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我田引鉄だけじゃない?
我田引鉄だけじゃない?09 国際連盟の軍縮交渉
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イギリスは、疲弊する
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大正11年11月(1921年)、国際連盟に軍縮交渉が持ち込まれたのは、イギリスからであった。日本では、典範改正を巡って大混乱の状態にあった。海軍大臣加藤、外相内田は、首相補佐官風間を連れて、ジュネーブへと向かった。
WWⅠ後、戦勝国となった、連合国内の建艦競争は、アメリカの海軍拡張政策によって激化の一途を辿っていた。19世紀世界の2大国と戦争できると称した大英帝国も、20世紀には、追い抜こうとするアメリカを止めるだけの力は無かった。
アメリカ大統領は、自国の予算が食い潰されることを懸念して、軍縮条約の提案に乗ったが、イギリスと互角の戦力維持を前提としたモノであった。イギリスは、アメリカの戦力をどこまで削れるかが勝負のカギとなった。
「外相、これは、巻き込まれましたね」
「風間君。イギリスは、どうあってもアメリカを抑えるつもりだ。日英同盟破棄まで言ってきている」
大英帝国と大日本帝国、アメリカを包囲する大国の同盟は、アメリカとしては認められないものだろう。イギリスは、アメリカに譲歩しても、アメリカ海軍を抑えなければならないということだ。
「日英同盟破棄ですか、外相」
そこまでやるのか、イギリス。
「風間君。首相からは、海軍の予算を抑えられるということもあって、ある程度までは賛成の方向で話をすすめて良いと言われている」
「英、米、日、仏、伊を互角にですか」
「それはまさかだよ、風間君。仏と伊に、日本の海軍力と同等と言ったら、かの国は破産するぞ。仏、伊までの譲歩は、英米どちらにもなかろう、我が国もな」
現時点でフランス、イタリアは、帝国海軍の2割から3割の戦力しかない。
「外相、それでは」
「風間君。海軍大臣の加藤さんの話では、英:米:日:仏:伊を5:5:4:1:1にできればと言ってきている」
それなら、海軍はまだ戦力を増強できるが、原首相は予算を抑えたいのだろうな。
「それにだ、風間君。伊は、現状の戦力維持で妥協するはずだ、2を超えることは無い。ただ、フランスは2を超える可能性がある」
「フランスが、2を超えるですか、現状戦力をかなり超えますよ」
「満洲利権だよ、外交だけで鉱山や炭田を持っていったからな、ぼろ儲けというとこだろう。あの国は隙あらば、上がろうとするからな」
フランスねぇ。
「風間君。セヴァストポリ要塞支援という名目で、フランスは黒海へ海軍を派遣しているんだ、赤軍は要塞に近づけない状況だよ」
「つまり、外相としては、フランスには味方しても良いということですか」
「あぁ、英米は嫌うだろうが、フランスはクリミア半島については、義勇兵派遣と後方支援に艦隊を送っている」
「外相は、クリミア半島を死守したい」
「そうだ、風間君。赤軍に渡ると、日本との戦争になりかねん」
つまり、戦力を削るのは、イギリスとアメリカ、巻き込まれて日本か、困ったものだな。
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軍縮会議は、主力戦艦の新造を10年凍結する方向で始まった。
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排水量35000トン以下、16インチ以下ですか。
「長門」と「陸奥」ですね。
日本だと、長門級以上の戦艦建造を認めないということになった。進水前であった「陸奥」の廃棄については、完成しているかどうかで揉めることとなった。
「加藤さんからは、「陸奥」完成している廃棄などできないと連日言ってきている」
「どうしますか、外相」
困ったものだ。しかし、「陸奥」を認めるとなると、アメリカとイギリスに譲歩することになる。
「海軍は、「陸奥」と対英米7割、どっちをとるんですか」
