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3章 頑張る冒険者家業
高校デビュー the あなざー スワンの大冒険② 前編
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強い日差しに刺激されたのかスワンの瞼が痙攣し出し、ゆっくりと開かれていく。
寝惚けながら起き上がったスワンが、ぼんやりとした目で辺りを見渡すと急に覚醒して飛び起きる。
「な、なんだこれはっ!! まるで秘境ではないか!?」
驚く彼、スワンがいる場所は、滝の上で見下ろすと10mはあろうかという巨大滝でそこから見下ろす景色は木の海、まさに樹海というべき光景が広がっていた。
スワンが見渡せる範囲には街や村などは見えず、というより、樹海の切れ目すら確認できない。
黙って見渡すスワンの知識からも炭鉱があった周辺にこんな秘境があるという話も情報もなかったので、隣の川で相当流されたのだろうと判断する。
「むぅ? 私が無事だという事は、我が社員、スラ吉が助けてくれたはず、ヤツはどこだ!?」
思い出すように見渡すが辺りには居らず、ぼっちに焦り出した時、木々の間から大きな体を変形させながら現れるスライムを発見する。
「す、スラ吉!」
スワンがそう叫ぶとスライム、スラ吉は嬉しそうにポヨポヨと体を揺らしながら一直線にスワンの下にやってくる。
嬉し泣きするスワンがスラ吉に飛び付くとスラ吉も触手を使って抱き締める。
第三者から見れば捕食されているようにしか見えないが2人には感動的な抱擁であった。
「私、1人なのかと思ったではないか!」
プルプルゥ
「何? 私が起きた時の為の食糧集めに出ていた? お前はできる奴だな、さすがは専務だ!」
バシバシとスラ吉を叩いているとスラ吉の体から皮剥ぎの済んだ豚のような獣の肉と果物が数点吐き出す。
その内の果物を1つ手にして躊躇いもなく口すると美味しかったらしく口許が綻ばせるが、肉を見つめて難しい顔になる。
「果物はそのまま食べれば良いが、肉の処理は勿論、調理もできんぞ?」
そういうスワンの肩を触手で突っつくスラ吉。
「何々? 血抜き、内臓の処理は済んでるから焼くだけで食べられる? お前はそんな器用な事もできるのか? まあ、味付けができないが、それは目を瞑るか……」
火をどうしよう、と考えるスワン。
スワンは、今はニッカポッカ姿の男ではあるが、元々はお金持ちであったので生活魔法を習得する必要のない生活をしていたので当然のように生活魔法が使えなかった。
困るスワンのズボンを引っ張る者がいる事に気付き振り返る。
振り返った先には小奇麗なメイド服を纏う、スワン専属のメイド、メルがペコリと頭を下げてくる。
「調理は私にお任せを」
「おお、メル、お前も無事だったか! となると……カトリーヌも健在のようだな!」
わはっははは!! と高笑いするスワン。
メルの後方にはふてぶてしいデブ鳥のカトリーヌがいるのを確認してスワンは満足そうに頷く。
頷くスワンにメルは衣服を手渡してくる。
「旦那様、そのご衣裳はここでは不適切。ドレスコードは守るべき」
「おお? そういうものか? メルがそういうならそうなのだろうな」
衣服を受け取ったスワンにお着替えはお一人で、とメイドの義務を放棄したようなセリフを言ってのける。
現実的な話、180cm以上あるスワンに140cm有るかどうかのメルが着替えを手伝うのは現実的ではない。
メルが「お着替えの間に調理を進めておきます」と言うと豚に似た肉を持って川の傍にいるカトリーヌの下に向かった。
それを見送ったスワンは手渡された服を着ていく。
黒いチノパン、茶色の革靴に茶色の革のジャケットを羽織り、ダークグレーのフェルト帽を被る。
そして、腰にはムチを装着する。
「おお、なんだ? この胸から沸き上がる力のような……今の私であれば、どんな遺跡も踏破できる気がする!!」
滝の上から見下ろしながらニヒルに笑みを浮かべるスワンが心から零れる思いが「Jrと言うなっ!!」と叫ばせる。
スワンの気持ちに連動するようにスラ吉は嬉しげに体を震わせる。
悦に入って樹海を見下ろしてたスワンの鼻が香ばしい香りを捉える。
振り返ると焼きたての肉を皿に盛ったメルの姿があった。
「さあ、できた。食べて」
「おお、良い匂い、良い色ではないか?」
嬉しそうに受け取ったスワンはナイフとフォークを握り締めて食べようとした時に首を傾げる。
「時に、メル?」
