日ノ本の歴史 始まりの話

Ittoh

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「国号・国体」成立

日本成立 日本流の内なる国際法

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 743年の墾田永年私財法は、「国号・国体」が成立した結果として、可能となった法律である。
 日本は、内乱を起こす必要すらなく、国内に自治権を持つ領域を認めるという形を、国家が許容したのです。

 日本国内で、自分達が開発し墾田した領域を国家(国司)が認めることで、私財法が成立します。つまり、国家から領有権を移譲されたことになります。自分の領域は、国家が守らない領域でもありますから、自治権を有し武力を有することで、排他的な力を持つ必要があります。

 武士の誕生は、墾田永年私財法に始まります。

 天平期からの日本として、費用負担の拡大に耐えられず、健児による国府軍の配備にとどめた地域が多くなりました。平安以降は、国軍の削減は加速し、九州・陸奥以外は、解体されます。私有地の保有者が、武装集団として、排他的な力を持ち、“武士”となっていくのは、国軍の解体によって、地方の非武装化が原因となります。

 平安期は、内国国際法の規約プロトコルが、習慣法として、始まった時期でもあります。鎌倉期は「守護・地頭」「国司・荘園」の並立期であり、錯綜する支配体制となっていて、国内で発生する、権益抗争を調整することが、鎌倉幕府の任でありました。

 喧嘩両成敗は、成文法となったのが、今川氏の「かな目録」から出て来る条文「喧嘩は、理非を論ぜず、双方死罪」と記載されている。これは、一揆等が「強訴」の間は許容されても、死傷者が発生する喧嘩となった場合は、双方共に断罪するという習慣法の流れから生まれている。比叡山の僧兵が、御所に押し寄せるまでは、許容範囲であっても、死傷者を出す刃傷沙汰となれば、罪に問われるということだ。しかしながら、死傷者が出た喧嘩の裁定としては、理由に関係なく死傷者が出た結果として、双方の尊厳を維持しつつ、どちらかが正しいという判断を下すことはできない。是非を問わず、「両者共に悪い」という形態を取る必要がある。

 鎌倉期の権益抗争は、御家人同士や国司との利害調整を含め、非常に多岐に渡って発生していた。両者が引けないために、裁定を幕府に願い出て、幕府は利害関係を調整することが仕事となっていた。

 「御成敗式目」という名称は、判りやすい抗争の裁定基準であり、喧嘩を成敗する法ということができます。





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  (1)領域を持っていること<自分が開拓した墾田(荘園)、恩賞となった土地
  (2)国民が住んでいること<一族郎党+領民
  (3)政府が存在してること<長を当主とした一家一門
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 国内の国という考え方は、荘園が始まって江戸幕府による幕藩体制まで、日本国内に1000年続く状態を示します。政治形態については、様々な状態がありますが、独立した自治権を有し、独自の武力を持つということでは、国内に国家が乱立していった時代ということになります。国内国家の乱立は、最終的に江戸時代に、幕藩体制という形で、確立していったことになります。

 明治期の人達が、国際法に馴染みやすかったのは、日本という国が、江戸時代には、六十余州三百藩という大小様々な国家の連合体であり、国同士の諍いや交易は、一定の幕藩体制下での規約プロトコルに従って解決していたことになります。

 まして江戸期は、日本という狭い国土に、大小三百近い国を抱え、利権の獲得や奪い合いが頻繁に行われていました。それぞれの藩にとって、自分の力を確保し、権益を確保することは、死活問題でもありました。それでも、借金が膨らんで、圧し潰される国も多かったため、明治期の廃藩置県にあたって、赤字財政に苦しんでいた藩からすれば、渡りに船な面があったのも事実です。

 国内に国があり、諸国を纏めた形で、中央政府もしくは幕府等の代行機関が存在する。これが、日本の国内における統治形態となります。基本的な構造は、現在まで続く、日本の統治体制となっています。

 日本では、戦後の流れとして、均一のサービスという考え方が浸透してしまっている。日本中の何処に住んでいても、近くにコンビニがあって、地域にモールがあって・・・という均質性への欲求である。一票の価値に違いが生じるといった、均一性の確保は、今後は不可能であるとお爺ぃは判断している。
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