我田引鉄だけじゃない? 原首相のまったり運営

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天下泰平なれど外憂在り

天下泰平なれど外憂在り01 大陸の戦塵は、泥沼に堕ちる

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 アメリカと中華民国は、協力して蒙古共和国とソビエトの支援を受けた中国共産党との戦いが開始されていた。スターリンの支援を受けた中国共産党30万は、ソビエトと共同で西涼から侵攻し、蒙古共和国東部に展開している、ウルンゲンの50万の側面攻撃を開始した。
 ウルンゲンからの支援要請で、北洋軍閥の閻錫山、傅作義が15万の兵で、中国共産党を攻撃、アメリカ軍が、北洋軍閥を叩くために進軍すれば、馬賊2万が後方の襲撃を拡大し、天津や北京での赤軍がゲリラ活動を開始し、米兵の殺害や、外国人への襲撃が発生した。

 国民党は、中華民国軍30万を動員して、南京から重慶への進撃を開始した。ソビエト赤軍は、極東ロシア、蒙古共和国と対峙しながら、軍閥、楊増新、金樹仁、盛世才らの10万を加え、30万で中華民国軍への攻撃を開始した。

 満洲の軍閥、張作霖、張学良、張宗昌は、私兵30万を動員し、山海関に展開させた。「山海関の東は、国際連盟の新天地「特区」。いかなる国家も、侵略するを禁ず」
 宣言は、フランス、イギリスの新聞に掲載され、イギリス、フランスも、極東における軍事行動の拡大を懸念し、極東の民による民兵の行動を支持すると報道された。





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 混乱した大陸は、戦国乱世のように、血で血を洗う動乱の時代へと突入していった。
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 大規模な戦闘は、それぞれの勢力が、多方面に敵を抱えて停滞し、いくつもの勢力圏に分かれて、各地で戦闘が頻発するようになったのである。各地の軍閥は、万単位の軍を動員し、各地で抗争を激化させていった。

 日本政府は、大陸に不干渉の行動をとり、シナ派遣軍は、大連および旅順から動かなかった。イギリスは、ハバロフスクのオーストラリア軍を5万に増員し、ウラジオストクに極東艦隊を派遣し、営口に1万のイギリス軍を動員していた。フランスは、3万の軍を安東省に派遣、安東郊外に居留地を築いた。これは、叛乱が多発して、狭軌レールの朝鮮鉄道は、売り上げの低下を受けて、フランスへの売却が検討されていた。満洲の権益安定に伴って、赤字が嵩む朝鮮鉄道の維持には、日本の鉄道院から反対の声が上がっていた。

 国際連盟への分担金は、満洲各都市の人頭税に基づいて、分担金の支払いが実行されていた。支払いを代行しているのが、満洲鉄道都市警備局であった。日本の山本権兵衛内閣では、満洲の活況から、朝鮮についても「特区」扱いをすることで、日本の負担を減らし、国内内需拡大が求められていた。

 朝鮮半島についても、狭軌レールから広軌へ、転換工事が進められたが、現地の叛乱活動は大きな課題であった。日本の統治への反対と叛乱は、両班の権益が奪われ、平民の権益が拡大することへの嫉妬と反発に他ならなかった。日本の朝鮮駐留軍は、シベリア出兵以降、削減の対象となっていて、現在は、釜山、平壌に各1万、海軍陸戦隊5千が清津に居留させるに留まっていた。

 遼東半島は、拡大する大連重工業地帯には、シナ派遣軍10万が居留していた。シナ派遣軍の多くは、新規徴募兵であった。新規徴募兵は、大連の工兵学校や工兵大学校の学生となることを求め、徴募兵となっているものも多かった。工兵学校および工兵大学校を卒業し、大連重工業地帯に就職することで、満洲で後方支援要員となることで、俸給返還免除を狙っていた。これは、横浜を始め、本土各地の工兵学校や工兵大学校でも同じであり、車両整備、溶接、電気工など、毎年数千人が産業界へと送り出されていった。結果として、満洲を含めた日本の製造業は、大きく拡大していったのである。

「石井閣下、政府は、半島の鉄道を売却するのですか」

「まぁ、今のままでは、ただの荷物だよ、風間君」

「フランスは、購入に意欲的だそうですね」

「あぁ、風間君。フランスとしても、極東で大陸利権を確保できるなら、十分であろう。しかも、叛乱が多いとしても、半島は大陸の後方となる地域だ」

「安定させれば、利益になるということですか」

「問題は、日本の方だ、風間君」

「国内の平安が、軍事費の削減を求める声となっていることですか」

「風間君。大陸の動乱は、異国の火事。日ノ本の民にとっては、関係ないということだろう」

「どうなされますか、石井閣下」

「北部における半島の工業化は、既に完了している。半島では、工業利権が日本であり、鉄道がフランスの利権になる」

「閣下。インフラを抑えること、それが、原首相の大陸への想いでしたが」

「そうだな。日ノ本から欧州まで、弾丸列車を走らせる。鉄道院総裁であった頃から、首相の夢だったな、風間君」

「えぇ、夢は潰えるのですか、閣下」

「ははは、風間君、夢が潰えることはない。日本から欧州まで、すべてが日本である必要がどこにある」

「それは、確かに」

「風間君。アメリカは、大陸で泥沼に嵌った。おそらくは、ドイツも巻き込まれることになろうな」

「しかし、ソビエトの動きが危険です。日本にも、かなり多くのボリシェビキの工作員が入り込んでいるのは間違いないと」

「陛下への暗殺未遂など、大逆罪だ、処刑以外はありえん。だが陛下は、臣民同士の争わず、私逆を鎮めるように言われている」

「陛下のご宸襟を騒がしてはならぬことでしょうか」

「そうだ。そのためには、国民の生活を豊かにする。そのためには金が要る」



 陛下暗殺未遂犯、難波大助は大逆罪によって、裁判の結果として死刑となった。

 昭和初期の混乱は、満洲経済圏の拡大と共に、本土の内需拡大が進められていった。原が、最大政党のまま野党となった政友会を率い、政府の軍事費拡大への反対を唱えて、国民の所得倍増計画をぶち上げた。半島の利権売却から、各選挙区にインフラ整備を拡大し、国道整備の拡充は国産車の製造業を拡充させ、国内にモータリゼーションを生み出したのであった。
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