「何?」
皿に盛られている沢山の肉を指すスワンが疑問を口にする。
「どうも、この肉の山の中に大腰筋らしきモノが見当たらないのだが?」
「気のせい」
即答で言われて、肉の山を掻き分けて探すスワンはもう一度メルを見つめる。
「やはり、最高部位、ヒ……」
「これはない変わり種の品種だったらしい」
最後まで言わせて貰えずにメルから発する静かな気迫に黙らされるスワン。
「むぅ、メルが言うならそうなのだろうな?」
「そう、だから、しっかり噛んで食べる」
スワンが納得したと判断したメルはスタスタとカトリーヌの下に向かうと小ぶりの柔らかそうな肉を盛ると食べ始める。
なんとなく納得がいかない思いを噛み締めるスワンであったが肉を一切れ口に放り込む。
「うん、美味い! さすがメルの料理だ!!」
口に入れた時の味の良さに満足して先程までの疑惑が吹き飛び、スワンはガツガツと食べ始めた。
▼
食事を終えたスワンは状況が分からないが川を下っていけば、どこかに出れるだろうという安易な考えで滝を降りれるルートを探す為に林の中に入っていた。
だが、歩いてそれなりに経つが、同じ場所を歩いているようにしか思えない程、変化がない事にスワンが苛立ち始めた頃、スラ吉が反応を見せる。
「ん? 何かあったのか?」
スラ吉を見つめるスワンが、フムフムと頷く。
「私ぐらいの背丈のデカイのが倒れてる? どこだ?」
そうスワンが聞くとスラ吉は触手でスワンを持ち上げると背に載せる。
凄い速度で疾走するスラ吉の上でスワンは最初から載せて貰えば良かった、と後悔してたら、急ブレーキをスラ吉がかけた事で吹っ飛ばされると顔から木にぶつかり、鼻血が噴き出す。
「やはり、緊急な時と拓けた場所以外は自分で歩こう……」
鼻血を拭いながらスラ吉の下に戻ろうとした時に何かに躓いて転ぶ。
「また顔をぶつけるところだったではないかっ!」
ヤツ当たりのような衝動を躓いたモノにぶつけようと振り上げた足を止める。
蹴ろうとしたモノは通常より大きなゴブリン、キング種である事に気付いたためであった。
スワンは、そのゴブリンが嗚咽を漏らしてうつ伏せで倒れてた足に引っ掛かったようだ。
周りで騒ぐスワンに気付いたゴブリンは顔を上げると蹴る動作で固まっているスワンと視線が交差した。
寝惚けながら起き上がったスワンが、ぼんやりとした目で辺りを見渡すと急に覚醒して飛び起きる。
「な、なんだこれはっ!! まるで秘境ではないか!?」
驚く彼、スワンがいる場所は、滝の上で見下ろすと10mはあろうかという巨大滝でそこから見下ろす景色は木の海、まさに樹海というべき光景が広がっていた。
スワンが見渡せる範囲には街や村などは見えず、というより、樹海の切れ目すら確認できない。
黙って見渡すスワンの知識からも炭鉱があった周辺にこんな秘境があるという話も情報もなかったので、隣の川で相当流されたのだろうと判断する。
「むぅ? 私が無事だという事は、我が社員、スラ吉が助けてくれたはず、ヤツはどこだ!?」
思い出すように見渡すが辺りには居らず、ぼっちに焦り出した時、木々の間から大きな体を変形させながら現れるスライムを発見する。
「す、スラ吉!」
スワンがそう叫ぶとスライム、スラ吉は嬉しそうにポヨポヨと体を揺らしながら一直線にスワンの下にやってくる。
嬉し泣きするスワンがスラ吉に飛び付くとスラ吉も触手を使って抱き締める。
第三者から見れば捕食されているようにしか見えないが2人には感動的な抱擁であった。
「私、1人なのかと思ったではないか!」
プルプルゥ
「何? 私が起きた時の為の食糧集めに出ていた? お前はできる奴だな、さすがは専務だ!」
バシバシとスラ吉を叩いているとスラ吉の体から皮剥ぎの済んだ豚のような獣の肉と果物が数点吐き出す。
その内の果物を1つ手にして躊躇いもなく口すると美味しかったらしく口許が綻ばせるが、肉を見つめて難しい顔になる。
「果物はそのまま食べれば良いが、肉の処理は勿論、調理もできんぞ?」
そういうスワンの肩を触手で突っつくスラ吉。
「何々? 血抜き、内臓の処理は済んでるから焼くだけで食べられる? お前はそんな器用な事もできるのか? まあ、味付けができないが、それは目を瞑るか……」
火をどうしよう、と考えるスワン。
スワンは、今はニッカポッカ姿の男ではあるが、元々はお金持ちであったので生活魔法を習得する必要のない生活をしていたので当然のように生活魔法が使えなかった。
困るスワンのズボンを引っ張る者がいる事に気付き振り返る。
