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閑話休題
ロシア帝室2 |あやかし《ひとならざるもの》の儀、あくまで陰にて
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警視庁芝庁舎から、アナスタシア皇女殿下は生まれたばかりの殿下を連れて、上皇陛下のおられる仙洞御所へ、風間と一緒に向かった。お付きには、駐日ロシア大使館付武官に転出し、警備主査となった正力松太郎の隊があたった。車三台で、仙洞御所へと向かっていた。正力は、今上天皇暗殺未遂で責任をとって警察を辞職し、駐日ロシア大使館の館長代理として駐日大使アナスタシア皇女殿下の補佐および護衛を務めていた。警備部時代の部下の多くも、駐日ロシア大使館武官および事務官として雇われることとなった。ロマノフ家の男系男子は、アレクセイ陛下とアナスタシア皇女殿下の嫡子マヒト殿下だけであった。
「妃殿下、私のことは気にされず、妃殿下のことを考えてください」
「もう、真人はあたしの夫なのだから、もっと話してくれても良いのに」
「妃殿下、お許しを」
「わかってるわ、皇配の権利を行使しないというのでしょ、雑談もだめなの」
「はい。その通りです、妃殿下」
「もう、仕方ないわね」
仙洞御所に到着すると、上皇后陛下がお待ちされていました。お二人でお話をなされて、内親王殿下にお会いされたようでした。仙洞御所からの帰りには、駐日ロシア大使館で公務を務められて、芝の洋館へとお戻りになった。風間は、アナスタシア殿下を御所へお連れした後、そのまま飛行機で横浜から奉天に出て、鉄道でパリへと移動した。
「おかえりなさいませ、妃殿下」
「ただいま、葎さん」
アナスタシア殿下が懐妊されたことを受けて、賀茂斎宮家よりアナスタシア殿下には、侍女としてつけられることとなった。葎もまた、斎宮を支えるあやかしであり、戸籍を持たないモノであった。
「妃殿下、お茶の用意が、できていおります」
「そうね、葎さんも一緒に」
「妃殿下、私は侍女ですよ」
「良いではないですか、少しくらい」
「妃殿下、申し訳ありません」
すっと頭を下げると、席についたアナスタシアの後ろに立って、
「妃殿下。葎の独り言は、お耳障りでしょうが、ご容赦願いますね」
「もう、わかったわ、、、あたしが浜御所に行ったのは、聞いてる」
「はい、連絡がありましたから」
「呼ばれた理由は、マヒトのことなの」
「上皇后陛下は、御急ぎなのですね」
昭和2年2月に生まれた、内親王殿下とアナスタシア皇女殿下の御子との約束を求められた。上皇陛下は、ほとんどの公務から離れて、療養のために、御所を出られないとのご様子であったそうです。お生まれになった、内親王殿下にもなかなか会えない状況で、上皇后陛下は、様々な行動に出られていた。
上皇后陛下は、床につかれた陛下の傍に付くために、内親王殿下を預ける相手として、選ばれたのがロマノフ皇帝家、第三皇女殿下アナスタシアであった。上皇后陛下としては、ロマノフ家の男児として生まれたマヒト殿下へ、内親王殿下を預けることを、アナスタシア殿下は頼まれていた。
最終的には、ロマノフ家への輿入れという話も含まれていた。
「そうですか、ならば、妃殿下次第でしょうね」
「わたし次第ですか」
「はい。わたしは、妃殿下次第ですから」
「では、ロマノフ家にとって利はあるのでしょうか」
「マイナスは、西洋の皇帝家に、日ノ本が皇室の血筋をいれることでしょうか」
「ロマノフ家は、もうロシアの皇帝ではありません。日ノ本の方がマイナスなのでは」
「ロマノフ家は、ロシア帝室として権益を持ち、国際連盟理事国の大使館を、現在でも維持しています。国家ではないが、無地帝国領主となられております。上皇后陛下は、上皇陛下の体調の方が、心配なのでしょうねぇ」
「駐日ロシア大使としては、日ノ本との絆を深くしたいと思うのですが、何故、あたしなのでしょう。姉上には、皇太子殿下が生まれています」
「内親王殿下も、陛下の御子ですが、上皇となられたからの子です。目立ちたいとも思っておられないのでしょう。それに、ピョートル皇太子殿下では、ロマノフ家に断られると思われたのではありませんか」
「日ノ本は大国です。滅びた帝国に、気を使われるのですか」
海軍の休日から、
「妃殿下。帝国にというよりは、白人の方々にだと思いますが」
「白人には、嫌われているのですか」
