1 / 16
プロローグ
しおりを挟む
私はある場所を目指して歩いている。
そこは特に何かがあるという訳ではなく、変哲もない草原が広がっていた。
しかし、私はそこに行かねばならない。何故なら、1カ月前の教会で祈りを捧げている時に神託を得た。
神はこう仰った。
「信仰深き神の子、レティスよ。1カ月後にハヤフル王国の北にある草原に異世界の魔王が顕現します。魔王が力を付ける前に皆と協力をして倒すのです。しかし、魔王は強敵です。子だけの力だけでは足りないかもしれません。貴方に神の剣、聖剣を授けましょう」
その言葉を思い出した私は腰にある美しい作りの剣の柄をソッと触れる。
私はきっとこの聖剣で魔王を打倒してみせると拳を握りしめた。
決意を胸に私は歩き、そっと自分の周りを見渡す。
私は1人……
そう、神に皆と協力をして、と言われたにも拘らず私は1人で魔王が顕現する場所へと向かっていた。
魔王が顕現した直後であれば私の力だけでもなんとかなるはず!
危険なのは私だけでいい。血を流す者は少ない方がいい。
私は強い。
これでも王国一の騎士だ。男だろうが誰であろうが一刀で勝利を収めてきた。
幼少の頃から強き騎士に憧れて自分を鍛えてきた。
しかし、どれだけ強さを示しても生まれを遠慮して勝ちを譲られている、本当の実力ではないと影で言われてきた。
そう、私は王族である。王位継承権2位の長女だ。
見目麗しいのだから着飾れば、どこの舞踏会やパーティに出しても恥ずかしくないのだから剣を捨てろ、と何度言われたか分からない。
そんな事はない、と言い続けてきたが相手にされなかったが今日、証明してみせる。
魔王を私が倒す。
神より授かりし、この聖剣を持って。
緊張からくる震えが掌に伝染し、私は歯を食い縛って拳を握り締める。
神に選ばれた私は強い、自分を信じろ!
意志の力で掌の震えを抑えた私は目的地を目指して歩き続ける。
そして、神より伝えられし、魔王が顕現すると予言された少し小高くなった場所に到着した。
「この辺りのはずだが……」
誰もいないのに独り言を呟いてしまった……やはり私は緊張しているのか!
思わず下唇を噛み締める私は聖剣の柄を握りながら辺りを見渡していると近くに晴天なのに落雷した。
衝撃が風になり、私の長い金髪を靡かせ、目にゴミが入らないように青い目を細める。
立ち込める土煙の視界ゼロの先に私は気配を感じ取った。
「そこにいるのは魔王かっ!」
「ほっほう……ニャーが顕現した場所に居て、尚且つ、ニャーが魔王と知るお前は神の手の者かにゃ」
私は腰にある聖剣を抜き放ち、土煙の先に剣先を向けると私の戦う意志が反映したかのように聖剣が輝きだす。
「そうだ! 神より頂いたオルナ・ソラスをもって魔王を倒す」
「なるほどにゃ、つまり、お前がこの世界で一番と神に認められし者にゃ」
もしかして、とは思っていたが魔王がそういうなら本当かもしれないと私は我知らず頬が緩ませる。
そんな私の心境を知ってか知らずか魔王はまだ晴れない土煙の中で頷いているようだ。
「ところで相談にゃ。まだニャーはこの世界に来たところで部下がいないにゃ。今、部下になるなら世界の半分をやるにゃ?」
「断る!」
土煙の向こうで魔王が「にゃ、にゃにゃ!?」と驚く鳴き声がするが私は身を震わせていた。
カ・イ・カ・ン
そう、私は快感に身を震わせていた。
物語で見た勇者が魔王に言われる世界を半分やる、と言われて断るという定番のセリフを言える日をどれだけ夢想しただろうか……
今こそ、英雄になる時、と聖剣オルナ・ソラスを掲げると光を放ち、周りを舞っていた土煙が晴れ、影しか見えなかった魔王の姿が現れた。
「なっ!?」
「ま、待つにゃ! まずはニャーの話を聞くにゃ」
私の目の前には短毛の白、茶色、黒の三色の毛がまだら状に生えている生き物が二足歩行し、黒いマントを着けていた。
こ、こんな生き物見た事ない。
手もガタガタと震え、震えは手だけでなく膝まで震える。
「お前は何者だ!?」
「にゃ? 魔王って言ったにゃ? ニャーはネコの魔王にゃ」
ネコっ!!
その言葉を聞いた瞬間、私の胸を何かが貫き、手にしていた聖剣オルナ・ソラスを落としてしまう。
放心する私に「大丈夫かにゃ?」と魔王が掌を眼前に振ってみせる。
そこには綺麗なピンク色のプックリとした柔らかそうなモノが目に入り、私は目が離せなくなる。
振られる度に目を走らせるのを見た魔王が可愛らしく首を傾げる。
「くっ、なんて悪魔的な可愛さだ……これは魔法か……」
「何の話にゃ?」
それでも私が掌のピンクから目を離せず、見つめ続けていると遂に魔王が何を見てるか気付いたらしく自分の掌を見つめて私をジッと見た後、掌を背中に隠す。
「ああっ……」
思わず声を出してしまった私は手を伸ばしてしまう。
魔王は何やら信じられないといったように半眼になりながら私を見てくる。そして、もう一度、掌を見つめた後、そっと掌をこちらに向けてくる。
か、可愛い……触ってみたい!
自分でも分かるぐらいに私の顔が微笑んでいるのが実感出来た。
魔王は疑心暗鬼に囚われながら掌を向けながら言ってくる。
「ニャーの部下になるなら、この高貴な肉球を触らせてやらんでもないにゃ」
に、肉球!? なんて甘美な響き……
そう考えたのが最後、私は気付けば魔王に傅いて、魔王の肉球をプニプニしていた。
この時より、私は人類の敵となり魔王の右腕に就任した。
そこは特に何かがあるという訳ではなく、変哲もない草原が広がっていた。
しかし、私はそこに行かねばならない。何故なら、1カ月前の教会で祈りを捧げている時に神託を得た。
神はこう仰った。
「信仰深き神の子、レティスよ。1カ月後にハヤフル王国の北にある草原に異世界の魔王が顕現します。魔王が力を付ける前に皆と協力をして倒すのです。しかし、魔王は強敵です。子だけの力だけでは足りないかもしれません。貴方に神の剣、聖剣を授けましょう」
その言葉を思い出した私は腰にある美しい作りの剣の柄をソッと触れる。
私はきっとこの聖剣で魔王を打倒してみせると拳を握りしめた。
決意を胸に私は歩き、そっと自分の周りを見渡す。
私は1人……
そう、神に皆と協力をして、と言われたにも拘らず私は1人で魔王が顕現する場所へと向かっていた。
魔王が顕現した直後であれば私の力だけでもなんとかなるはず!
危険なのは私だけでいい。血を流す者は少ない方がいい。
私は強い。
これでも王国一の騎士だ。男だろうが誰であろうが一刀で勝利を収めてきた。
幼少の頃から強き騎士に憧れて自分を鍛えてきた。
しかし、どれだけ強さを示しても生まれを遠慮して勝ちを譲られている、本当の実力ではないと影で言われてきた。
そう、私は王族である。王位継承権2位の長女だ。
見目麗しいのだから着飾れば、どこの舞踏会やパーティに出しても恥ずかしくないのだから剣を捨てろ、と何度言われたか分からない。
そんな事はない、と言い続けてきたが相手にされなかったが今日、証明してみせる。
魔王を私が倒す。
神より授かりし、この聖剣を持って。
緊張からくる震えが掌に伝染し、私は歯を食い縛って拳を握り締める。
神に選ばれた私は強い、自分を信じろ!
意志の力で掌の震えを抑えた私は目的地を目指して歩き続ける。
そして、神より伝えられし、魔王が顕現すると予言された少し小高くなった場所に到着した。
「この辺りのはずだが……」
誰もいないのに独り言を呟いてしまった……やはり私は緊張しているのか!
思わず下唇を噛み締める私は聖剣の柄を握りながら辺りを見渡していると近くに晴天なのに落雷した。
衝撃が風になり、私の長い金髪を靡かせ、目にゴミが入らないように青い目を細める。
立ち込める土煙の視界ゼロの先に私は気配を感じ取った。
「そこにいるのは魔王かっ!」
「ほっほう……ニャーが顕現した場所に居て、尚且つ、ニャーが魔王と知るお前は神の手の者かにゃ」
私は腰にある聖剣を抜き放ち、土煙の先に剣先を向けると私の戦う意志が反映したかのように聖剣が輝きだす。
「そうだ! 神より頂いたオルナ・ソラスをもって魔王を倒す」
「なるほどにゃ、つまり、お前がこの世界で一番と神に認められし者にゃ」
もしかして、とは思っていたが魔王がそういうなら本当かもしれないと私は我知らず頬が緩ませる。
そんな私の心境を知ってか知らずか魔王はまだ晴れない土煙の中で頷いているようだ。
「ところで相談にゃ。まだニャーはこの世界に来たところで部下がいないにゃ。今、部下になるなら世界の半分をやるにゃ?」
「断る!」
土煙の向こうで魔王が「にゃ、にゃにゃ!?」と驚く鳴き声がするが私は身を震わせていた。
カ・イ・カ・ン
そう、私は快感に身を震わせていた。
物語で見た勇者が魔王に言われる世界を半分やる、と言われて断るという定番のセリフを言える日をどれだけ夢想しただろうか……
今こそ、英雄になる時、と聖剣オルナ・ソラスを掲げると光を放ち、周りを舞っていた土煙が晴れ、影しか見えなかった魔王の姿が現れた。
「なっ!?」
「ま、待つにゃ! まずはニャーの話を聞くにゃ」
私の目の前には短毛の白、茶色、黒の三色の毛がまだら状に生えている生き物が二足歩行し、黒いマントを着けていた。
こ、こんな生き物見た事ない。
手もガタガタと震え、震えは手だけでなく膝まで震える。
「お前は何者だ!?」
「にゃ? 魔王って言ったにゃ? ニャーはネコの魔王にゃ」
ネコっ!!
その言葉を聞いた瞬間、私の胸を何かが貫き、手にしていた聖剣オルナ・ソラスを落としてしまう。
放心する私に「大丈夫かにゃ?」と魔王が掌を眼前に振ってみせる。
そこには綺麗なピンク色のプックリとした柔らかそうなモノが目に入り、私は目が離せなくなる。
振られる度に目を走らせるのを見た魔王が可愛らしく首を傾げる。
「くっ、なんて悪魔的な可愛さだ……これは魔法か……」
「何の話にゃ?」
それでも私が掌のピンクから目を離せず、見つめ続けていると遂に魔王が何を見てるか気付いたらしく自分の掌を見つめて私をジッと見た後、掌を背中に隠す。
「ああっ……」
思わず声を出してしまった私は手を伸ばしてしまう。
魔王は何やら信じられないといったように半眼になりながら私を見てくる。そして、もう一度、掌を見つめた後、そっと掌をこちらに向けてくる。
か、可愛い……触ってみたい!
自分でも分かるぐらいに私の顔が微笑んでいるのが実感出来た。
魔王は疑心暗鬼に囚われながら掌を向けながら言ってくる。
「ニャーの部下になるなら、この高貴な肉球を触らせてやらんでもないにゃ」
に、肉球!? なんて甘美な響き……
そう考えたのが最後、私は気付けば魔王に傅いて、魔王の肉球をプニプニしていた。
この時より、私は人類の敵となり魔王の右腕に就任した。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
業腹
ごろごろみかん。
恋愛
夫に蔑ろにされていた妻、テレスティアはある日夜会で突然の爆発事故に巻き込まれる。唯一頼れるはずの夫はそんな時でさえテレスティアを置いて、自分の大切な主君の元に向かってしまった。
置いていかれたテレスティアはそのまま階段から落ちてしまい、頭をうってしまう。テレスティアはそのまま意識を失いーーー
気がつくと自室のベッドの上だった。
先程のことは夢ではない。実際あったことだと感じたテレスティアはそうそうに夫への見切りをつけた
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる