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我田引鉄だけじゃない?
我田引鉄だけじゃない?22 今上陛下暗殺未遂。原内閣総辞職
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昭和2年、12月27日、虎ノ門外にて、帝国議会の開会に出席するため、貴族院に向かう途中、御前10時40分陛下の御召自動車は、虎ノ門外を通過中、無政府主義者難波大助によって銃撃された。銃弾は、陛下に命中しなかったが、車の窓ガラスを割り、侍従長入江相政が軽傷を負った。
陛下は、側近に空砲と思ったと語り、入江相政は、怪我をしたことを隠し、何事も無かったように、貴族院へ到着し陛下が院に入られた後に、周囲が出血に気づいたと言う。陛下は、皇族武官との対面後に、午後は参内された秩父宮とのテニスに興じ、浜離宮に滞在中の、上皇陛下上皇后陛下へご挨拶をおこなった。
事件の結果、東京府警本部長湯浅倉平、東京府警警備部長正力松太郎が、警備責任として懲戒免官となった。原敬内閣は総辞職が承認され、後任は山本権平が務めた。二度目の辞職となる。選挙に圧勝し、安定した政権運営をすすめていた原内閣は、日本にとって、非常に難しい事案によって、退陣させられることとなる。
「首相。良かったのですか」
「風間君。未遂とはいえ、陛下の暗殺となれば、是非もないよ」
「了解しました。首相」
「風間君は、清浦首相を助けてくれんかね」
「いえ、首相。私は、首相個人の補佐官に過ぎません。原首相が退陣される時は、私も引きますよ」
「ははは、それは仕方ないか。露語、英語、仏語から、中華にスペイン語やドイツ語まで堪能な補佐官は、重要なのだがな、風間君」
「代行で、世界中に送れますからね、首相」
「そういうことだ。しかし、今回はすまんが、国際連盟には行ってくれるか」
中華が分裂し、北京では赤軍と米軍が戦闘状態に入り、南京では毛沢東率いる八路軍と国民党が戦闘状態に入った。国際連盟の理事会では、ドイツの加盟とソビエトの問題が、議案に上がってきていた。ドイツの加盟は、それほど問題なく通りそうであったが、強国となり、諸国に紛争と内乱を引き起こす、社会主義国家ソビエトは、非常に重い課題となった。
日本は、国際連盟の対応していた石井菊次郎を帰国させて、幣原喜重郎がジュネーブへ入ることとなった。中国への内政不干渉は、ソビエトの拡大を呼ぶこととなり、蒙古や満洲を危険に晒すこととなる。アメリカが「特区」拡大を求めたのも、駐留の正当化を図るためであった。
大正天皇の生前退位を実現し、昭和の新時代を開いた首相であるが、二度目の退陣ということになる。平穏な日本に比べて、大陸の状況は、混沌と化していた。アメリカが駐留している状況から、米軍への対応を巡って対立した赤軍と国民党は分裂した。毛沢東率いる赤軍はソビエトとの共闘を謀り、国民党の蒋介石と分裂し、内戦状態に突入していった。長江流域を中心として、南京に勢力圏を持つ国民党に対し、ソビエトからの軍事支援を受けた赤軍が、西涼から侵攻を開始した。
国民党は、南京を中心に防衛体制を築いているため北伐はできず、黄河流域は、米軍のみの対応とされた。
石井と幣原は対中で考え方が異なるため、1920年代、昭和初期は、アジアを纏めるため、中華民国への配慮を図る幣原と、親英米で各国の自律を求める石井は幣原と対立していた。中華民国と米軍が紛争を起こした、済南事件の収拾を図るためには、幣原が国際連盟で対応させることとなった。激昂するアメリカからの要求を、中華民国よりに調整することが求められていたからである。
「私の仕事は、イギリスとフランスの調整ですか、首相」
「あぁ、今後はドイツも加わる。面倒ごとは避けたい」
国際連盟の成立で、大国同士の戦は、確かに減っていったので「海軍の休日」という時代を謳歌していたのは事実である。しかしながら、地域紛争に大国が絡むことは多く、蒙古共和国をめぐって、日英がアメリカと対立するといった状況が、世界中で多発していた。特に、レーニン率いるソビエトが共産革命を輸出していたことで、世界中に様々な事件が発生していた。虎ノ門事件もまた、ソビエトのコミンテルン活動家が、日本に入り込んでいる現実を表していた。
「課題は、ドイツですか、首相」
「ドイツの経済状況は、ある程度復興してきた。ドイツの国際連盟加盟を認める必要がある」
「ドイツは、ソビエトを連盟に引き込みたいでしょうね」
「ポーランドが国境の拡大を図っているからな、ドイツとしてはソビエトの協力で、東西で抑えたいのだろうよ」
「困りましたねぇ、首相」
「風間君。現状で、ソビエトは国家承認されていないからな」
「首相。日本はソビエトを承認するのですか」
「無理だな、風間君。日本の公使は、極東ロシア共和国、蒙古共和国に派遣されている」
「ですが、これ以上拡大し、トルコやペルシャに参戦されるのも困る。日本への参戦圧力が上がってしまう」
「ソビエトとの戦争は難しいですか」
「彼らの本質は、農民だよ、風間君」
「農民、、、ですか」
「あぁ、風間君。自分の土地を守る兵士として、農民以上の兵士はいない。浪速八連隊が逃げ上手であるように、会津や讃岐は、農兵なのだ」
浪速八連隊は、商家が多く、偵察等で優秀な兵隊であったが、守備戦には弱かったというイメージだけが先行していた。乃木将軍が率いた、11師団のように、農民兵が中心の部隊は、黙々と命令に従って、突撃していくというイメージが先行していた。
「印象ですね。首相」
「そういうことだ、此度の事件は、日ノ本ではあってはならん事件だ。責任はとらねばならん」
警戒線を突破して、狙撃を実行した、犯人の難波大助は、周囲の群衆に取り押さえられ、暴行を受けていた。逮捕した警官が、殴打から守らなければならない事態となっていた。難波大助は、予審は長引いたが、天皇制反対を唱えていた。
大審院では、自己の誤りを糺すという形ではなく、天皇を利用するを阻止せんがためと宣告した。
(引用Wiki)
結果、大逆罪として死刑に処せられることとなった。
陛下は、側近に空砲と思ったと語り、入江相政は、怪我をしたことを隠し、何事も無かったように、貴族院へ到着し陛下が院に入られた後に、周囲が出血に気づいたと言う。陛下は、皇族武官との対面後に、午後は参内された秩父宮とのテニスに興じ、浜離宮に滞在中の、上皇陛下上皇后陛下へご挨拶をおこなった。
事件の結果、東京府警本部長湯浅倉平、東京府警警備部長正力松太郎が、警備責任として懲戒免官となった。原敬内閣は総辞職が承認され、後任は山本権平が務めた。二度目の辞職となる。選挙に圧勝し、安定した政権運営をすすめていた原内閣は、日本にとって、非常に難しい事案によって、退陣させられることとなる。
「首相。良かったのですか」
「風間君。未遂とはいえ、陛下の暗殺となれば、是非もないよ」
「了解しました。首相」
「風間君は、清浦首相を助けてくれんかね」
「いえ、首相。私は、首相個人の補佐官に過ぎません。原首相が退陣される時は、私も引きますよ」
「ははは、それは仕方ないか。露語、英語、仏語から、中華にスペイン語やドイツ語まで堪能な補佐官は、重要なのだがな、風間君」
「代行で、世界中に送れますからね、首相」
「そういうことだ。しかし、今回はすまんが、国際連盟には行ってくれるか」
中華が分裂し、北京では赤軍と米軍が戦闘状態に入り、南京では毛沢東率いる八路軍と国民党が戦闘状態に入った。国際連盟の理事会では、ドイツの加盟とソビエトの問題が、議案に上がってきていた。ドイツの加盟は、それほど問題なく通りそうであったが、強国となり、諸国に紛争と内乱を引き起こす、社会主義国家ソビエトは、非常に重い課題となった。
日本は、国際連盟の対応していた石井菊次郎を帰国させて、幣原喜重郎がジュネーブへ入ることとなった。中国への内政不干渉は、ソビエトの拡大を呼ぶこととなり、蒙古や満洲を危険に晒すこととなる。アメリカが「特区」拡大を求めたのも、駐留の正当化を図るためであった。
大正天皇の生前退位を実現し、昭和の新時代を開いた首相であるが、二度目の退陣ということになる。平穏な日本に比べて、大陸の状況は、混沌と化していた。アメリカが駐留している状況から、米軍への対応を巡って対立した赤軍と国民党は分裂した。毛沢東率いる赤軍はソビエトとの共闘を謀り、国民党の蒋介石と分裂し、内戦状態に突入していった。長江流域を中心として、南京に勢力圏を持つ国民党に対し、ソビエトからの軍事支援を受けた赤軍が、西涼から侵攻を開始した。
国民党は、南京を中心に防衛体制を築いているため北伐はできず、黄河流域は、米軍のみの対応とされた。
石井と幣原は対中で考え方が異なるため、1920年代、昭和初期は、アジアを纏めるため、中華民国への配慮を図る幣原と、親英米で各国の自律を求める石井は幣原と対立していた。中華民国と米軍が紛争を起こした、済南事件の収拾を図るためには、幣原が国際連盟で対応させることとなった。激昂するアメリカからの要求を、中華民国よりに調整することが求められていたからである。
「私の仕事は、イギリスとフランスの調整ですか、首相」
「あぁ、今後はドイツも加わる。面倒ごとは避けたい」
国際連盟の成立で、大国同士の戦は、確かに減っていったので「海軍の休日」という時代を謳歌していたのは事実である。しかしながら、地域紛争に大国が絡むことは多く、蒙古共和国をめぐって、日英がアメリカと対立するといった状況が、世界中で多発していた。特に、レーニン率いるソビエトが共産革命を輸出していたことで、世界中に様々な事件が発生していた。虎ノ門事件もまた、ソビエトのコミンテルン活動家が、日本に入り込んでいる現実を表していた。
「課題は、ドイツですか、首相」
「ドイツの経済状況は、ある程度復興してきた。ドイツの国際連盟加盟を認める必要がある」
「ドイツは、ソビエトを連盟に引き込みたいでしょうね」
「ポーランドが国境の拡大を図っているからな、ドイツとしてはソビエトの協力で、東西で抑えたいのだろうよ」
「困りましたねぇ、首相」
「風間君。現状で、ソビエトは国家承認されていないからな」
「首相。日本はソビエトを承認するのですか」
「無理だな、風間君。日本の公使は、極東ロシア共和国、蒙古共和国に派遣されている」
「ですが、これ以上拡大し、トルコやペルシャに参戦されるのも困る。日本への参戦圧力が上がってしまう」
「ソビエトとの戦争は難しいですか」
「彼らの本質は、農民だよ、風間君」
「農民、、、ですか」
「あぁ、風間君。自分の土地を守る兵士として、農民以上の兵士はいない。浪速八連隊が逃げ上手であるように、会津や讃岐は、農兵なのだ」
浪速八連隊は、商家が多く、偵察等で優秀な兵隊であったが、守備戦には弱かったというイメージだけが先行していた。乃木将軍が率いた、11師団のように、農民兵が中心の部隊は、黙々と命令に従って、突撃していくというイメージが先行していた。
「印象ですね。首相」
「そういうことだ、此度の事件は、日ノ本ではあってはならん事件だ。責任はとらねばならん」
警戒線を突破して、狙撃を実行した、犯人の難波大助は、周囲の群衆に取り押さえられ、暴行を受けていた。逮捕した警官が、殴打から守らなければならない事態となっていた。難波大助は、予審は長引いたが、天皇制反対を唱えていた。
大審院では、自己の誤りを糺すという形ではなく、天皇を利用するを阻止せんがためと宣告した。
(引用Wiki)
結果、大逆罪として死刑に処せられることとなった。
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