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大正の終わり、昭和のはじまり
大正の終わり昭和の初まり02 原内閣、借金手形大作戦!
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陛下より、国民の復興支援を先とすべしとの言葉があったが、即位典礼の儀は、国事行為であり、国家の大事であり、国家務るモノすべてが、俸給を国費と捧げて当たるベシと宣言し、国家公務員の俸給をすべて、定額手形決済で支払ったのである。これは、国家予算の水増し行為であり、金本位を基本として、発行額に制限がかかる紙幣に代替えとして、担保予算を基本として発行する定額手形決済を実施したのである。
高橋是清大蔵大臣は、手形紙幣を発行して、大典の儀の費用と共に、震災復興資金として確保したのである。
国内で決済可能な商取引であれば、手形紙幣の決済について、紙幣と同額での決済が可能となる。しかしながら、国外との決済は、金を基本とする、金本位を基準として、国際取引が実施されている。
つまりは、手形を紙幣として発行しても、手形を使って、海外からモノが買えないのである。
金本位とは、国家が発行する紙幣で、兌換紙幣として、国家が保有する金を担保に発行される。つまり、国際取引では、自国の紙幣で取引ができず、担保となる金で取引をしなければならなかった。
大日本帝国の場合、輸出よりも輸入が多くなることで、基本的に海外に金が流出しやすい状況にあった。特に軍需関連を含めた重工業については、輸入がほとんどであり、輸出が過多となり、大量の正貨として金を必要としていた。
横浜正金銀行は、正貨を確保し、海外との取引決済をおこなうため、明治13年に設立されました。海外との交易で必要な正貨を獲得するため、日本銀行からの融資を受けて、海外の国債等を買い入れて、利子および売却による差益等で、外貨獲得を推進していました。
公務員俸給を担保として俸給を手形払いとすることで、原資を確保し、横浜正金銀行を介して海外債券を取得、正貨獲得の手段とする。高橋是清は関東大震災の支援を、海外に求めて金策に奔走しながら、国内での経済政策を進めていったのである。
明治維新以来、正貨の確保は、日本にとっては、大きな負担となっていました。西南戦争ですら、正貨が流出しインフレを起こしていたことから、正貨の確保は日本にとって重要な課題であったのです。
日本銀行の当座預金である、国庫を担保とした、資産運用は利回りを求めて、海外の国債を漁っていたのでした。これには、ロシア帝国債も含まれていて、大正6年のロシア革命は、横浜正金銀行にとっても危険な状況を産み出していたのであった。
「タチアナ摂政殿下との交渉は、上手くいったのかね、井上君」
「はい、閣下からの条件通り、横浜正金銀行だけでなく、台湾銀行と朝鮮銀行のを含めて対応は可能です、原閣下」
「支払いは、満洲の鉄道利権およびインフラ利権か、資源は」
「許してほしいとのことです、フランスを宥める必要がある」
「ドイツへの賠償はとれないまま、停戦だけが長引くか」
「いえ、閣下。停戦ではなりません、フランスとドイツは継戦中のままです」
「そうだったな。フランスの停戦放棄、ベルギー経由でドイツに侵攻したんだった」
「はい。ドイツ国防軍に追い返されて、ベルギーがドイツと単独講和、オランダ、ルクセンブルグが続きました」
「フランスは、そのままラインでの睨み合いか」
「双方とも発砲はしていませんが、発砲していないだけですね」
「そうか、まぁ、仕方ないか」
昭和元年今上帝の即位と共に、上皇陛下は、桂離宮に移られ療養されていた。
ロシア帝国崩壊から、ロマノフ家の救出作戦は、日本にとっては、どうしても成功させなければならなかった。イギリスと連携しての救出作戦は、双方の情報漏洩から追撃を受けて、イギリスは失敗し、日本はなんとか北樺太の敷香にロシア帝国府を設置することに成功した。
樺太は、日露戦争で奉天撤退後、原口、片岡両旅団長が占拠し、領有権を主張したが、ロシア側がこれを嫌った。ポーツマス条約では、樺太の領有権は、別途交渉として双方が領有権を主張したままとなっていた。
