我田引鉄だけじゃない? 原首相のまったり運営

Ittoh

文字の大きさ
上 下
25 / 69
閑話休題

ロシア帝室2 |あやかし《ひとならざるもの》の儀、あくまで陰にて

しおりを挟む
 警視庁芝庁舎から、アナスタシア皇女殿下は生まれたばかりの殿下を連れて、上皇陛下のおられる仙洞御所へ、風間と一緒に向かった。お付きには、駐日ロシア大使館付武官に転出し、警備主査となった正力松太郎の隊があたった。車三台で、仙洞御所へと向かっていた。正力は、今上天皇暗殺未遂で責任をとって警察を辞職し、駐日ロシア大使館の館長代理として駐日大使アナスタシア皇女殿下の補佐および護衛を務めていた。警備部時代の部下の多くも、駐日ロシア大使館武官および事務官として雇われることとなった。ロマノフ家の男系男子は、アレクセイ陛下とアナスタシア皇女殿下の嫡子マヒト殿下だけであった。

「妃殿下、私のことは気にされず、妃殿下のことを考えてください」

「もう、真人はあたしの夫なのだから、もっと話してくれても良いのに」

「妃殿下、お許しを」

「わかってるわ、皇配の権利を行使しないというのでしょ、雑談もだめなの」

「はい。その通りです、妃殿下」

「もう、仕方ないわね」

 仙洞御所に到着すると、上皇后陛下がお待ちされていました。お二人でお話をなされて、内親王殿下にお会いされたようでした。仙洞御所からの帰りには、駐日ロシア大使館で公務を務められて、芝の洋館へとお戻りになった。風間は、アナスタシア殿下を御所へお連れした後、そのまま飛行機で横浜から奉天に出て、鉄道でパリへと移動した。

「おかえりなさいませ、妃殿下」

「ただいま、葎さん」

 アナスタシア殿下が懐妊されたことを受けて、賀茂斎宮家よりアナスタシア殿下には、侍女としてつけられることとなった。葎もまた、斎宮を支えるあやかしひとにあらざるものであり、戸籍を持たないモノであった。

「妃殿下、お茶の用意が、できていおります」

「そうね、葎さんも一緒に」

「妃殿下、私は侍女ですよ」

「良いではないですか、少しくらい」

「妃殿下、申し訳ありません」

すっと頭を下げると、席についたアナスタシアの後ろに立って、

「妃殿下。葎の独り言は、お耳障りでしょうが、ご容赦願いますね」

「もう、わかったわ、、、あたしが浜御所に行ったのは、聞いてる」

「はい、連絡がありましたから」

「呼ばれた理由は、マヒトのことなの」

「上皇后陛下は、御急ぎなのですね」

 昭和2年2月に生まれた、内親王殿下とアナスタシア皇女殿下の御子との約束を求められた。上皇陛下は、ほとんどの公務から離れて、療養のために、御所を出られないとのご様子であったそうです。お生まれになった、内親王殿下にもなかなか会えない状況で、上皇后陛下は、様々な行動に出られていた。
 上皇后陛下は、床につかれた陛下の傍に付くために、内親王殿下を預ける相手として、選ばれたのがロマノフ皇帝家、第三皇女殿下アナスタシアであった。上皇后陛下としては、ロマノフ家の男児として生まれたマヒト殿下へ、内親王殿下を預けることを、アナスタシア殿下は頼まれていた。
 最終的には、ロマノフ家への輿入れという話も含まれていた。

「そうですか、ならば、妃殿下次第でしょうね」

「わたし次第ですか」

「はい。わたしは、妃殿下次第ですから」

「では、ロマノフ家にとって利はあるのでしょうか」

「マイナスは、西洋の皇帝家に、日ノ本が皇室の血筋をいれることでしょうか」

「ロマノフ家は、もうロシアの皇帝ではありません。日ノ本の方がマイナスなのでは」

「ロマノフ家は、ロシア帝室として権益を持ち、国際連盟理事国の大使館を、現在でも維持しています。国家ではないが、無地帝国領主Landless Imperial Lordとなられております。上皇后陛下は、上皇陛下の体調の方が、心配なのでしょうねぇ」

「駐日ロシア大使としては、日ノ本との絆を深くしたいと思うのですが、何故、あたしなのでしょう。姉上には、皇太子殿下が生まれています」

「内親王殿下も、陛下の御子ですが、上皇となられたからの子です。目立ちたいとも思っておられないのでしょう。それに、ピョートル皇太子殿下では、ロマノフ家に断られると思われたのではありませんか」