振り返った先には小奇麗なメイド服を纏う、スワン専属のメイド、メルがペコリと頭を下げてくる。
「調理は私にお任せを」
「おお、メル、お前も無事だったか! となると……カトリーヌも健在のようだな!」
わはっははは!! と高笑いするスワン。
メルの後方にはふてぶてしいデブ鳥のカトリーヌがいるのを確認してスワンは満足そうに頷く。
頷くスワンにメルは衣服を手渡してくる。
「旦那様、そのご衣裳はここでは不適切。ドレスコードは守るべき」
「おお? そういうものか? メルがそういうならそうなのだろうな」
衣服を受け取ったスワンにお着替えはお一人で、とメイドの義務を放棄したようなセリフを言ってのける。
現実的な話、180cm以上あるスワンに140cm有るかどうかのメルが着替えを手伝うのは現実的ではない。
メルが「お着替えの間に調理を進めておきます」と言うと豚に似た肉を持って川の傍にいるカトリーヌの下に向かった。
それを見送ったスワンは手渡された服を着ていく。
黒いチノパン、茶色の革靴に茶色の革のジャケットを羽織り、ダークグレーのフェルト帽を被る。
そして、腰にはムチを装着する。
「おお、なんだ? この胸から沸き上がる力のような……今の私であれば、どんな遺跡も踏破できる気がする!!」
滝の上から見下ろしながらニヒルに笑みを浮かべるスワンが心から零れる思いが「Jrと言うなっ!!」と叫ばせる。
スワンの気持ちに連動するようにスラ吉は嬉しげに体を震わせる。
悦に入って樹海を見下ろしてたスワンの鼻が香ばしい香りを捉える。
振り返ると焼きたての肉を皿に盛ったメルの姿があった。
「さあ、できた。食べて」
「おお、良い匂い、良い色ではないか?」
嬉しそうに受け取ったスワンはナイフとフォークを握り締めて食べようとした時に首を傾げる。
「時に、メル?」
「何?」
皿に盛られている沢山の肉を指すスワンが疑問を口にする。
「どうも、この肉の山の中に大腰筋らしきモノが見当たらないのだが?」
「気のせい」
即答で言われて、肉の山を掻き分けて探すスワンはもう一度メルを見つめる。
「やはり、最高部位、ヒ……」
「これはない変わり種の品種だったらしい」
最後まで言わせて貰えずにメルから発する静かな気迫に黙らされるスワン。
「むぅ、メルが言うならそうなのだろうな?」
「そう、だから、しっかり噛んで食べる」
スワンが納得したと判断したメルはスタスタとカトリーヌの下に向かうと小ぶりの柔らかそうな肉を盛ると食べ始める。
なんとなく納得がいかない思いを噛み締めるスワンであったが肉を一切れ口に放り込む。
「うん、美味い! さすがメルの料理だ!!」
口に入れた時の味の良さに満足して先程までの疑惑が吹き飛び、スワンはガツガツと食べ始めた。
▼
食事を終えたスワンは状況が分からないが川を下っていけば、どこかに出れるだろうという安易な考えで滝を降りれるルートを探す為に林の中に入っていた。
だが、歩いてそれなりに経つが、同じ場所を歩いているようにしか思えない程、変化がない事にスワンが苛立ち始めた頃、スラ吉が反応を見せる。
「ん? 何かあったのか?」
スラ吉を見つめるスワンが、フムフムと頷く。
「私ぐらいの背丈のデカイのが倒れてる? どこだ?」
そうスワンが聞くとスラ吉は触手でスワンを持ち上げると背に載せる。
凄い速度で疾走するスラ吉の上でスワンは最初から載せて貰えば良かった、と後悔してたら、急ブレーキをスラ吉がかけた事で吹っ飛ばされると顔から木にぶつかり、鼻血が噴き出す。
「やはり、緊急な時と拓けた場所以外は自分で歩こう……」
鼻血を拭いながらスラ吉の下に戻ろうとした時に何かに躓いて転ぶ。
「また顔をぶつけるところだったではないかっ!」
ヤツ当たりのような衝動を躓いたモノにぶつけようと振り上げた足を止める。
蹴ろうとしたモノは通常より大きなゴブリン、キング種である事に気付いたためであった。
スワンは、そのゴブリンが嗚咽を漏らしてうつ伏せで倒れてた足に引っ掛かったようだ。
周りで騒ぐスワンに気付いたゴブリンは顔を上げると蹴る動作で固まっているスワンと視線が交差した。
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追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
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