日ノ本の歴史 始まりの話

Ittoh

文字の大きさ
上 下
29 / 49
古代から中世へ

古代から中世へ 母系社会と父系社会

しおりを挟む
「母系社会と父系社会は、単純に区別できない」

  男女の関係性を語るには、とてつもなく厄介な問題がある。夫は、妻を信じられるかである。猜疑心が強く、普段いない夫は、妻の貞淑を疑わずにいられるだろうか。NTRという言葉が流行ったように、ネトラレない保証があるだろうか。

  「King」という言葉がある。Kinというのは血、血族を意味するそうだ。「King of Britain」といえば、ブリテン島の住民にとって、血族王ということになる。血族の長が女性であれば、子供は血族の子である。しかしながら、血族の長が男性で、妻が異国の姫である場合、血族の子である証を必要とする。これが、「King」が「King」であるための問題となる。

  日本で女帝となった例は、いくかありますが、女帝が夫をとった例がありません。これは、女帝の夫を処遇することが、極めてむずかしいことになります。女帝を迎える事はできても、女帝に夫を迎えることができないのです。

  これは、かつての女王、卑弥呼が、巫女として君臨した日ノ本でも同じです巫女として君臨し、子を為すことはできたとしても、母となれば巫女に戻れません。つまりは、君臨し統治することができなくなります。
  また、日ノ本が法律として参考とした、大陸の諸国家は、母親が、政治に介入し、一族が力を持つことを恐れていました。女性関係から、幾度となく騒乱が生じた大陸にとって、女性を政治に関わらせないが、不文律になっていたという経緯があるのです。纏足が美しいといったことで、女性がモノ扱いされるようになった背景には、女性の政治や軍事介入を避ける意味合いがあります。

  女性からすると、誰のタネであれ、自分の子供はすべて、自分の血族です。自分からの地位の継承は問題ありません。ただし、地位が高い女性にとって、タネが子供を利用して、自分の権益を侵そうとすることが、問題となります。時には、子供自身が、自分の権益を欲しがることも、問題となります。
  権益の継承にあたって、揉め事を避けるためには、女帝のタネに関して規約プロトコルが必要となります。  
  嫉妬は、男女に関係なく生じますが、男の嫉妬は戦が絡んだりするのです。かつて、額田王に想いを寄せた、男達が戦乱を招いたという噂もあります。嫉妬や執心というものが、厄介な争い事を招くのは、男女に関係なく困ったモノです。

  日ノ本の場合、家刀自女という名称があります。明文化された記録が少ないため、役儀が明確に伝わっていませんが、一家一門の内務を司る者という意味合いがあったと考えます。

  外務と戦争は、陽務であり男の仕事。
  内務と育成は、陰務であり女の仕事。

  女系社会であった、日ノ本では、記録されるのは、外務と戦争であり、内務や育成について記録されることは少なくなります。巴御前や板額御前のように戦争に関わる女性がいたとしても、基本的には尼将軍北条政子のように内務と育成に関わることが、女性には多かったのです。
  鎌倉あたりまでは、女性の相続が認められていましたから、記録に残る女性も多かったのです。

  女性であれ男性であれ、棲み分けが上手くいくのは、業務の棲み分けができた時です。外務・戦争を夫が司り、内務・育成を女性が司る。神功皇后陛下のように、時に逆となる女性が出たとしても、内務・育成を夫が担当するのであれば、特に問題とはなりません。

  日ノ本では、女性が当主となり、夫を迎えるというのは、普通に行われていた行為である。嫁に行くか、婿に行くかの違いでしか無い。立場という意味では、嫁も婿も当主の下という序列は確定となる。当主の家は、ともかくとして、家来にとっては、嫁や婿は自分よりも序列が上となる。権門で権益が、大きく高くなる程、従う者にとって、納得がいかなくなる事が増える。
  家来全てが従う程の相手であれば、男女に関係なく、問題は小さくなるが、従えない相手ともなれば、家中がギクシャクしていくことになる。

 一天万乗の大君が、婿取りできないのは、一天万乗と民の狭間を抱く事が、困難であるからである。

  
  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

東へ征(ゆ)け ―神武東征記ー

長髄彦ファン
歴史・時代
日向の皇子・磐余彦(のちの神武天皇)は、出雲王の長髄彦からもらった弓矢を武器に人喰い熊の黒鬼を倒す。磐余彦は三人の兄と仲間とともに東の国ヤマトを目指して出航するが、上陸した河内で待ち構えていたのは、ヤマトの将軍となった長髄彦だった。激しい戦闘の末に長兄を喪い、熊野灘では嵐に遭遇して二人の兄も喪う。その後数々の苦難を乗り越え、ヤマト進撃を目前にした磐余彦は長髄彦と対面するが――。 『日本書紀』&『古事記』をベースにして日本の建国物語を紡ぎました。 ※この作品はNOVEL DAYSとnoteでバージョン違いを公開しています。

