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世界大戦は終わらない
序章05 「正義の殺人」があってはいけません?
しおりを挟む「正義の殺人」は存在するか?
日本では、本質として、「正義の殺人」は存在しないとされる。
今の世界で発生するテロを含め、宗教が関わる戦争と言うモノは、「正義の殺人」を肯定してはならないと、認識させるに十分な結果である。
かつて、十字軍に始まった「正義の殺人」は、異端者や異教徒を人間と言う認識をしないことから、絶望的な状況を築いてしまった。新大陸と言う甘い餌に釣られて、異教徒を人間としないことで、徹底した虐殺と掠奪を肯定したのが、コンキスタドールの結果である。
三十年戦争という欧州の地に生まれた地獄は、「正義の殺人」を肯定することが危険であることを、ようやく欧州に住まう人々が理解したのである。ウェストファリア体制と国際法は、地獄を見た人の理性が築いた、砂上の楼閣であった。
国際法と言う砂上の楼閣は、火力の増大によって生じた戦争という地獄によって、打ち砕かれてしまったのである。「不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること」は、範囲を規定することができず、世界大戦で毒ガスの使用を止めることはできなかったのである。
凄まじいまでの火力は、戦場を地獄に替えて、陰惨な塹壕戦は、人間の精神を破壊していった。クリスマス休戦のような、一時の奇蹟は、幻想に潰え去って、過酷なる現実は、国家の破滅まで続く勢いであった。それが、世界中を巻き込むように発生した、世界大戦だったのである。
今もなお、世界では、「正義の殺人」があたかも存在するような言い方がされるが、「正義の殺人」を完全に否定しない限り、殺し合いの連鎖を止めることはできない。
感情というモノは、困ったことに、暴走しやすい純粋な想いであるほど、危険なモノということになる。「我が子を護る」「愛する人を護る」「愛する国を護る」様々な思いは、純粋であればあるほどに、本人を含めたすべての人にとって災禍となる。
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