日ノ本の歴史 始まりの話

古代の終焉、中世の日ノ本

日ノ本の中世 第二話 銭の始まり

　直径２４mm、一片７mmの正方形の孔が開いた、日ノ本における銭、和同開珎が鋳造されたのが、７０８年のことであった。銀銭が先に鋳造され、銅銭が後に鋳造されたとされている。富本銭が６８３年に鋳造されているが、流通については限定的であったとされている。

　日ノ本の通貨政策からすると、銅銭は記念貨幣が流通したようなものであった。

　銅鏡や銅鐸といった、象徴的な価値を有することで、流通時の価値を高めたとされる。

　しかしながら、日本の経済的な政策は成功せず、銅銭の流通は限定的であった。銅銭が、流通貨幣となるのは、平安期に宋銭が日本に大量輸入されて以降のことである。



　和同開珎から乾元大宝までの皇朝十二銭は、すべて流通に失敗している。これは、一匁の銅銭が持つ価値と貨幣価値との乖離と、国内における銅の採掘量低下がもたらしたものである。市場が必要とする量の銅銭を、日ノ本では発行することができなかったのである。
　質的な低下を防ぐことができず、発行量も半端であった皇朝十二銭は、結果的に、日ノ本の経済を形成するには至らなかったという結果に終わっている。



　絹一疋や稲一束といった形で、貨幣として流通したのは、銅銭の価値が変動するよりも、価値変動が小さかったからである。また、絹一疋や稲一束は、銭が公的な命令によって価値変動が生じるのに比べて、公的な機関による命令を受け難かったからである。