおやつを舐めている間、おやつの下僕がわたしの背中を撫でてるけど、いつもおやつをくれている間は撫でさせてあげるようにしている。
あっという間におやつを食べ終わって顔を洗っていると、急におやつの下僕がわたしのことを抱っこしてきた。
なにをするのよ! びっくりしてわたしはおやつの下僕の顔を何度も何度も思いっきり叩く。ほんとうは引っ掻きたいけど、爪を出しちゃダメって下僕にも前の下僕にも言われてるから、爪は出さない。
すると、おやつの下僕がうれしそうな声を出す。
「ありがとうございます!
ありがとうございます!」
どうしてよろこんでるの! なんだか気味が悪くなっておやつの下僕の腕から抜け出して、キャットタワーの上に登る。
キャットタワーの上から監視していると、おもちゃの下僕がおやつの下僕の顔を覗き込んでいる。
「愛、大丈夫か?」
おもちゃの下僕と同じように、下僕もおやつの下僕の顔を見て言う。
「爪を出さないよう躾けてあるから大丈夫だと思うけど、痛いとこ無い?」
「もっと叩かれたかったです」
「大丈夫そうだな」
下僕の安心した顔を見て、おもちゃの下僕がむすっとする。
「僕もおみみちゃんに叩かれたかった」
なんで? なんでそんなにわたしを怒らせたいの?
わたしが不思議に思っていると、下僕がソファから立ち上がってどこかに行った。
すると、おやつの下僕とおもちゃの下僕が顔を見合わせてからわたしのトイレに近寄って、匂いを嗅ぎはじめた。
なにをしているの? わたしの匂いを覚えてなにかするつもりなの? おもわずしっぽがぶわっとなる。
おやつの下僕とおもちゃの下僕はすぐにトイレから離れてまたソファに座る。すると下僕も戻ってきたので、わたしは急いで下僕に今あったことを話す。
「あれ? おみみがたぬしっぽになってるけどなんかあった?」
「いや、なにもしていないですよ」
「おみみちゃん、急にどうしたんだ?」
おやつの下僕もおもちゃの下僕も素知らぬ顔をしている。
どうして……どうしてトイレを……下僕だってあんなことしないのに……
いつもこうやっておうちにいてくれたらいいのに。そう思いながらキャットタワーの上で下僕を監視していると。ピンポーンという音が聞こえてきた。
この音が聞こえたっていうことは、他の人間が来たわね。どんな人間が来るかわからないから、下僕が危ない目に遭わないように、下僕と一緒に玄関まで行く。
「いらっしゃい」
そう言った下僕が入り口を開けると、聴き慣れた声で立っている人間が返事をする。
「久しぶり」
「お久しぶりです」
この声は、おもちゃの下僕とおやつの下僕だ!