国際連盟での交渉の中で、ロマノフ家は亡命ではなく、樺太への遷都という形として、敷香のロシア帝国府を認めさせた。
日本、ロシア双方が、領有権を主張する樺太であったため、ロシア帝国領でもあったことで、ロシア帝国の国家として認められ、海外資産の確保ができたのである。
イギリス、アメリカ、日本による極東ロシア地域の確保によって、親ロシア帝国政権である、極東ロシア共和国をチタに建国し、アメリカがウラジオストクからチタまでの鉄道権益をロシア帝国から委託されることとなった。イギリスは、アムール川を含めた、河川航行権を確保し、アムール川流域の地下資源の権益を取得していた。日本は、満洲における鉄道利権および興安省の利権を確保したが、満洲の地下資源については、フランスが利権を獲得していた。
こういった利権の分配は、ロシア帝国の債権回収費用であり、ロマノフ家としては、海外資産凍結を解除する目的があった。海外資産が運用できるようになったことで、ロマノフ家は、諸国家のロシア帝国大使館、領事館を確保し、ロシア帝国府からの任命することに成功した。ロシアから逃亡したロシア帝国国民は、ロシア帝国の旅券による受け入れを開始し、極東ロシア方面への移住を進めたのである。
原内閣は、ロシア帝国債権の焦げ付きを防ぎ、金本位復帰への正貨確保が見込めるようになったのである。
「井上君、君の役目は大事だぞ」
「はい、閣下。なんとか正貨を確保し、金本位復帰を果たします」
「頼む、イギリスも困ったものだが、金本位復帰しなければ、取引そのものを停止することをちらつかせてきた。
金本位への復帰は、出来る限り遅らせる、それまでに少しでも正貨の確保を進めて欲しい」
国際取引で、日本は、正貨流出傾向が強く、これは重工業の分野で大きく影響していた。それでも正貨で購入しなければ、日本の重工業を推進できないこともあり、正貨の確保が必須事項とされていた。
「は、この井上準之助、一命を懸けて進めてまいります」
「頼む。ただ、イギリスの動きは注意してくれ、かの国自身は、金本位を嫌っているようだ」
「は? どういうことでしょう、閣下」
「是清翁の感想だ。アメリカの成長をイギリスは良くは思っていないらしいと、、、」
「そうですか、是清翁の感想」
「証拠は無いが、とのことだ」
「翁は、どのように動くと」
「金解禁を公表し、列国に商取引を強制し、行き渡ったところで、金輸出停止に踏み切る。世界大戦でやった手だよ」
「では、巻き込まれないようにですな」
「あぁ、しばらくは、大陸でボリシェビキとの戦いが続く。こっちの方はなんとか、手形決済を流通させたいと考えている」
大陸では取引を行うのに必要な、正貨そのものが準備されていない状況で、商取引そのものが難しい状況となっていた。ここに、満洲鉄道都市整備局へ日本は、予算を正貨で投下し、満洲鉄道の予算を担保として、無期限無利子の定額手形を発行する。鉄道予算に投下される正貨と、発行される定額手形は連動しないが、流通する通貨が無い満洲であれば、流通させることができる。
「大連に満洲鉄道都市整備局を設置し、満洲鉄道証券を設立されると聞きました」
「あぁ、大陸での手形の発行は、満洲鉄道都市整備局の債権となるからな」
「買い手は、日本銀行ですか」
「そうなるな。国内で手形が浸透すれば、国家予算そのものも担保にできる」
国内での手形発行は、公務員俸給を使った震災復興の借金として、国民に受け入れられ、ほぼ等価での流通が行われていた。税金の支払いや鉄道や逓信等の利用には、手形が使用できたことは、流通を加速する一助となっていた。
原内閣は、内務省管轄として、鉄道、逓信、郵便といった通信および物流を集中させ、大陸でのインフラ整備を進めながら、土木治水事業を推し進めたのである。また、ボリシェビキに対抗するため、満洲鉄道都市警備局を設置し、大陸では徹底した治安統制活動を実施したのである。
満洲鉄道都市整備局は、内務省の管轄下にあり、警備局もまた、内務省管轄の治安維持部隊であった。昭和元年に施行された暴力対策取締法は、対ボリシェビキ法案とも呼ばれ、社会主義者や共産主義者だけでなく、反政府活動系の団体を指定して叩き潰すことを目的としていた。
政府系の暴力組織は、最大の暴力機構が特別高等警察で在り、地域治安維持活動は、鉄道都市警備局の担当でもあった。
