上 下
22 / 44

魔導書屋の少女は英雄との恋に憧れているようです 13

しおりを挟む
 
 かつてユータロウによって無条件に救われてしまったルビィは、なにもしない自分をよしとしていた。

 ユータロウに体と心を捧げてさえいれば。
 ユータロウの最愛にはなれずとも、幸福は保証されている。
 自分はユータロウの物語に乗っていればいい――。

 意識の根底に、そんな消極的な考え方が染み着いていた。

 だからルビィをユータロウから引き離すには、ルビィを自分の足で立たせる必要があった。
 そして自分の物語を歩ませるのだ。
 ユータロウの物語ではなく。

 俺はまず、ルビィに精神的な負荷を与えた。
 
 ルビィが書きためていた小説を流出させ、
 ユータロウが他の女とやっているシーンを見せ、
 そして祖父に呪いをかけて昏倒させた。

 精神的にどん底へと落ちたルビィ。
 そこに女エルフシュカラーヤに化けた俺の登場。

 俺は生活費の援助をえさにルビィに小説を書かせた。
 ひたすらにダメだしを繰り返し、小説を書かせ続けた。
 
 果てない努力はルビィという人間の意志を強化した。
 ルビィは目に見えて変化した。

 だけど、それだけでは足りなかった。

 ルビィの心のかせを解き放ち、彼女の物語を劇的にするには――トラウマを払拭させる必要があった。

 オークを、ルビィの手で討たせなくてはいけなかった。

 だから俺は、『セフォル』の街に調薬師がいるなどという嘘を吐き、ルビィを旅に出立させた。

 そして、その途中にオークを配置しておいた。
 リューに連れてきてもらった、オークのディーラくん。

 体中に血糊を塗った俺は、ディーラに襲われている風を装って絶叫を上げ、ルビィを呼び寄せた。

 オークに襲われているシュカ――今までのルビィなら、そんな光景を目の当たりにしたら、怖くておじけづいていただろう。

 だが、すでに俺によって鍛えられているルビィは怯んだりはしなかった。
 
 彼女は見事魔法を発動させ、因縁深いオークを討ち果たした。

 ルビィが何かすごい魔法を体に宿していることは、ある程度予想していた。
 ユータロウの物語に組み込まれるくらいなのだから、凡庸な少女のわけがない。
 あそこまですごいとは思わなかったが……。

 ルビィに燃やされたオークのディーラは、命果てる直前に俺の方を向き、『話が違う……!』とでも言いたげな視線を送ってきた。
 ったく往生際が悪い。
 自分だってこれまで散々殺してきたのだから、殺されたって文句はいえないだろうに。

 俺は別にオークの味方というわけではないのだ。

**

「ルビィさん、本当に立派になったね。ああ、ボクは誇らしいよ」
 俺はぎゅうっと、ルビィを抱きしめる。

「シュカさん、ちょっと苦しい……」
 ルビィは苦しそうにぷはっと、顔を上げた。そこに――
「――――っ!?」

 俺はルビィの唇を、唇でふさいだ。

 ルビィはびっくりしたようでビクンッと体を震わせたが、すぐに受け入れてくれた。

 彼女の目はとろんと虚ろだ。

 俺はルビィの耳元に口を近づける。
「ルビィさん、君を好きにしていいかな?」

 ルビィはその問いにびくっと体を震わし、目を伏せた。

「は……い」
 許可がでた。

 やっと、この時がきた。
 ユータロウからルビィを横取りするため、苦労して策略を巡らせて――ついにルビィをものにできる時がきた。

 好きにしていいとのことだったので、俺は本当に好きにすることにした。

 俺が今化けてる女エルフシュカラーヤは、妹のエリエーヤにも負けないほどの魔法をもっている。
 エロいことに使えそうな魔法も。

 俺はルビィに『身体麻痺パラライズ』をかけた。

「……あっ――!」
 感電したかのように体を硬直させ、ぴくぴく痙攣するルビィ。
 
 俺は震えるルビィを地面に横たえた。
 脚をM字にひらかせる。

「おつぎは、と」
 そして次に、俺は荷物から黒い布を取り出し、ルビィの目を隠した。

 男に戻るところをルビィに見られるわけにはいかない。

 さらにルビィの衣服に『装備崩壊』をかけてから、俺は『ミラー』を解き、元の姿に戻った。

『装備崩壊』の効果で、ルビィの衣服はじわじわと消滅していく。

 まず下半身を隠すものが消失した。

 脚はM字に開かれているので、ルビィの股間が夜気にさらされる。
 こんな姿、ルビィの祖父が見たら卒倒してしまうだろう。

 上半身はちゃんと着てるのに、下半身だけなにも身に着けていない状態――だらしなくて、これもなかなか……。

 しかし上半身の衣服もじょじょに崩壊していく。

 へそが露わになり、次に爆乳が巨大なその身をさらした。

 今のルビィはそれを隠せない。
 俺にじっくり見られているのはわかっているだろうが、隠せない。

 目隠しされた全裸の爆乳少女。脚をM字に開いて、その体をピクピクと痙攣させている……素晴らしく犯罪チックだ。

 ああ……ものにするまで本当に長かった。

 その分、十分楽しませてもらう――!

 俺は自分の衣服を脱ぎ捨て、ルビィの体に覆いかぶさる。

 俺の胸板に押し潰される爆乳の感触……!


 そうして、俺はルビィとした。
 ルビィの純潔を奪い、朝まで彼女と何度も交わった。

**

 俺とルビィはその後、『セフォル』の街へと行った。
 しかしそこに調薬師はいなかった。

 あたり前だ、元々俺がついた嘘なのだから。
 失意のルビィとともに、一週間かけて俺は『クーラ』へと戻った。

 ちなみに帰りの道中も、失意のルビィを慰めながら毎晩させてもらった。

 そうして『クーラ』に戻ると――

「おじいちゃん!?」
 ルビィは、驚愕の声を上げた。

「おお、ルビィや。なんか元気になったぞ」

 ルビィの祖父は、普通に元気になっていた。

 俺がかけた呪いの効果が切れたのだろう。

 ルビィは喜び、祖父にここしばらくの出来事を報告した。
 祖父は顔つきの変わった孫娘を、誇らしそうに見つめていた。

 家族の再会シーンを邪魔するのも野暮だったので、俺は魔導書グリモア屋をあとにした。
 
 先に『クーラ』に戻っているはずのリューと合流し、いろいろ報告し、久方ぶりにあいつを可愛がってやろうと――。

 と、

「待ってシュカさん!」

 店から飛び出してきたルビィが、俺に追いついてきた。

「おやおやどうしたんだいルビィさん、病み上がりのおじいさんのそばにいなくていいのかい?」

「すぐ戻ります……あ、あの……わたしシュカさんに聞きたいことがあって……」

「ん? なんだい?」

 そう聞くと、ルビィは俺の首に両腕を巻きつけるようにして抱きついてきた。

 そして耳元で、囁くように聞いてくる。 
「シュカさん――あなた本当は男の人ですよね?」

「…………」
 ……あれ、ばれて……る?

「責めてるんじゃないから、隠さなくていいですよ。気づかないわけないじゃないですか……。魔法で麻痺させられてたとはいえ……あ、あんなにいっぱいエッチしたんですから……!」

「…………ああ、男だよ俺は」
 俺は認めた。

「多分ですけど……わたしの小説勝手に本にしたりしたのもあなたの仕業ですよね? もう……どこまであなたの手のひらの上だったんでしょう……」
 ルビィはくすくすと笑う
「言っておきますけど、怒ってないですよ。あなたに自分を変えてもらえたのは事実ですし、それに……そんなに策略を巡らせてまで、一生懸命わたしとエッチしようとする男の子って、考えたらなんかおかしくって」

