琉球お爺ぃ 歴史エッセイ

Ittoh

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五戒への問いかけ

「不邪婬戒」①姦淫はいけない?、血の契りと約束事

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 天平期に畿内ヤマトで天皇という制度が確立されるまで、日ノ本では、女性に貞節を求めるということが無かったというか、父親の確認方法が無かった。男系を維持することそのものに無理があり、天照大御神よりの流れとしては、女系天皇家であったとされる。

 女系が崩れたのは、皇族同士の婚姻から、臣下が皇后となったことによって、歪んだのである。光明皇后陛下は、見事な女性であり、皇后に相応しい方であったが、光明皇后陛下が登場してしまったことで、皇太女から天皇陛下となった、孝謙陛下に、配偶者を見つけることが、できなくなったのである。

 後の道鏡事件のように、天皇家が血族継承にあたって、女系が崩れて男系に変化したのは、権力者の思惑によって、孝謙陛下に相手を見つけられなかったことにある。つまりは権力者の都合であり、女性天皇に対して、配偶者を見つけることができないことを、歴史に刻んだ結果である。

 つまりは、孝謙陛下が相手を見つけることができれば、女系は維持可能なのである。孝謙陛下の頃は、淡海三船がおられ、皇族復帰という形で御船王となられている。この時に子が生まれなかったことで、女系継承が困難になって、称徳陛下の頃に道鏡が出てきてしまい、道鏡を皇族にできなかったことで、称徳陛下が失意のうちに身罷られたのである。つまりは、臣下の娘は皇后になれるけど、臣下の男は皇族になれないというのが、皇統が男系となった経緯と考えられます。
 外戚問題から、平安期の藤原氏による支配体制確立は、皇統を男系とする流れでもあった。

 日本の婚姻事情は、契りという形であり、イザナギとイザナミの契りから始まる。契りの在り方が、慣習として規定されている。「古事記」の中で、最初に描かれる、男女の契りが、イザナギとイザナミの婚姻である。次に描かれるのは、山幸彦と豊玉毘売命の婚姻であり、異なる部族婚の契りについて、伝承という形で描かれている。

 アメノミナカヌシ、タカムスビ、カミムスビが最初の三柱であり、男女の区別が無い、ウマシアシカビヒコヂ、アメノトコタチ、クニノトコタチ、トヨクモノの七柱が独神となる。七柱の神々は、日向ヒムカの神々であり、男女となった宇比地邇神・須比智邇神、角杙神・活杙神、意富斗能地神・大斗乃弁神、淤母陀琉神・阿夜訶志古泥神、祖霊神として連なり、伊邪那岐イザナギ伊邪那美イザナミ日向ヒムカに連なる、筑紫・畿内ヤマトにとって、直接の祖霊ということになる。

 鬼界カルデラは、幾度となく噴火をして、7300年前の破局噴火によって、縄文期の日向ヒムカは人が住めなくなった。最初の避難先が、古事記の記述からすればオノゴロ島であり、大八島を生み出す形で、アカホヤの火山灰で滅びに瀕した日ノ本を再生したことになる。つまり、イザナギ・イザナミの国生み神話とは、日ノ本の再生を目指した、二柱の神が生み出した神話となる。

 あたりまえであるが、東日本から北海道といった地域は、それほど酷い影響を受けていないため、7300年以降の縄文文明では、西日本の人口が少なく、東日本の人口が多いという結果になる。

 日ノ本の場合、男女は同格であり、御柱を巡る形で、契りを交わしている。左回りが女性で、右回りが男性、女性から声をかけるではなく、男性から声をかける。契りを交わすにあたって、男女の約束事というのは、それだけであった。女性から声をかけて、蛭子と阿波方が生まれて、男性から声をかけたことで、淡路島と大八島が生まれ、最期にカグツチが生まれている。

 カグツチは難産となり、イザナミが喪われる、この時に「禁忌」を破ったことで、イザナギはイザナミを永遠に喪うこととなる。

 「禁忌」が、女性の穢れを見る行為である。

 病に斃れ腐敗するのも穢れであり、穢れを見てイザナギが醜きと口にしたことが、イザナミの怒りを受けて、契りを喪う結果となった。

 次に描かれる、山幸彦と豊玉毘売命は、山の民やまんちゅう海の民うみんちゅうの契りであるが、「約束事」とした産みの穢れを見たことで、豊玉毘売命の怒りを受けて、契りを喪う結果となった。山幸彦と豊玉毘売命の頃には、契りにあたって「約束事」が規定されて、「約束事」を守ることが求められる。

