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古代の終焉、中世の日ノ本
日ノ本の中世 第五話 腹八分は、「足るを知ること」
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フンババを滅ぼしたシュメール文明圏は、結果的にレバノン杉だけでなく、大森林を滅ぼし、広大な荒地を中東に誕生させてしまいました。日ノ本に荒地が誕生しなかったのは、フンババを殺さなかったからです。
勇者が魔王を倒して得られるのが、一次的な栄華と荒涼たる大地ならば、勇者と魔王が契りを交わした世界は、豊穣の大地となります。日ノ本は、山神の血を引いて、海神の姫と契りを交わして、里人の始まりとなって、山神や海神を神域として奉る。これが、海幸彦と山幸彦の話となります。
自然との共棲は、水位変化を利用して葦原を活用するように、人々の生活そのものに、徹底した制約を科することになります。目の前の資源を刈り尽くせば、二度と資源を手にすることはできない。欲望に限界を定めることが、資源を有効に活用できることとなる。
葦原中ツ国から、湖面の水位差を利用した、自然の葦原や水田という、再利用可能な資源を創出したのは、葦原という再生利用可能な建材を栽培し、鯉鮒鯰といった魚の生育環境を整えるという養殖技術を発展させたことにあります。
資源を狩り尽くさないというのは、過ぎたる欲を抑えることから始まります。
魚を全部獲り尽くせば、二度と魚は手に入らない。獲物を狩り尽くせば、二度と獲物は手に入らない。明日のために、今日の空腹をこらえる。
「腹八分目」が先人の言葉として伝わります。
「腹八分目に医者いらず」と言って後世に伝えたのは、過ぎたる欲を抑える意味が、一番大きかったのだとお爺ぃは考えます。
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農業や漁業分野では、再生可能資源を扱うことで、日ノ本では、爆発的な生産量の拡大を迎えたのが、弥生期からの状況となります。大規模な人員動員が可能となり、用水路の確保や治水事業の拡大といった、大規模土木作業を実行することができるようになり、数万人を土木作業に動員しても、食べさせていけるだけの食料を確保することができたのです。
大規模土木作業を実行した結果、治水事業が完了し、開墾した残土を盛り土として古墳を築き、開墾された水田の水位調整を可能とするために、濠を周囲に巡らせたのです。
後期に大規模な治水工事に伴う、稲作が始まった近江は、初期の畿内の後方地域で在り、近江の食料生産量が増加したことで、大和、摂津、和泉、河内、山城、といった畿内に対する、大規模な治水工事、開墾工事を含めた、公共土木事業が展開されることとなります。
しかしながら、弥生期に始まったのは、銅鐸や銅鏡を含めた、金属器の政策であり、地下資源の採掘となります。地下資源は、資源としては厄介で、埋蔵されている資源は有限で在り、採算が取れる採掘量には限界があります。
現在の日ノ本では、資源が無い国と言われますが、元々は資源豊富な国であったのです。
弥生から金属資源を中心として、様々な地下資源を掘り尽くした結果として、徐々に資源が枯渇する国となったのです。皇朝十二銭が、徐々に質が落ちるのは、日ノ本における、銅の採掘量低下とも関係しています。発行しなければならない通貨量に対して、実際に採掘できた量が足りなければ、通貨量は低下していきます。信用取引として通貨量に合わせた、貨幣価値を付加しようとしても、価値の裏付けが無ければ、破綻することは確実となります。
弥生以降、御山の神域は、人の欲に穢されやすくなり、多くの者達が徐々に、神域へ里人の領域が広がるようになっていったのである。
「常陸国風土記」には、足柄の坂を東に行った八国を征して、統治した場所が常陸であり、代々親王を国司補任とした畿内の拠点であった。常陸には、神域である夜刀神の領域と、箭括麻多智の領域で、境界領域を巡る争いが絶えず起きていたことが記されている。さらに、黒坂命と茨城のモノ達とが戦う様子も描かれている。
新たに新田の開発を畿内が行っていくことで、地方でも神域としての山人の領域が削られていく流れがあったのは間違いない。
日ノ本における戦いは、シュメールのギルガメッシュとフンババのような殲滅戦ではなく、領域を削っては社を建立して祀るといった方法であった。結果として、徐々に生活領域が接することで、コミュニケーションが生まれ、共棲できるようになっていった。