夢占

水無月麻葉
歴史・時代
時は平安時代の終わり。 伊豆国の小豪族の家に生まれた四歳の夜叉王姫は、高熱に浮かされて、無数の人間の顔が蠢く闇の中、家族みんなが黄金の龍の背中に乗ってどこかへ向かう不思議な夢を見た。 目が覚めて、夢の話をすると、父は吉夢だと喜び、江ノ島神社に行って夢解きをした。 夢解きの内容は、夜叉王の一族が「七代に渡り権力を握り、国を動かす」というものだった。 父は、夜叉王の吉夢にちなんで新しい家紋を「三鱗」とし、家中の者に披露した。 ほどなくして、夜叉王の家族は、夢解きのとおり、鎌倉時代に向けて、歴史の表舞台へと駆け上がる。 夜叉王自身は若くして、政略結婚により武蔵国の大豪族に嫁ぐことになったが、思わぬ幸せをそこで手に入れる。 しかし、運命の奔流は容赦なく彼女をのみこんでゆくのだった。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

歴史小説 歴史以前の縄文文明

Ittoh
歴史・時代
 日ノ本の歴史は、1万2千年前の縄文土器文明に始まり、黒曜石を基軸通貨として、翡翠を貴重品とした文明圏を形成していた。  経済活動というのは、余分な商品があって、初めて始まる活動だと考えられる。自分で採取したものを、そのまま自分で使うだけであれば、そこに経済活動は発生しない。石器時代と呼ばれる時代から、縄文期に入っていった時、最初に商品となったのは、石であった。  石は、石器として最上級の品質であった、黒曜石である。  黒曜石は、石のままでは価値を持たない。  加工する知識・技術・技能があって始めて、鏃となり、釣り針となって、狩や漁の道具として使うことができる。 参考資料  CGS動画 「目からウロコの日本の歴史」 小名木善行&神谷宗幣  西田正規 著「人類のなかの定住革命」  安田喜憲 著「森と文明の物語」  鬼頭宏  著「人口から読む日本の歴史」  高木久史著「撰銭とビタ一文の戦国史」  松島義章著「貝が語る縄文海進」  水野正好著「縄文を語る」 日ノ本における、経済の始まりは、縄文期に遡ることができる。

黄昏の芙蓉

翔子
歴史・時代
本作のあらすじ: 平安の昔、六条町にある呉服問屋の女主として切り盛りしていた・有子は、四人の子供と共に、何不自由なく暮らしていた。 ある日、織物の生地を御所へ献上した折に、時の帝・冷徳天皇に誘拐されてしまい、愛しい子供たちと離れ離れになってしまった。幾度となく抗議をするも聞き届けられず、朝廷側から、店と子供たちを御所が保護する事を条件に出され、有子は泣く泣く後宮に入り帝の妻・更衣となる事を決意した。 御所では、信頼出来る御付きの女官・勾当内侍、帝の中宮・藤壺の宮と出会い、次第に、女性だらけの後宮生活に慣れて行った。ところがそのうち、中宮付きの乳母・藤小路から様々な嫌がらせを受けるなど、徐々に波乱な後宮生活を迎える事になって行く。 ※ずいぶん前に書いた小説です。稚拙な文章で申し訳ございませんが、初心の頃を忘れないために修正を加えるつもりも無いことをご了承ください。

独裁者・武田信玄

いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます! 平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。 『事実は小説よりも奇なり』 この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに…… 歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。 過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。 【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い 【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形 【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人 【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある 【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。 (前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

奇絵画

武州人也
歴史・時代
時は隋の文帝楊堅の時代。江南の港都揚州に、見事な絵を売る老爺が市にやってきた。市の者はこぞって老爺の絵を買い求めたが、その老爺の絵が、不気味な事件を引き起こすこととなる……

けもの

夢人
歴史・時代
この時代子供が間引きされるのは当たり前だ。捨てる場所から拾ってくるものもいる。この子らはけものとして育てられる。けものが脱皮して忍者となる。さあけものの人生が始まる。

処理中です...