琉球お爺いの綺談

Ittoh

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琉球お爺ぃ小話

柊 後編

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「ヒイ、ラギ、、、」
必死で、なんとか言葉にしてくれた彼は、あたしの腕の中で暖かかった。嬉しくて、ギュって抱きしめていた。
「柊だよ、冬狼フェンリル
  世界を滅ぼす、大神が名前。斎がそんな話をしていた。その名を描くと、同じ字だと喜んでいた。柊の「冬」と、「冬狼フェンリル」の「冬」が気に入って、あたしの名と自分の名は、漢字で書くのが好きだ。
「ヒイラギ」
「ははは、もうちょっとだ」
あたしは、竜胆愛宕山が大神と契った、最初の巫女となった。
  契ると、冬狼フェンリルは、とても甘えるようになってしまった。離れなくなってしまうことが多い甘えん坊さんになってしまった。あたしも、それを楽しんでしまうし、冬狼フェンリルの傍から離れたくなくなってしまった自分が居る。

 そんなあたしを、弄るように、玲姫、今も玲姫って呼んでしまうことが多いけど、あたしを救い、助けてくれた恩人が、からかって来る。あたしは、恥ずかしくて真っ赤になりながらも、嬉しくて答えてしまう。
 冬狼フェンリルは、玲姫には、優しいし従ってくれる。あたしが大事にしていて、仕えているということが、冬狼フェンリルに伝わっていることが嬉しい。
 ただ、困ったことに、玲姫様に近づく、男は嫌っている。為朝様や将へあたしが、嫉妬するように、玲姫の大事な夫、為朝や将からは引こうとしない。
 一度、面白かったのは、玲様が困ったように、なのに嬉しそうに為朝様を見ていたことがあった。玲様の傍に行こうとした為朝様と、同じように玲様の傍であたしを待とうとした冬狼フェンリルが睨みあったまま、一歩も引こうとしなかったのである。本当に喧嘩になってしまうと、冬狼フェンリルは勝てないのは判っているみたいなんだけど、どうしても引けないらしい。
 結局あたしが、冬狼フェンリルを抱きしめてしまうまで、二人で陽が中天から暮れるまで睨み合っていたそうだ。

冬狼フェンリルが言葉を発するようになると、後は、かなり速かった。文字を覚えて、あたしは、冬狼フェンリルが人に近づくのを、望んでいるのかどうか心配だったけど、冬狼フェンリルは、自分が選んだのだと、柊を大神フェンリルの嫁に迎えるのではなく、自分が柊の夫になると選んだのだと言ってくれた。
 玲姫様は、為朝様と旅出たけれど、皐太様や、寧々様が残られ、東海竜王敖光様が松浦泉様と共に、竜胆の長となった。



 そしてあたしは、竜胆の山々を冬狼フェンリルと一緒に駆け抜けている。子供達を連れて、山々に生きる狼達と共に。
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