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琉球お爺ぃ小話
柊 前編
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「ヒイ、ラギ、、、」
雪の中で、冷たくなっていく彼の身体が、どこか、遠くの夢に微睡むように感じていた。冷たく、血にまみれて自分を呼ぶ声は、あたしの心を遠くに引き離して、身体は黒く染まるように堕ちて行った。気がついた時は、襲って来た者達をズタズタに引き裂くように暴れていた。そのまま、荒れ狂う姿を遠くから見つめていた。
姫様へ手を掛けようとした男は、薙ぎ払うように砕いていた。数十の襲撃者は、何時の間にやらほとんどが砕かれ、潰されて殺されて行った。あたしには、姫様の姿すら、どこか夢の中で感じていた。
あたしが気がついたのは、動くものが無くなって、泣きながらあたしに縋り付く姫様を見た時であった。
愛宕衆すらも、ズタズタに引き裂いていた。
「すまぬ、妾のせいじゃ、すまぬ。そなたの大神を護れなんだ」
祟り神、瘴気に溢れ、己を堕とした者の呼び名である。怒りは、それこそ気がすむまで暴れ続ける。祟り神に堕ちた者は、滅ぼされるか封じられる。自己を律して、祟り神へ堕ちぬことが、修験の修練であるが、成せることなく堕ちた者は、滅ぼされるのであった。
坐摩の大婆様が、愛宕の大神様と供に急ぎ呼ばれたのは、姫様が願ったからと、後から大神様に聞いた。
「襲った男供は、愛宕の者達に手引きされておった、、、」
とうとうと語る姫様の言に、周囲は、聴き入っていた。
襲撃者は、愛宕衆の手引きで、姫様を襲い、姫様を嬲り犯し愉しもうとしていた。愛宕衆は、姫様を倒し縛り上げたところで、口封じに、殺されて行った。姫様が、犯そうとしたところで、姫様が、隠した大神が、助けようと飛び出して暴れ、襲撃者が大神を殺したところにあたしが間に合ったということらしい。あたしが来たことで、あたし自身が大神となって、襲撃者を殺していった。
「ヒイラギ」
狼は、柊の名を呼んだ。これは、あやかしの証を立てて、柊を愛した大神であることを示した。姫は主張して、あたしを祟り神ではなく、大神の巫女であると言い切った。
大神のために巫女衆が闘うは当たり前のことであり、何一つ行動に恥じることはない。男女の契りは、大地自然の尊ぶものであり、柊を責めるに及ばず。
姫様は、そのように主張して、あたしを護ってくれた。でもあたしは、冷たくなった心に、どこか遠くから聞こえるようであった。
「柊」
姫様の呼ぶ声に、
「はい」
反応することができた。
「かの大神が名を決めよ、柊」
「な、何を」
「大神は、柊の名を呼んだ、契りを交わすには、柊が相手の名を応えねばならぬ。答えよ」
彼の名を、あたしが呼ぶ、あたしが呼べば、あたしは、彼の巫女となれる。雪の中に浮かぶように彩る、彼の赤い血が綺麗だった。
「雪、雪にございます」
そう、「雪」と彼の名を、あたしは呼んだ。
「雪」それが、あたしの最初の夫の名であった。
雪の中で、冷たくなっていく彼の身体が、どこか、遠くの夢に微睡むように感じていた。冷たく、血にまみれて自分を呼ぶ声は、あたしの心を遠くに引き離して、身体は黒く染まるように堕ちて行った。気がついた時は、襲って来た者達をズタズタに引き裂くように暴れていた。そのまま、荒れ狂う姿を遠くから見つめていた。
姫様へ手を掛けようとした男は、薙ぎ払うように砕いていた。数十の襲撃者は、何時の間にやらほとんどが砕かれ、潰されて殺されて行った。あたしには、姫様の姿すら、どこか夢の中で感じていた。
あたしが気がついたのは、動くものが無くなって、泣きながらあたしに縋り付く姫様を見た時であった。
愛宕衆すらも、ズタズタに引き裂いていた。
「すまぬ、妾のせいじゃ、すまぬ。そなたの大神を護れなんだ」
祟り神、瘴気に溢れ、己を堕とした者の呼び名である。怒りは、それこそ気がすむまで暴れ続ける。祟り神に堕ちた者は、滅ぼされるか封じられる。自己を律して、祟り神へ堕ちぬことが、修験の修練であるが、成せることなく堕ちた者は、滅ぼされるのであった。
坐摩の大婆様が、愛宕の大神様と供に急ぎ呼ばれたのは、姫様が願ったからと、後から大神様に聞いた。
「襲った男供は、愛宕の者達に手引きされておった、、、」
とうとうと語る姫様の言に、周囲は、聴き入っていた。
襲撃者は、愛宕衆の手引きで、姫様を襲い、姫様を嬲り犯し愉しもうとしていた。愛宕衆は、姫様を倒し縛り上げたところで、口封じに、殺されて行った。姫様が、犯そうとしたところで、姫様が、隠した大神が、助けようと飛び出して暴れ、襲撃者が大神を殺したところにあたしが間に合ったということらしい。あたしが来たことで、あたし自身が大神となって、襲撃者を殺していった。
「ヒイラギ」
狼は、柊の名を呼んだ。これは、あやかしの証を立てて、柊を愛した大神であることを示した。姫は主張して、あたしを祟り神ではなく、大神の巫女であると言い切った。
大神のために巫女衆が闘うは当たり前のことであり、何一つ行動に恥じることはない。男女の契りは、大地自然の尊ぶものであり、柊を責めるに及ばず。
姫様は、そのように主張して、あたしを護ってくれた。でもあたしは、冷たくなった心に、どこか遠くから聞こえるようであった。
「柊」
姫様の呼ぶ声に、
「はい」
反応することができた。
「かの大神が名を決めよ、柊」
「な、何を」
「大神は、柊の名を呼んだ、契りを交わすには、柊が相手の名を応えねばならぬ。答えよ」
彼の名を、あたしが呼ぶ、あたしが呼べば、あたしは、彼の巫女となれる。雪の中に浮かぶように彩る、彼の赤い血が綺麗だった。
「雪、雪にございます」
そう、「雪」と彼の名を、あたしは呼んだ。
「雪」それが、あたしの最初の夫の名であった。
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