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5章 DT、本気みせます!

153話 古来よりの決まりらしいです

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 まるで顔の造りは若干違いはあれど、同じ髪型のおかっぱにしてあり、同じように甘え切った顔を晒す2人は双子かと疑うが1歳違いらしい。

 そんな2人は妹、ポプリに助けを求める視線を飛ばす、第三王女コレット、第四王女シルフィ。

 しかし、ポプリはその視線に気付いてないかのように振る舞い、2人を見据えて話し出す。

「では、ミレーヌ女王の指名を頂きましたので私のほうから、お二人の処遇についての経緯をお話しましょう」

 手を前で合わせて静かな瞳で見つめるポプリは小さく溜息を零す。

 そんなポプリを見て、コレットが瞳に涙を溜めて懇願する。

「私達は戦争に一切関わり合いはなかった。どこにも攻める意思はなかったわ」
「ええ、一切を放棄されて、サラお姉様、ネリートお姉様が国民を見捨てて逃げて右往左往する国民から目を反らして閉じ籠ってられましたね」

 ポプリに間髪いれずに言い切られたコレットは目を反らす。

 それを見ていた雄一は、そうやってすぐ逃げるからどんどん状況が悪くなる事をこの姉妹は気付いてないと感じる。今まで王族の王女だったから周りが動いてくれていた弊害であろう。

 そう言う意味ではポプリは叩き上げの冒険者をしてきただけあって、そういうところは余りない。

 ポプリとコレットのやり取りに尻込みしながらもシルフィが伺うように話しかけてくる。

「た、確かに国民に何も指示をしなかったのは悪かったかもしれない。で、でも、罪に問われるのもおかし……くない?」
「王族としての権利だけ甘受して、義務を放棄して我が身可愛さで閉じ籠り、逃げる事も叶わないと分かっていたはずです」

 静々と歩くポプリが2人の横に来ると視線すら向けずに口を開く。

「せめて、力づくで引きずり出される前にそれを言っていれは傾ける耳もあったかもしれませんね」

 二の句も継げないシルフィに表情を動かさずにそう言うと2人に背を向けて元の位置に戻る。

 再び、正面を向いたポプリが露骨に分かるように溜息を吐いてみせる。

「本当にそれだけだったらどれだけ良かったんでしょうね?」
「どういう事? 私達は何もしてないわ」

 ポプリの言葉に、身に覚えがないとばかりに被り振るコレットがシルフィの肩を抱きながら言ってくる。

 本当にないと思っている2人に呆れを通り過ぎて悲しみに包まれるポプリは今度は自然に溜息を零す。

「確かに、これだけだと言うなら、王族としての継承権の放棄、どこかの修道院に入るという恩赦もあったでしょう。始めにミレーヌ女王も仰ったとおり、一番問題にしてるのは攻め入った事じゃない」

 本当にポプリが何を言いたいか分からないらしく、お互い顔を見合わせて「だったら何が問題になってるの?」と言ってくるコレットを見て、本当に情けないとばかりに目を一度閉じる。

 近くに居る兵士に頷いてみせるとポプリはスケッチブックと本を兵士から受け取る。

 それを見た2人は目を見開き、シルフィが激しく反応を示す。

「それは私のよっ! 勝手に見てないでしょうね、返してっ!」
「そんな事言える立場だと思ってるんですか? 私も中身がこんなのと知ってたら目を通したりしませんでしたよ、おぞましい」

 スケッチブックを振りながら嫌悪感バリバリの表情をするポプリは、もう片手に持ってる本をコレットに突き付ける。

「こちらの本がコレットお姉様のものですよね、ああ、シラを切られても専属のメイドから聞き出してますので無駄ですよ。シルフィお姉様の事があったので、男性に読んで貰いました」

 顔を青くするコレットの顔を指差しながらポプリは言ってくる。

「そうそう、今のコレットお姉様のように顔を青くされて、『吐きそうだ、これを書いた奴の頭はイカれてる』だそうですよ」

 汚いモノを抓むようにして宙に浮かせるポプリ。

 自分が大事にしてたモノを穢されたと思ったのか、青から赤に顔色を変えて叫ぶ。

「私のは立派な純文学よっ!」
「コレットお姉様にとって頭のおかしい変態官能小説が純文学なんですね?」

 兵士に抑えつけられているから掴みかかれず、せめてとばかりにポプリを射殺すつもりで睨みつけるコレットとシルフィ。

 それを聞いていた雄一が、ポプリに近寄り、「見せて貰っていいか?」と問うと頷かれ、スケッチブックを受け取ると中を覗く。見た瞬間に雄一の眉間に皺を作る。

 パラパラと捲って見て、気分も悪くなる。

 書かれている絵が、エルフと筋肉隆々の男同士2人がまぐわっている絵だとか、明らかに人ではないモノとまぐわらせられている女性の絵などが書かれていた。

 ほぼ全ての登場人物達の首にはネリートに付けられた物と同じ首輪がされている。
 そして、涙を流しながらというところから強制されたと痛々しさが伝わってくる。

 絵だけでも気持ち悪いと思った雄一がポプリを見つめて頼む。

「これを処分していいか? どこで間違って家の子達の目に入るとも限らんから」
「ええ、まだ証拠はあるのでそれぐらいなら……本当に見なかったら良かったと後悔しましたしね」