「加藤さんとしては、両方だろうが、かなり厳しいそうだ」
ジュネーブの国連会議は、連日連夜様々な形で続けられた。フランスが建造中の戦艦「ダンケルク」について、38センチ四連装から40センチ3連装に変更し、条約戦艦として1隻を要求したことで、英米は沸騰したが、日本は「陸奥」を維持する理由を含めて賛成に回った。
最終的には、40センチ砲艦は、7隻となり、日本は主力戦艦について日米英互角の戦力を確保することに成功した。世界の七大戦艦として知られることとなる。当初は、フランス「ダンケルク」ではなく、アメリカ「ウェストバージニア」になる予定であったが、フランスの要望から、「ダンケルク」を40センチ砲に改装することで、決着した。
七大戦艦
イギリス「ネルソン」「ロドニー」
アメリカ「コロラド」「メリーランド」
日本 「長門」「陸奥」
フランス「ダンケルク」
日本の新聞には、世界の三大強国となったと報道された。
保有比率については、英:米:日:仏:伊は、5:5:3:1.7:1.7という結論となった。保有比率の詳細については、伏せられることとなった。イギリスは、超弩級戦艦4隻20万トンを破棄することとなり、大きく犠牲を払うこととなった。アメリカも3隻破棄と犠牲を払ったが、日本は旧式艦「摂津」一隻にとどめた。計画だけ打ち上げて、予算が無い八八艦隊計画は、とん挫することになったのだが、外交としては成果が得られたということになる。破棄数や内容については、新聞上で報道をおこない、国民の関心を向けさせた。
「加藤大臣、お疲れ様です」
「風間君、アルベール大臣からは、感謝されたよ」
かなりのにこにこ顔であった。
「大臣。八八艦隊計画は良かったのですか」
「あれは、予算が欲しい軍令部の案だ。実現しても維持できんよ。原さんは、造るのはまだ金を出してくれるが、維持するのは吝だかなら」
「はぁ、すみません」
形だけは頭を下げた。吝なのは事実だしなぁ。
現在の大日本帝国海軍に、太平洋上に敵はいない。海軍は、仮想敵国をアメリカとしているが、話し合いで、日本は旧式戦艦「摂津」一隻でアメリカの最新型戦艦一隻「ウェストバージニア」を含めて3隻廃棄を勝ち取ったのである。
イギリスは、疲弊する
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大正11年11月(1921年)、国際連盟に軍縮交渉が持ち込まれたのは、イギリスからであった。日本では、典範改正を巡って大混乱の状態にあった。海軍大臣加藤、外相内田は、首相補佐官風間を連れて、ジュネーブへと向かった。
WWⅠ後、戦勝国となった、連合国内の建艦競争は、アメリカの海軍拡張政策によって激化の一途を辿っていた。19世紀世界の2大国と戦争できると称した大英帝国も、20世紀には、追い抜こうとするアメリカを止めるだけの力は無かった。
アメリカ大統領は、自国の予算が食い潰されることを懸念して、軍縮条約の提案に乗ったが、イギリスと互角の戦力維持を前提としたモノであった。イギリスは、アメリカの戦力をどこまで削れるかが勝負のカギとなった。
「外相、これは、巻き込まれましたね」
「風間君。イギリスは、どうあってもアメリカを抑えるつもりだ。日英同盟破棄まで言ってきている」
大英帝国と大日本帝国、アメリカを包囲する大国の同盟は、アメリカとしては認められないものだろう。イギリスは、アメリカに譲歩しても、アメリカ海軍を抑えなければならないということだ。
「日英同盟破棄ですか、外相」
そこまでやるのか、イギリス。
「風間君。首相からは、海軍の予算を抑えられるということもあって、ある程度までは賛成の方向で話をすすめて良いと言われている」
「英、米、日、仏、伊を互角にですか」
「それはまさかだよ、風間君。仏と伊に、日本の海軍力と同等と言ったら、かの国は破産するぞ。仏、伊までの譲歩は、英米どちらにもなかろう、我が国もな」
現時点でフランス、イタリアは、帝国海軍の2割から3割の戦力しかない。
「外相、それでは」
「風間君。海軍大臣の加藤さんの話では、英:米:日:仏:伊を5:5:4:1:1にできればと言ってきている」
それなら、海軍はまだ戦力を増強できるが、原首相は予算を抑えたいのだろうな。