震災復興が進んでも、俸給の手形化は、止まらないどころか年々拡大していった。「我田引鉄」で地方への利益分配を図り、地方に金権政治の道を開いたのである。「我田引鉄」で進めた、鉄道路線は、鉄道都市警備局の路線となり、各地に工兵学校の設立と共に、各地に鉄道都市警備局と鉄道都市整備局が設置されたのである。
国策で進められる、地方鉄道で大きな鉄道は、満洲鉄道を含めた台湾、半島、樺太の鉄道都市整備計画であった。鉄道の拡大によって、工兵隊も拡大していった。工兵隊は、各地の土木治水作業を推進し、駅の設置と鉄道の運営、都市の上下水道を含めてインフラの設置維持管理を担当していた。工兵隊には、逓信、郵便が業務として追加され、民間船舶、飛行機を使った、物流業務を含めた活動となっていた。工兵隊を含め鉄道都市警備局員は、公務員であり、支給される俸給は、手形払いであった。つまりは、公務員が増員しても、俸給は手形払いとなるため、国庫への負担は最小限に収まる。
また、鉄道都市警備局は、帝国陸海軍の兵站輸送をも担当業務としていたため、一定の武装が許可されたのである。工兵隊に許可された武装が、払い下げ品となった30式歩兵銃が統制型の最初となり、工兵学校での生産および整備が行われるようになった。統制型の武装として、7.7mm、20mm機銃が認可され、統制型エンジンが工兵学校で生産・整備されるようになると、工兵学校製の建機等の特殊車両が稼働するようになった。
満洲でボリシェビキの活動が活発化するようになると、特殊車両に統制型の武装を搭載した、軍用車両も登場するようになったのである。
関東大震災後に拡大されたのが、中央線と接続していた、東京駅ー中野駅ー新宿駅ー東京駅ー品川駅といった路線を延伸して、東京循環鉄道山手線として運行を開始した。品川、赤羽、田端、池袋、新宿には、工兵学校が建てられ、鉄道科、電気科、逓信科が設置された。大震災後の設置であったことから、消火用特殊車両などが造られ、火災時には活躍したのである。特に、狭い路地が多い地域で消火活動できるように、手押しポンプ車や大規模火災時の破壊消火用装甲車なども製作されていた。
工兵学校製の代表的な特殊車両は、土木作業用の建機が主であり、後輪操舵式の小型で取り回しやすい、建機が多数製作されていた。工兵学校の特殊車両は、山手線や中央線を移動する前提で軽量化され、駅間を貨物で移動し、駅から現場に駆け付ける形となっていた。品川から横浜まで、貨物路線として、5ft広軌路線が敷設していて、支援物資搬送用として稼働していた。
鉄道都市警備局は、内務省警察庁警備部に所属しており、鉄道警察とも呼ばれていた。震災等対処だけでなく、ボリシェビキによるとし破壊活動への対処を含めた、治安維持活動機能を有していた。昭和13年2月26日は、軍と警備局の激突となり、凄まじい流血の参事となったのは、宵闇昭和史の史実である。クーデタを企図した決起軍は、首相官邸等への攻撃で警備局員7名が死亡したことで、警備局は暴対法を拡大適用して、決起軍への鎮圧攻撃を開始、決起軍を殲滅し、鎮圧を完遂した。
鎮圧に動員された、警備局員は、3000名に達し、特殊車両117台が動員された。特に赤羽校が保有していた、破壊消火車両は、決起軍を文字通り轢殺した。
後に帝国陸軍から、「戦車を帝都で走らせるとは何事か」との意見が出たが、「使用されたのは戦車ではなく、破壊消火車両であり特車であるッ」と反論したのは、有名である。破壊消火車両は、正面が竹編コンクリート製三層45mmであり、38式だけでなく、7.7mm機銃では打ち貫けなかった。
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破壊消火車両
赤羽工兵学校製
文字通り、建物を破壊して消火活動を行うための特殊車両として、設計開発された。しかしながら、除雪作業や瓦礫撤去作業用としても使用され、様々な亜種が存在する。
搭載:統制型ディーゼルエンジン3400cc55馬力改良型
速度:最高時速30km
構造:竹を編み込んで形状を作成し、コンクリートを塗り固めることで、耐火性能と強度を確保している。竹編コンクリート構造を積層化することで、形状の自由度と強度を確保できる。形状は衝角型を基本とするが、瓦礫撤去用や除雪作業用といった用途によって、形状が異なる、各種バリエーション車両として製作されている。