 憐れみを込めた目をポプリに送る雄一。

 すぐに気分を切り替え、スケッチブックを空中に放り裏拳を放つとそこから放たれた衝撃により塵と化す。

 先程までポプリを睨む事にご執心だった2人も規格外な事をする雄一の行動に目を奪われるとガタガタと体を震わせて顔を伏せる。

 その様子に呆れる雄一とポプリであったが雄一が元の位置に戻るのを確認した後、ポプリが再度2人に問う。

「まだ、分かりませんか?」
「ち、ちょっと他人との美的感覚が違うだけでしょう! それのどこが悪いの!」

 コレットが血走った目でポプリを睨むが、「どうして分からないのですか……」と苦悩する。

「この絵や、本は想像で書かれた訳じゃないですね? これもメイド達の口を割らせて確認しました」
「そうよ、実際に見て書いたわ、それの何が悪いの!」

 まだ意図が伝わらず、叫ぶコレットを蔑んだ目で見つめながら問う。

「そのモデルはどこから?」
「サラお姉様から……」

 やっとここまで話が進んで初めて何を言わんとしてたか理解したようで、必死に言ってくる。

「私達は買っただけ! 掴まえたりはしてないわっ!」
「そうですか、そうそう、お二人の処遇を言うのを忘れてましたね」

 明らかに作り笑いだと分かる笑みを浮かべるポプリに恐怖して震え出す2人。シルフィはか細い声で「助けて」と言ってくるが無視される。

「お二人はエルフ国に引き渡す事が決まっております」
「じ、じゃ、今までの茶番は何だったと言うの!」

 確かにコレットの言うのも一理あるが、おそらくポプリが女王と交渉したのだろうとアタリを付けるが次のセリフを聞いて、満更、的外れではなかったと知る。

「お二人が潔く罪を認められになり、懺悔する気がありましたら、できる限り楽に死なせてあげてくださいとエルフの代表の方にお願いするつもりでした」
「そろそろ、もう良いか? 新しきパラメキの女王よ」

 入口からロゼアとカシアを先頭にエルフ10名ほど連れて入ってくる。

 結果が出るまで待っていて貰っていたようである。

「時間の無駄になると分かっててもチャンスを上げたいって本当に君は……これからは女王なんだから、もっと非情になれるようにね?」

 カシアにそう諭されると悲しそうに頷くポプリ。

 それを横目にロゼアがエルフ兵に目配せするとネリートに付けた首輪と同じモノを取り付けさせる。

 そして、兵に解放された2人がエルフ兵に連れて行かれるのを見ていたポプリに2人が叫ぶ。

「ポプリ、助けてっ!」
「私達は血を分けた姉妹でしょ!」

 そう叫ぶ2人に一瞬、悲しそうな表情を浮かべるがすぐに柔らかい笑みを浮かべる。

 こんな状況でそんな柔らかい笑みが出るとは思ってなかった2人はポプリを見て固まる。

「幼い頃、私が助けを求めた時、そして、今回、戦争を機に歩み寄った私にお二人がどうされたかは説明いりませんよね? それともう一つ大きな間違いがあります」

 柔らかい笑みから綻ぶように幸せを感じさせる笑みへと変化させる。

「私は、貴方達と姉妹じゃありません。私は北川さん家のポプリです。間違わないでください」

 そう言い切るポプリに言葉を失った2人はエルフ兵に連行されて出ていく。

 その言葉を聞いた雄一は、ポプリの成長を感じたようで嬉しさ半分寂しさ半分といった気持ちに襲われる。

 そして、例え、雄一がポプリに女王の座に就くのを辞めろと言っても止まらないという事も。

 ポプリにしても、ホーラにしても、もっと子供としての時間を大事にしていればいいのにと思う。

 そう言う意味ではテツが丁度いいと雄一は溜息を吐く。


 連行する為に最後を歩いていたロゼアが振り返り、ミレーヌに問いかける。

「やはり、ネリートも引き取らせて貰いたいのだが?」
「その話は既に済んでるはずです。あれもこれも欲しいでは強欲と言われても否定できませんよ?」

 笑みを浮かべるミレーヌに言われて、グゥの音も出ないロゼアは渋々、引き下がる。

 その背中に雄一が声をかける。

「ああ、ゴードンもちゃんと引き渡すが、少し待ってくれ。もう少し精神的に追い詰めたらそちらに連れて行かせる」
「ユウイチ殿がしくじるとは思わないが、逃がさないように頼む」