常陸には、多くの山人や海人が、夜刀神や鬼、土蜘蛛といった形で住んでいたと記述されている。
日ノ本では、あやかしという形で、神域に住まうモノ達が住んでいたのは間違いない。
勇者が魔王を倒して得られるのが、一次的な栄華と荒涼たる大地ならば、勇者と魔王が契りを交わした世界は、豊穣の大地となります。日ノ本は、山神の血を引いて、海神の姫と契りを交わして、里人の始まりとなって、山神や海神を神域として奉る。これが、海幸彦と山幸彦の話となります。
自然との共棲は、水位変化を利用して葦原を活用するように、人々の生活そのものに、徹底した制約を科することになります。目の前の資源を刈り尽くせば、二度と資源を手にすることはできない。欲望に限界を定めることが、資源を有効に活用できることとなる。
葦原中ツ国から、湖面の水位差を利用した、自然の葦原や水田という、再利用可能な資源を創出したのは、葦原という再生利用可能な建材を栽培し、鯉鮒鯰といった魚の生育環境を整えるという養殖技術を発展させたことにあります。
資源を狩り尽くさないというのは、過ぎたる欲を抑えることから始まります。
魚を全部獲り尽くせば、二度と魚は手に入らない。獲物を狩り尽くせば、二度と獲物は手に入らない。明日のために、今日の空腹をこらえる。
「腹八分目」が先人の言葉として伝わります。
「腹八分目に医者いらず」と言って後世に伝えたのは、過ぎたる欲を抑える意味が、一番大きかったのだとお爺ぃは考えます。
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農業や漁業分野では、再生可能資源を扱うことで、日ノ本では、爆発的な生産量の拡大を迎えたのが、弥生期からの状況となります。大規模な人員動員が可能となり、用水路の確保や治水事業の拡大といった、大規模土木作業を実行することができるようになり、数万人を土木作業に動員しても、食べさせていけるだけの食料を確保することができたのです。
大規模土木作業を実行した結果、治水事業が完了し、開墾した残土を盛り土として古墳を築き、開墾された水田の水位調整を可能とするために、濠を周囲に巡らせたのです。
後期に大規模な治水工事に伴う、稲作が始まった近江は、初期の畿内の後方地域で在り、近江の食料生産量が増加したことで、大和、摂津、和泉、河内、山城、といった畿内に対する、大規模な治水工事、開墾工事を含めた、公共土木事業が展開されることとなります。
しかしながら、弥生期に始まったのは、銅鐸や銅鏡を含めた、金属器の政策であり、地下資源の採掘となります。地下資源は、資源としては厄介で、埋蔵されている資源は有限で在り、採算が取れる採掘量には限界があります。
現在の日ノ本では、資源が無い国と言われますが、元々は資源豊富な国であったのです。
弥生から金属資源を中心として、様々な地下資源を掘り尽くした結果として、徐々に資源が枯渇する国となったのです。皇朝十二銭が、徐々に質が落ちるのは、日ノ本における、銅の採掘量低下とも関係しています。発行しなければならない通貨量に対して、実際に採掘できた量が足りなければ、通貨量は低下していきます。信用取引として通貨量に合わせた、貨幣価値を付加しようとしても、価値の裏付けが無ければ、破綻することは確実となります。
弥生以降、御山の神域は、人の欲に穢されやすくなり、多くの者達が徐々に、神域へ里人の領域が広がるようになっていったのである。
「常陸国風土記」には、足柄の坂を東に行った八国を征して、統治した場所が常陸であり、代々親王を国司補任とした畿内の拠点であった。常陸には、神域である夜刀神の領域と、箭括麻多智の領域で、境界領域を巡る争いが絶えず起きていたことが記されている。さらに、黒坂命と茨城のモノ達とが戦う様子も描かれている。
新たに新田の開発を畿内が行っていくことで、地方でも神域としての山人の領域が削られていく流れがあったのは間違いない。
日ノ本における戦いは、シュメールのギルガメッシュとフンババのような殲滅戦ではなく、領域を削っては社を建立して祀るといった方法であった。結果として、徐々に生活領域が接することで、コミュニケーションが生まれ、共棲できるようになっていった。
常陸には、多くの山人や海人が、夜刀神や鬼、土蜘蛛といった形で住んでいたと記述されている。
日ノ本では、あやかしという形で、神域に住まうモノ達が住んでいたのは間違いない。
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