琉球お爺いの綺談

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戦国歴史if

宵闇戦国草創異聞 #武士__もののふ__#は、武力による介入をおこなって利益を得る者である

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 難波湊から京洛京橋を中心とした川筋は、様々な縄張りが錯綜する地域であった。
 難波湊から大輪田泊や岸和田港までの湾岸地域である。渡辺、和泉松浦、多田、細川、住吉大社、坐摩神社、信太稲荷社といった者達が、縄張りを主張していた。
 淀川や大川、寝屋川といった、多くの川が集中する河内水系の湖沼帯である。渡辺、藤原、大内、信太稲荷社、これに新興の「悪党」楠や今里本願寺などが加わっていた。
 京洛京橋や巨椋池を中心とした一帯から近江を含めた水系は、京洛町衆を含め、貴族衆、周辺諸豪族や国人、賀茂斎宮、上賀茂、下賀茂、伏見大社、延暦寺といった様々な勢力の利益が錯綜し、最も統制が取りにくい状況となっていた。
 水系の武士もののふは、水系を通る船の安全を保障するために、「掠りかすり」と呼ばれる租税行為をおこなっていた。

 平安期における荘園制度は、一つの権益に対して、複数の受益者が存在している状況であった。受益者の権利は、しきによって規定された。荘園は、私財ではあったが、中央へ税を納めるためのシステムが存在していた。生産現場から、生産された商品を租税の形にして、中央まで流通させるシステムの担い手がしきという受益者であり、システムを維持管理する機能として登場したのが、武士もののふなのである。
 悪く言えば、武士もののふというものは、権益を持つ受益者から、権益からの利益を「掠めとる」ことを目的として構成された武力集団である。受益者から権益を獲得するために、武力でもって介入する集団という意味でもあった。

 陸上であれ、水上であれ、武士もののふの特徴は、受益者から利益を「掠めとる」者を意味していた。

 陸上と水上の違いは、物流を維持するための技術水準が異なる点にある。陸上では、技術水準が低くても、モノを運ぶことは可能である。しかしながら、水上は、一定の技術技能が無ければ、目的地までモノを運ぶことができない。
 川と海の違いも同じで、技術水準が川は低く、海が高いという違いにある。

 武士もののふは、受益者から利益を「掠めとる」ために、武装し武力介入する集団となり、武力介入する場所は、市場や港湾施設、街道、船、田や畑といった生産地、鉱山、水利設備、水産物、それこそありとあらゆる受益者が存在する場所に、武力介入をおこなっていったのである。

 網野善彦氏が提唱した、「百姓が、必ずしも農民を意味しない」というのは、重要な視点なのだと思う。

 社会が発達するにつれて、田畑や、漁や猟といった直接的な食料確保を生業とする者だけでなく、物を運ぶ仕事をする者、物を加工する者、道具を造る者、道具の材料を造る者、、、非常に多くの生きる手段を用いる者達が生まれていった。
 これが本来の意味で言う、百姓ひゃくのかばねの定義なのだと。
 水系に住まう者達は、漁業、運搬、塩造り、商業、略奪、食品加工といった仕事を生業とする者達ということになる。
 宵闇は、この考え方に基づいて描くこととしている。

 ただ、明るい世界だけは無く、略奪を含めた「掠り」を得るための武力介入という視点が、武士もののふには必要となります。現代的な感覚では、任侠映画に代表されるような雰囲気が、本来の武士もののふが持っていた感覚だと推定されるので、描き方はそんな雰囲気を描きたいなぁと思いつつ、それだと理解されにくいのかなぁとも思ったりしています。



参考文献:
 著:網野善彦,海と列島の中世,講談社学術文庫
 著:黒嶋敏,海の武士団-水軍と海賊のあいだ-,講談社選書メチエ
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