琉球お爺いの綺談

Ittoh

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あやかし

日ノ本とは、一天万乗の大君が下、人と|あやかし《ひとならざるもの》が共に「まつろう」国なり。

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 摂津の国、難波の渡辺荘に建つ、坐摩いかすりの社は、大川沿いに発達した、川湊の一つ渡辺湊を鎮護する社である。摂津渡辺党の家祖である、渡辺綱が、本貫の地とした。

 平野川の流れを、大きく西に上町台地を掘削して、大和川となって、直接大阪湾へと注ぐことで、河内の湖は小さくなって葦原が生まれたのである。上町台地掘削事業を指揮したのが、坂田金時こと足柄山の金太郎である。多くのあやかしひとならざるものが掘削事業へと参加し、大和川沿いに水郷地帯を築くと共に、河内湖に田圃を干拓したのである。河内湖は、汽水域でもあるため、田圃には河内湖へ注ぎ込む、平野川や寝屋川から水路を築き、水郷地帯を築いていったのである。河内湖一帯は、主上おかみ直轄の大江御厨であり、難波から河内湖周辺の管理を任されたのが、渡辺党であった。

 摂津河内の国司には、源頼光が就くことで、瀬戸内航路から大川、淀川を遡上して、京橋へ辿る、荷役を担うこととなる。

 木津川沿いに建設された難波湊には、諸国の船が到着し、京洛へと荷を運ぶ拠点となっていった。

 史実では、江戸期に上町台地の掘削事業が行われているが、if史では、平安期に掘削事業が実施されている。結果として、堺港が大和川から流れ出る土砂で浅瀬となり、大型船の発着が困難になったのである。if史では、現在の坐摩神社近くにあった難波湊が、最大の国際交易港として栄えたのである。

 渡辺党の本貫でもあり、あやかしひとならざるものが人口比で50%を超えるようになった難波の十万都市は、こうして形成されていったのである。渡辺党は、四天王寺から北へ繋ぎ渡辺津に至る、天王寺街道を築き、発達させていったのである。

 住吉には、鬼衆の鬼火を使って石灰を焼く、鬼釜が建てられて、白漆喰を作り上げていった。白漆喰だけでなく、白漆喰で型を作ることで、鋳造工も増えて、鍛冶工も含めて、住吉一帯は、工業地帯となっていたのである。

 さらに南に、新たに掘削して築かれた、大和の川を渡ると、信太の杜があり、稲荷の狐衆が、小舟で海水を汲み上げて運び、潮釜を狐火で焚き上げて、塩の生産を開始していた。また、大和川沿いから南に拡がる、信太の森を含めた水郷丘陵地帯では、牛を飼いながら、猪や鹿を狩り、皮革事業が開始された。皮革事業は、露天神社一帯でも始まり、馬や牛を飼い、ヨモギを含めた薬樹だけでなく、麻を育てて麻布や麻紙造りをも始めていた。

 ifの流れとしては、京洛の都が、人を中心とする帝都として発達していった。難波の都は、あやかしひとならざるものを中心とする港町として、発達していったのである。



 大江山の酒呑童子を征伐した、渡辺綱は、主上より渡辺荘を本貫に賜った。あやかしひとならざるものと人の嫁達と共に、住まう渡辺館の建設が、上町台地の北端の水郷丘陵で始まった。上町台地は、幾つもの水源があり、水量の多い湧き水が多かったのである。北端の湧き水で造った池の外側に、白漆喰の館が築かれていた。寝屋川に船着き場を築いていた。川船は、遡上は人が曳き上げ、下りは川の流れのままに進む。渡辺津から京橋までは、12時間程の航程であったと伝えられています。下りの流れは速く、6時間程で京橋から渡辺津へ着いたと伝えられています。

 平安期では、多い時に数十艘の船が遡上し、同じ数だけの船が川を下ったと伝えられます。淀川の河川荷役は、摂津河内の貴重な財源であり、商業交通の要でもありました。渡辺党は多くの船を保有していましたが、多田源氏や河内源氏、京洛の貴族も参入しており、膨大な富を奪い合っていたのです。
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