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沼にはまったひと
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その部屋は異様だった。
どう異様なのかと言うと、部屋の棚には所狭しと人形が飾られているのだ。
その部屋には二段ベッドが置かれていて、その枕元にも人形が寝かされている。
部屋の主は、二段ベッドが有ると言う所から解る通り二人。
その部屋の主が、今両手に荷物を持って帰って来た。
二人の持っている荷物には、石膏粘土やグラスアイ、その他には布や人形用の髪の毛が入っている。
「あ~、重かった」
「だから宅急便で送って貰おうよって言ったのに……」
「だめよ。
宅配料金払う位だったら他の事に使う」
「それにしてもさぁ。
石膏粘土五キロとか過酷だと思うんだけど」
そんな話をしながら荷物を開ける二人。
二人の名前は理恵と木更。
月に二回、人形教室に通っている双子の姉妹だ。
所で二人の部屋に沢山ある人形、どんな物かと言うと、良くあるソフビ製の着せ替え人形だ。
きっと誰しも一度は目にした事が有る一般的な人形と、その友達。
どうやらその人形群は色々とバリエーションが有るらしく、ゆうに三桁を越す程のコレクションをしているコレクターも少なくない。
理恵と木更は昔からこの着せ替え人形が大好きで、大学に進学してバイトが自由に出来る様になって以来、コレクションは増え続けている。
そして、当然他の人形にも興味があるし、作る事にも興味がある。
よって二人のバイト代は、ほぼ全てと言って良い程人形関連の事へと費やされている。
今日買い物に行って買って来たのは創作人形の材料。
アンティークで見かけたり、有名作家が手がけることの多い、薄い陶器で出来たビスクドール等という物を作るにはまだまだ技量の足りない二人。
今教室で習っているのは石膏で作る、球体間接人形の作り方だ。
二人が初めて作った人形も、棚の上に飾られている。
木更が作ったのは、黒いショートヘアで少し目つきのきつい少年の人形。
理恵が作ったのは長い金髪で穏やかな顔をした少女の人形。
どちらもぎこちなさの有る感じがするが、二人の好みの違いが出ている。
荷物の整理が終わった二人は、自分が作った石膏人形をふと見やる。
「…………」
「…………」
少し埃がかかっているのが目に付いたのか、理恵が二体の人形の埃を払う。
「次の子が出来上がるの、何時になるかな?」
理恵のその言葉に、木更が人形のデザイン画片手に笑って答える。
「気が早いわね。
まだその子達が出来上がったばっかりじゃない。
次の子はまだデザイン画の段階でしょ?」
「そうだけど。
でも、もうグラスアイまで買って有るんだもん、早く次の子の顔が見たいよ。
結局石膏粘土五キロ運ぶ事にもなったし」
「……宅配使わなかった事根に持ってるわね……」
重い物を運ばされた事を根に持っている様子の理恵に、木更は溜息をつくばかり。
しかし、新しい人形を作るのが楽しみなのは木更も同じ。
全く何も解らない所から初めた石膏人形作り。
それは楽しいのは勿論だけれども、それ以外に大変な事もある。
しっかりデッサンを取らないと自立してくれないとか、後は表面のヤスリがけも大変だ。
けれども二人には夢があった。
いつか、人形作家になりたいと、そう思っている。
今はまだ巧くなくても、きっと何時か…
沢山の人形に囲まれて、二人はそんな夢を見ているのだった。
どう異様なのかと言うと、部屋の棚には所狭しと人形が飾られているのだ。
その部屋には二段ベッドが置かれていて、その枕元にも人形が寝かされている。
部屋の主は、二段ベッドが有ると言う所から解る通り二人。
その部屋の主が、今両手に荷物を持って帰って来た。
二人の持っている荷物には、石膏粘土やグラスアイ、その他には布や人形用の髪の毛が入っている。
「あ~、重かった」
「だから宅急便で送って貰おうよって言ったのに……」
「だめよ。
宅配料金払う位だったら他の事に使う」
「それにしてもさぁ。
石膏粘土五キロとか過酷だと思うんだけど」
そんな話をしながら荷物を開ける二人。
二人の名前は理恵と木更。
月に二回、人形教室に通っている双子の姉妹だ。
所で二人の部屋に沢山ある人形、どんな物かと言うと、良くあるソフビ製の着せ替え人形だ。
きっと誰しも一度は目にした事が有る一般的な人形と、その友達。
どうやらその人形群は色々とバリエーションが有るらしく、ゆうに三桁を越す程のコレクションをしているコレクターも少なくない。
理恵と木更は昔からこの着せ替え人形が大好きで、大学に進学してバイトが自由に出来る様になって以来、コレクションは増え続けている。
そして、当然他の人形にも興味があるし、作る事にも興味がある。
よって二人のバイト代は、ほぼ全てと言って良い程人形関連の事へと費やされている。
今日買い物に行って買って来たのは創作人形の材料。
アンティークで見かけたり、有名作家が手がけることの多い、薄い陶器で出来たビスクドール等という物を作るにはまだまだ技量の足りない二人。
今教室で習っているのは石膏で作る、球体間接人形の作り方だ。
二人が初めて作った人形も、棚の上に飾られている。
木更が作ったのは、黒いショートヘアで少し目つきのきつい少年の人形。
理恵が作ったのは長い金髪で穏やかな顔をした少女の人形。
どちらもぎこちなさの有る感じがするが、二人の好みの違いが出ている。
荷物の整理が終わった二人は、自分が作った石膏人形をふと見やる。
「…………」
「…………」
少し埃がかかっているのが目に付いたのか、理恵が二体の人形の埃を払う。
「次の子が出来上がるの、何時になるかな?」
理恵のその言葉に、木更が人形のデザイン画片手に笑って答える。
「気が早いわね。
まだその子達が出来上がったばっかりじゃない。
次の子はまだデザイン画の段階でしょ?」
「そうだけど。
でも、もうグラスアイまで買って有るんだもん、早く次の子の顔が見たいよ。
結局石膏粘土五キロ運ぶ事にもなったし」
「……宅配使わなかった事根に持ってるわね……」
重い物を運ばされた事を根に持っている様子の理恵に、木更は溜息をつくばかり。
しかし、新しい人形を作るのが楽しみなのは木更も同じ。
全く何も解らない所から初めた石膏人形作り。
それは楽しいのは勿論だけれども、それ以外に大変な事もある。
しっかりデッサンを取らないと自立してくれないとか、後は表面のヤスリがけも大変だ。
けれども二人には夢があった。
いつか、人形作家になりたいと、そう思っている。
今はまだ巧くなくても、きっと何時か…
沢山の人形に囲まれて、二人はそんな夢を見ているのだった。
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