10 / 16
9話 ネコ魔王の握り締めた肉球
しおりを挟む
魔王城の玉座の間で私とニャー様がいた。
ニャー様は目の前に立ち塞がるものを見つめて、緊張からくる滴る汗を喉元に集まったところを腕で拭う。
両足をガクガクさせるニャー様の膝がついに崩れる。
「ニャー様、頑張ってください!」
「も、もう無理にゃ……」
仰向けに倒れるニャー様が大股を開いている。
その股にビー玉サイズのモノが2つ並んでいた。
さ、触りたい……ッ!
触りたいが以前、触った時に激怒されたので私は学習していたので寸でのところで耐える。
「もうニャーは頑張ったにゃ……」
「まだいけます、ニャー様!」
荒い息を吐くニャー様を眺めながら昨日の事を思い出す。
突然、妹のターニャの襲撃を受けたが結局、その日の内に王国軍は撤退していった。
本当にあの子は何をしたかったのやら、と呆れるしかない。
あの子の事は正直どうでもいい。
ニャー様にとんでもない弱点がある事が発覚した。
そう、イヌが苦手という事実であった。
あの後、調べた限り、ネコ自体がイヌが苦手な節があったがニャー様ほど酷い反応を見せないと分かって、ニャー様が特例だと判断した私はニャー様に弱点克服をして貰おうと修行を課した訳だ。
プルプル震わせる腕で体を支えるように立とうとするニャー様が言ってくる。
「苦手なモノは苦手にゃ……」
泣き事を言われるニャー様に私は小さな声で呟く。
「頑張ったら、今夜はブシとご飯の1:1の豪華仕様」
「ニャーは魔王にゃ! 何人もニャーを止められはしないにゃ!」
なんだと? とばかりに私を見上げたニャー様は腹筋を始めたので私は介添をする為にニャー様の後ろ脚を固定してあげる。
はぁはぁ、腹筋する度に上がってくるニャー様の顔……見えて、見なくなって、見えて……
私は静かに鼻血を滝のように流す。
10回ほど腹筋をした後、キリリとした表情で立ち上がったがニャー様は肉球を握り締める。
「くるにゃ!」
ニャー様が目を細めて睨みつける。
睨みつけた先にはフワフワの白い毛の塊といったケダモノ、ポチとそっくりなのがお座りをするようにしてニャー様を見つめ返していた。
そう、ニャー様の訓練相手はコイツである。
肉球を握り締めた拳でシャドーボクシングをするようにし出すニャー様は次第にフットワークを取り入れ始める。
ポチもどきの周りを旋回するようにしながら牽制するようにして拳を放つ。
相手の行動を伺うようにしていたニャー様の瞳がキラリと光る。
「隙ありにゃ!!」
ポチもどきの足下にスライディングするよう飛び込むが残念、ニャー様の足が短すぎて届かない。
それを見た私は鼻血を噴き出して片膝を吐く。
可愛過ぎるぅ!
「まだまだにゃ! ニャーはまだ諦めないにゃ!!」
スライディングした体勢のままで尻尾を旋回させてポチもどきの足を払い転倒させようとする。
力なくポテと倒れるポチもどきを見たニャー様が飛び起きると両手を天に向けて突き上げる。
「勝ったにゃ! ついに宿敵イヌをニャーが倒したにゃ!」
「お、おめでとうございます!」
涙と鼻血を流す私がニャー様に駆け寄るとニャー様も私に向かって走ってくる。
さあ、私の胸へ……ぐへへ
両手を広げる私の脇を駆け抜けるニャー様。
手を広げたままで硬直する私の耳に「1人凱旋パレードにゃ!」届かせて駆けていく。
ニャー様……ノリは理解しますが帰るのはここ、魔王城なんですが……
今度は色んな意味で悲しくなってきた私がポロポロと泣いていると伝令のペーターが現れ、ニャー様が倒したポチもどきを持ち上げる。
「なんですか、このぬいぐるみは……とても作りがいいですけどドドンさんにでも作って貰ったのですか?」
実はこのポチは偽者でぬいぐるみであった。いきなり本物でやったら危ないと判断したので慣れを作る為に練習していた。
「何を言っている? そのぬいぐるみは昨日、私が作ったのだが?」
ドドン、ドワーフ達は手先が器用だが、こういったぬいぐるみのようなモノは作らない。
彫像などであれば作るかもしれないがあのドドンが作るとは思えないと私は肩を竦める。
ペーターはびっくりしたような顔をした後、私とぬいぐるみを交互に見つめた後、微妙そうな顔をして言ってくる。
「なんていうか……似合いませんね?」
「よし、たまには私がお前を鍛えてやろう」
ペーターの顔を鷲掴みにして持ち上げて広い場所を求めて歩き始める。
私はただ鍛えてやろうと思っているだけなのにペーターは叫びながら私の手を解こうと躍起になり始めた。
「イタッタタ! ご、ごめんなさい、悪気はなくて素直に言っただけなんです!」
「よし、昼食も抜きで訓練してやろう。私がお前に求めるのは強くなるか、それとも死ぬかだ!」
ギャー、殺される! と騒ぐペーターを連れて私は天気の良いので中庭で鍛えてやろうと歩き始めた。
ニャー様は目の前に立ち塞がるものを見つめて、緊張からくる滴る汗を喉元に集まったところを腕で拭う。
両足をガクガクさせるニャー様の膝がついに崩れる。
「ニャー様、頑張ってください!」
「も、もう無理にゃ……」
仰向けに倒れるニャー様が大股を開いている。
その股にビー玉サイズのモノが2つ並んでいた。
さ、触りたい……ッ!
