暴食の子

シロ。

文字の大きさ
上 下
2 / 8
序章 才能の目覚め

第2口 お勉強。

しおりを挟む
「ん……ここは?」

 目が覚めるとブランは自宅のベットの上にいた。
痛む身体にムチを打ち、起き上がろうとする。
そんな時、隣から声が聞こえる。

「お! よかった、起きたのかい?」

その声を聞き、顔を上げるとそこにはグランと名乗る男とスーロスがいた。

ブランが素っ頓狂な顔をしているとグランが何かに気づいた様に声を出す。

「ああ、自己紹介がまだだったね、俺は神喰隊"隊長"のグランだよろし──」

グランが言葉を終える前にブランが驚き声を出す。

「隊長!?!?」

「おや、知らなかったんですか? 結構有名ですよ?」

不思議そうにスーロスが声をだす。

「ま、そんなことは置いといて、ブランくん? って言ったっけ? 君、神喰隊に入りたいの?」

話を遮るようにグランがブランに問う。
するとブランは、少し恥ずかしそうに話し始める。

「その……入りたい気持ちもあるんですけど……化け物に手も足も出なかった僕なんかが入って本当に大丈夫なのかなって……」

気まずそうに答えるブランを見て、グランは声を出す。

「誰もが最初っから強い訳じゃないさ、それに君はあの時友達を守りたい一心であいつに立ち向かったんだろ? ならなれるさ、絶対。」

その言葉を聞いてまたしても涙を流すブラン。
その様子を見たグランとスーロスは優しそうな笑顔を向ける。

「ただ、神喰隊についてなにも知らなかったら入ったあとに困ることがあるかもしれない、君は神喰隊についてどれくらい知ってる?」

そうグランが問うと、ブランは少し困ったような表情で答える。

「僕、あんまり神喰隊について知らなくて……才能人を捕らえたり倒したりしてるってことしか......」

その応えを聞いたグランは少し悩んだあとに答える。

「よしっ、じゃあ1から勉強するか!」

そう言うグランの言葉を聞いてブランには1つの疑問が浮かぶ。

「なんで僕のことをそんなに気にかけてくれるんですか?」

僕の問いに少し思い悩んだような表情を見せたあと、グランは答える。

「なぁに、ほんの気まぐれだよ。まぁ強いて言うなら似た者同士だからかな」

そう言ったグランは少し物悲しそうな表情をしていた。だがすぐに手を叩き、

「この話は後でいいよ、それより粥でも作るから休んでて」

そう言ってグランが部屋から出たあと、部屋にはブランとスーロスが残されていた。
さほど気にしていなかったが念願の神喰隊の隊長が目の前に居るのにスーロスはやけに静かだった。

「そう言えば、スーロスさっきからやけに静かだよね」

不思議に思い、そう声を出す。
その声を聞いてスーロスが口を開く。

「いや……なんかぼく、あの人のこと少し苦手なんですよね……なんか、不気味と言うか……」

そう言ってスーロスは苦笑していた。
それを聞いてブランは不思議そうな表情をしていた。
その後も、他愛も無い会話をしているとグランが小さめの片手鍋を持って部屋に入ってきた。
部屋に入ってきたグランは徐ろに口を開く。

「悪い、少し鍋使わせてもらってる。粥持ってきたから皆で食べよ?」

そう言って優しく笑うグランをスーロスは少し気まずそうに見る。
グランはベットの近くに寄せられたテーブルの上に鍋を載せ。
そのままスプーンを各々の前に起き、グランは口を開く。

「さぁて、じゃあまず才花人について軽く話すか」

そういうとグランは続けて。

「んー……まず、才花人の格についてだな、 才花人にはな、罪格、英雄格、大罪格、神格、ってのがあってな──」

グランはその様に語り出した。
ブランとスーロスが聞き入っていると彼はそれぞれの格について話し出した。

─罪格─
1番才花人の発生率が多い格。
罪格の才能にはそれぞれ欲が伴い、欲に溺れた者が暴れ出し、罪を犯す事が多い。
学校を襲撃した者もこの格。

─英雄格─
罪格と違い欲を伴わないため人類に比較的友好的なものが多い。
罪格の才能に比べ、美術や音楽など、様々な分野で輝く才能が多い。

─大罪格─
前記した才能よりもはるか上の格。
それぞれ、【嫉妬】【傲慢】【怠惰】【憤怒】【強欲】【色欲】【暴食ベルゼブブ】が存在する。
それぞれ別の世界に住んでいると考えられており、稀に人間の世界に干渉し顕現する。
それぞれの顕現記録として──

