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閑話休題 太平洋戦争は勝てません?

閑話休題 太平洋戦争は、勝てません09 淡乃海に夢が飛びます。

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 湖の傍で、巨大な夢が大空へ舞い上がります。
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 淡乃海は、琵琶湖と呼ばれる、日本で最も広い湖水を持つ、湖となります。

 安土工務大学校、琵琶湖岸西の湖湖畔に造られた大学校である。機械、電気、建築に航空整備を加えた大学校は、河川や湖で使用する上陸用舟艇開発を進めていた。元年式水艇は、統制型ガソリンエンジンを使って、タービンを回し、高圧噴流式スラスタを搭載した、120トンの高速水雷艇を開発し、時速44ノットを叩き出した。軍縮会議で、建造制限から外れた、520トン級高速水雷艇で、時速32ノットを叩き出したことで知られていた。

 安土航空から、国産の大型飛行艇開発を依頼されたが、工務大学校では航空機エンジンが手に入らないため、水上偵察機に搭載されていた、寿Ⅲ型エンジンを外して、大型飛行艇用のエンジンとしたのです。
 大型風洞実験装置を使って、胴体船の形状を決めながら、敦賀沖で試作した胴体で実験を繰り返して、胴体構造を完成させた。水上偵察機の寿Ⅲ型エンジンの馬力が小さいことから、推進式と牽引式の2基のエンジンを搭載することで、馬力不足を補った。
 船体構造に鋼のフレームとし、アルミ合金超ジュラルミンを使って翼構造を頑丈に作り上げた。機体重量が増加したため、当初30名の乗員予定を12名に減らして、昭和二年に試作機が、離着水の初飛行にこぎつけることに成功した。

 昭和3年7月、安土航空は琵琶湖に浮かぶ、巨大な機体の上部に、三翅プロペラ9気筒星型寿エンジン八基を搭載した、大型飛行艇が空に浮かんだ。最高時速220キロ、航続距離3500キロの旅客機であった。乗員10名、旅客12名を乗せて、満洲里に向かって飛び立った。

 整備を担当する、工務大学校生10名指導教官2名を客として、安土航空10名の乗員と共に、安土航空製大型三式飛行艇は、実験を開始した。

 7月9日に離水し、巡航時速180キロで、14時間飛んで、満洲里のフルン湖へと辿り着いた。満洲里で一泊、安土航空の乗員が休んでいる間、機体整備と燃料補給を行って、満洲里を飛び立って、13時間飛んで琵琶湖へと帰還した。

 学生の造った飛行機が、往復4500キロの旅を成功させたことは、新聞を飾り、海軍大臣加藤友三郎に表彰された。

 三式大型飛行艇による成功によって、星型寿エンジンを統制型として、使用許諾がおりることとなった。

 星型寿エンジンの図面が用意され、安土航空で製造が認められると、エンジンそのものの改造が始められるようになった。航空整備で分解調整していたこともあり、機械式一速過給機をスーパーチャージャーに変更して、高出力化を図ったが、航続距離の低下が酷く、採用が見送られた。

 排気圧力を使ったターボチャージャーは、高圧駆動のため、エンジンの材料そのものを変更し、寿Ⅲエンジンの出力1.5倍900馬力を達成した。エンジンの原型は、構造だけであっただけで、ほぼ別のエンジンとなっていた。安土航空製コトブキⅠ型として、エンジンを完成させたのである。小型で高出力が得られるエンジンの開発に成功した。コトブキⅠ型は、小型エンジンで900馬力を叩き出したが、非常に整備性が悪く、改善・改良を必要としていた。
 燃費低下を推進式エンジンを下すことで軽量化を図った。海軍横浜工廠から、航空機用アルミ合金超々ジェラルミンの使用許可がおり、横浜工廠が試作した、自動消火機や15mm装甲板を採用した。

 三式大型飛行艇2型は、軽量化と燃費向上によって、最高時速210キロで、巡航190キロを達成し、琵琶湖からフルン湖まで航路の開拓を含めて、12時間切ることを達成した。

 整備性向上型、コトブキⅡ型が完成したのは、昭和5年のことであった。

 安土航空で製作された、コトブキⅡ型は、航空整備科を持つ、各大学校に送られ、整備実習用および製造実習用に使われた。横浜海軍工廠へも納品され、コトブキⅠ型は、三菱製K-Ⅰ型航空機用エンジンとして製造され、コトブキⅡ型は三菱製K-Ⅱ型航空機用エンジンとして製造された。K-Ⅰ型は小型の航空機用エンジンとして、陸軍用海軍用双方に供給された。

 三菱では、構造が複雑で、材料から高価格化するため、ターボチャージャーを外し、単列9気筒から複列18気筒星型に変更して高出力化を図った、航空機用エンジンを、栄五型航空機エンジンとして開発し戦闘機用のエンジンとした。
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