「妃殿下。白人を一番だと思われている方には、日本が気にくわない方も多いのですよ」
「葎。あたしは」
「妃殿下は、そんなことはありません。それに、妃殿下は、内親王殿下を受け入れても良いとお考えなのでしょう」
「はい。でも、葎、真人は、何故、何もいてくれないのでしょうか」
「そうですね、昔話をしてもよろしいですか」
「えぇ」
「昔々、天平宝珠の頃と言いますから、日ノ本で、内親王殿下が皇太女殿下になられたことがありました。その時に、お仕えするようになったのがあやかしでございます」
「では、日本には、女帝も居られたのですが」
「はい、妃殿下」
「何かあったのですね、葎」
「はい、陛下と呼ばれ、ご自身の子を皇太子となられましたが、幼くして亡くなられ、退位されたのです」
「それからどうされたのです」
「上皇陛下となられて、御傍におられたあやかしを、弓削の家に預け、人にされたのです」
「人になれるものなのですか」
「はい。ですが、妃殿下、それは間違いだったのです」
「えっ」
「陛下となられた方々にご不幸が続き、どうしても上皇となれた陛下に、もう一度今上天皇陛下になっていただかなければならなかったのです。そして、人となれば、あやかしには戻れませぬ」
「それは、、、」
「権力を求めたわけではなく、ただ、陛下の御傍近くに仕えるためには、皇族になれねばなりませんが、それは許されなかったのです」
「それは昔話なのですよね」
「妃殿下。真人も葎も、お仕えすると決めた方の御傍にいたいのです。お許しくださいませんか」
「人とあやかしとは、それほどに違うのですね」
「はい。あやかしは、日ノ本は二千年を超える時を、皇族方に寄り添って生きてまいりました。今更、変えようとは思いません」
「内親王殿下が皇族であれば、マヒトがあやかしになるのですか」
「マヒト殿下は、外ツ国の皇帝ロマノフ家の皇族であらせられます」
「皇族同士であれば、構わないということなのね」
「詳細となれば、色々と言ってくるものもありましょうが、我らがお守り致します」
「わかりました。内親王殿下をお迎えしましょう」
駐日ロシア大使館は、大改修に賑わっていた。アナスタシア妃殿下、マヒト殿下と許婚となられた内親王殿下がお住まいになることになったのです。警察庁警備部から、更に16名が警護に増強されたのです。
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こうして、ロマノフ王朝の第三皇女アナスタシア妃殿下は、内親王殿下をお迎えすることとなったのでした。
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「妃殿下、私のことは気にされず、妃殿下のことを考えてください」
「もう、真人はあたしの夫なのだから、もっと話してくれても良いのに」
「妃殿下、お許しを」
「わかってるわ、皇配の権利を行使しないというのでしょ、雑談もだめなの」
「はい。その通りです、妃殿下」
「もう、仕方ないわね」
仙洞御所に到着すると、上皇后陛下がお待ちされていました。お二人でお話をなされて、内親王殿下にお会いされたようでした。仙洞御所からの帰りには、駐日ロシア大使館で公務を務められて、芝の洋館へとお戻りになった。風間は、アナスタシア殿下を御所へお連れした後、そのまま飛行機で横浜から奉天に出て、鉄道でパリへと移動した。
「おかえりなさいませ、妃殿下」
「ただいま、葎さん」
アナスタシア殿下が懐妊されたことを受けて、賀茂斎宮家よりアナスタシア殿下には、侍女としてつけられることとなった。葎もまた、斎宮を支えるあやかしであり、戸籍を持たないモノであった。
「妃殿下、お茶の用意が、できていおります」
「そうね、葎さんも一緒に」
「妃殿下、私は侍女ですよ」
「良いではないですか、少しくらい」
「妃殿下、申し訳ありません」
すっと頭を下げると、席についたアナスタシアの後ろに立って、
「妃殿下。葎の独り言は、お耳障りでしょうが、ご容赦願いますね」
「もう、わかったわ、、、あたしが浜御所に行ったのは、聞いてる」
「はい、連絡がありましたから」
「呼ばれた理由は、マヒトのことなの」
「上皇后陛下は、御急ぎなのですね」
昭和2年2月に生まれた、内親王殿下とアナスタシア皇女殿下の御子との約束を求められた。上皇陛下は、ほとんどの公務から離れて、療養のために、御所を出られないとのご様子であったそうです。お生まれになった、内親王殿下にもなかなか会えない状況で、上皇后陛下は、様々な行動に出られていた。
上皇后陛下は、床につかれた陛下の傍に付くために、内親王殿下を預ける相手として、選ばれたのがロマノフ皇帝家、第三皇女殿下アナスタシアであった。上皇后陛下としては、ロマノフ家の男児として生まれたマヒト殿下へ、内親王殿下を預けることを、アナスタシア殿下は頼まれていた。
最終的には、ロマノフ家への輿入れという話も含まれていた。
「そうですか、ならば、妃殿下次第でしょうね」
「わたし次第ですか」
「はい。わたしは、妃殿下次第ですから」
「では、ロマノフ家にとって利はあるのでしょうか」
「マイナスは、西洋の皇帝家に、日ノ本が皇室の血筋をいれることでしょうか」
「ロマノフ家は、もうロシアの皇帝ではありません。日ノ本の方がマイナスなのでは」
「ロマノフ家は、ロシア帝室として権益を持ち、国際連盟理事国の大使館を、現在でも維持しています。国家ではないが、無地帝国領主となられております。上皇后陛下は、上皇陛下の体調の方が、心配なのでしょうねぇ」
「駐日ロシア大使としては、日ノ本との絆を深くしたいと思うのですが、何故、あたしなのでしょう。姉上には、皇太子殿下が生まれています」
「内親王殿下も、陛下の御子ですが、上皇となられたからの子です。目立ちたいとも思っておられないのでしょう。それに、ピョートル皇太子殿下では、ロマノフ家に断られると思われたのではありませんか」
「日ノ本は大国です。滅びた帝国に、気を使われるのですか」
海軍の休日から、
「妃殿下。帝国にというよりは、白人の方々にだと思いますが」
「白人には、嫌われているのですか」
「妃殿下。白人を一番だと思われている方には、日本が気にくわない方も多いのですよ」
「葎。あたしは」
「妃殿下は、そんなことはありません。それに、妃殿下は、内親王殿下を受け入れても良いとお考えなのでしょう」
「はい。でも、葎、真人は、何故、何もいてくれないのでしょうか」
「そうですね、昔話をしてもよろしいですか」
「えぇ」
「昔々、天平宝珠の頃と言いますから、日ノ本で、内親王殿下が皇太女殿下になられたことがありました。その時に、お仕えするようになったのがあやかしでございます」
「では、日本には、女帝も居られたのですが」
「はい、妃殿下」
「何かあったのですね、葎」
「はい、陛下と呼ばれ、ご自身の子を皇太子となられましたが、幼くして亡くなられ、退位されたのです」
「それからどうされたのです」
「上皇陛下となられて、御傍におられたあやかしを、弓削の家に預け、人にされたのです」
「人になれるものなのですか」
「はい。ですが、妃殿下、それは間違いだったのです」
「えっ」
「陛下となられた方々にご不幸が続き、どうしても上皇となれた陛下に、もう一度今上天皇陛下になっていただかなければならなかったのです。そして、人となれば、あやかしには戻れませぬ」
「それは、、、」
「権力を求めたわけではなく、ただ、陛下の御傍近くに仕えるためには、皇族になれねばなりませんが、それは許されなかったのです」
「それは昔話なのですよね」
「妃殿下。真人も葎も、お仕えすると決めた方の御傍にいたいのです。お許しくださいませんか」
「人とあやかしとは、それほどに違うのですね」
「はい。あやかしは、日ノ本は二千年を超える時を、皇族方に寄り添って生きてまいりました。今更、変えようとは思いません」
「内親王殿下が皇族であれば、マヒトがあやかしになるのですか」
「マヒト殿下は、外ツ国の皇帝ロマノフ家の皇族であらせられます」
「皇族同士であれば、構わないということなのね」
「詳細となれば、色々と言ってくるものもありましょうが、我らがお守り致します」
「わかりました。内親王殿下をお迎えしましょう」
駐日ロシア大使館は、大改修に賑わっていた。アナスタシア妃殿下、マヒト殿下と許婚となられた内親王殿下がお住まいになることになったのです。警察庁警備部から、更に16名が警護に増強されたのです。
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こうして、ロマノフ王朝の第三皇女アナスタシア妃殿下は、内親王殿下をお迎えすることとなったのでした。
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