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神泉苑の宴

神泉苑の宴 時の左大臣、藤原時平の言葉

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 五位からが、主上に仕える貴族としての地位で在り、三位からが公家と呼ばれる、大貴族を示す地位となります。延喜の御代の頃、藤原一族による三位以上の地位について、徐々に寡占が進んでいく時期となります。主上に仕える、女御も藤原からだけでなく、橘や菅原の娘も入内していた。

 時の左大臣藤原時平は、並み居る者達を制して、鷺の姿をしたモノへ向かって、
「上意である。そこな、籠に入れ」
と、籠を指し示して言われたのでした。

 すると、鷺娘の方は、
『えっとぉ~。上意って、確か偉い人の命令ってことだよね。籠に入るには嫌だけど、入れば殺されたりしないよね、きっと。うん。そうだ、自分で入れば良いんだ』

 とまぁ結論付けまして、自分から鳥籠へと進んで入り、扉を閉めたのでした。

「「「「おおおお、さすがですなぁ左大臣どの」」」」

周囲の貴族達が、見事と騒いでおりました。そこへ、主上が来られまして、仰られます。

「さすがは左大臣じゃ。見事と朕の使者として役目を果たした。しかし、そなたは左大臣じゃ。五位の位では落とす事になってしまう。そこで、我が帯刀を与えよう」

「「「主上も見事で御座います」」」

  さて、さらに主上は言葉を繋げます。

「この鷺自身こそが、上意を受けて鳥籠に入った当人である。この者に、一代限りであるが、五位の位を授けよう」

「それは・・・」

「何か異論があるか、左大臣が務めたは、朕が使者としての役目。役目を果たしたのは、この鷺自身であろう。違うか」

「いえ。相違ございません」

「ならば、この鷺はこれより五位の鷺じゃ。良いな」

 こうして、鷺娘が五位の位を授けられたのでした。メデタシめでたし。ゴイサギという鳥の名は、主上より五位を授かり、殿上に拝謁することができる地位となった証にございます。
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