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5話 『ステータス』
しおりを挟むエムザラとの別れが終わったあと、ノアは暫く余韻に浸っていた。まさか、あんな形で初めてのキスをする事になるとは思ってもいなかった。
「――お邪魔するよ」
「え……えぇっ!! ―――神官様?!」
そんな矢先、やって来た突然の意外な訪問者に驚愕に目を見開いた。
「『冒険者』おめでとう、ノア=キヴォトスくん」
「あ、ありがとうございます……」
(なんで? どうして神官様がここに?)
「君と会うのは実は十四年振りだったんだ。私も君と同じように、ウトゥさんに育ててもらったんだよ」
「え、そ、そうだったんですか……」
驚きの連続で声を出すのがやっとだった。まさか、他にも家族がいるなんて――
「今日は、君にステータスの説明と大事な話をしに来たんだ――聞いてくれるかな?」
「はい、も、もちろんです」
〔ステータス〕冒険者だけが持つことのできる特殊な能力値。その適正がなければ『冒険者』になれないというのは〔ステータス〕を得られるかどうかが基準なのだと言う。
「まず、君のステータスだが……」
そこで、神官様は言いよどんだ。どうしたのだろう。
「実は、君の本当の適性職は『冒険者』では無かった。いや、そういう事ではなく君の適性職は『』……つまり、無かったんだ」
僕の考えを制するように、神官様は言った。
それでも、僕はなにが何だかわからなかった。
(僕の適性職は…なにも……ない……)
何かがすっぽりと抜け落ちた気分だった。やっと、やっとの思いで冒険者になれたというのに、こんな簡単にどん底に落とされるなんて……
「神官様……それなのに…なぜ、僕に『冒険者』と言ったのですか」
「それは君の適性職『』が、私には可能性に見えたからだ。君に聞いたよね?何になりたか。君は『冒険者』になりたいと言った。だから、冒険者にしたんだよ」
神官様は真っ直ぐにこちらを見て続ける
「君はこの先、困難の連続かもしれない。ここを出てすぐに死んでしまうかもしれない」
一言一言、噛み締めるように――
「――それでも君は冒険者になる覚悟はあるかい?」
――ウトゥさんの“夢”を引き継ぐ覚悟はあるのかい?
そう言われているのだと。僕の答えは決まっている。驚き、絶望しそうにもなったけど、それでも僕は辞めるつもりは無かった。
「はい。僕はそれでも冒険者になって神様を殴りに行きます。」
しっかりと、真っ直ぐに神官様を見てそう言った。
「ははは、神に仕える立場の神官に向かって“神様を殴る”か。君は本当にウトゥさんにそっくりだ」
「――合格だよ。君のステータスだ。見るといい。それと、ウトゥさんからの最後の遺言だよ『ベットの下を見ろ』」
「僕たちは君の家族だ。いつでも頼るといい。冒険者ノア=キヴォトス――」
神官様はそう言って出て行った。最後、一人称が変わっていたのは神官様の本当の姿なのかもしれない。
濃い一日だった。いろんなことがあって、初めて他の家族の事を知って、自分の事を知れた。
それから、ウトゥさんの遺言通り『ベットの下』の物を見つけた。
革の服とショートソード。それと、エッチな本だ。
「――ウトゥさんらしいや」
思わず笑いが込み上げてくる。ウトゥさんがこうなる事を予想して僕を和ませるために入れてくれたに違いない。
「ありがとうウトさん。 行ってきます――」
――この日、ノア=キヴォトスは人生最大の決断を下したのだった
※※※※※※※※※※※※
〔ステータス〕
ノア=キヴォトス 十五歳
適性職:『』『冒険者(仮)』
LV:1
体力:D
耐久:G
筋力:F
敏速:D
生命力:SSS
スキル:生命の実 慈愛
ウトゥの守護
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