「日ノ本は大国です。滅びた帝国に、気を使われるのですか」

 海軍の休日から、

「妃殿下。帝国にというよりは、白人の方々にだと思いますが」

「白人には、嫌われているのですか」

「妃殿下。白人を一番だと思われている方には、日本が気にくわない方も多いのですよ」

「葎。あたしは」

「妃殿下は、そんなことはありません。それに、妃殿下は、内親王殿下を受け入れても良いとお考えなのでしょう」

「はい。でも、葎、真人は、何故、何もいてくれないのでしょうか」

「そうですね、昔話をしてもよろしいですか」

「えぇ」

「昔々、天平宝珠の頃と言いますから、日ノ本で、内親王殿下が皇太女殿下になられたことがありました。その時に、お仕えするようになったのがあやかしひとならざるものでございます」

「では、日本には、女帝も居られたのですが」

「はい、妃殿下」

「何かあったのですね、葎」

「はい、陛下と呼ばれ、ご自身の子を皇太子となられましたが、幼くして亡くなられ、退位されたのです」

「それからどうされたのです」

「上皇陛下となられて、御傍におられたあやかしひとならざるものを、弓削の家に預け、人にされたのです」

「人になれるものなのですか」

「はい。ですが、妃殿下、それは間違いだったのです」

「えっ」

「陛下となられた方々にご不幸が続き、どうしても上皇となれた陛下に、もう一度今上天皇陛下になっていただかなければならなかったのです。そして、人となれば、あやかしひとならざるものには戻れませぬ」

「それは、、、」

「権力を求めたわけではなく、ただ、陛下の御傍近くに仕えるためには、皇族になれねばなりませんが、それは許されなかったのです」

「それは昔話なのですよね」

「妃殿下。真人もあたしも、お仕えすると決めた方の御傍にいたいのです。お許しくださいませんか」

「人とあやかしひとならざるものとは、それほどに違うのですね」

「はい。あやかしひとならざるものは、日ノ本は二千年を超える時を、皇族方に寄り添って生きてまいりました。今更、変えようとは思いません」

「内親王殿下が皇族であれば、マヒトがあやかしひとならざるものになるのですか」

「マヒト殿下は、外ツ国の皇帝ロマノフ家の皇族であらせられます」

「皇族同士であれば、構わないということなのね」

「詳細となれば、色々と言ってくるものもありましょうが、我らがお守り致します」

「わかりました。内親王殿下をお迎えしましょう」

 駐日ロシア大使館は、大改修に賑わっていた。アナスタシア妃殿下、マヒト殿下と許婚となられた内親王殿下がお住まいになることになったのです。警察庁警備部から、更に16名が警護に増強されたのです。





<<<<<>>>>>
 こうして、ロマノフ王朝の第三皇女アナスタシア妃殿下は、内親王殿下をお迎えすることとなったのでした。
<<<<<>>>>>

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

ナポレオンの妊活・立会い出産・子育て

せりもも
歴史・時代
帝国の皇子に必要なのは、高貴なる青き血。40歳を過ぎた皇帝ナポレオンは、早急に子宮と結婚する必要があった。だがその前に、彼は、既婚者だった……。ローマ王(ナポレオン2世 ライヒシュタット公)の両親の結婚から、彼がウィーンへ幽閉されるまでを、史実に忠実に描きます。 カクヨムから、一部転載

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。

SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。 伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。 そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。 さて、この先の少年の運命やいかに? 剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます! *この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから! *この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

枢軸国

よもぎもちぱん
歴史・時代
時は1919年 第一次世界大戦の敗戦によりドイツ帝国は滅亡した。皇帝陛下 ヴィルヘルム二世の退位により、ドイツは共和制へと移行する。ヴェルサイユ条約により1320億金マルク 日本円で200兆円もの賠償金を課される。これに激怒したのは偉大なる我らが総統閣下"アドルフ ヒトラー"である。結果的に敗戦こそしたものの彼の及ぼした影響は非常に大きかった。 主人公はソフィア シュナイダー 彼女もまた、ドイツに転生してきた人物である。前世である2010年頃の記憶を全て保持しており、映像を写真として記憶することが出来る。 生き残る為に、彼女は持てる知識を総動員して戦う 偉大なる第三帝国に栄光あれ! Sieg Heil(勝利万歳!)

処理中です...