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第十三章 アンティークショップで衝動買い
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梅の花が見頃になる頃、悠希は鎌谷と一緒に銀座を訪れた。お茶屋さんで一服して、それから、離れた所に有るアンティークショップへと向かう。
悠希はアンティークやヴィンテージが好きなので、銀座や青山にあるアンティークショップに度々足を運ぶ。
「悠希、今日はなんか買う気あんのか?」
「んー、サフィレットのアクセサリー有ったら欲しいなって思うけど」
欲しいなとは言う物の、悠希が実際に買い物をすることは滅多に無い。手の出る価格の物は有るのだが、決して安い物では無いからだ。
鎌谷と一緒に、アンティークショップが並んでいるビルの中へと入る。
一階フロアをぐるりと回ると、入り口近くの店に、薄い赤紫の中に青い光が宿るガラスの指輪があった。悠希が欲しいと言っていたサフィレットガラスのアクセサリーだが、流石に今は生産されていない物を使っているだけ有って高値が付いている。
流石にこれは買えないなと、悠希は鎌谷と一緒に一階フロアを出て地下フロアへと階段で降りていく。
地下フロアに降りると、そこにも雑多な雰囲気のアンティークやヴィンテージの店が並んでいる。
まずはフロアの奥に有る着物の古着屋を見て、それから他の店も回る。
展示されている雑貨や、人形や、ジュエリーを見ている内に、ふと目に留まる物が有った。
ゴールド色の金具に、親指の爪ほどもある緑色の石が填められた髪飾りだ。それがどうしようも無く気になってしまい、じっくりと見入る。
どうやら、金具は純度の低い金で、石はエメラルドのようだった。気になると言っても、これは流石に手の出る値段では無いだろう。そう思いつつも値段を確認すると、どういうわけだか何故なのだか、なんとかギリギリ支払える値段が書かれていた。
これは一体どういう事だと、悠希は不思議に思う。
「鎌谷君、これ、どう思う?」
そう言って鎌谷を持ち上げ、鎌谷にもショーケースを見せると、鎌谷はこう言った。
「俺が見てもよくわかんないっての。
でもそうだな、俺からしてもこの値段は安いな」
「やっぱりそう思う?」
悠希も鎌谷も安いと判断したが、実の所この髪飾りは先程のサフィレットの指輪より高額ではある。
買えなくは無い。しかし高額だ。その事で暫く悩んでいると、ふと耳元で声がした。
『これはお前の物だ』
それに驚いて周りを見わたしたが、近くには鎌谷以外に誰も居ない。周りを突然見わたし始めた悠希のことを鎌谷は不思議そうに見ているし、鎌谷が何か言ったというわけでも無いようだ。
一体今の声は何だったのか。不思議に思ったけれど、エメラルドの髪飾りがより魅力的に見えてきて、悠希は店員を呼んで髪飾りを購入した。
財布の余裕も無くなりアンティークショップの入ったビルから出る悠希と鎌谷。
丁度日も暮れて来たし、そろそろ帰ろうかと駅へと向かう。
「ああ、結局買っちゃった」
「後悔してんなら返品しに行っても良いんだぞ?」
「後悔はしてないけど、結構大きい出費だったなぁ」
電車に乗り、悠希は吊革に掴まって、鎌谷は悠希の袴に掴まって、電車の中で立っている。
揺れる電車の中で、悠希が先程買って鞄の中に入っている髪飾りの事をぼんやりと考えていたら、また耳元で声がした。
『もう手放すんじゃ無いぞ』
はっとした悠希が電車の窓を見ると、すぐ側に西洋風の、古めかしい服を着た男性が立っていた。
何でこんな人が電車に乗っているんだろう。そう思って改めて窓を見ると、その男性の姿は消え去っていた。
悠希はアンティークやヴィンテージが好きなので、銀座や青山にあるアンティークショップに度々足を運ぶ。
「悠希、今日はなんか買う気あんのか?」
「んー、サフィレットのアクセサリー有ったら欲しいなって思うけど」
欲しいなとは言う物の、悠希が実際に買い物をすることは滅多に無い。手の出る価格の物は有るのだが、決して安い物では無いからだ。
鎌谷と一緒に、アンティークショップが並んでいるビルの中へと入る。
一階フロアをぐるりと回ると、入り口近くの店に、薄い赤紫の中に青い光が宿るガラスの指輪があった。悠希が欲しいと言っていたサフィレットガラスのアクセサリーだが、流石に今は生産されていない物を使っているだけ有って高値が付いている。
流石にこれは買えないなと、悠希は鎌谷と一緒に一階フロアを出て地下フロアへと階段で降りていく。
地下フロアに降りると、そこにも雑多な雰囲気のアンティークやヴィンテージの店が並んでいる。
まずはフロアの奥に有る着物の古着屋を見て、それから他の店も回る。
展示されている雑貨や、人形や、ジュエリーを見ている内に、ふと目に留まる物が有った。
ゴールド色の金具に、親指の爪ほどもある緑色の石が填められた髪飾りだ。それがどうしようも無く気になってしまい、じっくりと見入る。
どうやら、金具は純度の低い金で、石はエメラルドのようだった。気になると言っても、これは流石に手の出る値段では無いだろう。そう思いつつも値段を確認すると、どういうわけだか何故なのだか、なんとかギリギリ支払える値段が書かれていた。
これは一体どういう事だと、悠希は不思議に思う。
「鎌谷君、これ、どう思う?」
そう言って鎌谷を持ち上げ、鎌谷にもショーケースを見せると、鎌谷はこう言った。
「俺が見てもよくわかんないっての。
でもそうだな、俺からしてもこの値段は安いな」
「やっぱりそう思う?」
悠希も鎌谷も安いと判断したが、実の所この髪飾りは先程のサフィレットの指輪より高額ではある。
買えなくは無い。しかし高額だ。その事で暫く悩んでいると、ふと耳元で声がした。
『これはお前の物だ』
それに驚いて周りを見わたしたが、近くには鎌谷以外に誰も居ない。周りを突然見わたし始めた悠希のことを鎌谷は不思議そうに見ているし、鎌谷が何か言ったというわけでも無いようだ。
一体今の声は何だったのか。不思議に思ったけれど、エメラルドの髪飾りがより魅力的に見えてきて、悠希は店員を呼んで髪飾りを購入した。
財布の余裕も無くなりアンティークショップの入ったビルから出る悠希と鎌谷。
丁度日も暮れて来たし、そろそろ帰ろうかと駅へと向かう。
「ああ、結局買っちゃった」
「後悔してんなら返品しに行っても良いんだぞ?」
「後悔はしてないけど、結構大きい出費だったなぁ」
電車に乗り、悠希は吊革に掴まって、鎌谷は悠希の袴に掴まって、電車の中で立っている。
揺れる電車の中で、悠希が先程買って鞄の中に入っている髪飾りの事をぼんやりと考えていたら、また耳元で声がした。
『もう手放すんじゃ無いぞ』
はっとした悠希が電車の窓を見ると、すぐ側に西洋風の、古めかしい服を着た男性が立っていた。
何でこんな人が電車に乗っているんだろう。そう思って改めて窓を見ると、その男性の姿は消え去っていた。
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