【嫉妬】
14年前、太平洋側の日本沿岸に顕現し自衛隊(当時の日本国の防衛機関)が応戦、甚大な被害を出しつつも元の世界に返す事に成功する。だが結果として自衛隊は壊滅し才花人に対抗しうる者たちが集められ神喰隊が編成される。
容姿は中学生くらいの少女。海底から顕現し、周囲に空中を泳ぐ魚らしき生物の群れを確認。だがどれも既存の魚類とはかけ離れており目が複数個ある物など、どこか歪な様子が垣間見える。

【傲慢】
4年前、島根県から沿岸12kmの日本海上空に顕現、数時間の静止の後、島根県の方向へ飛行。
島根県出雲市沿岸にて神喰隊 隊長 グランが単独応戦、約3時間の死闘の末、単独撃破。
だが戦いの余波で約半径700kmの範囲に甚大な被害が生じた。
だが、神喰隊の迅速な避難誘導と【傲慢】の顕現後の静止のおかげで死者は約1600万人程度に収まっている。

【怠惰】
7年前、アフリカ スーダンに顕現、才能の影響で大規模な栄養失調による衰弱死を引き起こし、アフリカの人口の約3割を衰弱死させる。
その後、姿を隠し今も発見が出来ていない現状がある。
だがこれ以降、【怠惰】による被害が出ていないため、自らの世界に帰ったのではと言うのが今の定説である。

【憤怒】
現状、顕現の記録無し。
だがロシアでは数々の文献が残されており、人々が怒り憎みあい数多の国が内乱で滅んだとされている。

【強欲】
現状、顕現の記録無し。
だがカナダ、アメリカ合衆国では伝承が見受けられ、物を与える神や物を奪う悪魔など地域により伝承に一貫性がない。

【色欲】
11年前スウェーデン、ノルウェー上空に顕現。
その後、数時間の遊泳の末、自らの世界に帰る。
だがその後、スウェーデンの正犯罪率が3倍、ノルウェーに至っては7倍にも上昇している。
容姿は上半身が女性で腰から下が巨大な触手や人体の目や手、足などの集合体でできている。

暴食ベルゼブブ
現状、顕現の記録無し。
だが文献や伝承が世界中で見つかっており、中にはこの世界は【暴食】により1度滅ぼされているなどの荒唐無稽の文献も多く見つかっている。
だが、どの文献でも"容姿は目を覆いたくなるほど醜いもの"など醜さが強調されて残されている。

また、それらの顕現が年々増加していることにも何らかの原因があると見られている。

─神格─
世界のあり方を変える事が出来るほどの才能をもつ。
現状文献で確認できている才能として、【時間】【質量】【混沌】が確認出来ている。
またその中には、神話として語り継がれるものも見られている。

「とまぁ、こんなもんかな?」

そうグランは少し首を傾げながら言う。
ブランとスーロスはその話を真剣に聞いていた。
するとグランは思い出したように口を開く。

「ああ、そーいえばこれは言ってなかったかな? 才花人には基本的に寿命って言うのがないらし──」

「ごぶふっッ!!!」

ブランは今の話を聞き、驚きのあまり飲んでいたお茶を吹き出してしまった。
その後も詳しく話を聞くとある程度の年齢まで成長すると、成長が止まり、それからは老化も止まるらしい。

そんなこんなで話を楽しんでいるとすっかり日が暮れていた。
それに気づき驚くグラン。

「ありゃ、もうすっかり夜だな、今日は流石に疲れたろうしこの辺で終わりにするか」

そう言い少し眠たそうにするグラン

「今日は3人で泊まるか?」

そう言いにかっと笑うグラン
するとブランは問う。

「あの……仕事に戻らなくて大丈夫なんですか?」

当然の疑問である。
神喰隊の隊長ともあろう人がこんな所で暇を潰してていいわけが無い。
ところが、グランから帰ってきた答えは拍子抜けするものだった。

「あぁ、信頼できる仲間たちがいるからね」

そう言い嬉しそうに笑うグラン。
そしてそのまま続けて

「ふふ、まぁ明日は神喰隊について話してやるから。今日は準備して寝よー」

そう言って欠伸をするグラン。
実際、ブランもスーロスも今日色々な事があり、眠たい事には変わりない。

そして数時間後。
風呂やご飯など、諸々の準備を済ませた3人はベットや布団に入る。
寝る前に他愛もない会話をしているとふと、ブランがこんなことを言う。

「グランさんって本当に強いんですね……大罪格を単独撃破なんて......」

「そうですよね……! 神喰隊は人間離れしてる人が多いと聞いていましたが......ここまでとは……」

スーロスが相槌を打つ様に言う。
するとグランは答える。

「ふふ、私は最強だからね」

そう言うグランは少し寂しそうに見えた。
ただ、グランは誤魔化すように言う。

「もう寝よ? おやすみ。」

その言葉や優しさに満ちていた。
その言葉を皮切りに3人はそれぞれ眠りに堕ちる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売しています!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

令和の俺と昭和の私

廣瀬純一
ファンタジー
令和の男子と昭和の女子の体が入れ替わる話

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...