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12話 久しぶりとバカは言われる

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 色々と波乱を含んだアウトローの登録が済んだ3人はアウトローギルドを出た。

 出た所でニィヤンが紫煙を吸いこんで一拍置いてジュラに一枚の紙を差し出し話かける。

「ジュラ、先に宿に向かってくれ。俺達はまだやる事があるから」

 差し出した紙に宿の場所を書いてると告げるニィヤン。

 ニィヤンの言葉に首を傾げながら

「別にジュラも一緒に行ってもいいけど?」
「暇だと思うぞ? 俺はアウトローする以外にもちょっと商売もしようかと思っててな。商業ギルドにも加入しようと思っている。何より……」

 ニィヤンはチラッと背後で登録証をニヤニヤと見てるジュンを見て、ジュラを手招きして耳を貸せと言う。

 不思議そうな顔をしたジュラが長い耳を素直にニィヤンに寄せる。

「あの浮かれよう、まず間違いなく祝杯だぁ、とお姉ちゃんのいる店に特攻するな」

 そう言うとちょっと唇を尖らせ凄く不満そうなジュラの様子にニィヤンは気持ちは分かると頷く。

「あのバカの事だから止めても無駄だろう。下手に止めて変な店に行かれたらトラブルの元だから俺がまともな所に誘導してくる」

 まだ不満そうなジュラに商業ギルド周辺にあるその手の店は商業ギルドが管理してるのでまだマシだと告げる。

 その情報を告げられ、先程より幾分マシ、尖らせた唇が無くなり諦めというより妥協と言った様子で溜息を零すジュラ。

 やはりそれでも消化しきれないジュラから少し目を逸らしたニィヤンはわざとらしい咳払いをする。

 それに、ん? とクエスチョンマークを浮かべるジュラに言う。

「……宿の部屋に俺が作った携帯冷蔵庫がある」

 何をいきなり言い出すんだろうと更にクエスチョンマークを浮かべるジュラがその思いを問い返そうとする前にニィヤンは続ける。

「その中にはプリンアラモードが……」
「……ッ!」

 ニィヤンがそう言った瞬間、ジュラの瞳がキリッとさせる。

「お兄さん、ジュラはこれからプリンアラモード様の警護に着く為に宿に急行したいと思います」
「ああ、この件の全権はジュラに一任する」

 そう言うとジュラは「はっ!」と敬礼する。

 ニィヤンは思う。

 口許の涎は年頃の少女としてどうなのだろうかと

 ニィヤンがそう思っている事はジュラには届かない。それもまた良しと頷くのを見たジュラはウサギ族だけに脱兎の如く手元の紙に書かれた宿を目指して走り出すのを見送る。

 きっとプリンアラモード様とやらは長くない寿命だろう。そうジュラが着くまでの命だろうと確信する。

 当然、ニィヤンは無駄に犯人を捜す気も追及しようとも思わない。

 ニィヤンは1つ片付いたとばかりに浮かれるジュンに向き合う。

「おいジュン。これから商業ギルドの登録に行く。着いてこい」
「はぁ? ワイは商業ギルドには用ないで。それよりワイは……」

 そう言いかけたジュンの耳を掴んで引っ張り、痛がるジュンに言う。

「お前が好きそうなお姉ちゃんがいる酒場とかが商業ギルドの近くにあるから登録が済んだら場所を教えてやる」
「ワイは兄(にい)やんの聞き分けのええ弟のジュンやで。当然お供させてもらうわ」

 どこかの少女がしたようにキリッと敬礼してみせるジュン。

 目の前にエサをぶら下げられた時の反応が一緒で笑いが漏れる。

 正直、お似合いの2人だとは思うニィヤン。ジュンには多々の問題はあるが、それもまた許容してくれるという面でもジュラはジュンには必要だと。

 このバカが向けられる想いに気付き、それを受け入れ、またこのバカの腹の底にある想い認められるようになれば、と考える。

 それが一番難しいと知るニィヤンは紫煙を胸に満たし肩を竦める。

 ニィヤンは早く早くとウキウキするバカに急かされて商業ギルドを目指して歩き出した。


 1時間後、登録はあっさりと済んだ。

 とりあえず露天商としての資格を得て、店に昇格させたい時はまた来る必要があるようだ。

 露天商としては月に銀貨1枚、前世感覚で言うなら1000円ぐらいだ。

 ちなみに鉄貨は1円、銅貨100円、銀貨1000円、金貨1万円という感覚で間違いない。プラチナ貨という100万円相当のもあるらしいが記念品、贈答品といった意味合いで市場に出回る事は稀らしい。

 登録が済んで商業ギルドを出た2人。

「兄やん、兄やん、店どこよ?」

 出たと同時にせっつくジュンにウンザリしながら場所を教えようとしたニィヤンの腕を突っつく別の存在が現れる。

 振り返るとそこには白装束に杖を持つ30歳程の男が居り、ニィヤンは驚きを隠せず目を見開く。

「久しぶりじゃの、ちょっと話があるじゃが」
「誰だ、お前はっ! ワイはこれから兄やんに……」

 もう我慢がならんのよっと言いたげなジュンが叫ぶのを拳で黙らせると再び耳を耳を引っ張り小声で話しかける。

「この人は俺達を転生させた神様だろうが忘れてるなよ」
「へっ? ああ、そういえばこんなヤツだっけ?」

 本当に忘れていたようで、はっはは、と笑い飛ばすジュン。そのジュンが「で、何の用や?」と聞き返す。

 聞き返された神様は申し訳なさそうに俯きながら

「悪い、バレちゃった」
「はぁ?」

 ジュンは神様の存在すら忘れていたので何の事すら理解出来てないようだが、ニィヤンは理解出来たようで眉間に皺を寄せる。

 すると、いつの間に現れたかは2人にも分からないが神様の背後から体のラインが出る白のドレスを着た絶世の美女と呼んで差し支えない女性がいた。

 出るとこは出て、引っ込む場所は引っ込み、しかも過度ではなく均整が取れた黄金比。

 髪はキャバ嬢に居そうなフワッとした上に纏めた髪型であるが、前世で似た髪型をしたキャバ嬢を見た時、ニィヤンは正直、下品だと思ったがこの女性は下品にも嫌味も感じさせない。

 全てに置いて完璧に見えたが、ニィヤンはどうしても気になる1点があった。

 目である。

 見下してるとは少し違うように感じるがその瞳に何故か分からないが同情からくる憐れみのような気持ちになってしまう。

「に、兄やん。ワイ、あんなそそるイイ女見てるのにアレはないって思うの初めてや」

 ジュンがそう言ってくるのをニィヤンは心で同意する。

 同情心はあるが、ニィヤンも同じように警報注意報状態である。

 そんな2人に近寄り、ニィヤンの前に立つ美女。

 目線が同じぐらいで見つめ合い、美女が口を開く。

「貴方がバカの兄貴ね」
「そうだが?」

 いきなりジュンをバカと言い切る美女にある意味感心してるニィヤン。

 ジュンは「ワイはバカちゃう!」とイキリ出してるが敢えて無視する2人。

 美女は「そう……」と告げると続ける。

「悪いけど、貴方には死んでもらうわ」

 ジュンが、はあぁぁぁぁ!? と声を上げるがニィヤンは驚いた様子も見せず紫煙を吐き出して申し訳なさそうにしている神様をチラっと見た。

 ニィヤンの視線にバツ悪そうにする神様。

 どうやら思っている通りのようだと納得したニィヤンは紫煙を胸に満たして紫煙を空に吐き出した。
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