「それにだ、風間君。伊は、現状の戦力維持で妥協するはずだ、2を超えることは無い。ただ、フランスは2を超える可能性がある」
「フランスが、2を超えるですか、現状戦力をかなり超えますよ」
「満洲利権だよ、外交だけで鉱山や炭田を持っていったからな、ぼろ儲けというとこだろう。あの国は隙あらば、上がろうとするからな」
フランスねぇ。
「風間君。セヴァストポリ要塞支援という名目で、フランスは黒海へ海軍を派遣しているんだ、赤軍は要塞に近づけない状況だよ」
「つまり、外相としては、フランスには味方しても良いということですか」
「あぁ、英米は嫌うだろうが、フランスはクリミア半島については、義勇兵派遣と後方支援に艦隊を送っている」
「外相は、クリミア半島を死守したい」
「そうだ、風間君。赤軍に渡ると、日本との戦争になりかねん」
つまり、戦力を削るのは、イギリスとアメリカ、巻き込まれて日本か、困ったものだな。
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軍縮会議は、主力戦艦の新造を10年凍結する方向で始まった。
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排水量35000トン以下、16インチ以下ですか。
「長門」と「陸奥」ですね。
日本だと、長門級以上の戦艦建造を認めないということになった。進水前であった「陸奥」の廃棄については、完成しているかどうかで揉めることとなった。
「加藤さんからは、「陸奥」完成している廃棄などできないと連日言ってきている」
「どうしますか、外相」
困ったものだ。しかし、「陸奥」を認めるとなると、アメリカとイギリスに譲歩することになる。
「海軍は、「陸奥」と対英米7割、どっちをとるんですか」
「加藤さんとしては、両方だろうが、かなり厳しいそうだ」
ジュネーブの国連会議は、連日連夜様々な形で続けられた。フランスが建造中の戦艦「ダンケルク」について、38センチ四連装から40センチ3連装に変更し、条約戦艦として1隻を要求したことで、英米は沸騰したが、日本は「陸奥」を維持する理由を含めて賛成に回った。
最終的には、40センチ砲艦は、7隻となり、日本は主力戦艦について日米英互角の戦力を確保することに成功した。世界の七大戦艦として知られることとなる。当初は、フランス「ダンケルク」ではなく、アメリカ「ウェストバージニア」になる予定であったが、フランスの要望から、「ダンケルク」を40センチ砲に改装することで、決着した。
七大戦艦
イギリス「ネルソン」「ロドニー」
アメリカ「コロラド」「メリーランド」
日本 「長門」「陸奥」
フランス「ダンケルク」
日本の新聞には、世界の三大強国となったと報道された。
保有比率については、英:米:日:仏:伊は、5:5:3:1.7:1.7という結論となった。保有比率の詳細については、伏せられることとなった。イギリスは、超弩級戦艦4隻20万トンを破棄することとなり、大きく犠牲を払うこととなった。アメリカも3隻破棄と犠牲を払ったが、日本は旧式艦「摂津」一隻にとどめた。計画だけ打ち上げて、予算が無い八八艦隊計画は、とん挫することになったのだが、外交としては成果が得られたということになる。破棄数や内容については、新聞上で報道をおこない、国民の関心を向けさせた。
「加藤大臣、お疲れ様です」
「風間君、アルベール大臣からは、感謝されたよ」
かなりのにこにこ顔であった。
「大臣。八八艦隊計画は良かったのですか」
「あれは、予算が欲しい軍令部の案だ。実現しても維持できんよ。原さんは、造るのはまだ金を出してくれるが、維持するのは吝だかなら」
「はぁ、すみません」
形だけは頭を下げた。吝なのは事実だしなぁ。
現在の大日本帝国海軍に、太平洋上に敵はいない。海軍は、仮想敵国をアメリカとしているが、話し合いで、日本は旧式戦艦「摂津」一隻でアメリカの最新型戦艦一隻「ウェストバージニア」を含めて3隻廃棄を勝ち取ったのである。
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