 頷いてみせる雄一に拗ねたような顔を見せるロゼアを笑ってしまいそうになるが耐える。

 出ていくロゼアを見送った雄一は、ポプリのところへと歩いていく。

 歩いてくる雄一に申し訳なさそうな顔をしながら待ち構えるポプリに苦笑いを返した。

「女王をやる意思は固いか?」
「あの4人の中にまともな人がいればお任せしたかった、というのが本音ですけど、誰かが責任を取らないといけませんから」

 目尻に涙を浮かべて強がるポプリを雄一は抱き締めて「馬鹿だな」と呟く。

 雄一の腹に顔を押し付けて声を殺して泣くポプリの頭を撫でながら語りかける。

「これだけは覚えておいてくれ。ダンガにあるあの家はお前の帰る場所だ。いつでも帰ってこい。嬉しい事、楽しい事、つまらない事、そして、辛い、悲しい時でも、いつでもお前の帰りを待っている」

 その言葉に雄一の腹を擦るように頷くポプリをギュッと更に抱きしめる。

「俺はいつでもポプリの幸せを祈っているぞ」

 ついに堪え切れなくなったポプリが声を上げて泣き始める。

 本音では背負いたくないモノを背負う事で肩肘張っていた。載っているモノに潰されそうになっていたのを気付いて受け止めて貰えて嬉しかった。

 だから、ポプリは思う。この想いさえあれば前に進んでいけると……

 ポプリは幸せであった。



 しばらくして、ポプリの嗚咽が収まった頃、雄一はミレーヌに問いかける。

「もう国同士の話し合いは大方終わったよな?」
「え、ええ、早急に進めたかった事は終わりましたが、どうかされましたか?」

 涙は引っ込んだがまだ目が赤いポプリが雄一を見上げると笑みを浮かべた雄一が頷いてみせるとポプリは天地がどちらか分からなくなる感覚に襲われる。

 声を上げる余裕もなく気付けば、正座している雄一の膝の上に腹ばいにさせられている状態になっていた。

「へっ?」

 思わず、間の抜けた声を出すポプリ。まったく状況が分かっていない。

 そんなポプリの様子に我関せずを貫く雄一が声高に叫ぶ。

「これより、北川家庭裁判を始める。野郎共は背を向けてこっちを見るなっ!」

 いきなりの事で理解が追い付かない面子に今度は威圧込みで伝えると慌てて背を向けて直立する。

 まだ色々状況把握できてないポプリが問いかける。

「これはどういうこと?」
「ポプリ、ナイファから出ていく前の夜に俺に会いに来た時の事を覚えているか?」

 一瞬、考えるような顔をしたポプリが記憶を漁り出して、あの時の事を思い出し、抱き締められた事を思い出して頬を染めるが、すぐに驚愕な表情を浮かべる。

 赤から青に変化させるポプリが問いかける。

「ま、まさか、アレを今、ここで?」
「ここを逃したらする機会ないだろう?」

 それを聞いた瞬間、ジタバタして必死に逃げようとするが絶妙な力加減で抑えられており逃げる事が叶わない。

 そう、あの夜、最後に雄一は言った。

「それでも実力行使をポプリが止めないなら、叩き伏せて、その場で尻叩きしてやるよ」

 と言った後、

「パンツを下ろして直に叩くから痛いぞぉ?」

 と確かに言った。

 基本、雄一は有言実行である。今回も例外ではなかった。

 キャァー、キャァー騒ぐポプリのドレスのスカートを躊躇なく捲る。そして、パンツをずらして可愛いお尻を出すとパーンと良い音を響かせる平手打ちを加える。

 イタ――イ!! と騒ぐポプリの声にいち早く立ち直ったホーラは叩かれているお尻のほうに移動してしゃがみ込む。

「ポプリ、黒もそうだけど、赤もまだ早いと思うさ」
「ホーラ、今、問題はそこじゃない! お願いだからユウイチさんを止めてっ!」

 そういうやり取りの間も数をカウントしながら叩く雄一にポプリは叫ぶ。

「何回叩く気なんです!」
「古来より尻叩きは100回と決まってる」

 雄一の返答に絶望を覚えるポプリ。

 そして、雄一が二十一回目を数えた時、ホーラが雄一に声をかける。

「ユウ、左右のバランスが悪くなってるさ。次は左よりで」
「了解……アレ? 何回目だったっけ?」

 首を傾げる雄一にホーラが教えてやる。

「十二回さ」
「サンキュ―」

 再び、カウントを始める雄一に叩かれたポプリが怨嗟の想いを込めて叫ぶ。

「ホーラ! ざけんなぁ――!!」

 涙ながら叫ぶポプリは痛みから涙を流しながらも家族扱いして貰える嬉しさから笑みが漏れる。

 そんなポプリの複雑な心境を横から見ていたミレーヌは、少し羨ましいと思いながら微笑みながら見つめた。
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