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宵闇胡蝶綺譚:はじまりの転生者 渡辺綱
宵闇胡蝶綺譚:はじまりの転生者 渡辺綱 三斎宮家の始まり
しおりを挟む三代弼の時代は、皇女を臣籍降嫁ではなく、斎宮院家として難波宮へ下向することで、渡辺惣官家を難波斎宮院家の司家としたのである。伊勢斎宮、賀茂斎院、難波斎宮院は、三斎家として、確立されたのである。
三斎家は、斎宮院家であり、斎の巫女を務めた。巫女は、女系宮家として確立され、代々斎の巫女を務めたのである。斎の巫女は、伊勢の御杖代、賀茂の御杖代を役儀としていた。難波斎宮は、住吉、坐摩、露天を含めた難波の社すべての御杖代を役儀とし、難波津での八十島祭祀を務めたのである。これは、渡辺惣官三代弼の代に、住吉、坐摩、露天で合同でおこなう、持ち回りであった八十島祭祀の巫女を争ったことで、争いを治めるために、三代弼が主上に願い出て、内親王を斎宮院家として迎えたことに始まる。
三斎家は、伊勢の斎王家、賀茂の斎院家、難波斎王院家とも呼ばれ、家で生まれた皇女は、斎宮補となり、斎宮補から斎宮が選ばれる。男であれば司補となり、司家の姫に婿入りすることとなる。司家の男は、あやかしとして扱われ、斎宮に仕える司となる。
斎宮は、御杖代を役儀として、難波津で行われる、八十島祭祀の巫女を務めたのである。難波津の八十島祭祀では、主上代替わりの祭祀であり、日ノ本の「まつろう」民すべてにとっての生國の祭祀であった。祭祀にあたっては、京洛から主上が、淀川を下り、渡辺津から難波津へ難波の町を行幸することとなる。
難波の民にとって、日ノ本に「まつろう」民として開催される、八十島の祭祀は最重要の祭祀であった。大嘗祭の翌年に行われる、生國の祭祀であった。最初の生まれた島とされる、淡路を臨み、主上に纏う「瘴気」を七瀬に祓い、息災を願う祀りであった。
八十島祭は、元来、仁徳帝の頃から、難波宮から難波津まで、行幸行事であったとされる。渡辺三代弼は、難波斎宮院を拓くと、新嘗祭と同じく、難波斎宮院から難波津まで、生國祭祀として開催し、開催日については、毎年の春分節に開催する生國祭祀とした。日ノ本が穢れを、毎年祓い清め、生國を祝う祭祀としたのである。
新たに主上を迎えて、行う八十島祭りは、大嘗祭の翌年に本祭祀として、難波宮への行幸と共に開催されたのである。天平宝珠元年には、生國千年祭祀として、平城から難波宮への行幸と共に開催された。三代弼は、天平宝珠元年の生國千余年祭祀から数える、千年紀として記載されたのである。
葛葉の日記には、日付を記すのに、皇紀が使われていた。
「ねぇ、葛葉、皇紀って何」
「綱、日ノ本の始まりから千余年経ったとして、天平宝珠元年に主上が祭祀を行って、平城で法要をおこない、難波宮へ行幸し、難波津まで禊祓いをおこなう、八十島祭を生國祭祀として開催したのじゃ」
「生國って、建国祭ってこと」
「そうじゃ、日ノ本が日ノ本となったを祝う祭じゃ」
「千余年って、千年より長いってことだよね」
「日ノ本の始まりは、何時からと明確には、わからぬ故な。千年を超えているのは確かだから、千余年法要に千余年祭祀とすれば、祖帝も許すであろうと、主上が言われたのじゃ」
「じゃぁ、天平宝珠元年を千年として、葛葉が書いているんだ」
「元号は、何時変わったかは、妾は良く知らぬ故、書くのが面倒なのじゃ」
「暦とかは、皇紀の方が楽だよね、葛葉」
「そうじゃな、綱と出逢ったのが、壱弐肆参年じゃな」
「平城710年平安794年、真ん中くらいで752年とすると、995年になるか。雰囲気的には、前世とは、あんまりズレてないかな」
「なんじゃ、綱、その年号は」
「ユリウス暦って、大陸の西の彼方にある、ローマ帝国が使っていた紀年法」
「ほぅ、知っていることがあれば、確認できるかもしれぬぞ」
「後世世界では、西の果てに、ローマ帝国が数百年前に建国されたかどうかもわからないし、暦法も違うかもしれない」
「目安にはなろうよ、知っていることはあるかや」
「平安京への遷都が、794年ってなっているけど、皇紀だと何年になるのかな」
「京洛へのぉ、長岡へ移ったのが千弐漆、京洛へ移ったのは、千参漆年かの」
「皇紀で1037年が、794年になるかな、天平宝珠元年が757年ってことになるかな」
「ほぅ、それが、西方の暦かや、綱」
「うん。でもね、葛葉、千余年って言ってたけど、前世だと天平宝珠元年って、前世の皇紀だと1417年になるんだよね。古くて確実かどうか判らないみたいだけど」
「ほぉ、四百年以上も違っておったか、千余年としたのは、間違いではなかったの」
「そうだね、厳密に千余年で法要と祭祀を行ったから、皇紀で記述すれば、暦は合わせやすいと思うよ」
千余年の法要に祭祀であれば、皇紀の記述は、太陽暦の方が上手くいくよね。
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