我田引鉄だけじゃない? 原首相のまったり運営

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天下泰平なれど外憂在り

天下泰平なれど外憂在り07 定額手形紙幣は、日本政府の借用証書である

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 民政党は、総選挙に圧勝し、7割の議席を確保する与党となり、第三次原内閣が組閣された。
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 昭和元年からの景気状況は、世界的に変動が大きく、先行きの見えない状況が続いていた。日本型モータリゼーションは、国内の需要拡大を推進した。しかしながら、低価格帯の農業車を中心としたモータリゼーションは、輸入車が伸び悩み、景気の後押しをする状況とはならなかった。
 特に、大陸情勢が良くないことで、満洲軍閥が動員する兵隊が展開するといった、緊迫した情勢も国内の景気に影響を与えていたのである。

 震災復興だけでなく、各地で生じる災害対策と復興に、帝国陸軍の対応を勅令とした結果、工兵隊が大活躍する状況が生まれていった。淡路島の鉄工所が始めた、農業車の開発は、新聞報道されて、各地の農家でも導入が検討されるようになった。導入するための車両製作を担当したのは、工兵学校や工兵大学校の学生であった。統制型エンジンの製造や整備を学内で行っていた、工兵学校は、様々な要望を受けて農業車だけでなく、製粉機や重機、建機といった様々な特殊車両を開発していったのである。こういった、工兵隊の様々な活動は、民間の特需ともなったのである。

 台風や大水による災害は、工兵隊による救援支援活動となり、復興活動ともなった。工兵隊および工兵学校や大学校の活動を、日本帝国陸軍から切り離し、地域支援隊という形で分離した。これは、雑務を嫌う、中央エリートを中心とした帝国陸軍を陸軍機動軍とすることで、エリート意識を向上させたのである。

 さらに、予算折衝を行う中、軍備縮小の風が吹き、軍務につかない卒業生が増加する工兵学校や大学校、砲兵大学校といった各種学校について、陸海軍の軍務局から、学校を独立させて工務省開発局としたのである。士官学校は、そのまま軍務省管轄とし、軍務編成上の幹部学校の位置づけとした。

 高橋是清大蔵大臣が、公務員数の拡大を俸給支払いを、無利子無期限の定額手形発行で凌いだことは、不換紙幣が流通することを推進したようなものであった。
 原首相は、工兵学校や大学校の周囲に工場を誘致し、地域に工場地帯を創出し、卒業生を工場労働力としても確保しつつ、選挙区への利益誘導を推進したのである。零細企業に近かった、安土航空は、長距離航路開拓に成功し、バイカル湖畔から南洋島嶼を結んだのである。不定期便として、南回り航路を使った、欧州便も月に一回くらい航行することになったのである。

 日本国内では、定額手形が徐々に浸透していって、兌換紙幣の発行額を抑えることに成功した。アメリカを含めて欧米との交易が、黒字となったことで、日本は外貨獲得ができるようになり、外国債の買取もできるようになったのである。日本の外貨獲得は、海外取引で使用可能な兌換紙幣の発行についても、推進することもできたのである。

 国内では、定額手形による不換紙幣を浸透させていって、国際取引では金本位を根幹とした兌換紙幣を使用するという、棲み分けができつつあった。



 生産力の向上から、紙幣が増えなければ、デフレ不況が発生する。昭和元年あたりから、国内生産高の拡大は急ピッチで進み、紙幣の不足が発生するようになった。定額手形の発行は、デフレ不況を防ぐ対策の形として、日本国有満洲鉄道都市警備局は、運営資金のすべてを定額手形で受領することで、予算を確保して、「特区」の市場に定額手形を流通させていったのである。定額手形は、自国内での紙幣発行数を増やしたいフランスやイギリス、イタリアといった国々も歓迎したことで、「特区」紙幣という呼ばれ方をするようになった。

 大蔵大臣高橋是清は、定額手形の発行額を公務員の人件費を支払うことで、歳出を削りつつ軍事費の予算を削減した。国家事業である満洲鉄道都市警備局の予算を、定額手形とすることで、「特区」手形の流通を図った。結果として、国内ベースで大きく削減を果たし、歳入額が歳出額を上回ったのである。

 昭和元年度の歳入額21億2739万1323円歳出額16億2502万4073円
 軍事費:4億8732万2千円
(財務省Webページ大正13年1924年データ)

 ただし、この歳出には、大陸での収益が入っておらず、半島での損失についても計上されていない。南洋庁が主導による、南洋開発は、かなり順調に進んでいて、長距離航行可能な船舶について、量産が求められるようになった。これは、大陸についても同じで、満洲での油田開発が始まり、大連に作られた重化学工場から、ガソリンや軽油となって日本本土へと出荷されるようになったのである。

 大陸の油田が五か所で発見され、三か所が「特区」であり、一か所が北京郊外承徳のアメリカ軍占領地であった。アメリカは中華民国からの租借権を得て、北京承徳に石油プラントを建設し、採油事業を開始したのである。山東省で発見された油田は、ドイツがアメリカと共同で石油プラント事業が開始された。

 大陸での炭鉱および油田発見は、世界経済そのものを活性化させたのである。しかしながら、金本位制の兌換紙幣を基本とした通貨制度の中では、生産量そのものが向上したため、デフレ状態に陥っていた。

 定額手形は、不換紙幣ではあるものの、無利子無期限の日本政府に対する借用証書であることには変わりはなかった。つまり、日本政府の信用度が、定額手形の割引率という形で反映され、定額手形の価値を規定したのである。






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 定額手形紙幣は、日本政府の借用証書である。
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