触りたいが以前、触った時に激怒されたので私は学習していたので寸でのところで耐える。
「もうニャーは頑張ったにゃ……」
「まだいけます、ニャー様!」
荒い息を吐くニャー様を眺めながら昨日の事を思い出す。
突然、妹のターニャの襲撃を受けたが結局、その日の内に王国軍は撤退していった。
本当にあの子は何をしたかったのやら、と呆れるしかない。
あの子の事は正直どうでもいい。
ニャー様にとんでもない弱点がある事が発覚した。
そう、イヌが苦手という事実であった。
あの後、調べた限り、ネコ自体がイヌが苦手な節があったがニャー様ほど酷い反応を見せないと分かって、ニャー様が特例だと判断した私はニャー様に弱点克服をして貰おうと修行を課した訳だ。
プルプル震わせる腕で体を支えるように立とうとするニャー様が言ってくる。
「苦手なモノは苦手にゃ……」
泣き事を言われるニャー様に私は小さな声で呟く。
「頑張ったら、今夜はブシとご飯の1:1の豪華仕様」
「ニャーは魔王にゃ! 何人もニャーを止められはしないにゃ!」
なんだと? とばかりに私を見上げたニャー様は腹筋を始めたので私は介添をする為にニャー様の後ろ脚を固定してあげる。
はぁはぁ、腹筋する度に上がってくるニャー様の顔……見えて、見なくなって、見えて……
私は静かに鼻血を滝のように流す。
10回ほど腹筋をした後、キリリとした表情で立ち上がったがニャー様は肉球を握り締める。
「くるにゃ!」
ニャー様が目を細めて睨みつける。
睨みつけた先にはフワフワの白い毛の塊といったケダモノ、ポチとそっくりなのがお座りをするようにしてニャー様を見つめ返していた。
そう、ニャー様の訓練相手はコイツである。
肉球を握り締めた拳でシャドーボクシングをするようにし出すニャー様は次第にフットワークを取り入れ始める。
ポチもどきの周りを旋回するようにしながら牽制するようにして拳を放つ。
相手の行動を伺うようにしていたニャー様の瞳がキラリと光る。
「隙ありにゃ!!」
ポチもどきの足下にスライディングするよう飛び込むが残念、ニャー様の足が短すぎて届かない。
それを見た私は鼻血を噴き出して片膝を吐く。
可愛過ぎるぅ!
「まだまだにゃ! ニャーはまだ諦めないにゃ!!」
スライディングした体勢のままで尻尾を旋回させてポチもどきの足を払い転倒させようとする。
力なくポテと倒れるポチもどきを見たニャー様が飛び起きると両手を天に向けて突き上げる。
「勝ったにゃ! ついに宿敵イヌをニャーが倒したにゃ!」
「お、おめでとうございます!」
涙と鼻血を流す私がニャー様に駆け寄るとニャー様も私に向かって走ってくる。
さあ、私の胸へ……ぐへへ
両手を広げる私の脇を駆け抜けるニャー様。
手を広げたままで硬直する私の耳に「1人凱旋パレードにゃ!」届かせて駆けていく。
ニャー様……ノリは理解しますが帰るのはここ、魔王城なんですが……
今度は色んな意味で悲しくなってきた私がポロポロと泣いていると伝令のペーターが現れ、ニャー様が倒したポチもどきを持ち上げる。
「なんですか、このぬいぐるみは……とても作りがいいですけどドドンさんにでも作って貰ったのですか?」
実はこのポチは偽者でぬいぐるみであった。いきなり本物でやったら危ないと判断したので慣れを作る為に練習していた。
「何を言っている? そのぬいぐるみは昨日、私が作ったのだが?」
ドドン、ドワーフ達は手先が器用だが、こういったぬいぐるみのようなモノは作らない。
彫像などであれば作るかもしれないがあのドドンが作るとは思えないと私は肩を竦める。
ペーターはびっくりしたような顔をした後、私とぬいぐるみを交互に見つめた後、微妙そうな顔をして言ってくる。
「なんていうか……似合いませんね?」
「よし、たまには私がお前を鍛えてやろう」
ペーターの顔を鷲掴みにして持ち上げて広い場所を求めて歩き始める。
私はただ鍛えてやろうと思っているだけなのにペーターは叫びながら私の手を解こうと躍起になり始めた。
「イタッタタ! ご、ごめんなさい、悪気はなくて素直に言っただけなんです!」
「よし、昼食も抜きで訓練してやろう。私がお前に求めるのは強くなるか、それとも死ぬかだ!」
ギャー、殺される! と騒ぐペーターを連れて私は天気の良いので中庭で鍛えてやろうと歩き始めた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
業腹
ごろごろみかん。
恋愛
夫に蔑ろにされていた妻、テレスティアはある日夜会で突然の爆発事故に巻き込まれる。唯一頼れるはずの夫はそんな時でさえテレスティアを置いて、自分の大切な主君の元に向かってしまった。
置いていかれたテレスティアはそのまま階段から落ちてしまい、頭をうってしまう。テレスティアはそのまま意識を失いーーー
気がつくと自室のベッドの上だった。
先程のことは夢ではない。実際あったことだと感じたテレスティアはそうそうに夫への見切りをつけた
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる