我田引鉄だけじゃない？ 原首相のまったり運営

我田引鉄だけじゃない？

我田引鉄だけじゃない？21 沿海州の成功と蒙古の失敗

　米軍の状況は、時間が経過するごとに、泥沼にのめり込んで、悪化していくようであった。油田が発見された「特区」には、莫大な資本が投下され、様々なアメリカ人が、儲けを得ようと、新天地となった「特区」へと流れてきた。

　「特区」は、新たなフロンティアと宣伝され、沿海州での成功事例が、大々的に宣伝されていた。アメリカは、沿海州でウラジオストクからハバロフスクまでのシベリア鉄道利権を確保し、運営をおこなっていた。

　ロシア帝国の崩壊後、旧ロシア帝国領は、レーニン率いる赤軍と反ボリシェビキの白軍が戦闘となり内乱状態となった。シベリア出兵によって、連合軍はロシア帝国の遺産獲得に乗り出していた。沿海州は従来、清国の領土であり、アイグン条約でロシアに譲渡されていたことから、アメリカは権益を清国に変換し、清国からウラジオストクからハバロフスクまでの鉄道利権を獲得した。ウラジオストクの港湾利権はイギリス、日本を含めた連合国で利権を分割した。

　ロシア皇帝一家救出が実行され、皇帝陛下および皇妃は、国外への逃亡に成功したものの、ドイツの社会主義者勢力に拘束され、ソビエトへ送り返され、惨殺された。皇太子殿下や皇女殿下は、蒙古共和国の白軍に支援を受けて、大連から日本への脱出に成功し、樺太の多来加湾敷香にロマノフ家の屋敷として建立されました。

　清国が辛亥革命で崩壊し、ロシア帝国が10月革命に崩壊しました。国家が崩壊した領地に関して、統治者については、民族自決の原則が適応された。連合軍の駐留によって実効支配体制を確保し、住民の投票によって選出された市長が統治をおこなうことで、地域の支配根拠とした。ウラジオストク市長には、米国鉄道会社ユニオンパシフィックのラルフ・アルゴロフ・ハリマンが代表に就任し、シベリア鉄道利権を確保した。

　ハリマンは、ウラジオストクからウスーリ川に架橋して、牡丹江から哈爾濱への路線を開通させた。路線は、シベリア鉄道と同じ５フィート軌道1520mmを使って、相互乗り入れ可能なように運用された。ロシア帝国の遺産は、日本とアメリカによって、花開いたのである。イギリスは、アムール川の航行権を、ニコラエフスクの港湾利権とと共に確保することで、ハバロフスクに港を確保したのである。一歩遅れたフランスは、樺太の皇太子殿下と交渉し、満洲の鉱山炭田利権については、ロシア皇帝の帝室領として、フランスへ委託する形をとった。

　パリ講和会議後、国際連盟の成立は、旧ロシア帝国における利権調整会議の側面を有していた。特に常任理事国は、旧ロシア帝国の利権を巡って争いかねない状況で在り、一定の調整機関を必要としていた。イギリス、アメリカ、日本、フランス、イタリアの五カ国が常任理事国であった。

　アメリカは、沿海州で成功を収めたことで、「特区」の利権を拡大することが求められるようになった。青島からの鉄道利権を確保したアメリカは、中華民国を国際連盟加盟国として、極東利権の拡大を図った。

　蒙古の草原は、それほど大きな利権が無く、相次ぐ内紛とソビエトとの抗争の中で、かなりの被害を受けていたのは事実である。

　中華民国の支配地域を、万里の長城Great Wallを越えて拡大していった。河北方面での利権確保のため、アメリカは大規模な探査をおこなって、昭和３年、錦児溝近くで油田を発見し、中華民国との共同出資による開発を開始した。錦児溝の油田発見は、非常に大きなニュースとなり、満洲でも探査が求められたが、日本は陛下暗殺未遂事件の発生から、原首相の辞任があって大きく動けず、探査についてはフランスとイタリアへ依頼した。フランスが満洲里で油田を発見し、イタリアが大慶油田を発見した。

　大陸は宝の山であり、アメリカは、極東を新たなフロンティアと宣伝して、アメリカからの積極的な移住を推進し始めた。

　アメリカ合衆国は、青島のドイツと共同で、重化学工場の建設を行い、鉄道の敷設および、極東開発を開始した。しかしながら、白人の対応は、現地との軋轢を生み、アメリカ人への襲撃等が頻繁に発生するようになった。

　結果としてアメリカは、駐留軍が各地に動員され、手薄になった所を馬族に強襲を受けるといった悪循環に陥っていた。