このふたりはいつも、わたしのおもちゃやおやつを持ってくる、下僕の次の次にお気に入りの下僕たちだ。このふたりなら下僕になにかしたりしないので安心だ。
おもちゃの下僕とおやつの下僕がおうちの中に入ってソファに座ると、下僕が台所から下僕用のごはんを持ってきた。
「恵も愛も昼飯食ってないだろ。
おみみと遊ぶ前に食べとけ」
そう言った下僕がおもちゃの下僕とおやつの下僕にごはんを渡すと、おやつの下僕がうれしそうに言う。
「いつもありがとうございます。
おみみちゃんと遊べる上に、緑君の手料理が食べられるなんて、なんてうれしいんでしょう」
すると、おもちゃの下僕がじとっとおやつの下僕を見てこう言った。
「愛、おまえそういうところだぞ」
「恵君は緑君の手料理になにか不満があるんですか?」
「別に不満はないが……んん……」
おもちゃの下僕とおやつの下僕がお話してると、下僕がおもちゃの下僕の隣に座ってごはんを食べるやつを見せる。
「まあまあ、恵も愛も不満が無いなら食べてくれよ。ちょっと冷めてるけど」
「そうだな。いただきます」
「いただきます」
下僕が声を掛けると、おもちゃの下僕もおやつの下僕もガツガツとごはんを食べる。
すごい勢いでごはんを食べて、ごはん皿が空になったおもちゃの下僕が台所に行ってから、持ってきてた袋からあのシャカシャカおもちゃを出して動かす。
「おみみちゃん、僕と遊ぼう」
遊ぶわ! おもちゃの下僕が持ってくるおもちゃはいつもおもしろい動きをして、追いかけるのが楽しいの。捕まえたらすぐに逃げるんじゃなくて、ちょっとだけ動かなくなってからぱっといなくなるのもおもしろいのよ。
走ったり跳ねたりして一生懸命おもちゃを追いかけてると、急におもちゃの動きがつまらなくなった。
「おみみちゃん、今度は僕と遊びましょう」
なんでかとおもったら、おもちゃの根元をおやつの下僕が持っていた。
おやつの下僕がおもちゃを持ってると、なんでかしらないけどおもちゃがおもしろくない動き方になるの。だからわたしはそっぽを向いてその場に座り込んだ。
「おみみちゃん……どうして……」
なんだかしょぼんとしてるけど、あなたはおやつを持ってきたんでしょう。よこしなさい。と言うと、下僕がおやつの下僕に話し掛ける。
「おやつが欲しいってさ」
「おやつですか! あげてもいいんですか?」
「いいよ。一本だけな」
すると、おやつの下僕は持ってきてた袋から見覚えのある細長い袋を出す。あれはぺろぺろおやつだ。
「おみみちゃん、今日はマグロ味ですよ」
おやつの下僕がぺろぺろおやつを出してくるので舐めると、とってもおいしい味がした。
わたしがおやつを舐めている間、おやつの下僕がわたしの背中を撫でてるけど、いつもおやつをくれている間は撫でさせてあげるようにしている。
あっという間におやつを食べ終わって顔を洗っていると、急におやつの下僕がわたしのことを抱っこしてきた。
なにをするのよ! びっくりしてわたしはおやつの下僕の顔を何度も何度も思いっきり叩く。ほんとうは引っ掻きたいけど、爪を出しちゃダメって下僕にも前の下僕にも言われてるから、爪は出さない。
すると、おやつの下僕がうれしそうな声を出す。
「ありがとうございます!
ありがとうございます!」
どうしてよろこんでるの! なんだか気味が悪くなっておやつの下僕の腕から抜け出して、キャットタワーの上に登る。
キャットタワーの上から監視していると、おもちゃの下僕がおやつの下僕の顔を覗き込んでいる。
「愛、大丈夫か?」
おもちゃの下僕と同じように、下僕もおやつの下僕の顔を見て言う。
「爪を出さないよう躾けてあるから大丈夫だと思うけど、痛いとこ無い?」
「もっと叩かれたかったです」
「大丈夫そうだな」
下僕の安心した顔を見て、おもちゃの下僕がむすっとする。
「僕もおみみちゃんに叩かれたかった」
なんで? なんでそんなにわたしを怒らせたいの?
わたしが不思議に思っていると、下僕がソファから立ち上がってどこかに行った。
すると、おやつの下僕とおもちゃの下僕が顔を見合わせてからわたしのトイレに近寄って、匂いを嗅ぎはじめた。
なにをしているの? わたしの匂いを覚えてなにかするつもりなの? おもわずしっぽがぶわっとなる。
おやつの下僕とおもちゃの下僕はすぐにトイレから離れてまたソファに座る。すると下僕も戻ってきたので、わたしは急いで下僕に今あったことを話す。
「あれ? おみみがたぬしっぽになってるけどなんかあった?」
「いや、なにもしていないですよ」
「おみみちゃん、急にどうしたんだ?」
おやつの下僕もおもちゃの下僕も素知らぬ顔をしている。
どうして……どうしてトイレを……下僕だってあんなことしないのに……
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