 契りにあたって、どのような「約束事」をするかは、契りによって異なっていて、古事記に記載された神話・伝承の中では様々な形で、「約束事」が描かれ、「約束事」を破る話が記述されている。日ノ本では、男女の契りで重要な事は、「約束事」を守る事であり、決して破らないことが求められる。

 「約束事」については、様々な契りで交わされ、約束事を破ることは、祟りとなって厄災が降りかかるとされていた。

 しかしながら、日ノ本には、貞節という概念は少ないが、父親にとって子供の父が誰であるかは、非常に気になる話でもあった。コノハナサクヤとニニギの話は、貞節の証を立てる契りとして、産屋を炎上させる中で子を産むという形で、「約束事」を交わしている。

 貞節という概念は、ニニギのように男が、子供の父を疑うことで必要とされるが、日ノ本では貞節という概念そのものは無い。古代の日ノ本が、女系社会であったのは、女性にとっては誰の種であろうと、自分の子であるという前提だからである。
 男性と女性の差異としては、男性は、胤でしかないので、何人の女性でも同時期に妊娠させることが可能だが、女性は赤子となって育てるまでに十月十日という一定期間がかかる。複数の女性に胤を残して、赤子が生まれる場合、男系社会が大陸で形成されるが、男系社会の形成では、男の胤である証明ができないため、女性に対して貞節と制約を求めることになる。

 平安期に描かれた話であるが、「源氏物語」で有名になった、通い婚に代表されるように、男は妻の家に婿入りすることが、日ノ本では当たり前だったのである。

 日ノ本における男は、幼年時に母の家に養われ、次に通う妻達の助けを受けて、一家を立てて妻達を迎えるというモノであった。「源氏物語」の光源氏は、立身出世の成功例ということになる。妻からすれば、家を継承できる子を育てることができれば、男女の違いは関係ないので、男が何人通ってもその中から、有望な男を選べば良いということになる。

 女系社会では、女が男を迎え、契りを交わすことで、婚姻関係が成立する。

 縄文期における男女関係は、基本として、女が男を迎えて、契りを交わす関係であったとされる。男性が女性を迎えるのは、男が一家を立てて、女性を迎えることができるようになってからである。

 男性が家を立てることができるのは、戦で勝って、家を守る女を奪う形である。「祀ろわぬ民」を征伐し、「祀ろう民」として娘を嫁に迎えることが、戦では起きる。崇神陛下からの日本征覇を興した時代は、戦に勝った者が相手の家を奪って立てる、妻を迎えるというモノであった。

 家刀自女は、家を守り継承する血筋であり、家刀自女を妻に迎えることは、家を継承することでもあった。



<<本質として、婚姻は「契り」であり、「約束事」であるから、貞節とは関係は無い>>



 天平期に畿内ヤマトで天皇という制度が確立されるまで、日ノ本では、女性に貞節を求めるということは無かったので、男系を維持することそのものに無理があり、女系天皇家であった。

 女系が崩れたのは、皇族同士の婚姻から、臣下が皇后となったことによって、歪んだのである。光明皇后陛下は、見事な女性であり、皇后に相応しい方であったが、光明皇后陛下が登場してしまったことで、皇太女から天皇陛下となった、孝謙陛下に相手を見つけることができなくなったのである。

 日ノ本の天皇家が継承にあたって、女系が崩れて男系に変化したのは、権力者の思惑によって、孝謙陛下に相手を見つけられなかったことにある。

 つまりは、孝謙陛下が相手を見つけることができれば、女系は維持可能なのである。孝謙陛下の頃は、淡海三船がおられ、皇族復帰という形で御船王となられている。この時に子が生まれなかったことで、女系継承が困難になって、称徳陛下の頃に道鏡が出てきてしまい、道鏡を皇族にできなかったことで、称徳陛下が失意のうちに身罷られたのである。つまりは、臣下の娘は皇后になれるけど、臣下の男は皇族になれないというのが、皇族と臣下の約束事となり、皇統男系となった経緯である。
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