日ノ本の歴史 始まりの話

Ittoh

文字の大きさ
上 下
41 / 49
「国号・国体」成立

日本成立 「行基」は、中央官僚の私的機関員?

しおりを挟む
 仏教の浸透には、もう一つの仕掛けがありました。「行基(668-749)」が、地方を巡ることで、治水土木事業や福祉医療行為を行い、困窮者のための布施屋を設置するといった、福祉事業を展開していました。民衆への仏教伝承は違法であり、行基の行動そのものは、罪に問われることでもありました。

 行基の行動は、中央政権にとっては、国家体制の秩序を乱すものであった。地方政権にとっては、墾田開発の推進、溜池の設置等による生産量の拡大、民間による社会福祉事業推進という効果があり、歓迎する内容となっていた。地方豪族に受け入れられた行基は、国家体制秩序を守る側の立場として、地域の福祉体制を確立させていったのである。

 中央政権からすれば、歓迎すべきことではないし、「僧尼令違反」に問われたとあるが、実質として罪に問われたことはなく、地域に仏教が浸透する貢献をおこなった。

「日本国現報善悪霊異記」が民間伝承で語られたのは、「国号・国体」の確立期であり、「行基」の活動結果であったともいえます。
「日本国現報善悪霊異記」で語られる、「善因善報、悪因悪報」は、行基の説話で用いられた「因果罪福」と繋がります。





<<<<<>>>>>
 国家の権威を示すための仏教から民間宗教への変化は、国家仏教の確立期に始まっています。
<<<<<>>>>>





 聖武天皇の御世、国家主導による社会福祉事業は、皇后(701-760)によって確立されていきます。困窮者への支援として「悲田院」を建立、医療施設として「施薬院」を建立しています。らい病患者の膿を、自ら吸ったとされることは、伝説として伝えられて、国立ハンセン病療養所「邑久光明園」と命名されています。
 仏教の伝播が、国家主導でおこなう先頭で活動されたのが、光明皇后であり、支援していたのが聖武天皇ということになります。

 行基(668-749)
 皇后(701-760)

 国家主導は、「記紀」の記述だけでなく「風土記」の記述にも現れています。地誌としての性格から、政治的な話は記載していませんが、地域伝承については記載されているのが「風土記」となります。それでも、国府によって編纂されている以上は、ある程度のフィルターがかかります。

 民間主導で仏教伝承されたのが、「日本霊異記(日本国現報善悪霊異記)」であり、纏められたのが800年代に入ってからとなります。800年以降は、僧侶であったとしても、一般庶民が文章を記述できる程度まで、教育宣伝が進んだということになります。国分寺そのものは、経費がかかることもあり、中央の財政が苦しくなれば、移転等によって民間活用され、民間教育宣伝機関ということになります。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

歴史小説 歴史以前の縄文文明

Ittoh
歴史・時代
 日ノ本の歴史は、1万2千年前の縄文土器文明に始まり、黒曜石を基軸通貨として、翡翠を貴重品とした文明圏を形成していた。  経済活動というのは、余分な商品があって、初めて始まる活動だと考えられる。自分で採取したものを、そのまま自分で使うだけであれば、そこに経済活動は発生しない。石器時代と呼ばれる時代から、縄文期に入っていった時、最初に商品となったのは、石であった。  石は、石器として最上級の品質であった、黒曜石である。  黒曜石は、石のままでは価値を持たない。  加工する知識・技術・技能があって始めて、鏃となり、釣り針となって、狩や漁の道具として使うことができる。 参考資料  CGS動画 「目からウロコの日本の歴史」 小名木善行&神谷宗幣  西田正規 著「人類のなかの定住革命」  安田喜憲 著「森と文明の物語」  鬼頭宏  著「人口から読む日本の歴史」  高木久史著「撰銭とビタ一文の戦国史」  松島義章著「貝が語る縄文海進」  水野正好著「縄文を語る」 日ノ本における、経済の始まりは、縄文期に遡ることができる。

【完結】斎宮異聞

黄永るり
歴史・時代
平安時代・三条天皇の時代に斎宮に選定された当子内親王の初恋物語。 第8回歴史・時代小説大賞「奨励賞」受賞作品。

新・大東亜戦争改

みたろ
歴史・時代
前作の「新・大東亜戦争」の内容をさらに深く彫り込んだ話となっています。第二次世界大戦のifの話となっております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【架空戦記】蒲生の忠

糸冬
歴史・時代
天正十年六月二日、本能寺にて織田信長、死す――。 明智光秀は、腹心の明智秀満の進言を受けて決起当初の腹案を変更し、ごく少勢による奇襲により信長の命を狙う策を敢行する。 その結果、本能寺の信長、そして妙覚寺の織田信忠は、抵抗の暇もなく首級を挙げられる。 両名の首級を四条河原にさらした光秀は、織田政権の崩壊を満天下に明らかとし、畿内にて急速に地歩を固めていく。 一方、近江国日野の所領にいた蒲生賦秀(のちの氏郷)は、信長の悲報を知るや、亡き信長の家族を伊勢国松ヶ島城の織田信雄の元に送り届けるべく安土城に迎えに走る。 だが、瀬田の唐橋を無傷で確保した明智秀満の軍勢が安土城に急速に迫ったため、女子供を連れての逃避行は不可能となる。 かくなる上は、戦うより他に道はなし。 信長の遺した安土城を舞台に、若き闘将・蒲生賦秀の活躍が始まる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...