暴徒を相手にした場合、そのままバリケードごと直進粉砕することが可能。38歩兵銃だけでなく、7.7mm機銃を受け付けなかった。後に帝国陸軍が標的車とした時、97式自動砲で100mの近距離で貫けないことが確認されている。
車体の造形は、学生のデザインとなっているため、完全な同一形状はない一品モノとなっている。
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高橋是清大蔵大臣は、手形紙幣を発行して、大典の儀の費用と共に、震災復興資金として確保したのである。
国内で決済可能な商取引であれば、手形紙幣の決済について、紙幣と同額での決済が可能となる。しかしながら、国外との決済は、金を基本とする、金本位を基準として、国際取引が実施されている。
つまりは、手形を紙幣として発行しても、手形を使って、海外からモノが買えないのである。
金本位とは、国家が発行する紙幣で、兌換紙幣として、国家が保有する金を担保に発行される。つまり、国際取引では、自国の紙幣で取引ができず、担保となる金で取引をしなければならなかった。
大日本帝国の場合、輸出よりも輸入が多くなることで、基本的に海外に金が流出しやすい状況にあった。特に軍需関連を含めた重工業については、輸入がほとんどであり、輸出が過多となり、大量の正貨として金を必要としていた。
横浜正金銀行は、正貨を確保し、海外との取引決済をおこなうため、明治13年に設立されました。海外との交易で必要な正貨を獲得するため、日本銀行からの融資を受けて、海外の国債等を買い入れて、利子および売却による差益等で、外貨獲得を推進していました。
公務員俸給を担保として俸給を手形払いとすることで、原資を確保し、横浜正金銀行を介して海外債券を取得、正貨獲得の手段とする。高橋是清は関東大震災の支援を、海外に求めて金策に奔走しながら、国内での経済政策を進めていったのである。
明治維新以来、正貨の確保は、日本にとっては、大きな負担となっていました。西南戦争ですら、正貨が流出しインフレを起こしていたことから、正貨の確保は日本にとって重要な課題であったのです。
日本銀行の当座預金である、国庫を担保とした、資産運用は利回りを求めて、海外の国債を漁っていたのでした。これには、ロシア帝国債も含まれていて、大正6年のロシア革命は、横浜正金銀行にとっても危険な状況を産み出していたのであった。
「タチアナ摂政殿下との交渉は、上手くいったのかね、井上君」
「はい、閣下からの条件通り、横浜正金銀行だけでなく、台湾銀行と朝鮮銀行のを含めて対応は可能です、原閣下」
「支払いは、満洲の鉄道利権およびインフラ利権か、資源は」
「許してほしいとのことです、フランスを宥める必要がある」
「ドイツへの賠償はとれないまま、停戦だけが長引くか」
「いえ、閣下。停戦ではなりません、フランスとドイツは継戦中のままです」
「そうだったな。フランスの停戦放棄、ベルギー経由でドイツに侵攻したんだった」
「はい。ドイツ国防軍に追い返されて、ベルギーがドイツと単独講和、オランダ、ルクセンブルグが続きました」
「フランスは、そのままラインでの睨み合いか」
「双方とも発砲はしていませんが、発砲していないだけですね」
「そうか、まぁ、仕方ないか」
昭和元年今上帝の即位と共に、上皇陛下は、桂離宮に移られ療養されていた。
ロシア帝国崩壊から、ロマノフ家の救出作戦は、日本にとっては、どうしても成功させなければならなかった。イギリスと連携しての救出作戦は、双方の情報漏洩から追撃を受けて、イギリスは失敗し、日本はなんとか北樺太の敷香にロシア帝国府を設置することに成功した。
樺太は、日露戦争で奉天撤退後、原口、片岡両旅団長が占拠し、領有権を主張したが、ロシア側がこれを嫌った。ポーツマス条約では、樺太の領有権は、別途交渉として双方が領有権を主張したままとなっていた。
国際連盟での交渉の中で、ロマノフ家は亡命ではなく、樺太への遷都という形として、敷香のロシア帝国府を認めさせた。
日本、ロシア双方が、領有権を主張する樺太であったため、ロシア帝国領でもあったことで、ロシア帝国の国家として認められ、海外資産の確保ができたのである。
イギリス、アメリカ、日本による極東ロシア地域の確保によって、親ロシア帝国政権である、極東ロシア共和国をチタに建国し、アメリカがウラジオストクからチタまでの鉄道権益をロシア帝国から委託されることとなった。イギリスは、アムール川を含めた、河川航行権を確保し、アムール川流域の地下資源の権益を取得していた。日本は、満洲における鉄道利権および興安省の利権を確保したが、満洲の地下資源については、フランスが利権を獲得していた。
こういった利権の分配は、ロシア帝国の債権回収費用であり、ロマノフ家としては、海外資産凍結を解除する目的があった。海外資産が運用できるようになったことで、ロマノフ家は、諸国家のロシア帝国大使館、領事館を確保し、ロシア帝国府からの任命することに成功した。ロシアから逃亡したロシア帝国国民は、ロシア帝国の旅券による受け入れを開始し、極東ロシア方面への移住を進めたのである。
原内閣は、ロシア帝国債権の焦げ付きを防ぎ、金本位復帰への正貨確保が見込めるようになったのである。
「井上君、君の役目は大事だぞ」
「はい、閣下。なんとか正貨を確保し、金本位復帰を果たします」
「頼む、イギリスも困ったものだが、金本位復帰しなければ、取引そのものを停止することをちらつかせてきた。
金本位への復帰は、出来る限り遅らせる、それまでに少しでも正貨の確保を進めて欲しい」
国際取引で、日本は、正貨流出傾向が強く、これは重工業の分野で大きく影響していた。それでも正貨で購入しなければ、日本の重工業を推進できないこともあり、正貨の確保が必須事項とされていた。
「は、この井上準之助、一命を懸けて進めてまいります」
「頼む。ただ、イギリスの動きは注意してくれ、かの国自身は、金本位を嫌っているようだ」
「は? どういうことでしょう、閣下」
「是清翁の感想だ。アメリカの成長をイギリスは良くは思っていないらしいと、、、」
「そうですか、是清翁の感想」
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「では、巻き込まれないようにですな」
「あぁ、しばらくは、大陸でボリシェビキとの戦いが続く。こっちの方はなんとか、手形決済を流通させたいと考えている」
大陸では取引を行うのに必要な、正貨そのものが準備されていない状況で、商取引そのものが難しい状況となっていた。ここに、満洲鉄道都市整備局へ日本は、予算を正貨で投下し、満洲鉄道の予算を担保として、無期限無利子の定額手形を発行する。鉄道予算に投下される正貨と、発行される定額手形は連動しないが、流通する通貨が無い満洲であれば、流通させることができる。
「大連に満洲鉄道都市整備局を設置し、満洲鉄道証券を設立されると聞きました」
「あぁ、大陸での手形の発行は、満洲鉄道都市整備局の債権となるからな」
「買い手は、日本銀行ですか」
「そうなるな。国内で手形が浸透すれば、国家予算そのものも担保にできる」
国内での手形発行は、公務員俸給を使った震災復興の借金として、国民に受け入れられ、ほぼ等価での流通が行われていた。税金の支払いや鉄道や逓信等の利用には、手形が使用できたことは、流通を加速する一助となっていた。
原内閣は、内務省管轄として、鉄道、逓信、郵便といった通信および物流を集中させ、大陸でのインフラ整備を進めながら、土木治水事業を推し進めたのである。また、ボリシェビキに対抗するため、満洲鉄道都市警備局を設置し、大陸では徹底した治安統制活動を実施したのである。
満洲鉄道都市整備局は、内務省の管轄下にあり、警備局もまた、内務省管轄の治安維持部隊であった。昭和元年に施行された暴力対策取締法は、対ボリシェビキ法案とも呼ばれ、社会主義者や共産主義者だけでなく、反政府活動系の団体を指定して叩き潰すことを目的としていた。
政府系の暴力組織は、最大の暴力機構が特別高等警察で在り、地域治安維持活動は、鉄道都市警備局の担当でもあった。
震災復興が進んでも、俸給の手形化は、止まらないどころか年々拡大していった。「我田引鉄」で地方への利益分配を図り、地方に金権政治の道を開いたのである。「我田引鉄」で進めた、鉄道路線は、鉄道都市警備局の路線となり、各地に工兵学校の設立と共に、各地に鉄道都市警備局と鉄道都市整備局が設置されたのである。
国策で進められる、地方鉄道で大きな鉄道は、満洲鉄道を含めた台湾、半島、樺太の鉄道都市整備計画であった。鉄道の拡大によって、工兵隊も拡大していった。工兵隊は、各地の土木治水作業を推進し、駅の設置と鉄道の運営、都市の上下水道を含めてインフラの設置維持管理を担当していた。工兵隊には、逓信、郵便が業務として追加され、民間船舶、飛行機を使った、物流業務を含めた活動となっていた。工兵隊を含め鉄道都市警備局員は、公務員であり、支給される俸給は、手形払いであった。つまりは、公務員が増員しても、俸給は手形払いとなるため、国庫への負担は最小限に収まる。
また、鉄道都市警備局は、帝国陸海軍の兵站輸送をも担当業務としていたため、一定の武装が許可されたのである。工兵隊に許可された武装が、払い下げ品となった30式歩兵銃が統制型の最初となり、工兵学校での生産および整備が行われるようになった。統制型の武装として、7.7mm、20mm機銃が認可され、統制型エンジンが工兵学校で生産・整備されるようになると、工兵学校製の建機等の特殊車両が稼働するようになった。
満洲でボリシェビキの活動が活発化するようになると、特殊車両に統制型の武装を搭載した、軍用車両も登場するようになったのである。
関東大震災後に拡大されたのが、中央線と接続していた、東京駅ー中野駅ー新宿駅ー東京駅ー品川駅といった路線を延伸して、東京循環鉄道山手線として運行を開始した。品川、赤羽、田端、池袋、新宿には、工兵学校が建てられ、鉄道科、電気科、逓信科が設置された。大震災後の設置であったことから、消火用特殊車両などが造られ、火災時には活躍したのである。特に、狭い路地が多い地域で消火活動できるように、手押しポンプ車や大規模火災時の破壊消火用装甲車なども製作されていた。
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鉄道都市警備局は、内務省警察庁警備部に所属しており、鉄道警察とも呼ばれていた。震災等対処だけでなく、ボリシェビキによるとし破壊活動への対処を含めた、治安維持活動機能を有していた。昭和13年2月26日は、軍と警備局の激突となり、凄まじい流血の参事となったのは、宵闇昭和史の史実である。クーデタを企図した決起軍は、首相官邸等への攻撃で警備局員7名が死亡したことで、警備局は暴対法を拡大適用して、決起軍への鎮圧攻撃を開始、決起軍を殲滅し、鎮圧を完遂した。
鎮圧に動員された、警備局員は、3000名に達し、特殊車両117台が動員された。特に赤羽校が保有していた、破壊消火車両は、決起軍を文字通り轢殺した。
後に帝国陸軍から、「戦車を帝都で走らせるとは何事か」との意見が出たが、「使用されたのは戦車ではなく、破壊消火車両であり特車であるッ」と反論したのは、有名である。破壊消火車両は、正面が竹編コンクリート製三層45mmであり、38式だけでなく、7.7mm機銃では打ち貫けなかった。
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破壊消火車両
赤羽工兵学校製
文字通り、建物を破壊して消火活動を行うための特殊車両として、設計開発された。しかしながら、除雪作業や瓦礫撤去作業用としても使用され、様々な亜種が存在する。
搭載:統制型ディーゼルエンジン3400cc55馬力改良型
速度:最高時速30km
構造:竹を編み込んで形状を作成し、コンクリートを塗り固めることで、耐火性能と強度を確保している。竹編コンクリート構造を積層化することで、形状の自由度と強度を確保できる。形状は衝角型を基本とするが、瓦礫撤去用や除雪作業用といった用途によって、形状が異なる、各種バリエーション車両として製作されている。
暴徒を相手にした場合、そのままバリケードごと直進粉砕することが可能。38歩兵銃だけでなく、7.7mm機銃を受け付けなかった。後に帝国陸軍が標的車とした時、97式自動砲で100mの近距離で貫けないことが確認されている。
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