 ルビィはあははっ、とおもしろそうに笑った。

 ただ、とルビィは続けた。
「もしわたしに悪いと思うなら、どうかあなたの本当の姿を見せて下さい」

「……」
 俺は観念して、『ミラー』をといた。
 さえない、元の姿をさらす。

「名前はモトキだ……」

「あ、想像した通りの人……。ひねくれてそうで、でも憎めない感じ……かわいい」

 ルビィはぎゅっと俺の頭部を爆乳に抱き寄せ、頬や唇に「かわいい、かわいい」と何度もキスを繰り返してくれた。

 ……なんだ、これは夢か。
 俺は死ぬんじゃないか――。

「ねえ、モトキくん……あんなにいっぱいエッチしたんだから、ちゃんと責任とってね」

「ああ、ああ……」
 呼び方が『くん』になっていたが、これも悪くなかった。

「あと……もしも赤ちゃんできてたら責任とってもらいますからね」

「女って本当そのへんしっかりしてるな……」

 人気のない道で、俺はルビィといちゃいちゃしていた。

 と、

「ル、ルビィ……」
 不意に聞こえた声に、俺とルビィはそちらの方を振り向いた。

 そこには、ユータロウの姿があった。

 地球から転生してきた中学生の男の子。
 彼は、自分のハーレムの一員になるはずだった女が、他の男といちゃついてるのを目撃し、固まっていた。

「ユータロウさん……紹介します」
 ルビィは平然と言う。
「わたしの彼氏のモトキさんです」

「あ、あぁ……よかったな!」
 ユータロウは震える声でルビィを祝福すると、幽霊のような足取りで引き返した。

 ショックは強いだろう。
 中学生が、好きな女を奪われたのだ。

「―――」
 その時、俺はみた。

 ユータロウの背から、煙のようななにかが抜け出していくのを。

 あれはおそらく、ユータロウの力の一部だろう。

 俺にルビィを寝取られ、物語の一部を壊されたことで、ユータロウは女神からの祝福を一部失ったのだ。

 ――いける。

 これからユータロウの他の女も寝取ってやれば、確実にあいつは弱っていくだろう。

************

ルビィ編、今回で完結です。
次回からは女神官ミリア編が始まります。
ルビィ編の感想などいただけると励みになります。
どうぞよろしくお願い致します。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前。でも……。二人が自分たちの間違いを後で思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになる。

のんびりとゆっくり
恋愛
俺は島森海定(しまもりうみさだ)。高校一年生。 俺は先輩に恋人を寝取られた。 ラブラブな二人。 小学校六年生から続いた恋が終わり、俺は心が壊れていく。 そして、雪が激しさを増す中、公園のベンチに座り、このまま雪に埋もれてもいいという気持ちになっていると……。 前世の記憶が俺の中に流れ込んできた。 前世でも俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前になっていた。 その後、少しずつ立ち直っていき、高校二年生を迎える。 春の始業式の日、俺は素敵な女性に出会った。 俺は彼女のことが好きになる。 しかし、彼女とはつり合わないのでは、という意識が強く、想いを伝えることはできない。 つらくて苦しくて悲しい気持ちが俺の心の中であふれていく。 今世ではこのようなことは繰り返したくない。 今世に意識が戻ってくると、俺は強くそう思った。 既に前世と同じように、恋人を先輩に寝取られてしまっている。 しかし、その後は、前世とは違う人生にしていきたい。 俺はこれからの人生を幸せな人生にするべく、自分磨きを一生懸命行い始めた。 一方で、俺を寝取った先輩と、その相手で俺の恋人だった女性の仲は、少しずつ壊れていく。そして、今世での高校二年生の春の始業式の日、俺は今世でも素敵な女性に出会った。 その女性が好きになった俺は、想いを伝えて恋人どうしになり。結婚して幸せになりたい。 俺の新しい人生が始まろうとしている。 この作品は、「カクヨム」様でも投稿を行っております。 「カクヨム」様では。「俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。」という題名で投稿を行っております。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

処理中です...