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閑話休題
ロシア帝室1 |あやかし《ひとならざるもの》の儀、あくまで陰にて
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原首相は、言い辛そうに、私を見ていたので、
「何か、他にもあるんですか」
「あぁ、芝から、君に内々で話があるそうだ」
芝とは、東京府府警本部から日本国本部機能を分離し、警察庁庁舎が移転した、警察庁芝庁舎のことである。現在、ボリシェビキの行動を内偵しているのは、警察庁芝庁舎で対応していた。スターリンが、徹底的な勢力圏内の情報遮断を図っているため、ソビエトの内情は、要として知られていなかった。一時期、餓死者が百万単位で出るほどに困窮していて、歩いて極東ロシア共和国や蒙古共和国へ亡命した者たちがいた。これは、2000年になってから情報が確認できただけで、1920年代では、ソビエトは「鉄のカーテン」に遮られ、実際の状況は不明で、まったくわからないままであった。
「は、殿下に何か」
風間は、アナスタシア皇女殿下と一緒に暮らしていた。
「いや、浜に一緒に来てほしいそうだ」
どうやら、ボリシェビキの暗殺の対象になったとか言うわけではないらしい。
生前退位された、上皇陛下上皇后陛下は、浜離宮にお住まいになられていて、上皇陛下も公務が激減されたこともあってか、昨年末には内親王殿下がお生まれになられた。
「皇女殿下に何か」
嫌な雰囲気が漂ってきた。
「皇女殿下には、殿下が生まれたのだろ」
「は、はい」
「一度、会ってもらえるかね」
「皇女殿下と上皇后陛下の仲介であれば」
「わかってるよ、風間君。君に戸籍は無いからな」
日ノ本の深く立ち込める闇には、あやかしの住まう世界があると伝えられていた。これは、正解ではないが、間違いというわけでもない。あやかしとは、言葉の暗喩であり、戸籍を持たない日本人という意味で、あやかしという表現がされていた。風間の旅券は、日本政府が発行しているが、風間の戸籍は存在しない。風間は、戸籍上は存在しない人間ということになる。風間真人という名前もまた、存在しない人間の名前ということになる。外務省で作成された、日本の旅券を保持しているが、正式に調査等があった場合、風間真人の住所氏名は日本の戸籍には存在していないこととなり、海外で処罰された場合は、日本人風間真人を名乗る、国籍不明の別人として片づけられる人間である。
帝国陸海軍にしても、軍に所属せず、元帥府や軍事参議院、侍従武官府や大使館付武官に付けられた名称が、特務機関および特務機関員であった。特務機関員全員が戸籍の無いあやかしではなく、ほとんどは戸籍のある人であった。
風間は、代々、賀茂斎宮に仕える家で、戸籍に無い子供として育てられていた。戸籍に入れない子は、斎宮に仕えるための必要条件であった。非常に頭が良かったために、斎宮に仕え教えるために、外国語を学び、外国語大学へと進んだが、結核にかかり療養所に入ったことで、捨てられることとなった。病が癒えたものの、賀茂斎宮へ戻れず、ロシア語ができる人を探していた、明石元二郎に支援員として付けられた。大使館付武官という形のあやかしと呼ばれた者であった。ロシア帝国支配下の満洲で、諜報活動をはじめ、シベリア出兵で
明石が、組織的に諜報組織を運用できたのは、対ロシア帝国という巨象を倒すために、様々な活動について、各部署の協力を受けて実行できたからであり、これは個人の繋がりであり、組織活動に見えて、組織行動とは言えないところがあった。
斎宮家に代々伝わる風習としえ、斎宮家に生まれた男子は、戸籍を持たない。斎宮となる姫宮に仕えるように育てられる。戸籍の無い子は、あやかしとも呼ばれ、ただただ、斎宮に仕える者として育てられるのである。斎宮家は、女系宮家であり、配偶者を持たず、代々斎宮を支えるために、司とも呼ばれる戸籍の無い家があたっていた。典籍として記録されるのは、女性のみであり、斎宮に仕えるモノは、一切記録には残らない。大病を得れば捨てられ、消え去るだけ、そんな幻のようなモノであった。
イギリスやロシアで活動している中で、様々な諜報活動に参加していたが、ロマノフ王朝救出作戦を、日本側で主導し、皇太子殿下をはじめ、皇帝一家の国外逃亡に成功している。アナスタシア皇女殿下に気に入られ、港区に洋館を建てて、一緒に暮らすようになったのである。皇女殿下に男子が生まれたが、父親は知られていない。旧ロシア皇帝ロマノフ家は、帝国が滅びた後も、皇太子が樺太豊原に住んでいた。フランスの利権確保から、満洲を含めたロシア国外の鉱山等の利権は、ロシア帝室にあると提唱された。結果として、国際連盟で、満洲や沿海州の鉱山や港湾等の利権が、ロシア帝室にあると決議されたことで、アメリカはウラジオストクの租借権およびシベリア鉄道の権益を得、ニコラエフスクおよびハバロフスクを含めた、アムール川航行権をイギリスが得、フランスが満洲の鉱山や炭田の権益を得、日本が満洲全域、サバイカル鉄道、ハバロフスク、ウラジオストクまでの鉄道利権を得た。
ロシア帝国帝室は、国際連盟各国から権益を資産として運用し、収益を得ていた。長女オリガは、ロシアの国土でもあった、北樺太加来湾敷香町に建てられた館に、皇太子アレクセイの摂政姫殿下となり、主治医のエフゲニー・ボトキンを夫に迎え、ロシア帝室を仕切った。次女タチアナは、皇太子殿下のアレクセイの侍従となった、レオニード・イヴァノヴィチ・セドネフを夫に迎え、フランスのパリでロシア帝室の外渉官として、駐仏ロシア大使として務めていた。
国際連盟は、ロシア帝国は領土を持たず、権益を保有する形であり、国家としてはロシア帝国は存在しないが、ロシア帝室としての権益は保有することから、無地帝国領主と規定した。国際連盟理事国のフランスが認めたことで、フランスのロシア大使館は、ロシア帝室渉外公館として継承された。駐日ロシア大使館は、樺太に移転したとされた。駐英ロシア大使館、駐米ロシア大使館、駐伊ロシア大使館は、フランス大使の委託管理となり、業務は駐仏ロシア帝室全権大使タチアナが引き継ぐこととなった。駐独ロシア大使館は、ソビエトに引き渡され、駐独ソビエト大使館となった。
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ソビエトのスターリンは、旧ロシアの権益は、ソビエトのモノとして、これを認めていない。
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「何か、他にもあるんですか」
「あぁ、芝から、君に内々で話があるそうだ」
芝とは、東京府府警本部から日本国本部機能を分離し、警察庁庁舎が移転した、警察庁芝庁舎のことである。現在、ボリシェビキの行動を内偵しているのは、警察庁芝庁舎で対応していた。スターリンが、徹底的な勢力圏内の情報遮断を図っているため、ソビエトの内情は、要として知られていなかった。一時期、餓死者が百万単位で出るほどに困窮していて、歩いて極東ロシア共和国や蒙古共和国へ亡命した者たちがいた。これは、2000年になってから情報が確認できただけで、1920年代では、ソビエトは「鉄のカーテン」に遮られ、実際の状況は不明で、まったくわからないままであった。
「は、殿下に何か」
風間は、アナスタシア皇女殿下と一緒に暮らしていた。
「いや、浜に一緒に来てほしいそうだ」
どうやら、ボリシェビキの暗殺の対象になったとか言うわけではないらしい。
生前退位された、上皇陛下上皇后陛下は、浜離宮にお住まいになられていて、上皇陛下も公務が激減されたこともあってか、昨年末には内親王殿下がお生まれになられた。
「皇女殿下に何か」
嫌な雰囲気が漂ってきた。
「皇女殿下には、殿下が生まれたのだろ」
「は、はい」
「一度、会ってもらえるかね」
「皇女殿下と上皇后陛下の仲介であれば」
「わかってるよ、風間君。君に戸籍は無いからな」
日ノ本の深く立ち込める闇には、あやかしの住まう世界があると伝えられていた。これは、正解ではないが、間違いというわけでもない。あやかしとは、言葉の暗喩であり、戸籍を持たない日本人という意味で、あやかしという表現がされていた。風間の旅券は、日本政府が発行しているが、風間の戸籍は存在しない。風間は、戸籍上は存在しない人間ということになる。風間真人という名前もまた、存在しない人間の名前ということになる。外務省で作成された、日本の旅券を保持しているが、正式に調査等があった場合、風間真人の住所氏名は日本の戸籍には存在していないこととなり、海外で処罰された場合は、日本人風間真人を名乗る、国籍不明の別人として片づけられる人間である。
帝国陸海軍にしても、軍に所属せず、元帥府や軍事参議院、侍従武官府や大使館付武官に付けられた名称が、特務機関および特務機関員であった。特務機関員全員が戸籍の無いあやかしではなく、ほとんどは戸籍のある人であった。
風間は、代々、賀茂斎宮に仕える家で、戸籍に無い子供として育てられていた。戸籍に入れない子は、斎宮に仕えるための必要条件であった。非常に頭が良かったために、斎宮に仕え教えるために、外国語を学び、外国語大学へと進んだが、結核にかかり療養所に入ったことで、捨てられることとなった。病が癒えたものの、賀茂斎宮へ戻れず、ロシア語ができる人を探していた、明石元二郎に支援員として付けられた。大使館付武官という形のあやかしと呼ばれた者であった。ロシア帝国支配下の満洲で、諜報活動をはじめ、シベリア出兵で
明石が、組織的に諜報組織を運用できたのは、対ロシア帝国という巨象を倒すために、様々な活動について、各部署の協力を受けて実行できたからであり、これは個人の繋がりであり、組織活動に見えて、組織行動とは言えないところがあった。
斎宮家に代々伝わる風習としえ、斎宮家に生まれた男子は、戸籍を持たない。斎宮となる姫宮に仕えるように育てられる。戸籍の無い子は、あやかしとも呼ばれ、ただただ、斎宮に仕える者として育てられるのである。斎宮家は、女系宮家であり、配偶者を持たず、代々斎宮を支えるために、司とも呼ばれる戸籍の無い家があたっていた。典籍として記録されるのは、女性のみであり、斎宮に仕えるモノは、一切記録には残らない。大病を得れば捨てられ、消え去るだけ、そんな幻のようなモノであった。
イギリスやロシアで活動している中で、様々な諜報活動に参加していたが、ロマノフ王朝救出作戦を、日本側で主導し、皇太子殿下をはじめ、皇帝一家の国外逃亡に成功している。アナスタシア皇女殿下に気に入られ、港区に洋館を建てて、一緒に暮らすようになったのである。皇女殿下に男子が生まれたが、父親は知られていない。旧ロシア皇帝ロマノフ家は、帝国が滅びた後も、皇太子が樺太豊原に住んでいた。フランスの利権確保から、満洲を含めたロシア国外の鉱山等の利権は、ロシア帝室にあると提唱された。結果として、国際連盟で、満洲や沿海州の鉱山や港湾等の利権が、ロシア帝室にあると決議されたことで、アメリカはウラジオストクの租借権およびシベリア鉄道の権益を得、ニコラエフスクおよびハバロフスクを含めた、アムール川航行権をイギリスが得、フランスが満洲の鉱山や炭田の権益を得、日本が満洲全域、サバイカル鉄道、ハバロフスク、ウラジオストクまでの鉄道利権を得た。
ロシア帝国帝室は、国際連盟各国から権益を資産として運用し、収益を得ていた。長女オリガは、ロシアの国土でもあった、北樺太加来湾敷香町に建てられた館に、皇太子アレクセイの摂政姫殿下となり、主治医のエフゲニー・ボトキンを夫に迎え、ロシア帝室を仕切った。次女タチアナは、皇太子殿下のアレクセイの侍従となった、レオニード・イヴァノヴィチ・セドネフを夫に迎え、フランスのパリでロシア帝室の外渉官として、駐仏ロシア大使として務めていた。
国際連盟は、ロシア帝国は領土を持たず、権益を保有する形であり、国家としてはロシア帝国は存在しないが、ロシア帝室としての権益は保有することから、無地帝国領主と規定した。国際連盟理事国のフランスが認めたことで、フランスのロシア大使館は、ロシア帝室渉外公館として継承された。駐日ロシア大使館は、樺太に移転したとされた。駐英ロシア大使館、駐米ロシア大使館、駐伊ロシア大使館は、フランス大使の委託管理となり、業務は駐仏ロシア帝室全権大使タチアナが引き継ぐこととなった。駐独ロシア大使館は、ソビエトに引き渡され、駐独ソビエト大使館となった。
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ソビエトのスターリンは、旧ロシアの権益は、ソビエトのモノとして、これを認めていない。
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